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第1章  伏龍

第62話  機能

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 ――――翌日。
 
 朝起きると俺の胸元に顔を押し付けたモルトが大の字で乗っかっていた。

 チャムとカロもいつも通りだ。

 よかった。暫く会えなくなるかと思った。俺はほっと胸を撫で下した。

 畑に行くとモルトの様子がおかしい。

 寂しそうな、悲しそうな顔でこっちを見てくる。俺が動くとその視線が付いて回る。

 いや。分かっている。

 ――――昨日の種は植えないの? ……どうして? だな。

 無かった事にはできなかった。

 昨日の〇票から一転、反対票が三票入ったからだ。

 モルト。チャム。カロ。平等な民主主義を標榜する俺が屈した瞬間だった。

 そして俺は考え直す。

 俺が困っているのを助けてくれたのは、モルト、チャム、カロ達だ。

 だから、種は気にせず撒こう。

 イラっとさせる表示がポンコツさんの嫌がらせなのだ。そう思う事にした。

 ねぇ。みんな。キュウリの種の自家採取ってした事ある?

 普通は下位のキュウリを収穫せずに大きくするんだけど。

 ヘチマみたいな大きさになって、黄色く熟すまで置いとくんだ。

 黄色い瓜できゅうり黄瓜って説がある位なんだぜ。

 何故、俺が急にこんなうんちくを言い出したかというと、目の前の現実が受け入れられないからだ。

 ――――真祖は凄かった。

 目の前のキュウリは、蔓の筈なのに自立して高さが5m程あり、わんさかキュウリが実っている。

 ――――俺の感想?

 ジャックと豆の木って蔓科の豆なのに、どうして天まで自立できたんだろう?

 その模範解答が目の前にあるな! だな。

 他の真祖も一事が万事だが、俺の認識が拒否するので詳しい説明は省く。

 おかげで固定種の種は大量に手に入った。

 採れた種の方は普通に品種、品名で表示されたから安心したよ。本当に。 

 でっかくなった真祖達を、モルトが畑の中を整理するようにスルスルと自在に移動していた。

 モルト……おまえ。畑では何でもありだな。

 そして気付きたくはなかったが、バングルに新たな機能が追加されていた。

 その機能は……。
 

 ――――『種族固定化』

 ……物騒そうな機能だな。何だよ。これ!

 せめて品種固定とかなら受け入れられたかもしれないのに。

 これも見なかった事にしよう。

 のちに知ることになるが、真祖のヤツら冬でも気にせず実をつけた。

 ……この畑、早いうちからもう農業じゃねぇ!



 今日はメイリンさんを連れて、王国の人型ゴーレムを研究しに来た。

 この人型ゴーレムが作れない最大の理由が、主要動力原にして動作の根幹を制御する物質である。純魔水晶が手に入らないからだ。

 高難度ダンジョンの最下層で発見の記録が残っているが、王国内で未使用なものは王家が保有する一つのみ。

 あとは、”紋”を彫られて純魔刻水晶となり、この人型ゴーレムの動力源とされたものしか存在しない。

 王国の二,〇〇〇年の歴史でたった二つしか発見されておらず。同時期に発見された事から、同一人物が手に入れた可能性が高いと推察する。

 そして、それは過去の研究結果では腹部に収められていると記されていた。

「パオラさん。――このゴーレム。バラしても良いですかね?」

「バッ! ――ノアくん。ダメに決まってるでしょ。何考えてるの?」

「……」

「本当にダメだよ! ちょっとノアくん。こっち見なさいっ!」

 この五〇〇年でこのゴーレムの真理に一番近づけたのは俺だと思う。

 まだ、ヒントに気付いたに過ぎないが。これから更に勉強と研究は必要だが、純魔水晶が手に入らない以上。

 外側と各種関節を完コピして、純魔刻水晶を載せ替えて上手く作動するか確認はしてみたい。

 喫緊の話しではない。

 まだ俺の技術が伴っていないし、外側の作成にはガンソさんの協力が必要だ。
 
 俺が作りたいものを、メイリンさんとガンソさんで作れるようになってもらわないと困るしな。

「はい。分かりました。パオラさん」

「ノアく~ん? 諦めませんって顔してるわよ?」
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