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第3章  進窟

第8話  出窟

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 5階層の十字路で20匹のモルモーに取り囲まれる俺。

 ちょっと待て! なんで5階で難易度が爆上がりなんだ!

 そんなの要覧に書いてなかったぞ!

 超スピードでかっとんで、仲間の体を足場に急に方向転換して左右から襲い掛かるとか、そっちが有利過ぎるでしょ!

 なんだそのジェットでストリームな素敵アタックは、俺も混ぜてくれ!!

 今の俺はいなすのと躱すのに神経を使っいながら、コツコツ当てて数を減らしてゆく。

 背後から飛び掛かってくるモルモーの首に槍を突き刺すと爆散し煙が広がり立ちどころに消える。

 よしっ! 10匹目! 残り10!

 モルモーが囲うように距離を取って周りをウロウロしだした。

 あれ、チャムとカロが出てきてる。心配してくれたのかな?

 大丈夫! すこし油断して焦ったが、まだ余裕はある。

 奥の手も使ってないしね。

 粛々と殲滅をかけて数を減らしてゆく。さすが狼型だけあって、集団での攻撃が上手い。

 スタンピードのモンスターを見るにもっと乱暴で粗野なものを想像していたが、知能を感じるモンスターが多いね。

 怪鳥ブルーカ然り、カマキリ&コウモリのエンプーサ然りだ。

 チョンチョニー? あんなジタバタ飛ぶ奴が何か考えてる訳ねぇよ! 泳ぐウミウシを思い出したからな。

 よしっ! ラス2だ。

 悪いが実験に付き合ってもらう。
 
 俺は姿消しの腕輪を使い、姿を消して、気配を可能な限り消した。

 ――やっぱり犬型だと匂いでいる場所が分かるみたいだな。

 俺がいる場所を見つめている。

 ――音にも敏感なようだ。移動しても視線がついてきた。

 次の実験だ。

 『昏倒くん』を当てる――効かないか……モルモーは何かを振り払うように首を振っているが、気を失うことはない。

 ダメ元で『電撃くん』投てき! そいやっ!

 ――あれ? 死んだ。……電気が弱点??

 戦闘終了と共に地面に現れるドロップアイテム。

 爪とかキバとか皮とかが現れた。この皮使い道あるのかね?

 さてどうしよう。今は5階の中ほどだ。

 本当は6階入り口の転移の柱に触って帰ろうと思っていたんだが、さすがに少し疲れた。

 初日だしサボるか……。

 昨日ほぼ2週間の長旅でここに着いたばかりだ。

 週に2日は休みを取って家の魔改造も義務付けられているからな。――自分に!

 俺の遊び心とワクワクが止まらない。嬉しくて震えるがくる程だよ!

 何しろ学舎住まいで際どいこと出来なかったからな。

 何故か怒る人がいるし、パオラさんっていうんだが。。。

 学舎には入らないのに、俺を警護してる人から聞いているんだろう。

 ウェン師仕込みの世界最先端の魔道具と日本の文化の融合だ!!

 混ぜたらきっと危険で危ないぞっ! 楽しみぃ~!

 ソーラーパネル?

 バカだな付けるに決まってるじゃないか! なんなら一番初めに付けるね! ふっふっふっ。

 まぁ。実際はPCとプリンター以外の必要なものは魔道具で賄えてしまうんだが。

 そして、ネットに繋がらないPCはあまり役に立たないって言う現実がある。

 表計算? 数字の表記がこっちは違う。

 文章ソフト? 言語が違う……やっぱいらないか? 電気。

 ハイテンションで進む前に少し冷静に考えよう。

 大人たちに支配されるなと叫んでいる心を落ち着けてから付けるかどうか考えよう。

 帰りの5階入り口までの通路にはモンスターは出現しなかった。

 5階には冒険者は誰もいない。あんまり稼げない階層なのかな?

 俺は生まれて初めて転移を体験した。

 広がった身体が1点に集まっていくような懐かしい感覚で転移する。

 転移先は8畳程の個室で扉が閉まっていた。

 入り口とは別の場所が出口らしい。

 後で聞いたら、個室の扉が閉まっていなかったり、誰かいたりする部屋には転移しないそうだ。

 しかも出口となる個室も20部屋あるそうだ。

 なんたるホスピタリティ!!

 ダンジョンを出るときまた独特の感覚を味わう。

 あれ? これって――そうか。朝は入るから分からなかったんだ。
 
 出るときの濃い空気の幕に後ろから押し出される感覚はあの時と一緒だ。
 
 でも……どういうことだ??

 物思いに耽りながらギルドに向かう。
 
 さっきの兄ちゃんがいたら面倒だなとキョロキョロしながらギルドに入る。

 エレンさんの空いてるカウンターに向かい話しかける。

「ノアさん無事戻られて安心しました。今日の首尾は如何ですか?」

「えぇ。初日なんでちょっと早めに切り上げました」

「そうですか、ご英断だと思いますよ。それで何階まで攻略したんですか?」

「はい。5階の中程までです」

「――えっ? ――なんと?」

「? 5階の中程までですが何か?」

「……さすがですね」

 そう言うとエレナさんはカウンターを滑るように飛び越えて俺の手を掴むと、ついて来いと歩き出した。

「個室へ向かいます」

 えぇっ? ――またこのパターン!
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