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第二章 エインヘリャル最強決定戦編
第三十一話 桜滅一刀流の使い手コタロウ
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観客席からふたりの動きがピタリと止まったのを確認した楓御前と凪太郎の姉弟は、目をキラキラと輝かせその続きが開始されるのを待っていた。
「やっとタクトくんとコタロウくんの本気の戦いが見れそうだね!ナギ!!」
「だなぁ、カエデ!ここからでもコタロウと兄ちゃんの本気がヒシヒシと伝わってくる!ああぁぁぁやっぱナギも戦いたかったなぁ~!!」
「カエデも戦いよぉ~!でも、カエデもナギも本気を出していなかったタクトくんにすら勝てなかった。だからもっと!もぉっと!!強くならないと!!」
「うん、ナギももっと強くなる!!」
「「やるぞぉ~!!」」
姉弟は次回タクトと相まみえるその日のために日々精進し、さらに強くなる事を誓い合うのであった。
隣で姉弟の意気込みを聞いていた修羅刹とサンは、先ほどまでの姉弟の会話について話し合うのだった。
「なぁ、修羅刹。もしかしてだけどさ、タクトのやつってお前と戦っていた時も本気じゃなかったとかってあの姉弟は言ってる?」
「うん、そう言ってるわね。はぁ~、まさかタクトがそこまで強くなっているとは思いもしなかったわ。それに拙僧もサンもその事に気づかずにコタロウ達が先に気づくなんて……ほんと幼馴染失格だわ」
「だよなぁ~。この俺様がタクトの実力を見誤るとはな。それにこのままじゃあいつだけ先にいってしまうな。そうなるとあいつの事だ……今度は俺様達に遠慮して実力を出そうとしなくなるだろうな。ダンジョン100階層を目指して競走していたとしても、途中で足並みを揃えようとするだろうよ」
「でしょうねぇ……タクトってそういうとこあるわよね。拙僧達もカエデちゃん達に負けていられないわね。幼馴染の意地ってやつをタクトに見せつけてあげないとね!!」
「あぁ、そうだな!ダンジョン踏破の差なんて俺様のプレイヤースキルでカバーしてやるさ!!」
「その意気よ、サン!あ~、でもあなたはもう少し戦術を磨いた方がいいかもしれないわね。あのイノシシっぷりじゃすぐに限界が来るわよ」
「おぃ……!やる気に満ち溢れた状態の時にそんな事を言うんじゃないよ……」
修羅刹とサンはタクトがいらぬ気遣いをしなくて済むようにするため、それぞれレベルアップする事を心に刻んだ。
そんな出来事があった事など露知らず、タクトとコタロウは目の前にいる相手に向かって、雌雄を決するべく両者刃を振りかざす。
先に斬りかかったのは僕からだった。振りかざしたショートソードを重力に従い、コタロウの右肩から斜めに斬るように振り下ろした。
キィィーン!!
コタロウはそれを打刀で刃を合わせ右にいなす。右に打刀を振った事により防御が手薄になった左半身に今度は、左下斜めから右肩に向けてダガーを振り上げた。手首を返して打刀を振り下ろしたとしても、ギリギリ間に合わないと踏んでいたその僕の考えは、間違ってはいなかったが刀独自の仕様に一杯食わされた。
カン……!!
僕が振り上げたダガーから聞こえてきたその音は、自分が想像していた音とはかなりかけ離れたものだった。
コタロウは左腰に携えていた鞘をクイっと左手で掴み持ち上げ、襲いかかる鋭利な刃先から身を守っていた。ショートソードを弾く際に左手を打刀から離して、すぐに鞘で防御出来るようにしていたようだ。最初に勢いよく振ってしまえば後は、慣性が働いた右手だけでも問題なく対応出来ると踏んでいたのだろう。
刀は片手で使用すると二刀流として扱う事が可能になり、両手だと刀と鞘でひとつの武器として使用出来るという、実に重要な事を僕はスッカリ忘れていた。
「コタロウ……それずるくない?」
「いいえ、どこもずるくないです。ちゃんと両手で刀も使っていますし、それに鞘がないとスキルの一閃とか使えないんですよ。ナギのように二刀流のプレイヤーは鞘を武器として使えないので、抜刀術系のスキル全般使用不可だそうです」
「へぇ~、そうなのか。って事は……コタロウはその一閃とかが使えるんだよな。これは実にいい事を聞いた」
「残念ですが、タクト殿。某はそのスキルを習得しておりませんよ」
「それは本当に残念なお知らせだ。コタロウのスキル構成を知れたと思ったのにさ」
「ですが……それ以上に面白いものをお見せできるかと思います」
どちらも決定打となるような一撃が当たる事もなく3分が経過した。
何度も何度も攻撃してはいなされ、逆に攻撃されてはパリィをし続けた事によって僕は、またさらにあの頃に戻りつつあった。
感覚がどんどん研ぎ澄まされていくのが分かる。この短時間でコタロウの動きに遅れる事もなく、難なくついていけている。ほんの5分ほど前まではスキル三種発動しても、全くは歯が立たなかったのが、今では対等どころか僕の方が有利に試合を進めつつあった。
キン!キン!キン!カン!カン!カン!
ふと気づいた時には僕もコタロウも刃を交えながらも、ニコニコ笑いながら楽しく言葉も交えていた。
「コタロウ~!こんな気持ちで戦うのは本当に久しぶりだ。マジでありがとうな!」
「こちらこそ某のわがままに付き合ってもらいまして、ありがとうございます。で、タクト殿の身体も温まってきたことですし……もういいですよね?」
「あぁ……そういう事か。僕はまた勘違いをしていたって訳か。待たせて悪かったなコタロウ、桜滅一刀流を僕に見せてくれ」
「はい!某はこの瞬間を待ちに待っていました!!」
コタロウはそう告げると右手のみで握っていた打刀に左手を添え一文字に薙ぎ払った。
いつもならこんな大ぶりな薙ぎ払いは僕からしたら恰好の的、どうぞパリィして下さいと言っているようなもの。だけど、この時の僕は自分でも理由が分からないがその選択を選ばなかった。
斬撃を躱すために後方に下がった事で、自分との距離が離れた事を確認したコタロウは、ゆっくり静かに打刀を鞘に納めた。
カチン……。
「では……参ります、タクト殿。桜滅一刀流……枝垂桜」
その瞬間、僕は腹部に強烈な一撃を食らい身体が区の字に折れ曲がった。
「ぐはっ!?」
コタロウは瞬間移動でもしたのかと錯覚するほどの速度で間合いを詰めた後、抜刀時の勢いをいかした柄頭による打撃を繰り出していた。
次に僕の視界に映ったものは、スッと僕の真横に移動しているコタロウの影だった。その影は移動しながら鞘から打刀を抜くと同時に振り上げていた。
このままではやられると瞬時に感じ取った僕は、コタロウが狙うであろう位置にダガーとショートソードを十字に重ねて防御した。
キィィィィーンッ!!!!
金属同士がぶつかり合い甲高い音を奏でる。そして僕の両手と首に重圧がのしかかるのであった。
「あっぶねぇ~!危うく頭と身体が離れ離れになるところだった……」
「某はそのつもりで全力で振り下ろしたのですが?それにしてもこれを防ぐとはやっぱりタクト殿にお願いして本当に良かった。では、こんな感じで桜滅一刀流を使っていきます!!」
「気軽に言ってくれるよな。さっきの攻撃ですらこっちはヒヤヒヤしたってのに……でもまぁやるって言った以上は、それも受けた上で僕が勝つ!!」
「それでこそタクト殿です。では、次いきますね」
「その軽い言い方から、あんな技が来るの普通に怖いのだが……」
こうして僕達はまた自分達の世界に入っていくのだった。
桜滅一刀流、枝垂桜は腹部に悶絶するような強烈な一撃を与える事により、自然と首が下がった相手にギロチンをお見舞する技。その首が垂れ下がる様子が枝垂桜に似ている事からこの名が付いたらしい。
「やっとタクトくんとコタロウくんの本気の戦いが見れそうだね!ナギ!!」
「だなぁ、カエデ!ここからでもコタロウと兄ちゃんの本気がヒシヒシと伝わってくる!ああぁぁぁやっぱナギも戦いたかったなぁ~!!」
「カエデも戦いよぉ~!でも、カエデもナギも本気を出していなかったタクトくんにすら勝てなかった。だからもっと!もぉっと!!強くならないと!!」
「うん、ナギももっと強くなる!!」
「「やるぞぉ~!!」」
姉弟は次回タクトと相まみえるその日のために日々精進し、さらに強くなる事を誓い合うのであった。
隣で姉弟の意気込みを聞いていた修羅刹とサンは、先ほどまでの姉弟の会話について話し合うのだった。
「なぁ、修羅刹。もしかしてだけどさ、タクトのやつってお前と戦っていた時も本気じゃなかったとかってあの姉弟は言ってる?」
「うん、そう言ってるわね。はぁ~、まさかタクトがそこまで強くなっているとは思いもしなかったわ。それに拙僧もサンもその事に気づかずにコタロウ達が先に気づくなんて……ほんと幼馴染失格だわ」
「だよなぁ~。この俺様がタクトの実力を見誤るとはな。それにこのままじゃあいつだけ先にいってしまうな。そうなるとあいつの事だ……今度は俺様達に遠慮して実力を出そうとしなくなるだろうな。ダンジョン100階層を目指して競走していたとしても、途中で足並みを揃えようとするだろうよ」
「でしょうねぇ……タクトってそういうとこあるわよね。拙僧達もカエデちゃん達に負けていられないわね。幼馴染の意地ってやつをタクトに見せつけてあげないとね!!」
「あぁ、そうだな!ダンジョン踏破の差なんて俺様のプレイヤースキルでカバーしてやるさ!!」
「その意気よ、サン!あ~、でもあなたはもう少し戦術を磨いた方がいいかもしれないわね。あのイノシシっぷりじゃすぐに限界が来るわよ」
「おぃ……!やる気に満ち溢れた状態の時にそんな事を言うんじゃないよ……」
修羅刹とサンはタクトがいらぬ気遣いをしなくて済むようにするため、それぞれレベルアップする事を心に刻んだ。
そんな出来事があった事など露知らず、タクトとコタロウは目の前にいる相手に向かって、雌雄を決するべく両者刃を振りかざす。
先に斬りかかったのは僕からだった。振りかざしたショートソードを重力に従い、コタロウの右肩から斜めに斬るように振り下ろした。
キィィーン!!
コタロウはそれを打刀で刃を合わせ右にいなす。右に打刀を振った事により防御が手薄になった左半身に今度は、左下斜めから右肩に向けてダガーを振り上げた。手首を返して打刀を振り下ろしたとしても、ギリギリ間に合わないと踏んでいたその僕の考えは、間違ってはいなかったが刀独自の仕様に一杯食わされた。
カン……!!
僕が振り上げたダガーから聞こえてきたその音は、自分が想像していた音とはかなりかけ離れたものだった。
コタロウは左腰に携えていた鞘をクイっと左手で掴み持ち上げ、襲いかかる鋭利な刃先から身を守っていた。ショートソードを弾く際に左手を打刀から離して、すぐに鞘で防御出来るようにしていたようだ。最初に勢いよく振ってしまえば後は、慣性が働いた右手だけでも問題なく対応出来ると踏んでいたのだろう。
刀は片手で使用すると二刀流として扱う事が可能になり、両手だと刀と鞘でひとつの武器として使用出来るという、実に重要な事を僕はスッカリ忘れていた。
「コタロウ……それずるくない?」
「いいえ、どこもずるくないです。ちゃんと両手で刀も使っていますし、それに鞘がないとスキルの一閃とか使えないんですよ。ナギのように二刀流のプレイヤーは鞘を武器として使えないので、抜刀術系のスキル全般使用不可だそうです」
「へぇ~、そうなのか。って事は……コタロウはその一閃とかが使えるんだよな。これは実にいい事を聞いた」
「残念ですが、タクト殿。某はそのスキルを習得しておりませんよ」
「それは本当に残念なお知らせだ。コタロウのスキル構成を知れたと思ったのにさ」
「ですが……それ以上に面白いものをお見せできるかと思います」
どちらも決定打となるような一撃が当たる事もなく3分が経過した。
何度も何度も攻撃してはいなされ、逆に攻撃されてはパリィをし続けた事によって僕は、またさらにあの頃に戻りつつあった。
感覚がどんどん研ぎ澄まされていくのが分かる。この短時間でコタロウの動きに遅れる事もなく、難なくついていけている。ほんの5分ほど前まではスキル三種発動しても、全くは歯が立たなかったのが、今では対等どころか僕の方が有利に試合を進めつつあった。
キン!キン!キン!カン!カン!カン!
ふと気づいた時には僕もコタロウも刃を交えながらも、ニコニコ笑いながら楽しく言葉も交えていた。
「コタロウ~!こんな気持ちで戦うのは本当に久しぶりだ。マジでありがとうな!」
「こちらこそ某のわがままに付き合ってもらいまして、ありがとうございます。で、タクト殿の身体も温まってきたことですし……もういいですよね?」
「あぁ……そういう事か。僕はまた勘違いをしていたって訳か。待たせて悪かったなコタロウ、桜滅一刀流を僕に見せてくれ」
「はい!某はこの瞬間を待ちに待っていました!!」
コタロウはそう告げると右手のみで握っていた打刀に左手を添え一文字に薙ぎ払った。
いつもならこんな大ぶりな薙ぎ払いは僕からしたら恰好の的、どうぞパリィして下さいと言っているようなもの。だけど、この時の僕は自分でも理由が分からないがその選択を選ばなかった。
斬撃を躱すために後方に下がった事で、自分との距離が離れた事を確認したコタロウは、ゆっくり静かに打刀を鞘に納めた。
カチン……。
「では……参ります、タクト殿。桜滅一刀流……枝垂桜」
その瞬間、僕は腹部に強烈な一撃を食らい身体が区の字に折れ曲がった。
「ぐはっ!?」
コタロウは瞬間移動でもしたのかと錯覚するほどの速度で間合いを詰めた後、抜刀時の勢いをいかした柄頭による打撃を繰り出していた。
次に僕の視界に映ったものは、スッと僕の真横に移動しているコタロウの影だった。その影は移動しながら鞘から打刀を抜くと同時に振り上げていた。
このままではやられると瞬時に感じ取った僕は、コタロウが狙うであろう位置にダガーとショートソードを十字に重ねて防御した。
キィィィィーンッ!!!!
金属同士がぶつかり合い甲高い音を奏でる。そして僕の両手と首に重圧がのしかかるのであった。
「あっぶねぇ~!危うく頭と身体が離れ離れになるところだった……」
「某はそのつもりで全力で振り下ろしたのですが?それにしてもこれを防ぐとはやっぱりタクト殿にお願いして本当に良かった。では、こんな感じで桜滅一刀流を使っていきます!!」
「気軽に言ってくれるよな。さっきの攻撃ですらこっちはヒヤヒヤしたってのに……でもまぁやるって言った以上は、それも受けた上で僕が勝つ!!」
「それでこそタクト殿です。では、次いきますね」
「その軽い言い方から、あんな技が来るの普通に怖いのだが……」
こうして僕達はまた自分達の世界に入っていくのだった。
桜滅一刀流、枝垂桜は腹部に悶絶するような強烈な一撃を与える事により、自然と首が下がった相手にギロチンをお見舞する技。その首が垂れ下がる様子が枝垂桜に似ている事からこの名が付いたらしい。
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