9 / 16
【本編】アングラーズ王国編
再会(カリーナ視点)
しおりを挟む
ベルレアン王国の侯爵家から、3日間かけてアングラーズ王国の宮殿に到着した時、空は美しい夕焼けに染まっていた。
馬車から降りた私は、目の前に聳え立つ、夕日に染まった煌びやかな宮殿に目を奪われた。
その宮殿の前には、色とりどりの薔薇が咲き乱れる見事な庭園が広がり、その中央には豪奢な噴水が水音を立てていた。
「すごい…」
私は圧倒されて思わず声を漏らすと、隣にいたエアリスは「そう?」と言って、興味なさそうにあくびをした。
「俺は疲れたから、先に行くね」
エアリスは素っ気なく言うと、近衛騎士と共に宮殿の中へ消えて行った。
「相変わらずですね。あいつは」
そばにやって来たアルが、呆れたようにそう言った。
旅路の間、エアリスは口数が少なく、ずっと元気がなかった。
宮殿に戻りたくなかったのだろう。
一緒に連れて来るべきではなかったのかも知れない。
「カリーナ。久しぶりだね」
私がそう思慮を巡らせていると、背後から突然、名前を呼ばれた。
聞き覚えがある涼やかな声。
私が振り向くと、やはりそこにはレアン殿下が穏やかに微笑んでいた。
「レアン殿下…」
私はそう言って、引き寄せられるように、思わず足を踏み出した。
しかし、その背後には、ぴったりと寄り添うように、美しい女性が立っていた。
私は瞬時に足を止め、顔を強ばらせた。
私よりだいぶ年下のその女性は、緩やかにウェーブした金髪をハーフアップにして、ルビーの様に輝く緋色の瞳をしていた。
陶器の様に滑らかなその肌は、透き通るように白く、小柄で華奢な体躯は、長身のレアン殿下と並ぶと余計に際立って、庇護欲を掻き立てられる。
私は一目見て直ぐ、この美しい女性がフェアクール帝国の皇女殿下なのだと理解した。
「こちらはフェアクール帝国のローズ・フェアクール皇女殿下です」
レアン殿下がそう紹介する隣で、皇女殿下は私に向かって妖艶に微笑んだ。
「始めまして。皇女殿下。私は、ベルレアン王国から参りましたカリーナ・ローレルと申します」
私はそう言って一礼すると、皇女殿下は「よく存じ上げておりますわ」と言って目を細めた。
「ローズ皇女殿下。私は、これからカリーナ様をご案内しなければならないので、宮殿に戻って頂いてもよろしいですか?」
レアン殿下がそう言うと「分かりました。では、宮殿でお待ちしておりますね。レアン殿下」と言って、皇女殿下はレアン殿下に熱い眼差しを向けると、宮殿へ去って行った。
「一体なんなんですか?あの人は」
皇女殿下が宮殿に入るのを見届けると、憤慨したようにアルが言った。
「レアン殿下の婚約者の方ですよね」
レアン殿下は言いづらいのか、思案している様子だったので、私がそう聞いた。
「婚約者?!何を考えてるんですか?貴方は!!」
アルは物凄い剣幕でレアン殿下に詰め寄ったので、近衛騎士たちに押さえられてしまった。
「違うよ。婚約者じゃない。勝手に縁談が舞い込んだだけだ」
レアン殿下は、ため息をついてそう言うと、近衛騎士たちにアルを放すよう指示をした。
「私が勘違いしたばかりに…ごめんなさい」
「いや、カリーナは悪くないよ。誤解させてしまってごめんね」
レアン殿下は力なく笑うと「アルフレート。ちょっといいかな?」と言って、アルを連れて少し離れた場所に行くと、2人で何か真剣に話し込んでいた。
ポツンと取り残された私は、庭園の美しい花々をぼんやりと眺めながら、先ほど会った皇女殿下の事を考えていた。
レアン殿下は婚約者ではないと否定していたけれど、皇女殿下は明らかにレアン殿下を恋慕していた。
あんなに若くて、綺麗な人に言い寄られたら、
レアン殿下もきっと満更でもないに違いない。
そう思うと、胸がズキリと痛んだ。
「待たせてごめんね。カリーナ。これからちょっと散歩しよう。見せたいものがあるんだ」
レアン殿下は戻って来るとそう言った。
アルはこちらには来ずに、近衛騎士と共に宮殿近くにある洋館の方へ歩いて行った。
「アルフレートは宿泊予定の部屋に連れて行くだけだから、大丈夫だよ」
私がアルを心配している事に気がついたレアン殿下は、優しくそう言った。
私達は黄昏に包まれた庭園を、ゆっくりと歩いた。
周りには近衛騎士はおろか、人影もなく、静かで、辺りは段々と藍色が濃くなっていく。
「やっと、出会えたんだ。諦められる訳がない」
前を歩いていたレアン殿下が、突然、そう呟くと立ち止まり、私の方を振り向いた。
その顔は、いつものようにほほ笑んでいたけれど、どこか、疲れが滲み出ているように感じた。
仕事が忙しいのだろうか。
「大丈夫ですか?顔色が優れないようですが…」
私が心配になってそう聞くと、レアン殿下は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑い出した。
「大丈夫。大丈夫。建国記念式典の準備で、最近ちょっと忙しくてね」
「明日が祝賀パーティーなのに、私と一緒にいて大丈夫でしょうか?」
まだ色々と準備があるのではないか、そう思慮していた私を、レアン殿下は「気にしないで。全部、優秀な部下に丸投げしたから」と言って、悪戯っぽくほほ笑んだ。
「エアリスの事、色々と迷惑をかけたと思うけど、本当にありがとう」
「迷惑だなんて…エアリスにはいつも助けて貰ってばかりでした」
エアリスは一見、マイペースで自分勝手の様に見えるけど、本当は人の事をよく見ていて、少しでも変化があるとすぐに気がついて、いつも助けてくれる。
エアリスは心が優しいのだ。
誰よりも、きっと。
「エアリスは、なぜ宮殿から出て行ったのでしょうか?」
私はそれがずっと疑問だった。
余程の事がない限り、エアリスは宮殿から出て行くなどしないはずだ。
「…それは分からない。でも、宮殿はそんなに居心地が良い所ではないからね。カリーナの侯爵家とは違うよ」
レアン殿下は俯いて、少し眉を潜めるように、顔を歪めた。
「エアリスはもう侯爵家には戻れないのですか?」
「恐らく、国王陛下が許さないだろうね。エアリスも来年で成人になる。縁談の話だって、これから本格的になるだろう。エアリスが望もうと、望まなくても関係ない。ここはそう言う世界だから」
やはり、エアリスを連れて来るべきではなかったのだ。
しかし、アングラーズ王国の国王陛下の命に背いてまで、侯爵家にとどめて置く事も出来ない。
なんて自分は無力なんだろう。
私の中で、自責の念が膨れ上がっていく。
「カリーナは優しいね」
レアン殿下はそう言うと、手を伸ばし、私の頬に優しく触れた。
レアン殿下の温かくて、大きな手が、私に触れている。その事実が、私の心をギュッと掴んだ。
そんな時、レアン殿下は私の眼鏡に手をかけると、スッとそれを外してしまった。
「あっ…」
私が呆気に取られていると、レアン殿下は私の眼鏡をじっと見つめた。
「これ、度が入ってないよね。なのに、何でかけているの?眼鏡があると、カリーナの綺麗なすみれ色の瞳が濁って見えるよ」
「その眼鏡は…亡くなった母の形見なのです」
レアン殿下は「そう…」と言うと、私の手に眼鏡をそっと戻した。
「いつかは眼鏡を外さないと、と思っているのですが、なかなか外せないのです。母に守られている気がして…」
私はそう言うと、古びた丸ぶちの眼鏡を眺めた。
大切に使っているものの、10年以上かけているその眼鏡はだいぶくたびれていた。
壊れるのも時間の問題だろう。
「眼鏡は必要ないと思えるくらい、これからは私が君を守るよ。ずっと、永遠に」
レアン殿下の真剣な眼差しに、私は思わず引き込まれそうになった。
「レアン殿下は、なぜ私を…」
なぜこんなにも地味で、対して取り柄もない私を、想ってくれるのだろう。
皇女殿下のように、地位も、美貌も持ち合わせていないのに。
絶対につり合うわけがないのに。
「カリーナは自分を卑下してるんだよ。君は、魅力的な女性だよ。出会った時からずっと…変わらない」
レアン殿下の深海のような瞳に魅入られて、私は言葉を発する事が出来なくなった。
「祝賀パーティーが終わった翌日、一緒に出かけよう。そこで全てを話すよ。私がなぜ、カリーナを想っているのか──」
──ヒュー
その時、突然、口笛のような音が辺りに響いた。
私はなんだろうと思って、辺りを見渡した。
──ドーン
すると、宮殿の真上に大輪の光の花が広がったかと思うと、身体中に響き渡るような物凄い音が響いた。
私がその音に驚いていると、瞬く間に、宮殿の真上の夜空を大輪の黄金の花が埋めつくし、地鳴りのような、物凄い音が連続して鳴り響いた。
私は、初めて見る、そのあまりの壮大な美しさに言葉も失い、ただただ見惚れていた。
「花火だよ。知っている?」
私を見つめるレアン殿下の瞳に花火が映り、キラキラと美しく輝いていた。
「はい」
花火の話は過去に聞いた事があった。
火薬が爆発して出来る光の花だと。
でも、誰から聞いたのだろう。
思い出せなかった。
「建国記念式典の前夜に、毎年、宮殿の裏から花火を打ち上げるんだよ。カリーナに見せたかったんだ」
そう言うと、レアン殿下は再び花火に目を向けた。
その横顔はどこか遠くを見るような、少し寂しげな表情をしていた。
馬車から降りた私は、目の前に聳え立つ、夕日に染まった煌びやかな宮殿に目を奪われた。
その宮殿の前には、色とりどりの薔薇が咲き乱れる見事な庭園が広がり、その中央には豪奢な噴水が水音を立てていた。
「すごい…」
私は圧倒されて思わず声を漏らすと、隣にいたエアリスは「そう?」と言って、興味なさそうにあくびをした。
「俺は疲れたから、先に行くね」
エアリスは素っ気なく言うと、近衛騎士と共に宮殿の中へ消えて行った。
「相変わらずですね。あいつは」
そばにやって来たアルが、呆れたようにそう言った。
旅路の間、エアリスは口数が少なく、ずっと元気がなかった。
宮殿に戻りたくなかったのだろう。
一緒に連れて来るべきではなかったのかも知れない。
「カリーナ。久しぶりだね」
私がそう思慮を巡らせていると、背後から突然、名前を呼ばれた。
聞き覚えがある涼やかな声。
私が振り向くと、やはりそこにはレアン殿下が穏やかに微笑んでいた。
「レアン殿下…」
私はそう言って、引き寄せられるように、思わず足を踏み出した。
しかし、その背後には、ぴったりと寄り添うように、美しい女性が立っていた。
私は瞬時に足を止め、顔を強ばらせた。
私よりだいぶ年下のその女性は、緩やかにウェーブした金髪をハーフアップにして、ルビーの様に輝く緋色の瞳をしていた。
陶器の様に滑らかなその肌は、透き通るように白く、小柄で華奢な体躯は、長身のレアン殿下と並ぶと余計に際立って、庇護欲を掻き立てられる。
私は一目見て直ぐ、この美しい女性がフェアクール帝国の皇女殿下なのだと理解した。
「こちらはフェアクール帝国のローズ・フェアクール皇女殿下です」
レアン殿下がそう紹介する隣で、皇女殿下は私に向かって妖艶に微笑んだ。
「始めまして。皇女殿下。私は、ベルレアン王国から参りましたカリーナ・ローレルと申します」
私はそう言って一礼すると、皇女殿下は「よく存じ上げておりますわ」と言って目を細めた。
「ローズ皇女殿下。私は、これからカリーナ様をご案内しなければならないので、宮殿に戻って頂いてもよろしいですか?」
レアン殿下がそう言うと「分かりました。では、宮殿でお待ちしておりますね。レアン殿下」と言って、皇女殿下はレアン殿下に熱い眼差しを向けると、宮殿へ去って行った。
「一体なんなんですか?あの人は」
皇女殿下が宮殿に入るのを見届けると、憤慨したようにアルが言った。
「レアン殿下の婚約者の方ですよね」
レアン殿下は言いづらいのか、思案している様子だったので、私がそう聞いた。
「婚約者?!何を考えてるんですか?貴方は!!」
アルは物凄い剣幕でレアン殿下に詰め寄ったので、近衛騎士たちに押さえられてしまった。
「違うよ。婚約者じゃない。勝手に縁談が舞い込んだだけだ」
レアン殿下は、ため息をついてそう言うと、近衛騎士たちにアルを放すよう指示をした。
「私が勘違いしたばかりに…ごめんなさい」
「いや、カリーナは悪くないよ。誤解させてしまってごめんね」
レアン殿下は力なく笑うと「アルフレート。ちょっといいかな?」と言って、アルを連れて少し離れた場所に行くと、2人で何か真剣に話し込んでいた。
ポツンと取り残された私は、庭園の美しい花々をぼんやりと眺めながら、先ほど会った皇女殿下の事を考えていた。
レアン殿下は婚約者ではないと否定していたけれど、皇女殿下は明らかにレアン殿下を恋慕していた。
あんなに若くて、綺麗な人に言い寄られたら、
レアン殿下もきっと満更でもないに違いない。
そう思うと、胸がズキリと痛んだ。
「待たせてごめんね。カリーナ。これからちょっと散歩しよう。見せたいものがあるんだ」
レアン殿下は戻って来るとそう言った。
アルはこちらには来ずに、近衛騎士と共に宮殿近くにある洋館の方へ歩いて行った。
「アルフレートは宿泊予定の部屋に連れて行くだけだから、大丈夫だよ」
私がアルを心配している事に気がついたレアン殿下は、優しくそう言った。
私達は黄昏に包まれた庭園を、ゆっくりと歩いた。
周りには近衛騎士はおろか、人影もなく、静かで、辺りは段々と藍色が濃くなっていく。
「やっと、出会えたんだ。諦められる訳がない」
前を歩いていたレアン殿下が、突然、そう呟くと立ち止まり、私の方を振り向いた。
その顔は、いつものようにほほ笑んでいたけれど、どこか、疲れが滲み出ているように感じた。
仕事が忙しいのだろうか。
「大丈夫ですか?顔色が優れないようですが…」
私が心配になってそう聞くと、レアン殿下は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑い出した。
「大丈夫。大丈夫。建国記念式典の準備で、最近ちょっと忙しくてね」
「明日が祝賀パーティーなのに、私と一緒にいて大丈夫でしょうか?」
まだ色々と準備があるのではないか、そう思慮していた私を、レアン殿下は「気にしないで。全部、優秀な部下に丸投げしたから」と言って、悪戯っぽくほほ笑んだ。
「エアリスの事、色々と迷惑をかけたと思うけど、本当にありがとう」
「迷惑だなんて…エアリスにはいつも助けて貰ってばかりでした」
エアリスは一見、マイペースで自分勝手の様に見えるけど、本当は人の事をよく見ていて、少しでも変化があるとすぐに気がついて、いつも助けてくれる。
エアリスは心が優しいのだ。
誰よりも、きっと。
「エアリスは、なぜ宮殿から出て行ったのでしょうか?」
私はそれがずっと疑問だった。
余程の事がない限り、エアリスは宮殿から出て行くなどしないはずだ。
「…それは分からない。でも、宮殿はそんなに居心地が良い所ではないからね。カリーナの侯爵家とは違うよ」
レアン殿下は俯いて、少し眉を潜めるように、顔を歪めた。
「エアリスはもう侯爵家には戻れないのですか?」
「恐らく、国王陛下が許さないだろうね。エアリスも来年で成人になる。縁談の話だって、これから本格的になるだろう。エアリスが望もうと、望まなくても関係ない。ここはそう言う世界だから」
やはり、エアリスを連れて来るべきではなかったのだ。
しかし、アングラーズ王国の国王陛下の命に背いてまで、侯爵家にとどめて置く事も出来ない。
なんて自分は無力なんだろう。
私の中で、自責の念が膨れ上がっていく。
「カリーナは優しいね」
レアン殿下はそう言うと、手を伸ばし、私の頬に優しく触れた。
レアン殿下の温かくて、大きな手が、私に触れている。その事実が、私の心をギュッと掴んだ。
そんな時、レアン殿下は私の眼鏡に手をかけると、スッとそれを外してしまった。
「あっ…」
私が呆気に取られていると、レアン殿下は私の眼鏡をじっと見つめた。
「これ、度が入ってないよね。なのに、何でかけているの?眼鏡があると、カリーナの綺麗なすみれ色の瞳が濁って見えるよ」
「その眼鏡は…亡くなった母の形見なのです」
レアン殿下は「そう…」と言うと、私の手に眼鏡をそっと戻した。
「いつかは眼鏡を外さないと、と思っているのですが、なかなか外せないのです。母に守られている気がして…」
私はそう言うと、古びた丸ぶちの眼鏡を眺めた。
大切に使っているものの、10年以上かけているその眼鏡はだいぶくたびれていた。
壊れるのも時間の問題だろう。
「眼鏡は必要ないと思えるくらい、これからは私が君を守るよ。ずっと、永遠に」
レアン殿下の真剣な眼差しに、私は思わず引き込まれそうになった。
「レアン殿下は、なぜ私を…」
なぜこんなにも地味で、対して取り柄もない私を、想ってくれるのだろう。
皇女殿下のように、地位も、美貌も持ち合わせていないのに。
絶対につり合うわけがないのに。
「カリーナは自分を卑下してるんだよ。君は、魅力的な女性だよ。出会った時からずっと…変わらない」
レアン殿下の深海のような瞳に魅入られて、私は言葉を発する事が出来なくなった。
「祝賀パーティーが終わった翌日、一緒に出かけよう。そこで全てを話すよ。私がなぜ、カリーナを想っているのか──」
──ヒュー
その時、突然、口笛のような音が辺りに響いた。
私はなんだろうと思って、辺りを見渡した。
──ドーン
すると、宮殿の真上に大輪の光の花が広がったかと思うと、身体中に響き渡るような物凄い音が響いた。
私がその音に驚いていると、瞬く間に、宮殿の真上の夜空を大輪の黄金の花が埋めつくし、地鳴りのような、物凄い音が連続して鳴り響いた。
私は、初めて見る、そのあまりの壮大な美しさに言葉も失い、ただただ見惚れていた。
「花火だよ。知っている?」
私を見つめるレアン殿下の瞳に花火が映り、キラキラと美しく輝いていた。
「はい」
花火の話は過去に聞いた事があった。
火薬が爆発して出来る光の花だと。
でも、誰から聞いたのだろう。
思い出せなかった。
「建国記念式典の前夜に、毎年、宮殿の裏から花火を打ち上げるんだよ。カリーナに見せたかったんだ」
そう言うと、レアン殿下は再び花火に目を向けた。
その横顔はどこか遠くを見るような、少し寂しげな表情をしていた。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
引退したオジサン勇者に子供ができました。いきなり「パパ」と言われても!?
リオール
ファンタジー
俺は魔王を倒し世界を救った最強の勇者。
誰もが俺に憧れ崇拝し、金はもちろん女にも困らない。これぞ最高の余生!
まだまだ30代、人生これから。謳歌しなくて何が人生か!
──なんて思っていたのも今は昔。
40代とスッカリ年食ってオッサンになった俺は、すっかり田舎の農民になっていた。
このまま平穏に田畑を耕して生きていこうと思っていたのに……そんな俺の目論見を崩すかのように、いきなりやって来た女の子。
その子が俺のことを「パパ」と呼んで!?
ちょっと待ってくれ、俺はまだ父親になるつもりはない。
頼むから付きまとうな、パパと呼ぶな、俺の人生を邪魔するな!
これは魔王を倒した後、悠々自適にお気楽ライフを送っている勇者の人生が一変するお話。
その子供は、はたして勇者にとって救世主となるのか?
そして本当に勇者の子供なのだろうか?
【完結】名ばかり婚約者だった王子様、実は私の事を愛していたらしい ~全て奪われ何もかも失って死に戻ってみたら~
Rohdea
恋愛
───私は名前も居場所も全てを奪われ失い、そして、死んだはず……なのに!?
公爵令嬢のドロレスは、両親から愛され幸せな生活を送っていた。
そんなドロレスのたった一つの不満は婚約者の王子様。
王家と家の約束で生まれた時から婚約が決定していたその王子、アレクサンドルは、
人前にも現れない、ドロレスと会わない、何もしてくれない名ばかり婚約者となっていた。
そんなある日、両親が事故で帰らぬ人となり、
父の弟、叔父一家が公爵家にやって来た事でドロレスの生活は一変し、最期は殺されてしまう。
───しかし、死んだはずのドロレスが目を覚ますと、何故か殺される前の過去に戻っていた。
(残された時間は少ないけれど、今度は殺されたりなんかしない!)
過去に戻ったドロレスは、
両親が親しみを込めて呼んでくれていた愛称“ローラ”を名乗り、
未来を変えて今度は殺されたりしないよう生きていく事を決意する。
そして、そんなドロレス改め“ローラ”を助けてくれたのは、名ばかり婚約者だった王子アレクサンドル……!?
本物の恋、見つけましたⅡ ~今の私は地味だけど素敵な彼に夢中です~
日之影ソラ
恋愛
本物の恋を見つけたエミリアは、ゆっくり時間をかけユートと心を通わていく。
そうして念願が叶い、ユートと相思相愛になることが出来た。
ユートからプロポーズされ浮かれるエミリアだったが、二人にはまだまだ超えなくてはならない壁がたくさんある。
身分の違い、生きてきた環境の違い、価値観の違い。
様々な違いを抱えながら、一歩ずつ幸せに向かって前進していく。
何があっても関係ありません!
私とユートの恋は本物だってことを証明してみせます!
『本物の恋、見つけました』の続編です。
二章から読んでも楽しめるようになっています。
愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます
天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。
王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。
影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。
私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。
運命の選択が見えるのですが、どちらを選べば幸せになれますか? ~私の人生はバッドエンド率99.99%らしいです~
日之影ソラ
恋愛
第六王女として生を受けたアイリスには運命の選択肢が見える。選んだ選択肢で未来が大きく変わり、最悪の場合は死へ繋がってしまうのだが……彼女は何度も選択を間違え、死んではやり直してを繰り返していた。
女神様曰く、彼女の先祖が大罪を犯したせいで末代まで呪われてしまっているらしい。その呪いによって彼女の未来は、99.99%がバッドエンドに設定されていた。
婚約破棄、暗殺、病気、仲たがい。
あらゆる不幸が彼女を襲う。
果たしてアイリスは幸福な未来にたどり着けるのか?
選択肢を見る力を駆使して運命を切り開け!
維新竹取物語〜土方歳三とかぐや姫の物語〜
柳井梁
歴史・時代
月を見つめるお前は、まるでかぐや姫だな。
幼き歳三は、満月に照らされた女を見て呟いた。
会社勤めの東雲薫(しののめ かおる)は突如タイムスリップし幼い”歳三”と出会う。
暫らくの間土方家で世話になることになるが、穏やかな日々は長く続かなかった。
ある日川に流され意識を失うと、目の前に現れたのは大人の”歳三”で…!?
幕末を舞台に繰り広げられるタイムスリップ小説。
新選組だけでなく、長州や薩摩の人たちとも薫は交流を深めます。
歴史に疎い薫は武士の生き様を見て何を思い何を感じたのか、是非読んでいただければ幸いです。
優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~
日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。
もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。
そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。
誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか?
そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる