43 / 60
42. テオ拘束!?
しおりを挟む
おかしい。何の連絡もないのはさすがにおかしい。
開店してから10日、あれだけ張り切って資金提供を申し出てオーナーとなってくれたテオドールが、何の音沙汰もない。来店もしないし伝言もない。ありえないのではないか。
「お客様、増えてきてくれましたね!」
ジョアンは嬉しそうにサンドイッチを焼きながらにこにこしているし、ユーゴも忙しくおしぼりを渡すのに奔走している。リュカはクロエと、店の中が見える部屋で落ち着いて過ごしている。
皆、店を一生懸命切り盛りしてくれているのに、どうしてもポーリーンの気持ちは晴れない。
そして、今日はクロードも来ていない。別に来てほしいわけではないけれど、気が紛れない。
どうしたのかしら、と嫌な予感がどんどん膨らんでいく。実家でなにかがあったのか。であれば、リュカにも分からないということはないだろうし。
もやもやしていると、ドアベルが音を立て、男が駆け込んできた。
「あ、いらっしゃ、……リフ!?」
はっとして反射的に挨拶をして見ると、クロードの従者が珍しく息を切らせて立っていた。
思わず身構えるが、彼の表情はどこか焦っているようで、ポーリーンを見ると襟を直して息を整える。
ユーゴに差し出された水を一気に呷ると、リフは客の目に気付き、愛想良く会釈をしながらポーリーンに近付いてきた。
「公爵様なら今日はまだ、」
言おうとするポーリーンに手をかざし、言葉を遮る。
そして、ゆっくりと声を潜めて言った。
「テオドールさんが、拘束されました」
「!?」
ひゅ、と息を呑む。大声を出さなかったのが奇跡だった。
リフの言葉の意味を反芻するように視線を泳がせるポーリーンに、彼は続けた。
「公爵は、今状況を確認するために役所に向かっています」
「やく、しょ、」
テオが、拘束。
何をしたというのか。悪いことなどするはずも無い。ここに来てから、ずっと一緒にいた。
(ということは、わたくしも……?)
混乱するポーリーンの手のひらを、きゅっと握る小さな手。ユーゴが不安そうな目でポーリーンを見上げながら、手の甲を宥めるようにぽんぽん撫でていた。
心当たりがあるとすれば、この子か。
だったとしても、どうしてテオドールか? ポーリーンではなく?
とにかく、ここでこうしていても仕方がない。
「わたくしも行きます。どこです?」
「いや、公爵はただ、何とかするから待つようにと奥様に伝えろと」
「待っていられますか」
ここは公爵領。公爵であるクロードが何とかすると言うなら何とかなるのだろう。でも、ただ待っている事なとできるわけが無い。
10日間、顔を見ていない。
ただ無事を確認したい。
開店してから10日、あれだけ張り切って資金提供を申し出てオーナーとなってくれたテオドールが、何の音沙汰もない。来店もしないし伝言もない。ありえないのではないか。
「お客様、増えてきてくれましたね!」
ジョアンは嬉しそうにサンドイッチを焼きながらにこにこしているし、ユーゴも忙しくおしぼりを渡すのに奔走している。リュカはクロエと、店の中が見える部屋で落ち着いて過ごしている。
皆、店を一生懸命切り盛りしてくれているのに、どうしてもポーリーンの気持ちは晴れない。
そして、今日はクロードも来ていない。別に来てほしいわけではないけれど、気が紛れない。
どうしたのかしら、と嫌な予感がどんどん膨らんでいく。実家でなにかがあったのか。であれば、リュカにも分からないということはないだろうし。
もやもやしていると、ドアベルが音を立て、男が駆け込んできた。
「あ、いらっしゃ、……リフ!?」
はっとして反射的に挨拶をして見ると、クロードの従者が珍しく息を切らせて立っていた。
思わず身構えるが、彼の表情はどこか焦っているようで、ポーリーンを見ると襟を直して息を整える。
ユーゴに差し出された水を一気に呷ると、リフは客の目に気付き、愛想良く会釈をしながらポーリーンに近付いてきた。
「公爵様なら今日はまだ、」
言おうとするポーリーンに手をかざし、言葉を遮る。
そして、ゆっくりと声を潜めて言った。
「テオドールさんが、拘束されました」
「!?」
ひゅ、と息を呑む。大声を出さなかったのが奇跡だった。
リフの言葉の意味を反芻するように視線を泳がせるポーリーンに、彼は続けた。
「公爵は、今状況を確認するために役所に向かっています」
「やく、しょ、」
テオが、拘束。
何をしたというのか。悪いことなどするはずも無い。ここに来てから、ずっと一緒にいた。
(ということは、わたくしも……?)
混乱するポーリーンの手のひらを、きゅっと握る小さな手。ユーゴが不安そうな目でポーリーンを見上げながら、手の甲を宥めるようにぽんぽん撫でていた。
心当たりがあるとすれば、この子か。
だったとしても、どうしてテオドールか? ポーリーンではなく?
とにかく、ここでこうしていても仕方がない。
「わたくしも行きます。どこです?」
「いや、公爵はただ、何とかするから待つようにと奥様に伝えろと」
「待っていられますか」
ここは公爵領。公爵であるクロードが何とかすると言うなら何とかなるのだろう。でも、ただ待っている事なとできるわけが無い。
10日間、顔を見ていない。
ただ無事を確認したい。
1
お気に入りに追加
979
あなたにおすすめの小説
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。
天災
恋愛
美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。
とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?
妻のち愛人。
ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。
「ねーねー、ロナぁー」
甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。
そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。
最悪なお見合いと、執念の再会
当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。
しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。
それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。
相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。
最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる