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第4章  飄々

第17話  場面

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 王民事業に戻ったイェルダとコンラートは先程までのノアとの打ち合わせを詰めるために会議をする。

「ノアさんの要望は女性の職業農家か農家希望の職業市民の参加でしたね? コンラートさん当てはありますか?」

「はい。以前よりノアさんに要望されていましたので準備はしています。数名候補がいますがこの際ですから選考せず全員をノアさんに預けるのも手ではないですか? あのトラクターゴーレムがあれば土魔法が使えようが使えまいがそれこそ力も何も関係なく農業に参加できますから」

「そうですね。ノアさんに打診してみましょうか。いずれにしても次回は五日後の安息日ですから」

「雨の日は休みでそれを含めて持ち回りで週休二日ですが、雨の日はともかく。農家の四人が休みたがりません。その件はノアさんに伝えても大丈夫でしょうか?」

「私の方からそれとなく伝えておきます。以前にも今は過渡期だから仕方がないと言っていましたので許容してもらえると思います」

 コンラートは安堵したように息をついた。

「それは良かった。当面は水田の開墾地の耕耘と”レンゲ”の種撒きを優先と指示をもらいましたのでそのように。ノアさんの予定では六日で開墾完了で随時”レンゲ”の種撒きを実施ですね」

「はい。そのようにお願いします。これからのノアさんの計画書ですとトラクターゴーレム一台で20haを耕作管理。のべ四台で80haを稼働させる。……今日のあの建物が20ha用であと三軒建設予定だと書いてあります。それとため池ですか? ――ビオトープとも書いてありますが……」

 困惑したようにコンラートが言葉を続ける。

「そうですね。生物の多様性がどうとか言ってましたが、……浅薄な私にはさっぱりで早く農業部門の職員に代わってもらいたいくらいです」

「――農業部門の職員なら分かるんでしょうか? ……あの建物は王都の農業部門より機能が充実していますよ。エーギル先生からもノアさんの近くは大変だと聞いていましたが、聞くと見るとは大違いですね」

「人の目がなければ自重しなくなったのでしょうか?」

 すこし恐ろし気にコンラートは言う。

「――というよりも身内扱いしてくれているのでしょう。ノアさんは身内には甘いですから、農家の四人とこれから関わる人たちが快適に過ごせるように場所を整えてくれたのです。それでも数年かかると思っていた100haの荒れ地が二日で開墾可能な更地になるとは思っていませんでした」

「全くです。王都でも目を見張る成果を度々起こしていましたが、今日見たものはそれを超えます」

「そうですね。ですが騒ぎ過ぎてはいけません。ノアさんは名を残したがらない偉人ですから。あの方の見ているもの感じていることを教えてもらってより良い組織と社会を作ってゆきましょう」

 イェルダはエーギルから忠告された。

 エルフの方々がノアをあまり敬いすぎると消えたようにいなくなるぞと言っていたと。

 迅速果断なノアが思い立ってどこかへ旅立ってしまわないように、王民事業体イーディセルのまとめ役としてイェルダは粛々と支所内も引き締める。


§


 ノルトライブのギルドである噂が広がっている。

 ここ二日姿を見せないノアの噂だ。

 ダンジョンで襲った十九人を開放したのは、ダンジョン内で自分で落とし前を付けるためだと。

 ギルド長よりきつい一喝があっただけで実質おとがめなし。

 ダンジョンで襲われたらきっちりと処罰するか決闘で決着をつけるのが習わしだ。

 だが決闘を放棄したノアの取れる罰はそれしかない。普通ならあり得ない状況がその信ぴょう性を高めていた。

 侵不しんふはギルドが罰することでは気が済まなかったらしい。

 その復讐の権利ギルドでも『侵不おかせず』だ。

 襲った十九人も熟練者で度胸もある冒険者だが、何をされたか分からずに瞬殺だ。

 彼らはもうノアと敵対したくない。

 そうなるとどういう事が起きるか。
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