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第四章 魔導書実装編
第五十七話 10階層へと至る二通りの道
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イベントダンジョンも残すは9階層、10階層のみとなった。僕達は9階層の入口付近にあるセーフティエリアで、例の作戦を実行中であった。
ザッバ~~~~~~ンッ!!!!
シノマツリは水属性魔法を間髪入れずに連続で発動する事によって、引き起こされた津波はドンドン勢いを増していく、そして最後には全てを洗い流し無に帰す巨大な津波となる。
ひと通り魔法を唱え終わったシノマツリは背後で待機している僕達に声をかける。
「みんな~、終わったです」
「りょうかい、マツリも疲れただろ?後は俺様達に任せてちょっと休憩しとけ」
「そうさせてもらうです」
シノマツリはふわ~っと軽くあくびをしながらセーフティエリアに向かう。
僕達はお疲れのシノマツリと交代するため、魔物を倒すためセーフティエリア外に出た。
ボス一歩前の階層という事もあって、ここに出現する魔物もかなり底上げされているようで、シノマツリの魔法をもってしても一撃で魔物を倒せなくなっていた。
だからこそ、シノマツリは連続で魔法を唱える事でその分を補おうとした。詠唱回数を増やした分、彼女の負担は大きくなってしまった。僕達は役に立とうと頑張るシノマツリを止める事は出来なかった。
だけど、それは僕達がシノマツリの魔法に頼り切ってしまった結果じゃないだろうか。近接武器では大量の敵を一撃で倒すような術はもちあわせてない。
その事もあって、はじめて見た魔法に僕達は酔いしれていたのかもしれない。僕達の中で一番年下のシノマツリに、負担をかけてしまっていた事に後ろめたさを感じていた。
僕達はシノマツリによって弱体化した魔物をひたすら倒し続けた。
周辺の魔物を全て倒した僕達は、シノマツリと合流するためにセーフティエリアに戻る事にした。道中、僕は二人に今後のパーティーについて相談していた。
「なぁ~、僕達って一緒に戦うって時もソロみたく好き勝手動いてるよな?」
「まぁそうだな。それがどうかしたか?」
「何て言うか……このやり方じゃマツリだけほったらかしというか。前衛と後衛で戦い方が違うから仕方ないと言えばそうなんだけどさ。あ~、伝えるのがムズイな」
「タクトの言いたい事は何となく分かるわよ。あれよね?キマイラの時みたいな感じのやつをザコ狩りの時でもやりたいって事でしょ?」
「あ~、確かにあの一体感はマジでヤバかったな。それに比べて今はアイツが一掃した後の残りを掃除する感じ、完全に分担作業となってるな。俺様達はこうやって会話しながら、戦えるがアイツは一人黙々と魔法を放つだけだもんな」
「うん、そうなんだよ。だからといって、共闘するとなるとあの魔法をかいくぐって戦うのはなかなか難易度高いし……」
「つうか、これ俺様達で話し合っても解決策は出て来なさそうだしよ。今回思った事をマツリに話して、4人で考えようぜ!」
「そうだな」
「そうね」
セーフティエリアに戻った僕達が目にしたものは、休憩しているはずのシノマツリではなく青く光り輝く魔法陣だった。
もしかしたら8階層に行ったのかと階段を下りて、確認しに行こうとしたが階段前に透明な壁が設置され8階層に戻れなくなっていた。
このイベントダンジョンに挑んでから一度も、こういった階段の上り下りが出来なくなる事はなかった。今までとは明らかに様子が違っていた。出現した魔法陣に足を踏み入れても何も変化も起こらない。
この魔法陣が原因でシノマツリがいなくなったのは明白なのだが、どうすれば解決出来るのか分からず困惑する僕と修羅刹。その中で、ただひとりサンだけはある事に気づいていた。
サンは僕と修羅刹にこっちに来るように手招きしながら、シノマツリが消えた原因を語り始める。
「なぁ、二人ともちょっとこっちに来てくれ。どうやらマツリは例の発生条件を達成したようだわ」
「例のって?」
「まぁまぁこの魔法陣の中心を読んでみりゃ分かるぜ」
「「魔法陣の中心?」」
僕と修羅刹は膝を曲げ魔法陣に書かれた文章を読み始めた。
そこにはこう書かれていた。
シークレットミッション開始……挑戦者シノマツリ様。タクト様、修羅刹様、サン様はそのまま10階層までお進み下さい。10階層到達後はシノマツリ様のシークレットミッションが終わるまで暫しお待ち下さい。
「えっと、つまりマツリは今シークレットミッションやってるって事?」
「そういう事だな。まだ誰もクリアしていないあの噂のやつ」
「へぇ~、やるわねマツリ」
「いや、何だろうな。すっごい事なんだけどさ、魔法陣のど真ん中にこの文章を書く運営のセンスよ……」
「みなまで言うな、タクト。俺様も何か違うなとは思ってるわ」
「そぉ?これはこれで可愛くない?」
「「おぅ……」」
僕とサンは曖昧な返事をして濁す事しか出来なかった。
「さてと、んじゃここに書いてるように俺様達は俺様達で10階層を目指すとするか!」
「そうね。行くとしましょう」
「うん、分かった」
「そんなに心配するな、タクト。アイツは雪月山花で一番の攻撃力の持ち主だ。それにアイツはただではやられねぇよ」
「あぁ、そうだな。行こう!」
僕達はシークレットミッションに挑むシノマツリと別れ、3人で10階層を目指して進んで行くのだった。
ザッバ~~~~~~ンッ!!!!
シノマツリは水属性魔法を間髪入れずに連続で発動する事によって、引き起こされた津波はドンドン勢いを増していく、そして最後には全てを洗い流し無に帰す巨大な津波となる。
ひと通り魔法を唱え終わったシノマツリは背後で待機している僕達に声をかける。
「みんな~、終わったです」
「りょうかい、マツリも疲れただろ?後は俺様達に任せてちょっと休憩しとけ」
「そうさせてもらうです」
シノマツリはふわ~っと軽くあくびをしながらセーフティエリアに向かう。
僕達はお疲れのシノマツリと交代するため、魔物を倒すためセーフティエリア外に出た。
ボス一歩前の階層という事もあって、ここに出現する魔物もかなり底上げされているようで、シノマツリの魔法をもってしても一撃で魔物を倒せなくなっていた。
だからこそ、シノマツリは連続で魔法を唱える事でその分を補おうとした。詠唱回数を増やした分、彼女の負担は大きくなってしまった。僕達は役に立とうと頑張るシノマツリを止める事は出来なかった。
だけど、それは僕達がシノマツリの魔法に頼り切ってしまった結果じゃないだろうか。近接武器では大量の敵を一撃で倒すような術はもちあわせてない。
その事もあって、はじめて見た魔法に僕達は酔いしれていたのかもしれない。僕達の中で一番年下のシノマツリに、負担をかけてしまっていた事に後ろめたさを感じていた。
僕達はシノマツリによって弱体化した魔物をひたすら倒し続けた。
周辺の魔物を全て倒した僕達は、シノマツリと合流するためにセーフティエリアに戻る事にした。道中、僕は二人に今後のパーティーについて相談していた。
「なぁ~、僕達って一緒に戦うって時もソロみたく好き勝手動いてるよな?」
「まぁそうだな。それがどうかしたか?」
「何て言うか……このやり方じゃマツリだけほったらかしというか。前衛と後衛で戦い方が違うから仕方ないと言えばそうなんだけどさ。あ~、伝えるのがムズイな」
「タクトの言いたい事は何となく分かるわよ。あれよね?キマイラの時みたいな感じのやつをザコ狩りの時でもやりたいって事でしょ?」
「あ~、確かにあの一体感はマジでヤバかったな。それに比べて今はアイツが一掃した後の残りを掃除する感じ、完全に分担作業となってるな。俺様達はこうやって会話しながら、戦えるがアイツは一人黙々と魔法を放つだけだもんな」
「うん、そうなんだよ。だからといって、共闘するとなるとあの魔法をかいくぐって戦うのはなかなか難易度高いし……」
「つうか、これ俺様達で話し合っても解決策は出て来なさそうだしよ。今回思った事をマツリに話して、4人で考えようぜ!」
「そうだな」
「そうね」
セーフティエリアに戻った僕達が目にしたものは、休憩しているはずのシノマツリではなく青く光り輝く魔法陣だった。
もしかしたら8階層に行ったのかと階段を下りて、確認しに行こうとしたが階段前に透明な壁が設置され8階層に戻れなくなっていた。
このイベントダンジョンに挑んでから一度も、こういった階段の上り下りが出来なくなる事はなかった。今までとは明らかに様子が違っていた。出現した魔法陣に足を踏み入れても何も変化も起こらない。
この魔法陣が原因でシノマツリがいなくなったのは明白なのだが、どうすれば解決出来るのか分からず困惑する僕と修羅刹。その中で、ただひとりサンだけはある事に気づいていた。
サンは僕と修羅刹にこっちに来るように手招きしながら、シノマツリが消えた原因を語り始める。
「なぁ、二人ともちょっとこっちに来てくれ。どうやらマツリは例の発生条件を達成したようだわ」
「例のって?」
「まぁまぁこの魔法陣の中心を読んでみりゃ分かるぜ」
「「魔法陣の中心?」」
僕と修羅刹は膝を曲げ魔法陣に書かれた文章を読み始めた。
そこにはこう書かれていた。
シークレットミッション開始……挑戦者シノマツリ様。タクト様、修羅刹様、サン様はそのまま10階層までお進み下さい。10階層到達後はシノマツリ様のシークレットミッションが終わるまで暫しお待ち下さい。
「えっと、つまりマツリは今シークレットミッションやってるって事?」
「そういう事だな。まだ誰もクリアしていないあの噂のやつ」
「へぇ~、やるわねマツリ」
「いや、何だろうな。すっごい事なんだけどさ、魔法陣のど真ん中にこの文章を書く運営のセンスよ……」
「みなまで言うな、タクト。俺様も何か違うなとは思ってるわ」
「そぉ?これはこれで可愛くない?」
「「おぅ……」」
僕とサンは曖昧な返事をして濁す事しか出来なかった。
「さてと、んじゃここに書いてるように俺様達は俺様達で10階層を目指すとするか!」
「そうね。行くとしましょう」
「うん、分かった」
「そんなに心配するな、タクト。アイツは雪月山花で一番の攻撃力の持ち主だ。それにアイツはただではやられねぇよ」
「あぁ、そうだな。行こう!」
僕達はシークレットミッションに挑むシノマツリと別れ、3人で10階層を目指して進んで行くのだった。
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