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第5章  流来

第30話  集中

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 俺は心よりの感謝を伝える。

「私は以前。恩を受けた方がいます。死すら覚悟していた私を救ってくれた方です」

「その方は昔。ケガをして動けないところをホブゴブリンに救われたそうです。そして、そのホブゴブリンに恩を返そうとしました」

「しかし、そのホブゴブリンは恩を受け取らず、手助けを求めるゴブリンが居たら手を貸してくれとだけ言い別れたそうです」

「私を助けたその方も同様に私からの恩を受け取らず。困っている隣人に受けた恩を返すように言いました」

「私とその方の二つの恩が、回り回って私をここに連れて来ました。――今回。私に恩を返させてくれる機会を頂き、感謝とお礼を捧げます」

 村長は温かい微笑みで俺を見つめこう言った。

「我らには意思の通じる、隣人を助けよという格言がある。エルフに報いろと伝えられた言葉だ。こちらこそ、その機会を作ってくれてありがとう」

 その言葉を聞いて俺のやる気は鰻登りだ。

 早速事前に申し入れして確保していたスペースに案内してもらう。

 魔法で土をならし固めて、地面を平らにする。

 コンクリートと軽鉄鉄筋を魔法で飛ばして、ベタ基礎を広げ、壁面に立ち上がりを作る。

 コンクリートの乾燥も本気の三〇倍だ。

 この為に速乾性のコンクリートを開発している。

 固まるのに反応熱が出るから注意が必要だ。

 あらかじめコンクリートには蓄熱冷暖房を設置しておく。

 固まるまで時間がかかるから、ベタ基礎を先に一〇棟分作っておく。

 一番初めに作った基礎が固まったら、栽培ユニットに向けて新たに開発したパーライト断熱パネルを組み立ててゆく。

 パーライトは黒曜石や真珠岩を高温処理して発砲化させたものだ。

 農業では土壌改良に使われるが、多孔質で軽量だ。

 空気の層が無数にあるから、天然の発砲スチロールって感じかな。

 パネルはそのパーライトを軽鉄で挟み、黒い軽鉄の表面を白く塗っている。

 夏の熱さも冬の寒さも通さない丈夫な壁材だ。

 魔法でパネルを飛ばして組み込んでゆく。

 このパネルは左右にレールが付いていて、上からスライドさせれば組み上がる仕様だ。

 パネルは立ち上がりの基礎にボルトで固定する。

 軽鉄の筋交いもきっちり取り付け強度を増し、五〇坪のキノコ栽培施設が出来上がった。

 トントン作ってその日のうちに一〇棟の栽培施設が完成した。

 ここでは十種類のキノコを栽培する。

 あとは任せたぞっ! ベルントっ!


§


 魔法を使いキノコの栽培施設を猛スピードで立ててゆくノアを一同呆然と見ている。

 急に現れたパネルがガッシャン、ガッシャン音を立てて繋がって行く。

 複数のボルトがギューンという音を立てて締めあげられてゆく。

 アイテムボックスから出す場合に、普通は手元にしか出せないのだが、ノアは20m先でも問題なく呼び出すことが出来て、取り込むことも出来る。

 ノアの異常性に慣れているベルントは疲れたように笑う。
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