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はじめての工場見学その4
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地下一階は製造した機械兵器を実際に見れるようにした展示エリアだった。多種多様な機械兵器が一体一体台の上でポーズを決めている。近づき過ぎないように四方にロープが張られている。各展示物の正面には説明ものっていたが、リアムの興味を引くようなものはなかった。
地下二階は展示されていた機械兵器を製造する工場兼開発エリアとなっていた。作りかけの機械兵器がレーン上で放置され、エレベーターに一番近くの部屋は会議の途中だったのか、机上には資料が散乱し、ホワイトボードには色々と案が書かれているなかで『水陸両用』だけは、なぜか大きくバツ印がされていた。
地下三階は武器開発兼実験エリア。人間サイズの武器と機械兵器用に巨大化したものが、ガラスで仕切られた大部屋に置かれていて、開発室の対面には実験室と呼ばれる射撃場があった。そこには人間サイズの武器が多数ラックに配置され、奥には人型の目標物が天井から吊るされていた。
リアムは三階の一室で床に腰を下ろして、ここで得た情報について思考を巡らせていた。機械兵器に関する情報は入手できたが、お母さんに関する情報を入手することはできなかった。全階を見て回り見落としが無いかと、何度も往復したが結局無駄骨となった。ただその往復したことにより、一点だけ気になることがあったのを思い出した。それは人間に関連する情報は全て処分されているのに、武器や機械兵器についてだけは処分するどころか、全てそのまま放置されていたことだ。
この施設内で一番価値があるのは、ここに放置された機械兵器だろう。だが、ここの人間はその開発成果よりも職員、顧客情報を優先した。未完成は別として、完成しているものですら展示したままほったらかし。一階、二階はともかく、この地下に広がる空間だけでも五十人規模、もしかしたら百人規模の集落がすっぽり入るほど広大、それが三階分ある。
実際にどれだけの人間がここにいたのかは不明だが、オフィスやこの地下工場を見る限り最低でも数百人は、この施設に常駐していたように思える。それほどの人間がいたのであれば、作業を分散すればこの機械兵器とかも持ち出すことができたはずなのに、それさえせずに彼らはこの施設を手放した。だからこそ、リアムはオフィスのみ綺麗サッパリ処分していたのが妙に引っかかった。
「う~ん、手がかりもなくこれ以上何も見つかりそうにもない。こんな玩具ばっかりあったところでなぁ~」
リアムはそう呟いては、床に散らばった紙を拾い集め丸めてはホワイトボードに投げつける。そんなことを数十回と続けていると、何か金属を叩くような甲高い音がリズムを刻むかのように一定の間隔で、途切れることなく聞こえてきた。
「トントントンツーツーツートントントン? 何の音やろ、これ?」
リアムは発生源を探るために耳を澄ませた。工場内に反響しているため詳細までは判別できないが、どうやらこの音はここよりもさらに地下から聞こえてくるようだ。だけど、この施設は地下三階までしかなかったはず、エレベーターに乗っても階段で下りたとしても地下三階までしか行けなかったし、それより先へと続くルートは存在しなかった。
地下二階は展示されていた機械兵器を製造する工場兼開発エリアとなっていた。作りかけの機械兵器がレーン上で放置され、エレベーターに一番近くの部屋は会議の途中だったのか、机上には資料が散乱し、ホワイトボードには色々と案が書かれているなかで『水陸両用』だけは、なぜか大きくバツ印がされていた。
地下三階は武器開発兼実験エリア。人間サイズの武器と機械兵器用に巨大化したものが、ガラスで仕切られた大部屋に置かれていて、開発室の対面には実験室と呼ばれる射撃場があった。そこには人間サイズの武器が多数ラックに配置され、奥には人型の目標物が天井から吊るされていた。
リアムは三階の一室で床に腰を下ろして、ここで得た情報について思考を巡らせていた。機械兵器に関する情報は入手できたが、お母さんに関する情報を入手することはできなかった。全階を見て回り見落としが無いかと、何度も往復したが結局無駄骨となった。ただその往復したことにより、一点だけ気になることがあったのを思い出した。それは人間に関連する情報は全て処分されているのに、武器や機械兵器についてだけは処分するどころか、全てそのまま放置されていたことだ。
この施設内で一番価値があるのは、ここに放置された機械兵器だろう。だが、ここの人間はその開発成果よりも職員、顧客情報を優先した。未完成は別として、完成しているものですら展示したままほったらかし。一階、二階はともかく、この地下に広がる空間だけでも五十人規模、もしかしたら百人規模の集落がすっぽり入るほど広大、それが三階分ある。
実際にどれだけの人間がここにいたのかは不明だが、オフィスやこの地下工場を見る限り最低でも数百人は、この施設に常駐していたように思える。それほどの人間がいたのであれば、作業を分散すればこの機械兵器とかも持ち出すことができたはずなのに、それさえせずに彼らはこの施設を手放した。だからこそ、リアムはオフィスのみ綺麗サッパリ処分していたのが妙に引っかかった。
「う~ん、手がかりもなくこれ以上何も見つかりそうにもない。こんな玩具ばっかりあったところでなぁ~」
リアムはそう呟いては、床に散らばった紙を拾い集め丸めてはホワイトボードに投げつける。そんなことを数十回と続けていると、何か金属を叩くような甲高い音がリズムを刻むかのように一定の間隔で、途切れることなく聞こえてきた。
「トントントンツーツーツートントントン? 何の音やろ、これ?」
リアムは発生源を探るために耳を澄ませた。工場内に反響しているため詳細までは判別できないが、どうやらこの音はここよりもさらに地下から聞こえてくるようだ。だけど、この施設は地下三階までしかなかったはず、エレベーターに乗っても階段で下りたとしても地下三階までしか行けなかったし、それより先へと続くルートは存在しなかった。
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