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第3章 進窟
第31話 終章Ⅱ ~種は広がる~
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ネビルがネスリングスにスタッフとして初めて行くとオーナーは同い年の少年だという。
好きに呼べというので柄ではないが礼儀としてノア君と呼んだ。
ずっとトウモロコシを焼いて売り、ネスリングスの旨い賄いを食べて余った焼きトウモロコシを貰って帰る。
そんなある日ノアがいつも同じで飽きるだろうと焼き鳥のタレと鳥を持ってきた。
タレの作り方を教わり、継ぎ足しながら塩とタレの焼き鳥を部位ごとに串に刺し売る日々に変わる。
「肉は縮む方向が同じだから串に刺すときは肉の筋は同じ方向で、肉は大きさの違いは串差しの配置で調整しろよ。薄い肉から刺して、一番上の肉は大きいのにしろよ。一口目にガツンとインパクトを与えるのが粋ってものだ。串差し三年焼き一生っていうぐらいだからな。刺した串は手で押さえて厚みを薄くする。火入りが良くなる為だ」
ある時は肉の串焼きを売ってくれと頼まれ、いつの間にか少しずつ作れる料理が増えていった。
冬の寒い時期はおでんやすいとんなど汁物を日替わりで提供し、変り種だとロールキャベツっていうのもあった。
夏にはかき氷やシャーベット。
雨の日も風の日も冬も夏も外で販売し続けた。
王民事業体でネスリングスのメンバーが教えた料理人。その1期生の卒業が間近に近づくとレンタル方式の屋台を売り出すと説明を受ける。
屋号は巣を意味するネスト。
ネスリングスのセカンドブランドだという。
「ネビル。ネストの一号屋台はお前にやってもらいたい。屋台の事はお前が一番知っている。頼めるか?」
ノアの言葉に否やはなかった。
ネストの代表にはレオカディオが就くという。
あと1年で成人を迎える頃に同い年の少年が言い出した。
大体騒動の中心には少年がいる。
「このままじゃ。王都の住居が足りなくなります。集合住宅を作りましょう。ついでに文化と食事のテーマパークを王都に建てますよ」
王都内の土地は王国のものだ。王国の許可が下りれば国民に拒否権はない。
手伝いに行ったネビルが見たのは、ノアによってとんでもない速さで解体される住宅。
目立つでしょ! としかるパオラと不服そうなノア。
解体業者以外は人払いがなされて緘口令の敷かれた現場で自重をしないノア。
壁が一瞬で消え、レンガが舞い飛び5階建ての集合住宅が1日で出来る。
あきれるパオラを尻目に今日中にある程度仕上げないと寝る場所に困るでしょうと真顔のノア。
更地に成った場所に建設業者が建物を建ててゆく。
たまにノアが手伝いに行くと異常に進む建造物。
出来上がったのはフードコートと屋台専用の広場。開放的なショッピングモール。
ウォータースライダー付きの屋内温泉プール。
演劇やコンサートが可能な演芸場の建っている複合施設だ。
受理されなかったフードコートをノアは自費で作り出した。
フードコートの目玉料理にはラーメンが提供される。
そして風呂文化への一歩としてわざわざ開発した温泉の魔道具を設置する。
ノアは地球の有名な演劇の筋を本に起こし、あぶれていた演出家や声楽家、役者への舞台を用意した。
そして、ネビルが成人を迎えるとネストの代表がいつの間にか自分になっていた。
(ノア君。無茶ぶりにも程があるよ。ケンさんは良く平気な顔で受けきるよね)
「代表! 味のチェックお願いします」
ネストのメンバーのすいとんの味チェックでネビルの腹はもうタプンタプンだ。
ネビルはノアの言葉を思い出す。
「屋台の全てをお前に伝えた。ネストの事は頼んだぞ」
(師匠で恩人の言いつけだからな。やるだけやるさ)
§
師匠のおっさんと呼ばれたバルサタールは孫からのお願いに困惑する。
自分の弟子もどきが作り出した演劇場で『終戦の英雄』の劇が人気のようでせがまれてる。
孫は主役の絶界が誰か知らず、息子は苦笑いで助け船を出してくれない。
嫁も笑うだけで状況を楽しんでる。
若き日の体の弱い細君は子供を2人産むと肝っ玉が太くなり今では尻に敷かれてる。
(まぁ。こっちから潜り込んでやったんだが、男親は大事な時だけ発言すればいい。その方が家が回るからな)
若き日の絶界が単身で20万の帝国兵に喧嘩を売った理由。
体の弱い嫁がやっと授かった子供にストレスで悪影響を及ぼさないように。
唯それだけだ。
愛する嫁と授かった我が子の為に辺境伯の治める境界都市の城壁を飛び降り20万の兵にケンカを売り2000人近い兵を食い破った。
「終戦の英雄」の演劇は特に女性に人気の演目だという。
絶界の名を世に知らしめた逸話であり最後の闘いの物語でもある。
子が生まれ先天的な病気が見つかり、即座に王都へ引っ越し引退したからだ。
それゆえに絶界の名は剣聖に届いたはずの男。未完の大器と称される。
だが、――それは事実とは異なる。
(嫁も息子も自分のせいで俺が何かを諦めたなんて思わせられないからな)
お父さんは大変だ。
王都でも研鑽を積み、人類の頂点にのみ許されるその頂きに手が届いた。
バルサタール。
その男の職業は――――剣聖だ。
好きに呼べというので柄ではないが礼儀としてノア君と呼んだ。
ずっとトウモロコシを焼いて売り、ネスリングスの旨い賄いを食べて余った焼きトウモロコシを貰って帰る。
そんなある日ノアがいつも同じで飽きるだろうと焼き鳥のタレと鳥を持ってきた。
タレの作り方を教わり、継ぎ足しながら塩とタレの焼き鳥を部位ごとに串に刺し売る日々に変わる。
「肉は縮む方向が同じだから串に刺すときは肉の筋は同じ方向で、肉は大きさの違いは串差しの配置で調整しろよ。薄い肉から刺して、一番上の肉は大きいのにしろよ。一口目にガツンとインパクトを与えるのが粋ってものだ。串差し三年焼き一生っていうぐらいだからな。刺した串は手で押さえて厚みを薄くする。火入りが良くなる為だ」
ある時は肉の串焼きを売ってくれと頼まれ、いつの間にか少しずつ作れる料理が増えていった。
冬の寒い時期はおでんやすいとんなど汁物を日替わりで提供し、変り種だとロールキャベツっていうのもあった。
夏にはかき氷やシャーベット。
雨の日も風の日も冬も夏も外で販売し続けた。
王民事業体でネスリングスのメンバーが教えた料理人。その1期生の卒業が間近に近づくとレンタル方式の屋台を売り出すと説明を受ける。
屋号は巣を意味するネスト。
ネスリングスのセカンドブランドだという。
「ネビル。ネストの一号屋台はお前にやってもらいたい。屋台の事はお前が一番知っている。頼めるか?」
ノアの言葉に否やはなかった。
ネストの代表にはレオカディオが就くという。
あと1年で成人を迎える頃に同い年の少年が言い出した。
大体騒動の中心には少年がいる。
「このままじゃ。王都の住居が足りなくなります。集合住宅を作りましょう。ついでに文化と食事のテーマパークを王都に建てますよ」
王都内の土地は王国のものだ。王国の許可が下りれば国民に拒否権はない。
手伝いに行ったネビルが見たのは、ノアによってとんでもない速さで解体される住宅。
目立つでしょ! としかるパオラと不服そうなノア。
解体業者以外は人払いがなされて緘口令の敷かれた現場で自重をしないノア。
壁が一瞬で消え、レンガが舞い飛び5階建ての集合住宅が1日で出来る。
あきれるパオラを尻目に今日中にある程度仕上げないと寝る場所に困るでしょうと真顔のノア。
更地に成った場所に建設業者が建物を建ててゆく。
たまにノアが手伝いに行くと異常に進む建造物。
出来上がったのはフードコートと屋台専用の広場。開放的なショッピングモール。
ウォータースライダー付きの屋内温泉プール。
演劇やコンサートが可能な演芸場の建っている複合施設だ。
受理されなかったフードコートをノアは自費で作り出した。
フードコートの目玉料理にはラーメンが提供される。
そして風呂文化への一歩としてわざわざ開発した温泉の魔道具を設置する。
ノアは地球の有名な演劇の筋を本に起こし、あぶれていた演出家や声楽家、役者への舞台を用意した。
そして、ネビルが成人を迎えるとネストの代表がいつの間にか自分になっていた。
(ノア君。無茶ぶりにも程があるよ。ケンさんは良く平気な顔で受けきるよね)
「代表! 味のチェックお願いします」
ネストのメンバーのすいとんの味チェックでネビルの腹はもうタプンタプンだ。
ネビルはノアの言葉を思い出す。
「屋台の全てをお前に伝えた。ネストの事は頼んだぞ」
(師匠で恩人の言いつけだからな。やるだけやるさ)
§
師匠のおっさんと呼ばれたバルサタールは孫からのお願いに困惑する。
自分の弟子もどきが作り出した演劇場で『終戦の英雄』の劇が人気のようでせがまれてる。
孫は主役の絶界が誰か知らず、息子は苦笑いで助け船を出してくれない。
嫁も笑うだけで状況を楽しんでる。
若き日の体の弱い細君は子供を2人産むと肝っ玉が太くなり今では尻に敷かれてる。
(まぁ。こっちから潜り込んでやったんだが、男親は大事な時だけ発言すればいい。その方が家が回るからな)
若き日の絶界が単身で20万の帝国兵に喧嘩を売った理由。
体の弱い嫁がやっと授かった子供にストレスで悪影響を及ぼさないように。
唯それだけだ。
愛する嫁と授かった我が子の為に辺境伯の治める境界都市の城壁を飛び降り20万の兵にケンカを売り2000人近い兵を食い破った。
「終戦の英雄」の演劇は特に女性に人気の演目だという。
絶界の名を世に知らしめた逸話であり最後の闘いの物語でもある。
子が生まれ先天的な病気が見つかり、即座に王都へ引っ越し引退したからだ。
それゆえに絶界の名は剣聖に届いたはずの男。未完の大器と称される。
だが、――それは事実とは異なる。
(嫁も息子も自分のせいで俺が何かを諦めたなんて思わせられないからな)
お父さんは大変だ。
王都でも研鑽を積み、人類の頂点にのみ許されるその頂きに手が届いた。
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