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第1章  伏龍

第13話  作付

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 ジャンボ問題は当面の決着を見た。

 とりあえずよく会う三人。

 司書長、パオラさんレオさんには名前で呼んでもらうよう頼み込んだ。

 本当に心から嫌な旨を涙目で滔々訴えたら。司書長から使用禁止の指示が出たのだ。

 まぁ。今でも二人ともからかってくるが、いじられるくらいは甘んじて受けよう。

 パオラさん曰く響きが可愛いから、もったいない! とか。

 ――そんなもったいない精神はいらないっ! 断じてっ!

 パオラさんが俺を呼ぶとき、ノアはくん付け、ジャンボはちゃん付けだ。その差だと思っている。

 学舎内はあいかわらずの大フィーバー継続中。ジャンボと話しかけられたら、共通語で挨拶をし冷静に対応する。

 たまに、果物とかお菓子とかくれるので、その時は、「ジャンボ」と言ってやるのだ。

 特別だぞ! フン!

 珍獣の名前が分かったからはしゃいでいるガキどもめが! フン!

 一過性のもので、あると信じたい。

 はてさて、ここに受け入れてもらってから一ヶ月が経ち。

 一番の目標は、共通語の習熟だ。この一ヶ月で、片言以上の読み書きが出来るようになった。

 あと二ヶ月延べ時間で三ヶ月内に、一般の教養レベルまで習得を目指す。

 そうすれば、王都の王立図書館で知識の向上を図り、次への目標設定が定め易くなる。

 二番目の目標は、俺の啓示された職業である篤農家。

 職業は努力と研鑽で、出来ることが増えると言われている世界で13歳になるまで、農業をしていないと見なされている可能性がある。

 少なくとも五歳で啓示を受けたとして、それから丸八年分が抜け落ちている。

 ――結構な期間だ。

 休日に農家の圃場を見学に行ったが、この世界では肥料の概念も無いようだし、多少の手間は掛けるようだが、概ね種を撒いて終了のようだ。

 早めに、研鑽の為の農業の開始し、職業の効果と経験による向上がどのようものか確認したい。

 それとこの世界の農業事情を明確に把握したい。

 三番目の目標は、成人までの二年間であらゆる事を試して、俺の向き不向きを把握したい。

 出来ることの選択肢が増えれば、成人後の方針が定め易い。

 居ても立っても居られず、魔法はもう試したよ。

 残念ながら、適性は低いと言われた。

 ほとんど存在する人間のいない。全属性を発動でき、特に水と土はその中で適性が高め。

 魔力総量は異常に高いと判断された。

 もったいないと、魔術師のおじさんに本当に残念がられた。

 水で表現するとタンクはでかいのに水口が小さいから、チョロチョロしか出ないがズーッと出せるってことだ。

 おじさん曰く、光魔法のヒールだったら、一日中発動し続けても魔力が無くなることはないだろう。

 ただし、ミドルヒールには出力魔力が足らない。

 まぁ。ともかく魔法が使えたって事で良しとしよう!

 今の俺は、アールヴ神聖語研究所には週五日通い、二日休み。

 いつもパオラさんかレオさんのどちらかが一緒で、ほとんどが、パオラさん。

 一日中、共通語で会話をしてと単語や文章の復唱などを繰り返す。

 当面は共通語の習得に充てるよう司書長から指示されている。

 二日の休みも農家を訪ねたり。

 魔法使いを訪ねたりしていて、その段取りなども二人にしてもらい同行してくれるので、ほぼ毎日会っている。

 何でこんなにしてくれているのか分からないのだが、頭が下がる思いだ。

 俺が共通語を話せるようになれば、この手厚い状態も緩和されるそうなので、俺自身が頑張るのが二人の為になると考えておこう。

 この世界でも一応週に一日は休息の日が決まっているが、休んでいる人を見たことが無い。

 二人にも休まなくていいのか確認したが、気にしなくていいと言われた。う~む。

 第二目標の農業だが、ダメもとで敷地内での野菜栽培を申請したら、あっさり許可が下りた。

 びっくり!

 日当たりが良く使っていない場所を用意された。大学院敷地内の薬草栽培試験に利用していた場所で、現在は放棄されている。

 ただし、職員が管理しているので、荒れてはいない。

 少し草はあるが、広さ的に一反は無い。

 せいぜい五分(5a)程度。

 実験だし広さは十分だ。

 今の時期は春の盛りで日本で言う四月中旬くらいの陽気だ。

 この地は梅雨もなく適度に雨が降り、夏は暑いが湿度が低いため過ごしやすく。

 冬は温度が下がり寒くなる、霜が降るほどではないという。

 冬の葉物野菜が結球しなそうな気候だな。

 この時期に撒く野菜の種を数種類用意している。

 畑を耕すために準備していたもう一つの方法を試してみよう。

 ――――魔法だ。

 魔法使いのおじさんに、魔法の使い方を教わったとき。

 魔法はイメージが大切だと教えられた。初めに呪文の内容を理解する。

 呪文の理解により発動の理へと通じ、初めて魔法が効果を及ぼす。

 次に呪文を詠唱し、魔法を発現させる。

 研鑽を積めば、詠唱破棄や無言で魔法が使えるようになる。

 なるほど、なるほど、想像した効果を現実に表す為のルーティンが呪文で慣れたら必要ないのね。

 それから俺は、農家への訪問時に許可を得て、何度か土魔法で耕耘を練習した。

 すでに無言発動可能だ。

 今回は畑の半分を魔法で耕耘するつもりだ。

 この世界の一般的農法と魔法での耕耘の比較を計画していた。

 今まで、魔法で耕耘することは一般的ではないらし。

 今回の耕耘イメージは、地中の3mまでを効果範囲として、団粒構造でフワフワしっとり。

 窒素、リン酸、加里は適度に地表付近へ。難溶性リン酸は、く溶性になってね。お願いね。

 微量要素も適度に宜しく、ph? とりあえず中性だ。

 表層の草の種はいらねぇ。だから、滅却殺菌だ。

 微生物さん元気になってね。

 そう思いながら――――グッと魔力を込める。

 畑の幅分の1m程の土がうねり、ニューっと前に進んでゆく。

 畑の中ほどで魔法を止めて、土をチェックする。

 んっ! いい感じっ! しゃがんで土をすくい。手で握る。

 すると土が固まりまとまる。それを指で押すと崩れる。おぅっ! 理想的。

 あとは、最終調整だ。

 今度は地表30cmに魔力を込める。二畝の窒素は少な目で宜しく。

 イメージは、日本の肥料だ。窒素-リン酸-加里の配合比率を%で表している。

 窒素が少ない基本的な肥料。サン10トウ10トウっぽく集まれとイメージする。豆と芋を植えるから。
 
 窒素が多いと豆は生育繁茂して、実付きが悪くなる。芋はツルボケしてやはり塊茎イモが付き辛くなる。
 
 モコモコと土が動き、二畝が出来る。
 
 次の三畝は適度な窒素で、イメージは8-8-8オール8だ。

 あっというまに畑ができあがった。

 その瞬間。

 ――――リリン♪

 高音のベルのが響く。それは、どこまでも清らかに天まで届いた。

 そして、俺の存在が広がるような感覚。

 見えている景色が変わったかのように、辺りの気配が明確に知覚できるようになる。

 俺は辺りを見回しパオラさんに尋ねる。

「パオラさん? 今音が鳴りませんでしたか?」

「え? 音? わたしには聞こえなかったけど。どんな音だったの?」

「ベルのような音です。気のせいではないと思うんですが……。あと何か感覚が急に広がったような気がします。辺りの気配がより感じられるというか……」

「具合は大丈夫なの? ノア君。気分が悪いようなら、教会で見てもらいましょう」

 心配そうに俺を見るパオラさん
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