上 下
47 / 403
第1章  伏龍

第47話  指導

しおりを挟む
 メイリンさんから出来たと紹介された調理用魔道具は、ミキサー(改)とロースター。おまけにピザ釜だった。

 ミキサーは軽鉄と言われるジュラルミンみないな素材に変わり。

 四角いミキシングする容器の中央四面にガラスがはめ込まれていて中が確認できるようになっていた。

 俺の要望の通り分解洗浄が可能だ。

 まぁ。メイリンさんというよりもガンソさんの工房が頑張ったって感じなんだろうけど。

 値段が銀貨三枚と軽鉄分値上がりしてたね。

 髭おっさんの紹介でメイリンさんの魔道具店に行ってるけど。

 商売人としてはちょっと微妙だな。

 なにせ見積り出せって言ってるのに商品出してくるからね。

 年季の入ったレンガ作りの建物と重厚なドアなのに、風が吹けば揺れるほどのペラッペラの明るい色の木の看板。

 看板だけ見れば可愛いらしく、踊るような文字で書かれていて素敵なカフェを思わせる。

 常識を疑えでお馴染みの俺ですら、本当の意味でメイリンさんの常識を疑った。

 あの看板を使いたいなら、どう考えても建物と扉に淡い色を塗りポップな仕上がりにした方がバランスが良い。

 結果。何屋か分からない不思議なお店に仕上がっている。

 あの店は俺とパオラさん以外に客を見た事もないし、そのおかげで魔道具の出来上がりが早いのかもな。

 支払いをするときに、メイリンさんから今日もこれで生き延びられる的な悲壮感を一瞬感じるんだ。
 
 嫌なら他の店に行けばって?

 他の店に行くなんてもったいない。

 メイリンさんには、らっしゃい! に始まり何か人生を生きてるって事を感じさせる愛玩性があるんだぜ。

 俺の大好きなケンちゃんにも通じるものだな。

 せっかくだし出来立ての魔道具も使ってみよう。

「クローエ。パン生地を作れるか? 材料はここに用意してある」

「はい。オーナー。パン生地なら作れます」色白のクローエが答える。

「アルバロとクレトはうどんを作ってくれ。はい。これがレシピだ。10ボーメの塩水を作って中力粉を量ってくれ」

 塩水選種計と秤を渡し数字の見方を教える。

「おう! わかったぜ」

 とは色黒こげ茶髪のアルバロ。

「うん。ノア君やってみる」

 とは色白のっぽのクレトが答えてくれた。

「エステラは出汁を作ってくれこれがレシピだ」

「分かった。……師匠」

 そう答えるのは、そばかすのエステラ。

「ん? ――――師匠?」

「料理を教えてくれる人。――それは師匠」

 肩くらいまでの短い金髪のエステラはそう言うと恥ずかしそうに視線を反らした。

 白い肌の可愛らしいそばかすの頬が少し赤みを帯びている。

 まぁ。好きに呼んでって言ったのは俺だし良いか。

「ビビアナはミートソースを作ってほしい」

 そう言ってレシピを渡す。

「はーい。ん-? でもノアちゃん。その赤いの本当に食べられるの?」

 赤髪のポニーテールを揺らしながら聞いてくる。

「もちろん食べられるよ。むしろ一度食べれば病みつきになるよ。ね! パオラさん?」

 グルタミン酸は本能に働きかける味だ。

「初めはびっくりする色だけど。とっても美味しいから安心して」

 そう言ってニッコリ笑うパオラさん。

 エステラが聞いてくる。

「師匠。このカタクチイワシってなに?」

「――――これの事だよ」

 俺はその食材を指差す。

「っ! ……? それはニーナじゃ?」

 訝し気な顔をするエステラ。

 知らん! 現地の食材名まで覚えられるか!

「これが片口イワシ、これがウルメ、これがサバブシ、これがイリコ、これが昆布草、これが玉ねぎだ! レシピは書き換えても良いが、俺はその食材をそう呼び続ける!」

 ――――断固拒否だ。

 トリップしてレシピを書く時に勝手に名前が宛がわれる。皆には悪いが俺に合わせて貰おう。
 
 こうして料理人見習いネスリングスとの開店準備が始まった。

 いずれ巣立っていくことを期待して。

「アルバロ! 水回しは全体にくまなく回るようにして! クレト! もっと大胆に手を動かした方がいいぞ!」

「エステラ! レシピの出汁の時間は目安だ。時計を見るより鍋を見ろ! 出て来た色の変化を見逃すな!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~

未来人A
ファンタジー
主人公、田宮シンジは妹のアカネ、弟のアオバと共に異世界に転移した。 待っていたのは皇帝の命令で即刻処刑されるという、理不尽な仕打ち。 シンジはアンデッドを自分の配下にし、従わせることの出来る『死霊王』というスキルを死後開花させる。 アンデッドとなったシンジは自分とアカネ、アオバを殺した帝国へ復讐を誓う。 死霊王のスキルを駆使して徐々に配下を増やし、アンデッドの軍団を作り上げていく。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

異世界に転生したので、とりあえず戦闘メイドを育てます。

佐々木サイ
ファンタジー
異世界の辺境貴族の長男として転生した主人公は、前世で何をしていたかすら思い出せない。 次期領主の最有力候補になるが、領地経営なんてした事ないし、災害級の魔法が放てるわけでもない・・・・・・ ならばっ! 異世界に転生したので、頼れる相棒と共に、仲間や家族と共に成り上がれっ! 実はこっそりカクヨムでも公開していたり・・・・・・

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

辺境伯令嬢に転生しました。

織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。 アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。 書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。

処理中です...