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第2章 氾濫
第18話 覚悟
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よし! ――次は村人の体調の管理だ。
この村は明日から大変になる。残念だが俺にはやる事があるから手伝えない。
村人にはこの困難に万全で対処してもらいたい。
逃げる途中で転んで擦りむいたとかいう軽いのから、腰痛や骨折なども片っ端から治していく。
俺の治癒魔法はヘナチョコヒールしかないが、俺のお師匠さんは世界最高峰の調合師でもあるウェン師だからね。
――俺が出来る万全を提供する。
次だ!
見に行くと村の畑は踏み荒らされて、育てていた野菜も踏み潰されていた。
――ふざけやがって!!
いつものように魔法を使って2haを耕す。
1haには畝を立てて麦を撒く、種は魔法で飛ばすから手間は無い。
麦は日本で一般的なドリル撒きだ。
ドリル撒きとは、20~30cmの細畝を立てて播種面積を増やす事により、収量を確保する方法だ。
この手法により畝間が狭くなるが、全面播種より種の量を減らせて効率的だ。
アイテムボックスから出した種麦が圃場全体に広がり縦列ごとに地面に突き刺さる。
もう1haにはトウモロコシを撒いた。
もう慣れたもんだよ。
目をつぶっていてもやれる位さ。
いつもの通り通常の畝を立てて、2条撒きだ。株間が35cmで畝間が45cmの千鳥植えで仕立てる。
ここに撒いたのは、地球の世界三大穀物の内の2つだ。
本気の30倍速栽培で、麦なら8日~9日。
トウモロコシに至っては3日で収穫だぞ。
前に真祖のキュウリが冬に生ったとい言ったが、おかしいのは真祖じゃなくて俺の畑だった。
夏でも白菜が育ち、冬でもピーマンが生る。
アグロノミストを標榜した俺だが、どうやらまともな農業は営めないらしい。
モルトが三角帽にサロペット風ショートパンツのいつもの格好で戻って来た。
ラー♪ ラー♪ と言いながら意思を伝えてくれる。
なになに? レオさんが支援は任せろって言ってたって? そうか良かったよ。
え? ――モルトがこの畑の管理も任せてって言っている。
いつもすまんな。モルト。
――頼りにしている。
良し! 次!
明日の分のスープを仕込む、シチューにしようかと思ったが、大鍋3つ分は必要だ。
焦げ付きやすいので、普通のスープにしよう。
その代わり具沢山だ。
明日の再加熱分を考慮して、サッと茹でて火を落とす。
俺が下準備をしていると、手伝いを買って出てくれる人がいた。
寝る場所も無いのに前向きになれる人間の強さを感じる。
そして! ──次!
日本のテントと寝袋を錬金召喚で呼び出す。
それを用意しながら、立て方を説明した。
何とか世帯数分は用意して、寝袋も全員分賄えた。
これで、雨が降っても大丈夫だろう。
衣食住足りてというが、この世界の人達は衣食住足らずして礼節を知っている気がする。
神が身近にいるせいか、天罰を受けて苦しい時期を助け合いながら生き延びた為かは分からない。
少なくとも地球人よりはよっぽど善良だ。
そして同じ地球人の俺とも意識が違うってことだね。
――そして最後!
トウモロコシが収穫できる3日後までの食料だ。
焼けなかった小麦は村中のをかき集めたがその量は心もとない。
何しろ必要なのは100人分だ。
気が狂いそうな程に飢えた俺の目の前で同じ思いをする人間なんて許容できない。
味はともかく少なくとも満腹でいてもらわないとね。
それが農家を授かった俺の役目でしょ?
だってさ野菜で食を支えるのが農家の本懐ってもんだ。
俺のじーさまとばーさまに誓って全力を尽くすぞ。
――――いでよっ!
――――500kgの種ジャガイモ。
……それ種って言ってただろだって?
食えるもんは何だって食べたらいいだろ?
――今は緊急事態だ。
俺は死の草原の毒草だって食べてみたんだぜ?
真っ黒な布のシートをかけて、日に当てないように説明しておく。
この村は3日凌げば、トウモロコシも実る。
支援がいつ届くかは分からないが、食べる物があれば人は生きていける。
何しろ農家は生命の糧である野菜を生み出す職業だ。
明日を生きられる糧があることはきっと村人の希望になる。
希望とは過去には存在しない。
――未来そのものだ。
準備を終えたのは夜も遅い時間になっていた。
それを終えた俺はタープテントでようやく眠りについた。
§
その男は仲間たちと合流する。
「いいか、ノアという小僧は姿を隠せるが、気配までは消せない。冷静に囲んでしっかりと殺せ。スタンピードを起こせば、テイムしている風颶に対処させる筈だ」
「――信じられない事に2匹の風颶をテイムしているようだ。複数のスタンピードを発生させて、風颶を分散させろ。風颶が離れた刻が殺すチャンスだ」
頷く周りの仲間達。
「こちらの計画も知られているようだ。それなら、それを利用して罠に嵌めるぞ。俺たちの長年の計画を台無しにした奴だ。しっかりと落とし前をつけるぞ」
そう言って男は不敵にニヤリと笑った。
◇
――――翌朝
俺は薄暗い朝靄の中で出発する。
誰だ? ケンちゃんに危ないから時速40キロ以上出すなって言ってたのは?
何処のバカだ。
折角だから最大車速を搭載させたいって言ってたのは?
クラッチ機構も未開発で、トルクの回転数が上がると少しづつ下げないと止まらない。制御不能の我儘ボディ。
……制動距離は1キロで止まれればいいな。。。
何たって持ち主が阿保なんだから時速100キロ出せるなら、使っちまうに決まってるだろう! 馬鹿野郎!
――俺は覚悟を決めている。
さっさとあいつらに追いつくぞ。
この世界最速の乗り物で!
この村は明日から大変になる。残念だが俺にはやる事があるから手伝えない。
村人にはこの困難に万全で対処してもらいたい。
逃げる途中で転んで擦りむいたとかいう軽いのから、腰痛や骨折なども片っ端から治していく。
俺の治癒魔法はヘナチョコヒールしかないが、俺のお師匠さんは世界最高峰の調合師でもあるウェン師だからね。
――俺が出来る万全を提供する。
次だ!
見に行くと村の畑は踏み荒らされて、育てていた野菜も踏み潰されていた。
――ふざけやがって!!
いつものように魔法を使って2haを耕す。
1haには畝を立てて麦を撒く、種は魔法で飛ばすから手間は無い。
麦は日本で一般的なドリル撒きだ。
ドリル撒きとは、20~30cmの細畝を立てて播種面積を増やす事により、収量を確保する方法だ。
この手法により畝間が狭くなるが、全面播種より種の量を減らせて効率的だ。
アイテムボックスから出した種麦が圃場全体に広がり縦列ごとに地面に突き刺さる。
もう1haにはトウモロコシを撒いた。
もう慣れたもんだよ。
目をつぶっていてもやれる位さ。
いつもの通り通常の畝を立てて、2条撒きだ。株間が35cmで畝間が45cmの千鳥植えで仕立てる。
ここに撒いたのは、地球の世界三大穀物の内の2つだ。
本気の30倍速栽培で、麦なら8日~9日。
トウモロコシに至っては3日で収穫だぞ。
前に真祖のキュウリが冬に生ったとい言ったが、おかしいのは真祖じゃなくて俺の畑だった。
夏でも白菜が育ち、冬でもピーマンが生る。
アグロノミストを標榜した俺だが、どうやらまともな農業は営めないらしい。
モルトが三角帽にサロペット風ショートパンツのいつもの格好で戻って来た。
ラー♪ ラー♪ と言いながら意思を伝えてくれる。
なになに? レオさんが支援は任せろって言ってたって? そうか良かったよ。
え? ――モルトがこの畑の管理も任せてって言っている。
いつもすまんな。モルト。
――頼りにしている。
良し! 次!
明日の分のスープを仕込む、シチューにしようかと思ったが、大鍋3つ分は必要だ。
焦げ付きやすいので、普通のスープにしよう。
その代わり具沢山だ。
明日の再加熱分を考慮して、サッと茹でて火を落とす。
俺が下準備をしていると、手伝いを買って出てくれる人がいた。
寝る場所も無いのに前向きになれる人間の強さを感じる。
そして! ──次!
日本のテントと寝袋を錬金召喚で呼び出す。
それを用意しながら、立て方を説明した。
何とか世帯数分は用意して、寝袋も全員分賄えた。
これで、雨が降っても大丈夫だろう。
衣食住足りてというが、この世界の人達は衣食住足らずして礼節を知っている気がする。
神が身近にいるせいか、天罰を受けて苦しい時期を助け合いながら生き延びた為かは分からない。
少なくとも地球人よりはよっぽど善良だ。
そして同じ地球人の俺とも意識が違うってことだね。
――そして最後!
トウモロコシが収穫できる3日後までの食料だ。
焼けなかった小麦は村中のをかき集めたがその量は心もとない。
何しろ必要なのは100人分だ。
気が狂いそうな程に飢えた俺の目の前で同じ思いをする人間なんて許容できない。
味はともかく少なくとも満腹でいてもらわないとね。
それが農家を授かった俺の役目でしょ?
だってさ野菜で食を支えるのが農家の本懐ってもんだ。
俺のじーさまとばーさまに誓って全力を尽くすぞ。
――――いでよっ!
――――500kgの種ジャガイモ。
……それ種って言ってただろだって?
食えるもんは何だって食べたらいいだろ?
――今は緊急事態だ。
俺は死の草原の毒草だって食べてみたんだぜ?
真っ黒な布のシートをかけて、日に当てないように説明しておく。
この村は3日凌げば、トウモロコシも実る。
支援がいつ届くかは分からないが、食べる物があれば人は生きていける。
何しろ農家は生命の糧である野菜を生み出す職業だ。
明日を生きられる糧があることはきっと村人の希望になる。
希望とは過去には存在しない。
――未来そのものだ。
準備を終えたのは夜も遅い時間になっていた。
それを終えた俺はタープテントでようやく眠りについた。
§
その男は仲間たちと合流する。
「いいか、ノアという小僧は姿を隠せるが、気配までは消せない。冷静に囲んでしっかりと殺せ。スタンピードを起こせば、テイムしている風颶に対処させる筈だ」
「――信じられない事に2匹の風颶をテイムしているようだ。複数のスタンピードを発生させて、風颶を分散させろ。風颶が離れた刻が殺すチャンスだ」
頷く周りの仲間達。
「こちらの計画も知られているようだ。それなら、それを利用して罠に嵌めるぞ。俺たちの長年の計画を台無しにした奴だ。しっかりと落とし前をつけるぞ」
そう言って男は不敵にニヤリと笑った。
◇
――――翌朝
俺は薄暗い朝靄の中で出発する。
誰だ? ケンちゃんに危ないから時速40キロ以上出すなって言ってたのは?
何処のバカだ。
折角だから最大車速を搭載させたいって言ってたのは?
クラッチ機構も未開発で、トルクの回転数が上がると少しづつ下げないと止まらない。制御不能の我儘ボディ。
……制動距離は1キロで止まれればいいな。。。
何たって持ち主が阿保なんだから時速100キロ出せるなら、使っちまうに決まってるだろう! 馬鹿野郎!
――俺は覚悟を決めている。
さっさとあいつらに追いつくぞ。
この世界最速の乗り物で!
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