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目が覚めてはじめに見たものは、ダイニングテーブルに置かれた合鍵と置き手紙、それからプラスチック製の蓋が置かれた一人前のパスタだった。
『本日でお暇をいただきます。お世話になりました。旦那様にもお伝えください』
文末には美谷明子と記名がある。数カ月前から雇われていた家政婦だ。確認したあと、朔は無言で置き手紙を破り、くずかごに放り込んだ。
この家の使用人が急に辞めるのは、何もはじめてのことではない。仕事内容は主に炊事洗濯掃除などの一般的な家事で、そう過酷な内容でもないし給料も悪くはない。だがこの家に雇われる人間は、長くても半年程度で去ってしまうのだ。
もしかしたら自分に問題があって辞めてしまうのかもしれないと朔は思ったことがある。だがあいにく自分の何が問題だったのか全くもって分からない。朔はあくまでも普段通りに過ごしていたつもりだった。朝になったら起きて家政婦の作った食事をとり、お気に入りのリクライニングチェアでぼんやり過ごす。時々本を読んだり、テレビを見たり、日記を書き、昼になったら家政婦の作った食事をとり、たまに話しかけられれば二、三会話を交わすだけ。そしてまたぼんやり過ごし、あるいは昼寝して、夜になれば家主の聖慈が帰ってくるから、家政婦が用意した食事を一緒にとる。たいがい、そんな代わり映えしない日常の繰り返しだった。だから、なぜ人がいなくなるのか朔にはよく分からない。
美谷の雇い主は自分ではなく聖慈だ。聖慈にも伝えなければならないと思い、持たされているスマートフォンで唯一登録されているアドレスにメールを送る。一息ついて、冷めたパスタを口に運んだ。少し固くなった麺が口の中に残る。甘みが強いミートパスタだった。伸びた髪が一緒に口の中に入って鬱陶しかった。
朔は一度も外へ出たことがない。物心ついた頃から朔はこの家にいて、決して外出しないよう言い聞かされて育ってきた。もちろん学校にも通っていないし、そもそも朔は自分の正確な歳すら分からない。家主である聖慈は自分の親のような存在だが、血が繋がっているかどうかは不明だ。自分達は血縁だとはっきりと言われたこともなければ、母親らしき存在も見たことがない。聖慈を父と呼んだこともない。まるで友人のように名前で呼んでいる。
この家にやってくる聖慈以外の人間は雇われた家政婦のみだった。朔が知る外の世界は、広い窓から眺める景色だけだ。随分と高いところにあるらしく、見下ろす街の姿はまるで小さな玩具のようだ。広がる空はどこまでも遠く、朔は毎日、未知なる外の世界に想いを馳せている。朔は、この家の中と、聖慈、そして家政婦、それだけの世界しか知らない。
朔に知識を与えたのは、チャンネル数の少ないテレビと、聖慈が選んできた沢山の本だ。その二つがあれば退屈しのぎにはなったし、ある程度の情報を仕入れることもできた。持たされているスマートフォンという電子端末は、聖慈との連絡に使うだけだ。それ以外にもちょっとしたゲームは入っていたが、興味もなければやり方もよく分からないので、あってないようなものだった。
不自由だと思ったことはないが、ぼんやりとした孤独感を覚えることはある。窓の外にはこれだけの広大な世界があるというのに、自分はこの狭い箱の中で、一日の大半をひとりきりで過ごすのだ。家政婦はあまり話し相手になってくれないし、次々と変わっていく相手に朔はなかなか心を開けない。必然的に朔の話し相手は聖慈ただ一人になる。聖慈の帰宅と、彼と過ごす時間だけが、毎日の楽しみで糧だった。
孤独な食事を終えて、食器はそのまま放置し、窓辺のリクライニングチェアに倒れ込む。ここは一番日当たりがよく、朔のお気に入りの場所だ。大きな窓からは青空の下に広がる街が一望できる。その中に聖慈の姿はないかと探すのも朔の日課だ。
窓ガラスに自分の顔が反射して映り込む。多分、平凡的な顔立ちなのだろう。どちらかというと丸顔の垂れ目で、鼻は小さくて丸く、唇は薄い。白すぎる肌はどこか病的でもあって、伸びた髪は兄と同じく色素が薄い。
窓に映る自分の姿をまじまじと眺めたあと、思い出すのは聖慈のことだ。聖慈は自分とは違って芸能人のように整った顔立ちをしている。自分と似ている点といえば、全体的に色素が薄いことくらいだろうか。聖慈の瞳は涼し気な切れ長で、鼻筋はすっきり通っている。朔ほどではないとはいえ髪が伸びているのに、だらしない印象が少しもなくむしろ洒落て見える。きっと街を歩けば多くの人が振り返るだろう。
「……はあ」
なんとなくため息をつき、窓から視線を逸らす。近くにあったリモコンを操作してテレビをつけると、小難しい議論をしているらしい中年の男女が映った。上のほうに『バイオテクノロジーの進化と倫理問題』という文字が浮かんでいる。よく分からない。
物心ついたときから変わらないこの生活の中でも、朔にも芽生える感情はあった。本やテレビで知った家族というのは、基本的には無条件に愛を注ぎ支え合うものだという。自分を愛してくれるものがいるのならば、その者のために自分も努力をし、相手を支えられるようになるべきである。
たとえば、盲目の親を懸命に支える子の話。ものを知らない朔にとっては、そこに描かれていたものはあまりに美しく尊い愛だった。まさしく無償の愛。こころからの嘘偽りなき慈しみ。朔は聖慈のことを真っ先に思い浮かべた。己が聖慈に向ける愛情も変わらぬものだと信じている。であるならば当然、自分もいつか聖慈の支えとなる存在になりたいものだ。そして一人の人間として隣に立って、支えあいながら同じ世界を見たい。
一日という時間は、何もせず過ごすにはあまりにも長く退屈だ。朔はたいがい、日向ぼっこをしながらうたた寝をするか、本やテレビで暇を潰すか、日記をしたためるかして過ごしている。今日はそのどれも気分ではなかったし、テレビから流れる音声はただの雑音でしかなかった。
目に入ったのは、ダイニングテーブルに置き去りにされた食器だ。いつもあれを片付けるのは家政婦の役目だった。はたと朔は思いつく。あれを自分が片付けることができたらいいのに。
もちろん、食器だけではない。いつも家政婦がやっているような、掃除や洗濯、そして料理、それら全てこの自分がこなすことが出来たら、家政婦を雇わずとも済むし、聖慈の役にも立てるのではないか。なにより、毎日腐るほどある時間を効率的に消化することができる。
これは素晴らしい考えだと、途端に朔の心は躍った。思い立ったが吉日とばかりに、朔は食器を台所へ運ぶと、流し台の前に立ち、腕まくりをした。水の出し方くらいならば分かる。しかし食器を洗うといえば、何を使えばいいだろう。
目に止まったのは、流し台に並んだ三つのボトルと、四角い物体だ。以前、家政婦が食器を洗う様子をこっそり盗み見たことがある。その時の彼女は、確かこのうちのどれかを、この四角いものに垂らして泡立たせていた。試しに手に取ってみると、見た目よりも随分と柔らかく、湿っていた。少し驚きながら、適当に選んだボトルの中身を垂らしてみる。何度か握ってみると、どんどん泡立っていった。正解だったようだ。誇らしげに思いながら食器にそれを押し付ける。
「っあ!」
しかし思っていた以上に、その泡は滑りやすく出来ていた。つるりと手を離れていく感触と、ガシャンという大きな音のあと、手にしていたはずの食器は、気づくと流し台の底で粉々になっていた。頭から血の気が引いていく。流しっぱなしの水の音がますます朔を追い詰めた。
慌てて手を洗ったあと、水を止め、砕けた食器をどうしようかと頭を悩ませる。このまま放置していては聖慈に見つかってしまうし、だからといってどう片付ければいいのか分からない。散々悩んだ挙げ句、台所の戸棚に置かれたビニール袋が目に止まった。慌ててそれを引っ掴むと、破片を注意深く拾いながら袋の中に放り込んでいく。
「いたっ」
しかしいくら注意していても、陶器の破片は立派な凶器だ。焦るあまり指先を切ってしまい、ちりりとした痛みに顔を顰めた。しかし、ともかくは証拠を隠滅しなければならない。指の痛みも我慢して一通り破片を回収し終えると、袋の口をきつく縛りゴミ箱の後ろに隠した。
「……もう、さいあく……」
とりあえずは怪我をした指をどうにかしようと思って、また途方に暮れた。こういうとき絆創膏や包帯を使うはずだが、それがどこにあるのか朔には見当がつかない。仕方なくリビングにあったティッシュで傷口を押さえていると、そのうち出血も止まったので、血のついたティッシュはゴミ箱に放り込んだ。
次はどうしようかと部屋を歩き回り、辿り着いたのは洗面所だ。洗濯かごには少量の洗濯物が溜まっている。これを洗っておいたら、聖慈にも褒められるだろう。朔は意気揚々と洗濯機の前に立ち、そこでまた困り果てた。沢山ボタンが並んでいて、どれを押せばいいのか分からない。ひとまず洗濯物を放り込めばいいことは分かるが、その先がさっぱり想像できないのだ。機械の操作まで必要となると、今度こそ壊してしまったときが大変だ。
諦めてリビングに戻り、今度は掃除をすることにした。家政婦がいつも使っている、掃除機という道具を見つけたい。それも探し回ってみたが、やはりどこにあるか分からなかった。
「クソッ!」
突然こみ上げてきた苛立ちから、ソファーを力の限り蹴り上げる。それでも怒りは収まらず、クッションを壁に向かって投げつけ、それでもまだ足りず、リモコンやら本やら、近くにあったものを衝動のまま投げつけた。
「ふーっ……ふぅーっ……」
自分は何も出来ない。
怒りが去ると、今度はとてつもない虚しさに襲われた。ふらふらとした足取りで寝室に入ると、疲れた体をベッドに投げ出す。眠気などなかった筈だが、目を閉じるとすぐに微睡みの底へと沈んでいった。
『本日でお暇をいただきます。お世話になりました。旦那様にもお伝えください』
文末には美谷明子と記名がある。数カ月前から雇われていた家政婦だ。確認したあと、朔は無言で置き手紙を破り、くずかごに放り込んだ。
この家の使用人が急に辞めるのは、何もはじめてのことではない。仕事内容は主に炊事洗濯掃除などの一般的な家事で、そう過酷な内容でもないし給料も悪くはない。だがこの家に雇われる人間は、長くても半年程度で去ってしまうのだ。
もしかしたら自分に問題があって辞めてしまうのかもしれないと朔は思ったことがある。だがあいにく自分の何が問題だったのか全くもって分からない。朔はあくまでも普段通りに過ごしていたつもりだった。朝になったら起きて家政婦の作った食事をとり、お気に入りのリクライニングチェアでぼんやり過ごす。時々本を読んだり、テレビを見たり、日記を書き、昼になったら家政婦の作った食事をとり、たまに話しかけられれば二、三会話を交わすだけ。そしてまたぼんやり過ごし、あるいは昼寝して、夜になれば家主の聖慈が帰ってくるから、家政婦が用意した食事を一緒にとる。たいがい、そんな代わり映えしない日常の繰り返しだった。だから、なぜ人がいなくなるのか朔にはよく分からない。
美谷の雇い主は自分ではなく聖慈だ。聖慈にも伝えなければならないと思い、持たされているスマートフォンで唯一登録されているアドレスにメールを送る。一息ついて、冷めたパスタを口に運んだ。少し固くなった麺が口の中に残る。甘みが強いミートパスタだった。伸びた髪が一緒に口の中に入って鬱陶しかった。
朔は一度も外へ出たことがない。物心ついた頃から朔はこの家にいて、決して外出しないよう言い聞かされて育ってきた。もちろん学校にも通っていないし、そもそも朔は自分の正確な歳すら分からない。家主である聖慈は自分の親のような存在だが、血が繋がっているかどうかは不明だ。自分達は血縁だとはっきりと言われたこともなければ、母親らしき存在も見たことがない。聖慈を父と呼んだこともない。まるで友人のように名前で呼んでいる。
この家にやってくる聖慈以外の人間は雇われた家政婦のみだった。朔が知る外の世界は、広い窓から眺める景色だけだ。随分と高いところにあるらしく、見下ろす街の姿はまるで小さな玩具のようだ。広がる空はどこまでも遠く、朔は毎日、未知なる外の世界に想いを馳せている。朔は、この家の中と、聖慈、そして家政婦、それだけの世界しか知らない。
朔に知識を与えたのは、チャンネル数の少ないテレビと、聖慈が選んできた沢山の本だ。その二つがあれば退屈しのぎにはなったし、ある程度の情報を仕入れることもできた。持たされているスマートフォンという電子端末は、聖慈との連絡に使うだけだ。それ以外にもちょっとしたゲームは入っていたが、興味もなければやり方もよく分からないので、あってないようなものだった。
不自由だと思ったことはないが、ぼんやりとした孤独感を覚えることはある。窓の外にはこれだけの広大な世界があるというのに、自分はこの狭い箱の中で、一日の大半をひとりきりで過ごすのだ。家政婦はあまり話し相手になってくれないし、次々と変わっていく相手に朔はなかなか心を開けない。必然的に朔の話し相手は聖慈ただ一人になる。聖慈の帰宅と、彼と過ごす時間だけが、毎日の楽しみで糧だった。
孤独な食事を終えて、食器はそのまま放置し、窓辺のリクライニングチェアに倒れ込む。ここは一番日当たりがよく、朔のお気に入りの場所だ。大きな窓からは青空の下に広がる街が一望できる。その中に聖慈の姿はないかと探すのも朔の日課だ。
窓ガラスに自分の顔が反射して映り込む。多分、平凡的な顔立ちなのだろう。どちらかというと丸顔の垂れ目で、鼻は小さくて丸く、唇は薄い。白すぎる肌はどこか病的でもあって、伸びた髪は兄と同じく色素が薄い。
窓に映る自分の姿をまじまじと眺めたあと、思い出すのは聖慈のことだ。聖慈は自分とは違って芸能人のように整った顔立ちをしている。自分と似ている点といえば、全体的に色素が薄いことくらいだろうか。聖慈の瞳は涼し気な切れ長で、鼻筋はすっきり通っている。朔ほどではないとはいえ髪が伸びているのに、だらしない印象が少しもなくむしろ洒落て見える。きっと街を歩けば多くの人が振り返るだろう。
「……はあ」
なんとなくため息をつき、窓から視線を逸らす。近くにあったリモコンを操作してテレビをつけると、小難しい議論をしているらしい中年の男女が映った。上のほうに『バイオテクノロジーの進化と倫理問題』という文字が浮かんでいる。よく分からない。
物心ついたときから変わらないこの生活の中でも、朔にも芽生える感情はあった。本やテレビで知った家族というのは、基本的には無条件に愛を注ぎ支え合うものだという。自分を愛してくれるものがいるのならば、その者のために自分も努力をし、相手を支えられるようになるべきである。
たとえば、盲目の親を懸命に支える子の話。ものを知らない朔にとっては、そこに描かれていたものはあまりに美しく尊い愛だった。まさしく無償の愛。こころからの嘘偽りなき慈しみ。朔は聖慈のことを真っ先に思い浮かべた。己が聖慈に向ける愛情も変わらぬものだと信じている。であるならば当然、自分もいつか聖慈の支えとなる存在になりたいものだ。そして一人の人間として隣に立って、支えあいながら同じ世界を見たい。
一日という時間は、何もせず過ごすにはあまりにも長く退屈だ。朔はたいがい、日向ぼっこをしながらうたた寝をするか、本やテレビで暇を潰すか、日記をしたためるかして過ごしている。今日はそのどれも気分ではなかったし、テレビから流れる音声はただの雑音でしかなかった。
目に入ったのは、ダイニングテーブルに置き去りにされた食器だ。いつもあれを片付けるのは家政婦の役目だった。はたと朔は思いつく。あれを自分が片付けることができたらいいのに。
もちろん、食器だけではない。いつも家政婦がやっているような、掃除や洗濯、そして料理、それら全てこの自分がこなすことが出来たら、家政婦を雇わずとも済むし、聖慈の役にも立てるのではないか。なにより、毎日腐るほどある時間を効率的に消化することができる。
これは素晴らしい考えだと、途端に朔の心は躍った。思い立ったが吉日とばかりに、朔は食器を台所へ運ぶと、流し台の前に立ち、腕まくりをした。水の出し方くらいならば分かる。しかし食器を洗うといえば、何を使えばいいだろう。
目に止まったのは、流し台に並んだ三つのボトルと、四角い物体だ。以前、家政婦が食器を洗う様子をこっそり盗み見たことがある。その時の彼女は、確かこのうちのどれかを、この四角いものに垂らして泡立たせていた。試しに手に取ってみると、見た目よりも随分と柔らかく、湿っていた。少し驚きながら、適当に選んだボトルの中身を垂らしてみる。何度か握ってみると、どんどん泡立っていった。正解だったようだ。誇らしげに思いながら食器にそれを押し付ける。
「っあ!」
しかし思っていた以上に、その泡は滑りやすく出来ていた。つるりと手を離れていく感触と、ガシャンという大きな音のあと、手にしていたはずの食器は、気づくと流し台の底で粉々になっていた。頭から血の気が引いていく。流しっぱなしの水の音がますます朔を追い詰めた。
慌てて手を洗ったあと、水を止め、砕けた食器をどうしようかと頭を悩ませる。このまま放置していては聖慈に見つかってしまうし、だからといってどう片付ければいいのか分からない。散々悩んだ挙げ句、台所の戸棚に置かれたビニール袋が目に止まった。慌ててそれを引っ掴むと、破片を注意深く拾いながら袋の中に放り込んでいく。
「いたっ」
しかしいくら注意していても、陶器の破片は立派な凶器だ。焦るあまり指先を切ってしまい、ちりりとした痛みに顔を顰めた。しかし、ともかくは証拠を隠滅しなければならない。指の痛みも我慢して一通り破片を回収し終えると、袋の口をきつく縛りゴミ箱の後ろに隠した。
「……もう、さいあく……」
とりあえずは怪我をした指をどうにかしようと思って、また途方に暮れた。こういうとき絆創膏や包帯を使うはずだが、それがどこにあるのか朔には見当がつかない。仕方なくリビングにあったティッシュで傷口を押さえていると、そのうち出血も止まったので、血のついたティッシュはゴミ箱に放り込んだ。
次はどうしようかと部屋を歩き回り、辿り着いたのは洗面所だ。洗濯かごには少量の洗濯物が溜まっている。これを洗っておいたら、聖慈にも褒められるだろう。朔は意気揚々と洗濯機の前に立ち、そこでまた困り果てた。沢山ボタンが並んでいて、どれを押せばいいのか分からない。ひとまず洗濯物を放り込めばいいことは分かるが、その先がさっぱり想像できないのだ。機械の操作まで必要となると、今度こそ壊してしまったときが大変だ。
諦めてリビングに戻り、今度は掃除をすることにした。家政婦がいつも使っている、掃除機という道具を見つけたい。それも探し回ってみたが、やはりどこにあるか分からなかった。
「クソッ!」
突然こみ上げてきた苛立ちから、ソファーを力の限り蹴り上げる。それでも怒りは収まらず、クッションを壁に向かって投げつけ、それでもまだ足りず、リモコンやら本やら、近くにあったものを衝動のまま投げつけた。
「ふーっ……ふぅーっ……」
自分は何も出来ない。
怒りが去ると、今度はとてつもない虚しさに襲われた。ふらふらとした足取りで寝室に入ると、疲れた体をベッドに投げ出す。眠気などなかった筈だが、目を閉じるとすぐに微睡みの底へと沈んでいった。
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