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第3章 進窟
第17話 謝罪
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ノアが出て行った執務室でギルドマスターは先程の決闘を再考する。
ギルドの情報によると決闘相手のシュバインは半年前にB級に上がったばかりとは言え、相棒のバステンとの連携は手堅く順調にクエストとダンジョン階層探査を重ねて23歳の若さでB級にたどり着いた。
ノルトライブでも中堅同等の力量を持っていた。
(それを手加減して一蹴――あいつの弟子もまた、規格外ってことだ。あの決闘をみて喧嘩を売るアホもいないだろう)
そして、決闘後に見せた素早い身のこなし、何の意味があったのかは想像出来ないが、決闘での動きが相手に合わせていたのが丸分かりの段違いの速さだった。
ノアを見送り戻って来たエレオノーラが苦言を呈す。
「ギルマスが無理難題を押し付けたせいで、ノアさんに仕返しされましたね? 今後は自重して下さい」
「ふんっ! どうせアールヴの委任紋章を出されたら、小僧の要望を王国ギルドは受けざるを得ない。同じだ」
王国の貴族とは協力することもあるギルドだが、その運営は分権が保障されている。名目上は領主とギルドは同格扱いだ。領主といえどもギルドへの命令権は本来ない。
指揮系統の1本化として領主を尊重し、ギルドが謙って立てているのだ。その事を領主も理解している。
だがギルドにとってエルフは別格だ。
そのエルフで王国内に最上の権威が、『アールヴ』である。
アールヴの委任紋章が出されれば、冒険者ギルドは最大限誠意と努力を示さねばならない。
王国の冒険者ギルド設立には1人の賢者の功績が大きい。その賢者の生み出した組織概要と規範が今のギルドの礎となった。
ギルドが用いる数々の魔道具。
ひとつはB級から持つことが許される生死の報せと手放すとギルドで認識出来るように組み込まれた魔道具。
あるいは遠距離のギルドと一時的に連絡を取る魔道具。
そしてギルド周辺に障壁を張りスタンピードから一般市民を守る魔道具。
数々のギルド運営に組み込まれた魔道具の開発には賢者が協力を受けたエルフの技術により成し遂げられたとされている。
これらの魔道具により救われた命ははかり知れない。
ギルドは命の恩を忘れない。
エルフには最大限の敬意を感謝を。
初代のギルド統括になった賢者の言葉だ。
そしてギルドの条文の一番初めに書かれた言葉でもある。
真偽は不明だが、一説には賢者は協力を受けたエルフの弟子だったと言われている。
ため息をついてエレオノーラは言葉を続ける。
「それでもです。ノアさんがアールヴの委任紋章を出してくれなければ困ったことになりましたよ。彼への決闘権を放棄させる事。それを全ギルドに認めさせるのには調整が難航しました。越権行為ですからね。」
「あぁ。分かってる。借り一つだな。あの小僧いたずらが成功したみたいなムカつく笑みだったな。腹が立つが逃げ道を用意してくれていたんなら、借りとして甘んじて受けよう。戦う姿も見れたしな。想像とは違ったが」
「絶界の弟子は棒使いと冒険者達が騒いでいましたが、……先ほどのノアさんの様子ですと”棒”は禁句のようですが、かん口令を敷きますか?」
ギルドマスターは頬を吊り上げるように笑うと意趣返しだと言わんばかりの表情で言った。
「人の口に戸は立てられぬからな。放っておけ!」
エレオノーラは処置無しとばかりに再びため息をついた。
◇
ダンジョンにサクッと行って6階の転移柱に触って戻った。
なんか知らんが今日は5階層でモルモーは1体もいない。
6階に行った報告をエレンさんにして、明日はダンジョン入場は休む旨を伝えた。
エレンさんに戻したのは、エレオノーラさんといったら睨まれて返事をしてくれなかったからだ。
あの試合に勝ったからエレンさん呼びに戻してほしいとお願いされたので、また問題があったらその時は考えますよと念を押してそれに戻した。
まぁ。エレンさんが悪いわけでも無いしね。
治療室でシュバインが目を覚ましたというので行ってみる。
一応ノックをして返答を待って入室。
部屋には治癒士の人が机に向かって座り、ベッドに横になるシュバイン。
その隣に座るバステンさんがいた。
「兄さん。わざわざ悪かったな。ほらシュバイン起き上がれ」
そう言ってバステンさんが手を貸して体を起こさせる。
「無理に起きなくてもいいですよ。少し聞きたい事があるので伺ったまでですので」
「いや。大丈夫だ。それよりも、詫びさせてくれ。因縁をつけてすまなかった」
そういってシュバインは頭を下げた。
人相まで変わって別人みたいだな。
「もう気は済みましたか?」
「あぁ。というよりも何であんなに兄さんに執着していたのかが、もう分からないんだ」
「――記憶が無いと?」
「いや記憶はある。俺がしでかしたことも覚えている。だが言い訳じみているが何であんなに怒っていたのか理解が追い付かない。兄さんを見たのは昨日が初めてだったしな」
「そうなんだよ。兄さん。シュバインのヤツはここ3日ほど人が変わったようになってな」
「4日前までは今と同じ常識的な態度だったとして、3日前からどう変わったんですか?」
「怒りと執着心が急に強くなったんだと思う」
「そうだな。受付のきれい処を俺の女だとかなんとか言い出して、始めは冗談かと思ったぜ」
そうバステンさんが弱り顔で補足した。
ギルドの情報によると決闘相手のシュバインは半年前にB級に上がったばかりとは言え、相棒のバステンとの連携は手堅く順調にクエストとダンジョン階層探査を重ねて23歳の若さでB級にたどり着いた。
ノルトライブでも中堅同等の力量を持っていた。
(それを手加減して一蹴――あいつの弟子もまた、規格外ってことだ。あの決闘をみて喧嘩を売るアホもいないだろう)
そして、決闘後に見せた素早い身のこなし、何の意味があったのかは想像出来ないが、決闘での動きが相手に合わせていたのが丸分かりの段違いの速さだった。
ノアを見送り戻って来たエレオノーラが苦言を呈す。
「ギルマスが無理難題を押し付けたせいで、ノアさんに仕返しされましたね? 今後は自重して下さい」
「ふんっ! どうせアールヴの委任紋章を出されたら、小僧の要望を王国ギルドは受けざるを得ない。同じだ」
王国の貴族とは協力することもあるギルドだが、その運営は分権が保障されている。名目上は領主とギルドは同格扱いだ。領主といえどもギルドへの命令権は本来ない。
指揮系統の1本化として領主を尊重し、ギルドが謙って立てているのだ。その事を領主も理解している。
だがギルドにとってエルフは別格だ。
そのエルフで王国内に最上の権威が、『アールヴ』である。
アールヴの委任紋章が出されれば、冒険者ギルドは最大限誠意と努力を示さねばならない。
王国の冒険者ギルド設立には1人の賢者の功績が大きい。その賢者の生み出した組織概要と規範が今のギルドの礎となった。
ギルドが用いる数々の魔道具。
ひとつはB級から持つことが許される生死の報せと手放すとギルドで認識出来るように組み込まれた魔道具。
あるいは遠距離のギルドと一時的に連絡を取る魔道具。
そしてギルド周辺に障壁を張りスタンピードから一般市民を守る魔道具。
数々のギルド運営に組み込まれた魔道具の開発には賢者が協力を受けたエルフの技術により成し遂げられたとされている。
これらの魔道具により救われた命ははかり知れない。
ギルドは命の恩を忘れない。
エルフには最大限の敬意を感謝を。
初代のギルド統括になった賢者の言葉だ。
そしてギルドの条文の一番初めに書かれた言葉でもある。
真偽は不明だが、一説には賢者は協力を受けたエルフの弟子だったと言われている。
ため息をついてエレオノーラは言葉を続ける。
「それでもです。ノアさんがアールヴの委任紋章を出してくれなければ困ったことになりましたよ。彼への決闘権を放棄させる事。それを全ギルドに認めさせるのには調整が難航しました。越権行為ですからね。」
「あぁ。分かってる。借り一つだな。あの小僧いたずらが成功したみたいなムカつく笑みだったな。腹が立つが逃げ道を用意してくれていたんなら、借りとして甘んじて受けよう。戦う姿も見れたしな。想像とは違ったが」
「絶界の弟子は棒使いと冒険者達が騒いでいましたが、……先ほどのノアさんの様子ですと”棒”は禁句のようですが、かん口令を敷きますか?」
ギルドマスターは頬を吊り上げるように笑うと意趣返しだと言わんばかりの表情で言った。
「人の口に戸は立てられぬからな。放っておけ!」
エレオノーラは処置無しとばかりに再びため息をついた。
◇
ダンジョンにサクッと行って6階の転移柱に触って戻った。
なんか知らんが今日は5階層でモルモーは1体もいない。
6階に行った報告をエレンさんにして、明日はダンジョン入場は休む旨を伝えた。
エレンさんに戻したのは、エレオノーラさんといったら睨まれて返事をしてくれなかったからだ。
あの試合に勝ったからエレンさん呼びに戻してほしいとお願いされたので、また問題があったらその時は考えますよと念を押してそれに戻した。
まぁ。エレンさんが悪いわけでも無いしね。
治療室でシュバインが目を覚ましたというので行ってみる。
一応ノックをして返答を待って入室。
部屋には治癒士の人が机に向かって座り、ベッドに横になるシュバイン。
その隣に座るバステンさんがいた。
「兄さん。わざわざ悪かったな。ほらシュバイン起き上がれ」
そう言ってバステンさんが手を貸して体を起こさせる。
「無理に起きなくてもいいですよ。少し聞きたい事があるので伺ったまでですので」
「いや。大丈夫だ。それよりも、詫びさせてくれ。因縁をつけてすまなかった」
そういってシュバインは頭を下げた。
人相まで変わって別人みたいだな。
「もう気は済みましたか?」
「あぁ。というよりも何であんなに兄さんに執着していたのかが、もう分からないんだ」
「――記憶が無いと?」
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