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16話
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黒絵家を後にした3人は満留が用意をしてくれたホテルに滞在していた。
着いて早々大志は自分の部屋に閉じこもり姿を見せない。
そんな中翼と綾音は翼の部屋に集まり今日のことを話していた。
彩音はシングルベッドの上に、翼は窓際の置かれた丸テーブルの丸椅子に座っている。
三階の窓からは街の夜景が見える。
いや夜景というほど美しくはない。
転々と見えるのは飲食店の光と夜道を照らす街頭。
その中はたまに人が歩いている。
煌びやかというよりは寂しい景色だ。
丸テーブルの上にはホテルの自販機で買ったビールが置かれている。
翼はあまり酒は飲まない方だったが今日は話が
聞いた話が強烈すぎて飲まずにはいられなかった。
ちなみ綾音の方はその時買ってあげたミネナルウォーターを手で転がし遊んでいた。
「神人だって、黒絵聖那達は私たちと同じ異能力だったわけか」
その綾音の言葉を翼は否定する。
「同じではないだろ。少なくとも君の両親も僕の両親も神なんかじゃない。ただ、僕たちの祖先にそんな血を持った人物がいたのかもしれないな」
そんな推論を述べる。
そう、だとしたら自分たちがこんな力を持って生まれたのも納得ができる。
神の血が自分にも流れている。
翼の話を聞いて綾音は何気なく自身の手を部屋の照明にかざしてみた。
別段特に不思議なことは起こらない。
「神の血ねぇ。翼さんはどう思います?この神の話本当だと仮定して今回の事件の元凶はなんだと思いますか?黒絵聖那の怨念?それとも黒絵飛流が起こしてる?」
それともまだ別の要因があるのだろうか?
ふとそんな事が綾音の脳裏によぎった。
「僕としては黒絵飛流が怪しいと思うよ。黒絵聖那の怨念とするには断罪事件はヒルってやつが動き回り過ぎている。ヒルを名乗った黒マント声が女のようだったと近衛大志が言ってただろ?そのヒルが黒絵飛流だと僕は思っている」
まぁそう考えるのもわかると綾音は頷く。
「じゃあさ今回の件は?今回は人が次々と自殺しているまさに呪いって感じだけど?」
そこで翼はふむと悩みように顎をさする。
それは翼なりの困惑を示すサイン。
数々の奇怪な事件に立ち会ったことのある翼からしても今回の件は全容が把握できないでいる。
そもそも話の中に神まで出てきてしまい、物事の大きさが彼が今まで体験したことの比ではない。
神おそらくそれは翼が思いもしないほどの力を有した存在なのだろう。
だからこそ一つの疑問が生まれる。
「そもそも、黒絵聖那は本当に死んだのか?」
それがどうしても彼の頭に引っかかっていた。
「話によると黒絵聖那は神をも超えるほどの力を手に入れた。そんな彼女がそうもあっけなく死ぬものだろうか?それに、彼女と相打った死神とは何者だ?」
「確かにパッと出のキャラみたいで印象薄いよね」
綾音はふざけまじりに同意する。
「後気になるのは最後の黒絵聖那の死は黒絵満留が確認できていない点だ」
「つまり、黒絵聖那の死は偽装されたものだっていうこと?」
綾音がそう聞くと翼は肩をすくめる。
「さてね、それは明日会う者たちが知っているだろう」
彼らが本当の事を話すかは別だが。
声には出さず翼が呟く。
どちらにしろ、明日ことは大きく動き出す。
そんな予感が彼の胸に宿る。
そのせいだろうか、窓ガラスに映る自分が随分と険しい顔をしていることに気づく。
緊張しているのか?
ビールを一気に煽り緊張をほぐそうとするが、あまり効果はないようだ。
「明日に響くんであまり飲みすぎないでね」
綾音は丸机に先ほど買ってもらったミネラルウォーターを置き出口へ向かっていく。
「帰るのかい?」
翼の問いかけに綾音はドアノブに手をかけ振り返る。
さらりと肩で切りそろえられた髪が揺れる。
「大志さんの部屋。あの人の話も聞きたいし」
そう告げると翼の言葉なんて聞く気がないと綾音は扉を扉を閉める。
バタンという扉を閉める音は何かしらの拒絶の様にも感じられる。
翼はその扉をただ黙って見つめていた。
着いて早々大志は自分の部屋に閉じこもり姿を見せない。
そんな中翼と綾音は翼の部屋に集まり今日のことを話していた。
彩音はシングルベッドの上に、翼は窓際の置かれた丸テーブルの丸椅子に座っている。
三階の窓からは街の夜景が見える。
いや夜景というほど美しくはない。
転々と見えるのは飲食店の光と夜道を照らす街頭。
その中はたまに人が歩いている。
煌びやかというよりは寂しい景色だ。
丸テーブルの上にはホテルの自販機で買ったビールが置かれている。
翼はあまり酒は飲まない方だったが今日は話が
聞いた話が強烈すぎて飲まずにはいられなかった。
ちなみ綾音の方はその時買ってあげたミネナルウォーターを手で転がし遊んでいた。
「神人だって、黒絵聖那達は私たちと同じ異能力だったわけか」
その綾音の言葉を翼は否定する。
「同じではないだろ。少なくとも君の両親も僕の両親も神なんかじゃない。ただ、僕たちの祖先にそんな血を持った人物がいたのかもしれないな」
そんな推論を述べる。
そう、だとしたら自分たちがこんな力を持って生まれたのも納得ができる。
神の血が自分にも流れている。
翼の話を聞いて綾音は何気なく自身の手を部屋の照明にかざしてみた。
別段特に不思議なことは起こらない。
「神の血ねぇ。翼さんはどう思います?この神の話本当だと仮定して今回の事件の元凶はなんだと思いますか?黒絵聖那の怨念?それとも黒絵飛流が起こしてる?」
それともまだ別の要因があるのだろうか?
ふとそんな事が綾音の脳裏によぎった。
「僕としては黒絵飛流が怪しいと思うよ。黒絵聖那の怨念とするには断罪事件はヒルってやつが動き回り過ぎている。ヒルを名乗った黒マント声が女のようだったと近衛大志が言ってただろ?そのヒルが黒絵飛流だと僕は思っている」
まぁそう考えるのもわかると綾音は頷く。
「じゃあさ今回の件は?今回は人が次々と自殺しているまさに呪いって感じだけど?」
そこで翼はふむと悩みように顎をさする。
それは翼なりの困惑を示すサイン。
数々の奇怪な事件に立ち会ったことのある翼からしても今回の件は全容が把握できないでいる。
そもそも話の中に神まで出てきてしまい、物事の大きさが彼が今まで体験したことの比ではない。
神おそらくそれは翼が思いもしないほどの力を有した存在なのだろう。
だからこそ一つの疑問が生まれる。
「そもそも、黒絵聖那は本当に死んだのか?」
それがどうしても彼の頭に引っかかっていた。
「話によると黒絵聖那は神をも超えるほどの力を手に入れた。そんな彼女がそうもあっけなく死ぬものだろうか?それに、彼女と相打った死神とは何者だ?」
「確かにパッと出のキャラみたいで印象薄いよね」
綾音はふざけまじりに同意する。
「後気になるのは最後の黒絵聖那の死は黒絵満留が確認できていない点だ」
「つまり、黒絵聖那の死は偽装されたものだっていうこと?」
綾音がそう聞くと翼は肩をすくめる。
「さてね、それは明日会う者たちが知っているだろう」
彼らが本当の事を話すかは別だが。
声には出さず翼が呟く。
どちらにしろ、明日ことは大きく動き出す。
そんな予感が彼の胸に宿る。
そのせいだろうか、窓ガラスに映る自分が随分と険しい顔をしていることに気づく。
緊張しているのか?
ビールを一気に煽り緊張をほぐそうとするが、あまり効果はないようだ。
「明日に響くんであまり飲みすぎないでね」
綾音は丸机に先ほど買ってもらったミネラルウォーターを置き出口へ向かっていく。
「帰るのかい?」
翼の問いかけに綾音はドアノブに手をかけ振り返る。
さらりと肩で切りそろえられた髪が揺れる。
「大志さんの部屋。あの人の話も聞きたいし」
そう告げると翼の言葉なんて聞く気がないと綾音は扉を扉を閉める。
バタンという扉を閉める音は何かしらの拒絶の様にも感じられる。
翼はその扉をただ黙って見つめていた。
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