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第5章 流来
第3話 門出
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連日つづくお別れの宴。
いつもおおらかなビビアナが涙ぐみエステラが慰めるという、普段とは逆の状況だ。
クローエも泣いてはいないが寂しそうな目でエステラを見ている。
頼りがいのあるアルバロが請け負う。
「王都のネスリングスは任せとけって。ノアに会ったら宜しく伝えてくれ。店の名前を広げるためにノルトライブで支店でも出して来いよ」
「イェルダさんが社内食堂を一般開放しているから必要ないんじゃないかな? それよりノアくんの近くで手伝ってあげた方が良いんじゃない」
優しいクレトが軌道修正だ。
「うん。そうする」
「――手紙……書くからね。面白い話があったら教えて」
涙目のビビアナがつっかえながらそう告げる。
「うん。ありがと」
「エステラは頑張り過ぎるから……無理しちゃダメよ」
クローエはそう言ってエステラの頭を撫でた。
「うん。分かってる」
小さいころ一番泣き虫だった妹分は成長し自分の道を選んだ。
ビビアナとクローエはそのことが嬉しくて誇らしい。
エステラのその強い眼差しは揺るぎもしない。
その光は二年半前に旅に出た誰かを彷彿とさせた。
――目指したい姿にエステラは近づけたのだ。
いよいよ明日エステラの冒険が始まる。
§
――翌日
今日は泣かないと気合を入れたビビアナはいつもの笑顔で見送りに来た。
おのおのが別れの挨拶が済むと。
エステラは声を上げた。
「みんな今までありがとう。大好き。――さようならは言わない。またねっ!」
そういって振り向かずに走り出した。
エステラはウェンから贈られた少し変わった装備を身に付けている。
腰には蝶を思わせる大二枚、小二枚の菱形状の突起がつき。
腰の左右には長ナイフを佩いている。
弓はいつでも出せるように手首に付けたリング状のアイテムボックスに収納されている。
腰の四枚羽の装備の名はタラリア。
右の長ナイフがカルトリ。
左の長ナイフがトゥミ。
メイン武器の弓の名はヴィジャヤ。
すべてエルフの神器のダウングレート品だ。
見送りに来た全員がその姿が見えなくなるまで手を振っていた。
この二年のネスリングスで変わった事がある。
御使いの箱庭と呼ばれる場所にノア直通のポストが設置されている。
そのことがネスリングスの面々にバレたのだ。
それからは決して筆まめとは言えないノアに連日届く手紙の数々。
「――緊急用って言ったのに……あれぇ? どうしてこうなった」
ヒ-ヒ-言いながら思いのほか律儀なノアは毎晩返事を書く事となった。
そしてノアからもたらされる数々の食材やダンジョン内の美しい景色。
ノアが写真と呼んだ風景を切り取ったような画像がネスリングスみんなの楽しみだ。
離れているのに近くにいるような。
そんな気分で見た事のない世界を生きるノアの人生の一部を共有する。
そして――納得した。
ノアがどうしてそこまで世界を見たいと言ったのか。
あのとき、ノアだけが世界の広さと美しさを知っていたのだ。
止められるはずがない。
自分たちがノアから分けてもらった世界の一部ですらこれほど胸踊りわくわくするのだ。
だから……。
ノアの人生に寄り添うなら決断するしかないと分かった。
その決断をした仲間は今走り出した。
だから全員が願う。
――ただ真摯に。
エステラがノアの人生の一部になれるように。
いつもおおらかなビビアナが涙ぐみエステラが慰めるという、普段とは逆の状況だ。
クローエも泣いてはいないが寂しそうな目でエステラを見ている。
頼りがいのあるアルバロが請け負う。
「王都のネスリングスは任せとけって。ノアに会ったら宜しく伝えてくれ。店の名前を広げるためにノルトライブで支店でも出して来いよ」
「イェルダさんが社内食堂を一般開放しているから必要ないんじゃないかな? それよりノアくんの近くで手伝ってあげた方が良いんじゃない」
優しいクレトが軌道修正だ。
「うん。そうする」
「――手紙……書くからね。面白い話があったら教えて」
涙目のビビアナがつっかえながらそう告げる。
「うん。ありがと」
「エステラは頑張り過ぎるから……無理しちゃダメよ」
クローエはそう言ってエステラの頭を撫でた。
「うん。分かってる」
小さいころ一番泣き虫だった妹分は成長し自分の道を選んだ。
ビビアナとクローエはそのことが嬉しくて誇らしい。
エステラのその強い眼差しは揺るぎもしない。
その光は二年半前に旅に出た誰かを彷彿とさせた。
――目指したい姿にエステラは近づけたのだ。
いよいよ明日エステラの冒険が始まる。
§
――翌日
今日は泣かないと気合を入れたビビアナはいつもの笑顔で見送りに来た。
おのおのが別れの挨拶が済むと。
エステラは声を上げた。
「みんな今までありがとう。大好き。――さようならは言わない。またねっ!」
そういって振り向かずに走り出した。
エステラはウェンから贈られた少し変わった装備を身に付けている。
腰には蝶を思わせる大二枚、小二枚の菱形状の突起がつき。
腰の左右には長ナイフを佩いている。
弓はいつでも出せるように手首に付けたリング状のアイテムボックスに収納されている。
腰の四枚羽の装備の名はタラリア。
右の長ナイフがカルトリ。
左の長ナイフがトゥミ。
メイン武器の弓の名はヴィジャヤ。
すべてエルフの神器のダウングレート品だ。
見送りに来た全員がその姿が見えなくなるまで手を振っていた。
この二年のネスリングスで変わった事がある。
御使いの箱庭と呼ばれる場所にノア直通のポストが設置されている。
そのことがネスリングスの面々にバレたのだ。
それからは決して筆まめとは言えないノアに連日届く手紙の数々。
「――緊急用って言ったのに……あれぇ? どうしてこうなった」
ヒ-ヒ-言いながら思いのほか律儀なノアは毎晩返事を書く事となった。
そしてノアからもたらされる数々の食材やダンジョン内の美しい景色。
ノアが写真と呼んだ風景を切り取ったような画像がネスリングスみんなの楽しみだ。
離れているのに近くにいるような。
そんな気分で見た事のない世界を生きるノアの人生の一部を共有する。
そして――納得した。
ノアがどうしてそこまで世界を見たいと言ったのか。
あのとき、ノアだけが世界の広さと美しさを知っていたのだ。
止められるはずがない。
自分たちがノアから分けてもらった世界の一部ですらこれほど胸踊りわくわくするのだ。
だから……。
ノアの人生に寄り添うなら決断するしかないと分かった。
その決断をした仲間は今走り出した。
だから全員が願う。
――ただ真摯に。
エステラがノアの人生の一部になれるように。
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