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Executive Meeting 2
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「ところでジャング、おまえの連れてきたアブドゥルとミゲルタなんだが…」
「え、もしやあのふたりが、何か問題でも起こしたのかッ!?」
再び提督から話を振られ、そこでアブドゥルとミゲルタの名を告げられたことに、少々ドキッとしたオレ。ないとは思いたいが、昨今は外国人が色々とやらかしたというニュースには枚挙に暇がない。それにやや焦った調子で返すと、提督は苦笑いでそうじゃないと首を横に振った。
「いやな、暴れ竹のドロップで、ただの竹がドロップするのは知ってるだろう?」
「ああアレか。ハズレだがアレも竹炭にして売れば、ダンジョン産てことでそれなりに売れてたんじゃ?」
うん、下駄箱とか押入れとかに置いとく脱臭用の竹炭。ダンジョン産だけに脱臭力が違う、というなんかフワッとした説明でも、それなりに売れていたはず。
「いやいや、その竹材でだな。アブドゥルとミゲルタのふたりが竹細工の見事な民芸品を作ってみせた。まぁ、それはいいんだが、大事なのはその過程だ。魔力を操って、スイスイと竹ひごを編んでいく。しかもそれが魔力を練るいい練習になるというじゃないか?」
「なるほど。それをインストラクター事業の方でも活用できないか、という話か?」
うむ、ふたりにそういった事を教えたのは、確かにオレだ。
ジェロームたち3人から魔力を伸ばすのに何かいい方法はないかと訊かれた際、じゃあとオレが常日頃から行っているモノ作りによる魔力練成訓練法を伝授したのだ。それであれば素材加工の間、ジワジワジワジワと常に魔力を生み出し続けていなければならず、集中力と魔力練成のいい訓練になる。
「そういうことだ。もうすでに何度か、リピートに来た客もいる。しかしそうしたお客もこれ以上ココで学ぶものがないとなれば、次第に足が遠のいていくだろう。しかしそこに魔力を練る練習法といった別のアプローチもあれば、まだまだ引っ張れるだろう?」
「うむむ…、流石は提督だ。オレではその点に、まるで気がつけなかったな」
現在に至るまでに講じた、様々な試行錯誤。しかしそんなモノはちょっと考えれば誰でもすぐに思いつくだろうと、まったく執着していなかった。それを即商売に結び付けるといった着眼点は、オレには無いモノ。
「それで少し試してみたんだが、どうも巧くいかん。それをジャングに訊いてみたかったのだ」
と、そう言われ、オレにも合点がいった。
「ああ、なるほど。しかしその答えは至ってシンプル。倒した獲物の生命エナジーを浴びていないと、その素材の加工も容易ではないんだ」
「なに!?」
これは提督も知らなかったらしく、驚いた表情をみせている。
「うむ…。コレはなんというか、縁とでもいえばいいのかな。倒したモンスターの生命エナジーを浴びているかいないかで、ドロップした素材への加工にも影響が出るんだ」
「「「ええっ!?」」」
すると、その説明に疑問をもった田所さんから質問が。
「では…薬の調合にも、そういったことが影響するんでしょうか??」
「ん~、どうでしょう?化学的な反応をさせる薬剤の調合と、素材そのものに魔力を流して形を変えるといった加工法では、アプローチの仕方が違うんで」
「ふ~む、確かにそうですね」
「縁理論とでもいうか、倒したモンスターの生命エナジーを得ることで、そのドロップした素材へのアプローチもまた、容易となる。これはオレもついぞ知らなかったことなのだが、国の研究機関の方と話す機会があった。その会話のなかで知ったんだ」
そう、これは豊波チーフや研究スタッフさんとの会話から知り得た知識。
「そうか。つまり自分で倒したモンスターの素材は加工がしやすく、自分で倒したわけではないモンスター素材では、その何倍も加工が難しいということだな?」
「ああ。だからアブドゥルとミゲルタは、恐らく自分達で倒した暴れ竹からのドロップを加工していたのだろう。しかし、それをインストラクター事業で活用するとなると、暴れ竹をお客さんに倒させる必要が出てくるな…」
うん、お化けアロエを倒しても、アロエの葉やアロエの花しかドロップしない。極まれにお化けアロエのモンスターカードや植物系モンスター特有の樹血琥珀といった宝石のようなモノをドロップするが、それらはいずれも魔力での加工には不向きな素材。
そこでそういった事をココで学ばせたいなら、どうにかしてお客さんに暴れ竹を倒させる必要が出てくる。
「ふぅむ、なるほど…。そんなカラクリがあったとはな」
「それじゃあ何度試してみても、上手くいかなかったのも納得ッスね」
「でもまあ、リピーターのお客さんであれば、ある程度その人柄は分かってきているか。なら面談で、『いつもご贔屓にしてくださってありがとございます。そんなお客様には特別に…』なんて感じでコッソリ話し、魔力練成訓練法を試す為には暴れ竹を倒す必要があると説明し、それに同意し、またそれくらい実力のある者を選んで行なえばいいんじゃないか?」
「そうですね。実力のない者を地下2層へ入れるのはやはり危険ですし、またそれくらいでなければ魔力練成訓練というのを習得しても、上手くはいかないのではないでしょうか」
オレがざっと思いついた事を口にしてみると、それに田所さんも同意してくれる。
「うむ、では決まりだな。金儲けも大事だが、なにより安全が第一だ。銚子、いまジャングが言った内容をベースに、プランをいくつか考えてみてくれ」
「うッス。じゃあジャングさん、あとで少し相談に乗ってください」
「ああ、わかった」
流れるように出された指示を受け、流れるようにオレにも球を投げてくる銚子。こういうとこが、巧いんだよな。オレなら自分ひとりでどうにかしようと、考え込んじゃうもん。流石は人使いの巧い、提督といっしょにいるだけあるよ。
「え、もしやあのふたりが、何か問題でも起こしたのかッ!?」
再び提督から話を振られ、そこでアブドゥルとミゲルタの名を告げられたことに、少々ドキッとしたオレ。ないとは思いたいが、昨今は外国人が色々とやらかしたというニュースには枚挙に暇がない。それにやや焦った調子で返すと、提督は苦笑いでそうじゃないと首を横に振った。
「いやな、暴れ竹のドロップで、ただの竹がドロップするのは知ってるだろう?」
「ああアレか。ハズレだがアレも竹炭にして売れば、ダンジョン産てことでそれなりに売れてたんじゃ?」
うん、下駄箱とか押入れとかに置いとく脱臭用の竹炭。ダンジョン産だけに脱臭力が違う、というなんかフワッとした説明でも、それなりに売れていたはず。
「いやいや、その竹材でだな。アブドゥルとミゲルタのふたりが竹細工の見事な民芸品を作ってみせた。まぁ、それはいいんだが、大事なのはその過程だ。魔力を操って、スイスイと竹ひごを編んでいく。しかもそれが魔力を練るいい練習になるというじゃないか?」
「なるほど。それをインストラクター事業の方でも活用できないか、という話か?」
うむ、ふたりにそういった事を教えたのは、確かにオレだ。
ジェロームたち3人から魔力を伸ばすのに何かいい方法はないかと訊かれた際、じゃあとオレが常日頃から行っているモノ作りによる魔力練成訓練法を伝授したのだ。それであれば素材加工の間、ジワジワジワジワと常に魔力を生み出し続けていなければならず、集中力と魔力練成のいい訓練になる。
「そういうことだ。もうすでに何度か、リピートに来た客もいる。しかしそうしたお客もこれ以上ココで学ぶものがないとなれば、次第に足が遠のいていくだろう。しかしそこに魔力を練る練習法といった別のアプローチもあれば、まだまだ引っ張れるだろう?」
「うむむ…、流石は提督だ。オレではその点に、まるで気がつけなかったな」
現在に至るまでに講じた、様々な試行錯誤。しかしそんなモノはちょっと考えれば誰でもすぐに思いつくだろうと、まったく執着していなかった。それを即商売に結び付けるといった着眼点は、オレには無いモノ。
「それで少し試してみたんだが、どうも巧くいかん。それをジャングに訊いてみたかったのだ」
と、そう言われ、オレにも合点がいった。
「ああ、なるほど。しかしその答えは至ってシンプル。倒した獲物の生命エナジーを浴びていないと、その素材の加工も容易ではないんだ」
「なに!?」
これは提督も知らなかったらしく、驚いた表情をみせている。
「うむ…。コレはなんというか、縁とでもいえばいいのかな。倒したモンスターの生命エナジーを浴びているかいないかで、ドロップした素材への加工にも影響が出るんだ」
「「「ええっ!?」」」
すると、その説明に疑問をもった田所さんから質問が。
「では…薬の調合にも、そういったことが影響するんでしょうか??」
「ん~、どうでしょう?化学的な反応をさせる薬剤の調合と、素材そのものに魔力を流して形を変えるといった加工法では、アプローチの仕方が違うんで」
「ふ~む、確かにそうですね」
「縁理論とでもいうか、倒したモンスターの生命エナジーを得ることで、そのドロップした素材へのアプローチもまた、容易となる。これはオレもついぞ知らなかったことなのだが、国の研究機関の方と話す機会があった。その会話のなかで知ったんだ」
そう、これは豊波チーフや研究スタッフさんとの会話から知り得た知識。
「そうか。つまり自分で倒したモンスターの素材は加工がしやすく、自分で倒したわけではないモンスター素材では、その何倍も加工が難しいということだな?」
「ああ。だからアブドゥルとミゲルタは、恐らく自分達で倒した暴れ竹からのドロップを加工していたのだろう。しかし、それをインストラクター事業で活用するとなると、暴れ竹をお客さんに倒させる必要が出てくるな…」
うん、お化けアロエを倒しても、アロエの葉やアロエの花しかドロップしない。極まれにお化けアロエのモンスターカードや植物系モンスター特有の樹血琥珀といった宝石のようなモノをドロップするが、それらはいずれも魔力での加工には不向きな素材。
そこでそういった事をココで学ばせたいなら、どうにかしてお客さんに暴れ竹を倒させる必要が出てくる。
「ふぅむ、なるほど…。そんなカラクリがあったとはな」
「それじゃあ何度試してみても、上手くいかなかったのも納得ッスね」
「でもまあ、リピーターのお客さんであれば、ある程度その人柄は分かってきているか。なら面談で、『いつもご贔屓にしてくださってありがとございます。そんなお客様には特別に…』なんて感じでコッソリ話し、魔力練成訓練法を試す為には暴れ竹を倒す必要があると説明し、それに同意し、またそれくらい実力のある者を選んで行なえばいいんじゃないか?」
「そうですね。実力のない者を地下2層へ入れるのはやはり危険ですし、またそれくらいでなければ魔力練成訓練というのを習得しても、上手くはいかないのではないでしょうか」
オレがざっと思いついた事を口にしてみると、それに田所さんも同意してくれる。
「うむ、では決まりだな。金儲けも大事だが、なにより安全が第一だ。銚子、いまジャングが言った内容をベースに、プランをいくつか考えてみてくれ」
「うッス。じゃあジャングさん、あとで少し相談に乗ってください」
「ああ、わかった」
流れるように出された指示を受け、流れるようにオレにも球を投げてくる銚子。こういうとこが、巧いんだよな。オレなら自分ひとりでどうにかしようと、考え込んじゃうもん。流石は人使いの巧い、提督といっしょにいるだけあるよ。
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