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48. 本当に聞きたいことは

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「ポーリーンの店のオープン祝いに、何か素敵な情報を渡したかったのです。それがこんな……危険な場所だと思って行ったわけではないのです、まさか危険なことがあるなんて思い至らなかった」
 焦っていたのかもしれない、とテオドールは目を伏せた。
「情けない……一般市民に刺されて意識を失うなど。騎士としての訓練も受けていたはずなのに」
「ほんとです。ほんとに情けないわ、……わたくしは、自分が情けない」

 テオドールがそんな目に遭っているとも知らず、のうのうと店で客と話し、クロードの相手をしていただけの日々。
「ポーリーン、」
「知らされなかったのです、わたくしには何も。知らなかった」
「落ち着いて、ポーリーン、」
「知らせてもらえない立場なのです、わたくしは」

 まだ、クロードの妻であるから。ただの公爵夫人であり、テオドールはただの侯爵嫡男であるから。
 クロードは毎日店に来ていた。が、テオドールのことを一度も話さなかった。隠していたのか、と一瞬疑ったけれど、そのようなことはしないだろう。良くも悪くも、隠し事の下手な男だ。
 愛人を隠すのすら、下手だった男だ。

 テオドールの入院着の隙間から、包帯が覗いているのに気付いて目を逸らした。
 そして、自分の中に納まりきれないほどに膨れ上がっていく気持ちからも目を逸らすように、深く息をついて訊いた。

「――で、何かわかったのですか」
「……」
 テオドールは、手帳を出そうとしたのだろう、一瞬自分の胸に手を当てて、いつもの上着でないことに気付いたらしい。取り繕う様に姿勢を正して、頷いた。

「私が廃墟は、ユーゴ、……本当の名前はジャンというようですが、彼の住んでいた場所で間違いない。ユーゴと、その母親が1年ほど前から住んでいたようです」
「グレイルという男は、一年位前に妻が攫われた、と騒いでいたそうだけど」
「えぇ。どうやらそう思い込んでいたようですが、実際はグレイルから逃げていたようで」

 幼い子を抱え、臨月のお腹を抱えて逃げたのか。半狂乱で怒鳴り散らしている、というクロードの言葉からも、まともな精神状態の男とは思えない。
 逃げて逃げて、子を産み、……亡くなったのか。

「遺体、というのは」
「はい。ユーゴとクロエの母親ですね。部屋の中を見た限りでは、ジャンの名前の分かるものしか置いていなかったので、クロエの本名は不明です」
「では、テオを刺した男が、ユーゴの」
 こくりとテオドールが頷いた。

 そんな男に、二人を渡せるわけがない。
 ぞわりと背筋に何かが這うように怒りがこみ上げる。
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