上 下
4 / 63
序章 クローズドベータテスト編

第四話 装備品は全て無料

しおりを挟む
 僕は隣に座って足をぶらぶらしている蘇芳院に武器の入手方法について聞いてみる。

「なぁ~、修羅刹……装備品とかどこで手に入れるんだ?この布の服手触りはいいんだけど、さすがにこれで戦うのはちと辛い」

「装備はねぇ、ここから南西に武器とか防具を売っているお店があるからそこで買うのよ」

「購入か……購入って事はあれだろ?お金がいるんじゃないのか」

「それがね、聞いてよ奥さん!全商品無料……タダなのよ!!なんかクローズドベータだからって、わたしが買いに行った時横にいた人が言ってたわ」

「誰が奥さんやねん!!…………ごほん……なるほど。そう言う事なら、とりあえず全部買っておいて損はないな」

 クローズドベータテストは正式サービス開始をする際に不具合などが起こらないようにするため、僕達プレイヤーに実際に遊んでもらって、そこで収集した情報を基により良い製品にしていくテストの一環。

 他にも色んなテストはあったりするらしいが僕はそこまで詳しくない。今回のクローズドベータテストも山河から教えてもらうまで全く知らなかった。

 蘇芳院からその情報を聞くまでは一切気にしていなかったが、この噴水広場を中心に東西南北に広い道が続いている。

「なぁ~、修羅刹……もしかしてこの街って、東西南北でカテゴリー分けしてたりする?」

「うん、正解よ。南西はさっき言ったように武器、北西ならコロシアムとか北東ならギルド、南東には酒場とかあるらしいわ」

「らしい?ってことは行けない場所があるってことか?」

「えぇ、そうよ。というかほとんで行けないわ。行ける場所は南西エリアのみよ」

「ほぉ~、なるほど。いうてもテストだもんな、行けない場所があって当然か~」

 蘇芳院の説明によってこの道を境にざっくりではあるが、エリア分けしている事は分かったが、今のところ行ける場所は武器屋と防具屋、道具屋などがある南西エリアだけらしい。

 蘇芳院から武器や防具の入手方法も教えてもらった事だし、まずは村人Aから卒業するため南西エリアに向かうとしよう。

 僕はベンチから立ち上がりまだ足をぶらぶらして暇だとアピールしている蘇芳院に話しかける。

「それじゃ僕はその南西エリアに行って装備を購入してくるよ。すおっ……修羅刹教えてくれてありがとうな!」 

「いえいえ、どういたしまして!じゃなくて、わたしも一緒に行くわよ」

「えっ、ついてくるのか?僕はてっきりこの後またすぐに敵を殴りに行くものだと思っていたから……」

「タクト……あなたねぇ。はぁ……まぁいいわ。案内するから、このわたしについて来なさい!」

 蘇芳院はそう言うとベンチから勢いよく腰を上げ、ため息まじりにそしてちょっとだけ偉そうに案内を開始する。

 僕は蘇芳院に案内されるがままついて行く事にした。

 広い十字路を南に進み、南西エリアに足を踏み入れる。

 南西エリアはありとあらゆる物が購入できるように色々な種類の店が配置されていた。

 ただ配置されているというわけではなく、例えば武器の場合だと剣という種類でただ分けているだけじゃなくて、剣は剣でも長剣や短剣、刀、両手剣といった感じで細かく区切られている。そのため武器ごとの店舗が用意されていた。

 逆に分けすぎて不便じゃないかと思ったけど、買い物をしている人たちを見てみると、案外そうでもないようでそのおかげで混雑もなく、ゆとりをもって買い物が出来ているようだ。

 僕も彼らに混ざって各店舗で売られている商品を上から順にどんどん購入していく。

 蘇芳院の言っていたとおり商品は全て0リィンで購入する事が出来た。どうやらこのゲームで使用されている通貨はリィンというらしい。
 
 このエリアでの目的も達成した僕は早速購入した装備や防具を装備するため、どこか人目の付かない良い場所はないか蘇芳院に質問する。

「さてと……なぁ修羅刹、早速着替えたいんだけど、どこかいい場所ないか?」

「ここで装備変えたらいいんじゃない?一瞬で装備切り替わるから、別に恥ずかしくなんてないわよ?」

「そうなのか、僕はてっきりリアルと同じように着替えないといけないのかと、そういう事ならここで着替えてしまおう」

 早速装備するため戦利品を取り出そうとしたがそこで手が止まる。

 どうやってさっき購入した商品を取り出すのか、そして装備の仕方も僕は知らないぞ……という事に今更ながら気づいた。

「なぁ……買ったやつとかどうやって取り出すんだ?それとさ、装備ってどうやるの?」 

 ポカンと口を開けこっちを見る蘇芳院。

 その後絶対に僕をニヤニヤしながらいじってくるであろう未来が見えるが致し方無い。こんな時山河がいればスッと先に教えてくれるのに……あいつまだキャラ作ってるのかよ、早くこっちに来てくれ。

 案の定ニヤッと笑みを浮かべる蘇芳院。

「ごめんねぇ、タクト。タクトがこういうゲームにうといのをすっかり忘れていたわ。それじゃ今から言うからちゃ~んと聞いててね♪」

「アー、ハイ。オネガイシマス」 

 僕は感情を殺し棒読みで答える。

 蘇芳院の説明ではこのゲームは【メッセージ】のように声に出す事によって、各システムを操作したり出来るようになっている。先程の購入品を取り出したい場合は【インベントリー】を表示してから、そこに映し出されている各アイテムのアイコンに触れて、それをウインドウ画面から外に出せば取り出し成功となり、実体化して目の前に現れる。

 次に装備の仕方だけどまずは【ステータス】を開く、すると名前やレベル、所持金とこの世界での僕であるタクトの全身が表示される。

 表示されたタクトは上半身と下半身にそれぞれ麻布の服と麻布のズボンを装備していた。

 他に三か所、頭、右手、左手と合わせて全部で五か所装備出来るようだ。それにしてもこの服……やっぱ麻布であってたのか。

 ちょっと話がそれた、その装備したい箇所にインベントリーの装備をそのままドラッグするだけで装備出来る。

 ただインベントリーの画面から外に出すと実体化するため、ステータスと隣り合わせで引っ付けておかないといけないらしい。

 それを見越してなのかステータスを開くと、セットでインベントリーも隣に表示されるようになっていた。

 それ以外にもまだ色々とあるようでそこら辺についても教えてもらったが、今のところは特に使う事はなさそうだ。あるとすれば【ログアウト】ぐらいだろう。

 これを言わないとゲーム終了出来ないらしいから、これだけはちゃんと覚えておかないと、ブチっと切ってゲームを終わらせたらダメだって、前に山河がすごい形相で僕に言った事があった……あの時はマジで怖かったな。

 さて、装備はどうしようかな、修羅刹のように着物系も悪くないけど、似たような服装ってのもなぁ。

 とりあえず軽い装備がいいな、買った物の中で軽そうなやつ、軽そうなやつ……うん、これにしよう。

 武器は実際に戦って選ぶ事にしよう、今装備したところで使い勝手が分からない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

俺のギフト【草】は草を食うほど強くなるようです ~クズギフトの息子はいらないと追放された先が樹海で助かった~

草乃葉オウル
ファンタジー
★お気に入り登録お願いします!★ 男性向けHOTランキングトップ10入り感謝! 王国騎士団長の父に自慢の息子として育てられた少年ウォルト。 だが、彼は14歳の時に行われる儀式で【草】という謎のギフトを授かってしまう。 周囲の人間はウォルトを嘲笑し、強力なギフトを求めていた父は大激怒。 そんな父を「顔真っ赤で草」と煽った結果、ウォルトは最果ての樹海へ追放されてしまう。 しかし、【草】には草が持つ効能を増幅する力があった。 そこらへんの薬草でも、ウォルトが食べれば伝説級の薬草と同じ効果を発揮する。 しかも樹海には高額で取引される薬草や、絶滅したはずの幻の草もそこら中に生えていた。 あらゆる草を食べまくり最強の力を手に入れたウォルトが樹海を旅立つ時、王国は思い知ることになる。 自分たちがとんでもない人間を解き放ってしまったことを。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...