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42. テオ拘束!?

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 おかしい。何の連絡もないのはさすがにおかしい。
 開店してから10日、あれだけ張り切って資金提供を申し出てオーナーとなってくれたテオドールが、何の音沙汰もない。来店もしないし伝言もない。ありえないのではないか。

「お客様、増えてきてくれましたね!」
 ジョアンは嬉しそうにサンドイッチを焼きながらにこにこしているし、ユーゴも忙しくおしぼりを渡すのに奔走している。リュカはクロエと、店の中が見える部屋で落ち着いて過ごしている。
 皆、店を一生懸命切り盛りしてくれているのに、どうしてもポーリーンの気持ちは晴れない。
 そして、今日はクロードも来ていない。別に来てほしいわけではないけれど、気が紛れない。

 どうしたのかしら、と嫌な予感がどんどん膨らんでいく。実家でなにかがあったのか。であれば、リュカにも分からないということはないだろうし。
 もやもやしていると、ドアベルが音を立て、男が駆け込んできた。

「あ、いらっしゃ、……リフ!?」
 はっとして反射的に挨拶をして見ると、クロードの従者が珍しく息を切らせて立っていた。
 思わず身構えるが、彼の表情はどこか焦っているようで、ポーリーンを見ると襟を直して息を整える。
 ユーゴに差し出された水を一気に呷ると、リフは客の目に気付き、愛想良く会釈をしながらポーリーンに近付いてきた。

「公爵様なら今日はまだ、」
 言おうとするポーリーンに手をかざし、言葉を遮る。
 そして、ゆっくりと声を潜めて言った。

「テオドールさんが、拘束されました」
「!?」
 ひゅ、と息を呑む。大声を出さなかったのが奇跡だった。
 リフの言葉の意味を反芻するように視線を泳がせるポーリーンに、彼は続けた。
「公爵は、今状況を確認するために役所に向かっています」
「やく、しょ、」
 
 テオが、拘束。
 何をしたというのか。悪いことなどするはずも無い。ここに来てから、ずっと一緒にいた。
(ということは、わたくしも……?)
 混乱するポーリーンの手のひらを、きゅっと握る小さな手。ユーゴが不安そうな目でポーリーンを見上げながら、手の甲を宥めるようにぽんぽん撫でていた。

 心当たりがあるとすれば、この子か。
 だったとしても、どうしてテオドールか? ポーリーンではなく?

 とにかく、ここでこうしていても仕方がない。

「わたくしも行きます。どこです?」
「いや、公爵はただ、何とかするから待つようにと奥様に伝えろと」
「待っていられますか」

 ここは公爵領。公爵であるクロードが何とかすると言うなら何とかなるのだろう。でも、ただ待っている事なとできるわけが無い。

 10日間、顔を見ていない。
 ただ無事を確認したい。
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