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ハッピーハッピーエンディング
しおりを挟む朝倉をレイプしようぜ。普段つるんでいるグループの中でも、体格のいいリーダー格が言い出した。朝倉は同じグループに属する俺の幼馴染だ。とはいっても特別仲がいいわけではなく、グループ内で時々会話をする程度で、そもそも朝倉自身がグループの中でもやや浮いた存在だった。
その理由は朝倉の性別だ。俺達は全員ベータだが、朝倉だけオメガなのだ。朝倉がなぜ俺達のグループに入ったのか、それはわからない。ただ、ベータの中にひとりだけオメガがいるという事実、それは思春期の俺達にとってやや刺激が強く、そのせいかよくない「遊び」へと駆り立ててしまった。
リーダーの言葉に異を唱える者はなかった。俺もまた、思うところはないわけではなかったが、そのまま流されていた。同級生を集団でレイプする……考えれば恐ろしい行為だが、その時の俺たちにとってはやはり「遊び」でしかなかったのだ。男同士のベータとオメガでは妊娠しづらいし、朝倉も気持ちよくなれていいだろう、くらいの気持ちでさえいた。子供の浅はかな考えだ。
かくしてその恐ろしい「遊び」は、リーダーの家で行われることになった。彼の家は両親がほとんど不在のため、遊びの舞台に丁度良かったのだ。目が痛いほどの青空が広がる日曜日だった。ゲームをしようという名目で朝倉を呼び出して、飲み物に薬を混ぜた。誰かが親の使っている睡眠薬を盗んできたのだ。
眠りこんだ朝倉をベッドに転がして、服を脱がせて、俺達は息をのんだ。はじめて見るオメガの体は、俺達と少しだけ違っていた。男性器は未発達で子供のように小さく、ひっくり返して覗き込んだ尻の穴はふっくらと柔らかそうで綺麗だった。朝倉は体格も小さく、男か女か分からない顔をしている。色素の薄い柔らかな髪がシーツに散らばり、触れてかき乱してみたくなった。目を閉じていることで睫毛の長さもはっきりと分かり、普段よりも幼く見えるせいかひどく背徳的な光景だ。
「……すげえ」
誰かが小さく息を呑む。裸で横たわる朝倉は、その場の誰もの性欲を刺激した。俺の下半身に至っては、すでに臨戦態勢に入っていた。思わず口内に唾液が溜まる。今すぐにでも襲いたくて、犯したくてたまらなかった。
白状しよう。俺は朝倉のことが好きだった。恋を自覚したのは小学生の頃だ。長らく片思いをしている。それほど会話するわけでもないのに、どこに惚れたのかと聞かれると困ってしまう。しいて言うならば顔かもしれない。あとは、甘くて柔らかい声と、話し方、はにかむような笑顔、少し鈍くさくて運動も勉強も苦手なところも可愛い。初恋だった。
そんな相手を、俺は今から友人達とレイプする。まるで気が狂ったみたいだ。どうしてこんな酷いこと、恋した相手にできるだろう。しかし正直、朝倉を抱けるチャンスだ、とも思っていたし、少なからず下心があるので、友人の提案を退けることができなかった。どうせ叶わぬ恋なのだから、砕ける前にいい思いがしたい。
「んじゃ、まずは俺からな」
主犯が朝倉にまたがる。乱暴に脚を掴んで開く様子を見ていると、胸の奥がざわつくような嫌な感じがした。無骨な指が朝倉の尻にねじ込まれる。数回中をかき回しただけで、彼はさっさと指を抜いて勃起した性器を取り出した。
「すげえや、オメガって寝てても濡れるんだな」
彼の言った通り、朝倉の尻はいやらしく濡れていた。人の体は不思議だ。
いきり立った凶悪な性器が朝倉のそこに呑み込まれていくのを、俺は食い入るように見つめていた。周りの連中も興奮しているのか息が荒く、自分で扱いている者もいる。すぐに根本近くまでずっぷり収まって、朝倉が僅かにうめき声を上げた。しかし目覚める気配はない。朝倉の体が揺さぶられ、ぎしぎしとベッドが悲鳴を上げる。何をされても反応のない朝倉は、造形の美しさも相まってまるで人形のようだった。
あの朝倉が汚されている。
子供のころから懸想し続けた彼が、目の前で犯されている。
腹の奥に何か激しい感情が渦巻くのと同時に、体が熱くなり、射精しそうになった。こんな酷いことはやめてくれ。朝倉を傷つけないでくれ。そう掴みかかりたい気持ちと同じくらいに、早く俺も朝倉を抱きたい、汚したい、犯したい、なんなら今、この光景を見ながらめちゃくちゃに扱いて出したい気持ちもあって、頭が混乱した。
それから朝倉は代わる代わる犯され、俺の番が回ってきたのは最後だった。汚されきった朝倉の体を抱いて、俺は三擦り半どころか入れた瞬間に射精し、情けなく童貞を卒業した。
朝倉が目覚めたのは、一度で足りなかった俺が猿のように腰を振っている最中だった。
「ぁ、……え」
朝倉は状況が理解できないのか、呆然としながら俺を見上げている。やけに興奮してしまって、腹の奥を突き破る勢いで腰をたたきつけた。
「ひいっ!? あっ、いや、ぁあっ!? いやあぁあああっ!!」
途端に激しい悲鳴が上がり、体を突き飛ばされる。ベッドの端まで転がったが、俺はすぐに起き上がり、逃げようとする朝倉の腕を掴んだ。体液で汚れたシーツの上に引きずり戻し、暴れる体を無理やり組み敷く。まだ薬が効いているはずなのに、朝倉の抵抗は強かった。それが尚更、俺の情欲に火をつける。
「うそだ、いやっ、やめて、やめてよ、ひっ、あっ、あぁあっ!」
濡れそぼった穴に自身を押し込んで、暴れる体を乱暴に揺さぶる。朝倉の中は死んでしまいそうに気持ちよくて、どこを突いても反応する朝倉がまた愛しかった。奥を突くたびに朝倉の腰はびくびく震えて、柔らかな肉で俺を抱き込んでくれる。離すまいとするようにしがみつく肉壁に、俺は何度でも射精できそうだと思った。
「も、やぁっ、や、ひっ、はひっ……」
「お、おい、その辺にしといたほうが……」
誰かの声がしたが、邪魔だなとしか思わなかった。そういえば友人もこの場にいるんだっけ。どうでもいいや。逃げる腰を掴んで、がむしゃらに揺すって、どれだけやっても足りないような気がした。
視界が白く弾け飛んで、朝倉の中でまた射精する。ほんの一瞬だけ落ち着いたあと、すぐに熱がぶり返した。もう朝倉の中はみんなの精液でぐちゃぐちゃになっていて、下腹が少し膨れている。苦しい、と弱々しい声がして、背筋に痺れが走った。
「苦しい? でも気持ちいいでしょ。オメガってインランなんだろ? 気持ちいいってコッチは言ってるよ」
揺さぶりながら、繋がっているところを指でなぞる。溢れた精液でどろどろに濡れていた。朝倉の顔が泣きそうに歪んで、ちがう、と消え入りそうな声がする。
「そんなんじゃ、ぁ、や、ちが、いやだっ、いや、あぁっ」
「嫌じゃないよね。ちんちん美味しいって、食いついてくるよ」
嫌がる体をひっくり返し、背後から覆い被さる。無防備に曝された項が目に入って生唾を呑んだ。腰を叩きつけながら、無意識にそこに噛みつく。ベータの俺ではなんの意味もない行為だが、衝動を抑えきれなかった。
「ひぃいいぃっ……!?」
途端に、朝倉が甲高い悲鳴を上げて達する。中を激しく締め付けられて、また朝倉の奥で射精してしまった。子宮の中まで犯すように注ぎ込んで、それでもまだ熱は収まらない。体が、頭が、どうにかなってしまったようだ。朝倉を貪ることしか考えられなくて、もう自分を止めることができない。
「な、んで……、……べーた、じゃ……」
「ん……そうだよ……なんか、おいしそうだったから」
誰かの「これはまずいぞ」という声が聞こえたが、無視した。ぐったりと今にも気を失いそうな体を抱え直して、奥まで貫く。朝倉の中が柔らかく蠢いて、まるで朝倉の子宮が俺を求めているようだ。子宮口に亀頭を擦り付けたまま小刻みに揺さぶる。朝倉の体はびくびくと痙攣して悦んでいた。力が抜けてぐったりと伏せってしまった朝倉の尻に乗って、逃げ場を奪うように上から叩き込む。朝倉はもう指先まで脱力してしまったみたいで、手足を投げだし、快楽に打ち震えるしかできなくなっていた。
「ぁ、はぁっ、あ、ぁ、ひゃ、あ、やぁっ、も、らめ、あひっ、ひぃっ、ぁーっ、あっ」
「あさくら……あさくらぁ……っ」
視界が回る。体が、頭が熱い。心臓が爆発しそうだ。もう一度屈んで朝倉の項に歯を立てた。肉を食いちぎらんばかりに噛みしめて、そのまま舐めしゃぶる。わずかに鉄の味がして、それがまた俺を興奮させた。
もうやめろよ、と腕を掴まれたところで、俺はようやく我に返った。気が付いた時には朝倉はひどい顔色で失神していて、周囲の友人達まで青ざめた顔をしている。集団レイプを提案した本人でさえ狼狽えているのだから、なんだか滑稽に思えてしまった。
その後朝倉をどうするか話し合い、目が覚めるまで待って口封じをしたあと、家に返すことが決まった。案の定朝倉は目覚めると激しく怯えて逃げようとしたが、俺達の必死の説得、いや脅迫により、誰にも口外しないと約束し、逃げるように帰っていった。俺はというと、しばらくは行為の余韻で頭がぼんやりしていて、自分が何をしたのか、よく分かっていないままだった。ただ、逃げ帰っていった朝倉から、どこか甘い香りがしてきたのを覚えている。それは行為の最中、ずっと俺を昂らせていた、朝倉の匂いだ。
「その年頃ではまだホルモンも不安定ですから、誤診断、ということもあるんですよ。アルファやオメガの場合、発達が遅かったりするとごく稀にベータと診断されてしまったりするんですね」
医者の説明をぼんやりと聞きながら、俺は手元にある紙を不思議な気持ちで眺めていた。そこには、「検査結果:アルファ」と書かれている。同じ紙を俺は一年ほど前に見たことがあった。その時は、同じ欄にベータと書かれていたはずだ。
「そんなことがあるんですね」
「珍しいですけどね。たまにあるんですよ」
おめでとうございます、あなたはアルファですよ。そう微笑んだ医者に、俺も曖昧に笑みを返した。昨日までベータだったのに、突然アルファだと言われても実感がわかない。俺はアルファの中でもその因子が薄く、そのため生理的にも能力的にも限りなくベータに近いのだいう。それではアルファである意味がないような気がしたが、俺の口角はなぜか上がっていた。
医者の説明を聞いた後、病院を出てすぐに向かったのは朝倉の家だった。あの事件があってから、朝倉は学校に来ていない。SNSの更新も止まっていて、電話やメッセージも無反応だ。
朝倉の身に何が起きたのか、知っているのは俺達だけだ。精神を病んで病院に通っているらしいと噂も流れていたが、事件のことを思えば真実かもしれない。両親も突然息子が心を病んだ理由を知らないままのようだ。なにしろ、俺達はあれからなんのお咎めも受けていない。まるで事件自体がなかったことにされているようだった。
朝倉の自宅は閑静な住宅街の一角にある。平凡な造りの一軒家の前に立ち、インターホンを鳴らす。反応はなかった。もう一度鳴らすが、やはり反応はない。試しにドアを引いてみたら、あっさりと開いてしまった。両親は仕事で不在だろう。靴を脱いで、無断で上がり込む。足音を殺すこともせず、二階にある朝倉の部屋を目指した。
「朝倉」
ノックもせずドアを開ける。机に向かっている朝倉の背中が一瞬見えたあと、弾かれるように振り返り立ち上がった。
「朝倉、話があるんだ」
「来ないで!」
朝倉が慌てた様子で引き出しを漁る。取り出したのは一本のカッターナイフだった。勢いよく刃が伸びて、こちらに向けられる。
「俺を刺すの?」
「来るなら殺す」
「番を傷つけることはできないよ」
言い放った途端、朝倉の顔から一斉に血の気が引いていった。カッターナイフを握りしめたまま震えている。俺は笑い出してしまいそうなのを堪えて、一歩一歩、ゆっくりと朝倉へと近づいて行った。
「聞いてよ、朝倉」
声が弾むのを抑えられない。
あのとき、アルファの俺が朝倉の項を噛んだことで、俺達は「番」になっていた。気付いたのは、ほんの少しの違和感からだ。これまでの淡い恋とは違った意味で体と心が朝倉を求めるようになり、朝倉が側にいないことにはっきりとした苦痛を覚えるようになった。それから性欲だ。これまでは朝倉以外、適当なアダルトビデオでも消化できていたものが、朝倉を求めて苦しむようになっていた。朝倉と会えない期間が長くなればなるほど症状は悪化して、体調まで崩すようになった。吐き気と震え、頭痛と倦怠感、とても恋だけの症状ではない。妙に思って病院を受診し、事実が判明したというわけだ。これはただの恋の病なんかではない。番は二人で一つの存在だ。離れれば体調を崩すほどにお互いを求めあう。生理的な現象だ。
事のあらましを説明すれば、朝倉の顔はさらに青くなり、病人のようになった。まだ震えは止まらないようだ。カッターナイフを握りしめる指先は、力を入れ過ぎて青白くなっている。かわいそうに。どうにかして落ち着かせてやれないかと考えていると、朝倉が肩で息をしながら震えた声を上げた。
「君は、自分が何をしたか分かってる?」
「分かってるよ。君のうなじを噛んで、番にした。俺達は番になったんだ」
「分かってないじゃないか!」
喉が避けるような叫び声が部屋の空気を揺らす。カッターナイフは突き出されたままだが、俺は構わず距離を詰める。刃先は今にも俺に触れそうだった。
「僕は……っ!」
あと一歩、手が届くかといったところで、朝倉が動いた。咄嗟に身構えるが、ナイフの刃先が向かったのは俺ではなかった。目を瞠る俺の前で、彼の白い首筋に刃が当てられる。震えるそれが今にも皮膚を切り裂こうとしていた。
「僕は君のことが好きだったんだ! 子供のころからずっと! ずっと好きだった人に裏切られた気持ち、君に分かるかい!?」
「……え?」
カッターナイフを取り上げようと、伸ばした手が止まる。皮膚が裂けて鮮血が滴り落ちていった。今すぐに止めなければならないと思うのに体が動かない。朝倉の言葉が頭に回る。好きだった? 誰が、誰を? 理解が追い付かず、混乱が深まる。その間にも朝倉の首からは鮮血が流れ、服を汚していった。
「君にこの苦しみが分かるのかい? わからないよね。だったら僕は今ここで死んでやる!」
「それは、俺への復讐のため?」
朝倉が息を呑み、俺を見つめる。カッターナイフを握る手は震えたままだ。
「そうだよ、復讐だ……」
「俺たちはもう番になったんだ。そんなことしなくてもいいだろ?」
「だからこそだよ」
今にも泣きそうに朝倉の顔が歪み、蔑むような笑みを浮かべた。首筋からは血が滴り続け、白いシャツがみるみるうち真っ赤に染まっていく。出血量が多い。あまり時間を引き延ばしたくはなかった。
「僕の恋心を蹂躙した罰だよ。君は番を喪って永遠に苦しむんだ」
「だからって君が命を投げ捨てる理由にはならない」
「それでも僕は、……っ!!」
一気に朝倉と距離を詰め、カッターナイフを取り上げる。抵抗はあったが、朝倉は俺より背も低く腕力でも劣る。簡単に奪うことができた。血まみれの刃を仕舞い、部屋の隅へ投げ捨てる。すかさず駆け寄ろうとした朝倉の腕をつかみ、近くのベッドに押し倒した。
「やめろっ! いやだ!」
「落ち着いて、朝倉。俺と朝倉は、番なんだ」
「うるさいっ!!」
暴れる朝倉を無理矢理抱きすくめる。暫くは逃げようと手足をばたつかせていたが、辛抱強く抱き続けていれば、そのうちに大人しくなった。頭やら背中やらを殴られたが、痛みはそれほど感じない。むしろ、番である朝倉と触れ合っている心地よさのほうが勝った。
「うれしいな……俺達、両想いだったんだ」
「よくもそんなことが言えるね」
朝倉の声はひどく冷え切って震えていた。番が出来たばかりでまだ戸惑っているのかもしれない。オメガはただでさえ繊細な生き物だ。レイプされたばかりでもあるし、情緒が不安定になるのも仕方がない。
「本当にうれしいんだよ。朝倉と番になれて」
自然と心が、声が弾む。嬉しさのあまり涙が出そうになって、朝倉の頭に鼻先をうずめた。深く息を吸い込めば、甘いシャンプーの香りがする。ああ、かわいい、いとしい俺の朝倉。こうして抱きしめることができて、幸せだよ。
朝倉をレイプする、そう聞いたとき、俺は朝倉との関係が終わることを覚悟していた。友達だと思っていた相手からのひどい裏切りに、朝倉はきっと傷つくだろうし、俺達を許さないだろう。朝倉の性格ならば騒ぎ立てることはせず、ただ静かに俺達から距離を取り、消える選択をするに違いない。そう思っていたし、最悪の場合、朝倉が自殺することも考えた。実際にそうなりかけた。ともかく俺は、最初で最後になってもいいと思っていたから、迷うことなく朝倉をレイプすることができたのだ。そのせいで朝倉が死んでしまったとしても、それはただの結果でしかないので仕方がないと諦めただろう。俺の目的はただ朝倉に触れることだけだった。馬鹿な連中の気狂いな提案に感謝さえした。俺一人では指の一本すら触れられないままだったから、きっかけを与えられて、これ以上のチャンスはないと思ったのだ。「仲間に唆されたから」と言い訳もできる。俺は悪くない。俺のせいじゃない。主犯は俺じゃない。
それが、蓋を開けてみればどうだろうか。朝倉は俺のことが好きで、俺も朝倉のことが好きで、なんて都合のいい展開だろう。これが小説だとすれば、俺はひどいご都合主義だと作者を軽蔑する。この場合、軽蔑すべきはこの運命を動かした神様だろうか。いいや違うな。少なくとも俺は神に感謝すべきだ。
ご都合主義でありがとう。すべてを捨てる覚悟で恋に挑んだ俺に、神様は最高のハッピーエンドを与えてくれた。恋愛成就。素晴らしい。俺と朝倉は、二つで一つの番になった。朝倉がオメガでよかった。俺がアルファでよかった。仲間が馬鹿でよかった。朝倉をレイプしてよかった。朝倉と番になれて、本当によかった。すべてがプラスに働いた。俺は運に恵まれている。
朝倉の顔を覗き込むと、感情の読めない暗い瞳と目が合った。そこから透明なしずくが滴り落ちて、頬を濡らしている。嬉しいのだろうか。俺も嬉しいよ。朝倉を優しく抱きしめ、宥めるように頭をなでながら、携帯電話を操作する。手早く救急車を呼ぶと、いつの間にか朝倉は意識を手放していた。
「ふたりで幸せになろうね」
白い額に口づける。その間も朝倉の首からはどくどくと鮮血が滴り続け、俺の服まで、どす黒く染め上げていった。
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