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第二十七話 決戦前

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 期末試験も終盤に差し掛かり、会場はいよいよ大詰めといった感じになっていた。
 勝ち残った生徒はもちろん、途中で敗れた生徒も観戦や応援に回っているのは、誰が優勝するかに興味があるんだろうね。

「クソっ! オレ様の実力はこんなもんじゃねーんだ」

 三回戦で負けてしまったすけたら君は、パソコンをバチバチと叩いて悔しさをにじみ出していた。来期の試験では見てろよ! と、口には出さないがモニターを睨む目つきは真剣そのものだ。
 イルカさんも団子騎士君も善戦はしたものの、やはり序盤で敗れ去っている。
 みんな前回の試験よりもパラメーターが上がっていたが、それは他の生徒たちも同じ。アクセス数を伸ばし、ブックマークを増やし、応援ポイントを加算し、パラメーターが四桁を超える生徒も少なくない。

 安定したパラメーターを持つイルカさんは、バズリティーの強さがいまひとつだったせいで二回戦敗退。
 バズリティーの活躍で三回戦まで勝ち上がった団子騎士君も、弱点だったATK(アクセス数)の低さが足を引っ張り、そこで敗退していた。

 では、我らアダルト科のエース、仮面修子は……

「にししっ、これで次は決勝戦だな」

 なんと、並みいる強敵をすべて秒殺……ならぬ秒剥きに仕留め、ついに決勝戦進出を決めてしまっていた。

「やっぱ仮面ちゃんはすごいんだな。ボキュとは変態レベルが違うんだな」

「こうなったら絶対優勝するのよ? ワタクシも応援してますから!」

「当たり前だ。アタシは一番になるんだからな」

 根拠のない自信をぶちまける修子だが、それが本当になってしまいそうな気がしているのは僕らだけではないはずだ。修子のバトルを見ていた生徒たちも、

「こんな変態少女が学年トップになるのか?」

 といった驚きの顔を浮かべていたり、

「あんな変態的なバズリティーに負けるなんて」

 みたいな納得のいかない顔をしながらも、

「でも、アイツなら本当にトップを取るかも……」

 と、おかしな期待を持ち始めているのが、みんなの目から伝わってくる。それだけ修子とノーパン仮面には、みんなの期待を集める個性オリジナリティがある。

「それまで!」

 別の舞台で行なわれていた準決勝に決着がつく。別グループを勝ち抜いたのは、これは誰もが予想していたとおり、

「勝者、ドッグマスターあっくん」

 もう一人の決勝進出者は一年生のトップブロガー、コンパニマル科のドッグマスターあっくんだった。

「やっぱりあっくんが来たか。さすがコンパニマル科の次期エースと呼ばれるだけあるぜ」

「しかもパラメーターは前回の試験よりも格段に上がっていましたわよ?」

「大丈夫なんだな。仮面ちゃんのバズリティーは最強なんだな」

 僕らの視線の先には、悠々と準決勝を勝ち抜いたドッグマスターあっくん。バトルに決着がついてからもパソコンを開いたままで、データ収集に余念がない。

「アイツはああやって、バトルのデータを集めていくんだ。今まで対戦した相手の弱点はもちろん、優れた箇所も分析することで、自分のブログ作成に役立てているって話だぜ」

 学年トップと言われるパラメーターとバズリティーを持ちながらも、常に上を目指していく貪欲な姿勢が誰の追随も許さない。だからこそ学園最大のカテゴリであるコンパニマル科の中でも次期エースと呼ばれているんだろう。
 ブログにかける情熱が、群を抜いている。

 カタタタ……とブラインドでキーを打ち終わったあっくんが見つめる先は――

 エロに関しては誰の追随も許さない、ブログにかける変態度合いが群を抜いているアダルト科のエロフェッショナル、仮面修子。

「ま、ブログは数字じゃないんだけどな」

 あっくんの視線に気付かぬ様子の修子は、決勝を前に腹ごしらえとイルカさんから貰ったプリンを頬張っていた。どこから持ってきたのかお皿の上にプリンをプッチンと落として、山形に削り取りながら食べている。
 挙句の果てに、逆お椀型に削ったプリンの山頂だけにカラメルソースを残し、

「イツキ、見ろ」

 スプーンでプルルンと揺らしてみせる。

「おっぱい」

「こんな時に何やってんの!?」

 にししっと例の笑いを浮かべてカラメルソースに吸いついた。
 決勝の相手、あっくんが見つめる視線もなんのその。まったく、優勝がかかった最後の試験なのに緊張感がまるでないんだから。
 結局そこからはスプーンを使わずにおっぱいプリンをチュルチュルと吸い尽くした修子は、お腹も心も満たされた表情を浮かべ、「じゃあ、行ってくる」の代わりに、

「じゃあ、いてくる」

 とエロい目つきで余裕の勝利宣言をすると、舞台へ上がっていった。
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