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第1章 伏龍
第43話 青光
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執務室へ戻ってきたウィンリールが2人へ詫びる。
「すまない。待たせたな。座ってくれ」
そして、報告を促した。
「パオラ。ノア君の近況報告を頼む」
「ノアくんより報告があったと思いますが、再度報告します。コルンキント、水精霊、植物精霊の名前が決まりました。コルンキントがモルト・カリノ。水精霊がチャム。植物精霊がカロです」
「意思を疎通している生き物は、風颶鳥の番が2組。その内1組の雄にツンツク。雌にオナイギと名をつけています」
「小鳥数羽。大きなクモ3匹と小さなクモ数十匹で新たに蜂が加わりました。蜂には巣箱と呼ばれる。未知の箱を用意しています。いずれハチミツを採取を見込めると言っていました」
「料理の方もうどん、コーンポタージュ、パスタ、ピザなどをレシピ化しています。市場では何かに導かれるように食材を探し当て、別人の様な無表情で料理を仕上げてレシピを書き上げます。その際に――目が濃い青で発光しています」
「目の発光? 聖女が神託を授かるときに光るっていうあれが?」
レオカディオが驚いたように呟いた。
「聖女の目が光るところを見た事が無いので同じかどうかは判断出来ませんが、同じだったとして誰かを幸せにする料理に働くなんてノアくんらしいわね」
ウィンリールが頷きながら口を開く。
「イーディセルが言い出した”御使い”説も信ぴょう性を帯びて来たな」
発言を求めてレオカディオが手を上げウィンリールが目線で許可する。
「イ-ディセル師がノア本人へ”御使い様”と告げてしまいました。モルト・カリノ。チャム。カロがエルフの方にどう見えるのか知りたくて声をかけてしまいました。すみません」
「仕方あるまい。古代真聖語より洗練された文字を読み書き出来て、先進的なショートケーキという食べ物を知っている。少なくとも我々よりも進んだ文明の知識がある人物」
ウィンリールは続ける。
「ノア君が神の国から来たと聞いても驚きはしない。イーディセルが”御使い”と言い出すのも良く分かる。祖母の託宣『口伝を起こし伝えよ』と私の託宣『王国の縁へ行き、兆しを見逃すな』二世代の託宣には連動性があった」
「ノア君がそのリンクマンであることは間違いない。祖父が書き残した神聖語が、ノア君の知る言葉で書き換えられる。ノア君しか知らない文字が神聖語と呼ばれるのかエルフ語と呼ばれるかは分からないが、我々は今まさに歴史的瞬間に立っている」
「ノアくんはこの頃吹っ切れたように新しい物を呼び出しています。そしてそれを街の鍛冶屋で作り直させています。見た事のない物質が使われている。見ただけでは何に使うのか分からない品物もあります」
パオラは続ける。
「今は王国の文明レベルを上げようとしているのかもしれませんね。この先何が出てくるのか楽しみでもあり。怖くもあります」
ウィンリールはそれを聞き頷くとこう言った。
「金銭的な援助が必要な場合は報告するようにな」
「はい。それともう一つ異常な生長をする畑の野菜ですが、どうやらノアくんは、速度をコントロール出来るようです」
「直接本人へ確認したところ。モルトとカロじゃなかと誤魔化していましたが、料理に使いたい数株だけを先に収穫できるように調整した形跡を感じました。たまに動きを止めて虚空を見つめている事があります。その時操作してると考察します」
「”御使いの箱庭”かどのくらいの速さなのだ?」
「未知の植物トウモロコシを撒いた後に収穫は九十日後と言っていました。種を撒いたのが十三日。うどんを試作したのが十四日ですぐ出来てしまい次に作る料理に迷っている様子でした」
「そして昼過ぎにノアくんは虚空を眺めたので、その時操作したとして、……翌日には生長が早まりました。そして十七日の朝収穫したと聞いています。二〇~四〇倍ほどではないかと想定します」
「もはや神の御業だな。エルフ達が”箱庭”に行きたがって止めるのが大変だ」
「――学舎ではジャンボの遊び場と呼ばれていますよ」
おかしそうに口元を隠しながらレオカディオは言う。
「ジャンボちゃんって呼ばせてくれないし」パオラは口を尖らせた。
パオラは咳払いをするとウィンリールを少し伺うように話した。
「今後は落ち着いたら体を鍛えたいと言っています。ノアくんは『十五歳までは』と無意識に言う事があるので、成人後に研究所を出ることを想定しているのだと思います」
「仕方あるまい。ノア君だろうと”御使い”だろうとその自由意志を妨げることは出来ない。それまでに我々はしっかりノア君の言葉を学ぶとしよう」
ウィンリールは言葉を繋ぐ。
「まだ一年半もあるのだ。そのためにも明日のエルフとの顔合わせはスムーズに済ませたいな。願わくば”箱庭”に遊びに行っても怪しまれない程度には仲を取り持てれば良いのだがな」
間近で見ていたパオラは笑顔で応える。
「孤児院の子達も頑張ってますから成功しますよきっと」
「あっ! そうそう。ノアくん自分が『蜜飼い』と呼ばれたと勘違いしているんです。蜜蜂を飼い出した後にまたどなたかエルフの方に言われたみたいで、まだ蜂蜜溜まってないけど。蜂蜜は人数分用意したほうが良いか聞かれました」
「面白そうなんで用意して渡しなよと焚きつけておきました。どなたかが間違って”御使い”って言っても誤魔化せますかね? ――無理かな?」
「普通”御使い”なんて呼ばれる事は無いしな。知らぬは本人ばかりなりだな」
レオカディオのつぶやく声が聞こえた。
「すまない。待たせたな。座ってくれ」
そして、報告を促した。
「パオラ。ノア君の近況報告を頼む」
「ノアくんより報告があったと思いますが、再度報告します。コルンキント、水精霊、植物精霊の名前が決まりました。コルンキントがモルト・カリノ。水精霊がチャム。植物精霊がカロです」
「意思を疎通している生き物は、風颶鳥の番が2組。その内1組の雄にツンツク。雌にオナイギと名をつけています」
「小鳥数羽。大きなクモ3匹と小さなクモ数十匹で新たに蜂が加わりました。蜂には巣箱と呼ばれる。未知の箱を用意しています。いずれハチミツを採取を見込めると言っていました」
「料理の方もうどん、コーンポタージュ、パスタ、ピザなどをレシピ化しています。市場では何かに導かれるように食材を探し当て、別人の様な無表情で料理を仕上げてレシピを書き上げます。その際に――目が濃い青で発光しています」
「目の発光? 聖女が神託を授かるときに光るっていうあれが?」
レオカディオが驚いたように呟いた。
「聖女の目が光るところを見た事が無いので同じかどうかは判断出来ませんが、同じだったとして誰かを幸せにする料理に働くなんてノアくんらしいわね」
ウィンリールが頷きながら口を開く。
「イーディセルが言い出した”御使い”説も信ぴょう性を帯びて来たな」
発言を求めてレオカディオが手を上げウィンリールが目線で許可する。
「イ-ディセル師がノア本人へ”御使い様”と告げてしまいました。モルト・カリノ。チャム。カロがエルフの方にどう見えるのか知りたくて声をかけてしまいました。すみません」
「仕方あるまい。古代真聖語より洗練された文字を読み書き出来て、先進的なショートケーキという食べ物を知っている。少なくとも我々よりも進んだ文明の知識がある人物」
ウィンリールは続ける。
「ノア君が神の国から来たと聞いても驚きはしない。イーディセルが”御使い”と言い出すのも良く分かる。祖母の託宣『口伝を起こし伝えよ』と私の託宣『王国の縁へ行き、兆しを見逃すな』二世代の託宣には連動性があった」
「ノア君がそのリンクマンであることは間違いない。祖父が書き残した神聖語が、ノア君の知る言葉で書き換えられる。ノア君しか知らない文字が神聖語と呼ばれるのかエルフ語と呼ばれるかは分からないが、我々は今まさに歴史的瞬間に立っている」
「ノアくんはこの頃吹っ切れたように新しい物を呼び出しています。そしてそれを街の鍛冶屋で作り直させています。見た事のない物質が使われている。見ただけでは何に使うのか分からない品物もあります」
パオラは続ける。
「今は王国の文明レベルを上げようとしているのかもしれませんね。この先何が出てくるのか楽しみでもあり。怖くもあります」
ウィンリールはそれを聞き頷くとこう言った。
「金銭的な援助が必要な場合は報告するようにな」
「はい。それともう一つ異常な生長をする畑の野菜ですが、どうやらノアくんは、速度をコントロール出来るようです」
「直接本人へ確認したところ。モルトとカロじゃなかと誤魔化していましたが、料理に使いたい数株だけを先に収穫できるように調整した形跡を感じました。たまに動きを止めて虚空を見つめている事があります。その時操作してると考察します」
「”御使いの箱庭”かどのくらいの速さなのだ?」
「未知の植物トウモロコシを撒いた後に収穫は九十日後と言っていました。種を撒いたのが十三日。うどんを試作したのが十四日ですぐ出来てしまい次に作る料理に迷っている様子でした」
「そして昼過ぎにノアくんは虚空を眺めたので、その時操作したとして、……翌日には生長が早まりました。そして十七日の朝収穫したと聞いています。二〇~四〇倍ほどではないかと想定します」
「もはや神の御業だな。エルフ達が”箱庭”に行きたがって止めるのが大変だ」
「――学舎ではジャンボの遊び場と呼ばれていますよ」
おかしそうに口元を隠しながらレオカディオは言う。
「ジャンボちゃんって呼ばせてくれないし」パオラは口を尖らせた。
パオラは咳払いをするとウィンリールを少し伺うように話した。
「今後は落ち着いたら体を鍛えたいと言っています。ノアくんは『十五歳までは』と無意識に言う事があるので、成人後に研究所を出ることを想定しているのだと思います」
「仕方あるまい。ノア君だろうと”御使い”だろうとその自由意志を妨げることは出来ない。それまでに我々はしっかりノア君の言葉を学ぶとしよう」
ウィンリールは言葉を繋ぐ。
「まだ一年半もあるのだ。そのためにも明日のエルフとの顔合わせはスムーズに済ませたいな。願わくば”箱庭”に遊びに行っても怪しまれない程度には仲を取り持てれば良いのだがな」
間近で見ていたパオラは笑顔で応える。
「孤児院の子達も頑張ってますから成功しますよきっと」
「あっ! そうそう。ノアくん自分が『蜜飼い』と呼ばれたと勘違いしているんです。蜜蜂を飼い出した後にまたどなたかエルフの方に言われたみたいで、まだ蜂蜜溜まってないけど。蜂蜜は人数分用意したほうが良いか聞かれました」
「面白そうなんで用意して渡しなよと焚きつけておきました。どなたかが間違って”御使い”って言っても誤魔化せますかね? ――無理かな?」
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