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Strategy Crab Dungeon 4.2
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(むぅ、いったいどうなってんだ…)
カニダンジョン地下4層で道に迷ったオレ。そのため無駄に時間を浪費していた。
といっても、迷子になった訳ではない。強くなったことで知能的な能力も向上しているので、地形は覚え自分の現在位置もしっかりと把握できている。ただ先へと進むルートが発見できず、同じ場所を何度もグルグルと周る羽目になっていたのだ。
(他に道は無かった。なら怪しいとすれば、この水中通路しかないのだが…)
そうして再び目星をつけた怪しい水中通路へと身を沈め、その岩肌もしっかりと確かめながら慎重に進む。
『(ごぽん、ぐぼぼぼ…)』
水中では視界がよく効かず、化け物昆布が密生していると、それでも視界が塞がれる。さらに前は戦闘もあった為、どこかに見落としがあったのかもしれない。
そう考え、怪しいと踏んだ水中通路のT字路近辺を重点的に調べていく。
しかし前の周回でも調べたばかり。特に新しい発見もなく、次第に心には焦れた気持ちが湧いてくる。そこでそんな気持ちを落ち着かせる為、文字通り息抜きをしようとT字路のすこし先にあった釣鐘状の空気溜まりに頭を出した。
『(ぷしゅう…!すこぉ)』
(ふぅ…)
カニダンジョンの水は下水道のように濁っておらず、澄んでいてとても綺麗。
その点においては不快感を感じない。それでもずっと水中にいると揺らぎもあって眼に返ってくる光のチラつきが、結構ストレスだったりする。そこで軽く首や肩を回し、そんな目にきた疲労を紛らわす。
と、首を回した時に頭上のやや盛り上がった岩がライトの明かりに照らしだされ、それになんとはない違和感をおぼえた。
(ん…?)
そこで水を蹴って身を伸び上がらせるとその岩に手をかけ、身体を持ち上げる。すると盛り上がった岩で視えなかった部分には空間があり、狭まってはいるものの奥へと続いているではないか。
やっと先に続くルートを発見。水中T字路だと思ったのは間違いで、本当は変則十字路だったのか。
(って、普通に分かるかこんなモン!!)
酸素ボンベを使用しているので、心の中で悪態をつく。前に潜った草津の山ダンジョンも、蟻のいたエリアは結構変則的なマップだった。
通路のなにも無い場所が部屋のように広かったり、急こう配な細い通路でアチコチ繋がったりしていた。しかしそれにも増して、このカニダンジョン地下4層のマップは難解なようだ。アチコチ水没していてそれ用の装備がないと大変だし、こんなただの空気溜まりとしか思えない場所が先へと続くルートだとは、まず分からないだろう。
(あ~、もう。コレのせいでエライ無駄な時間食ったわ…)
そのまま岩肌を蹴って身を支えると、よじ登って狭まっていた場所を抜ける。と、その先にはまた洞窟然とした道が続いている。しかしその後は水も罠もモンスターもなく、道なりに進むだけで地下5層へと降りられるポイントを発見することができた。
「ハァ、ようやっとか…」
安堵の溜息と共に声を漏らすと、そのちいさな呟きすらやけに大きく洞窟内に響く。
「……」
そんな残響を耳に感じながら、この先の行動について考える。ココまで来るのに、消耗は7割といったところ。体力的にも精神的にも、まだ十分に戦える。
(でも『まだ』は『もう』で、『もう』は『まだ』だよな…)
今回の探索ではチョイチョイやらかしている。
鉛とスキル【強酸】による感電攻撃は明らかに失敗だったし、その後に発動したハイドロオキシジェンボムは自爆同然。背負っていた酸素ボンベがあれで破裂していたら、間違いなくダメージを負っていた事だろう。どうも強くなったという精神的余裕が、今日は悪い方向に働いてしまっているように感じる。
よし、ならばここは退くも進むもタヂバナサーン!
ではなく、退くも滝川、進むも滝川。そうだ。真の戰上手とは、引き際も弁えているもの。なのでココはのっぴきならなくなってウソダドンドコドーン!する前に、潔く仕切り直すのがいいだろう。
あ、ちなみに滝川とは、織田四天王と称されるほど戰上手な信長家臣。滝川一益さんのこと。柴田勝家、丹羽長秀、明智光秀、滝川一益で織田四天王というわけだ。
と、戦国武将にも詳しく引き際を弁えているオレに、隙は無かった。
地下5層へと降りるであろうポイントの前で鮮やかに踵を返すと、いま来た道を引き返す。そうだ、急いては事をミステイク。急がばローリン、抱いてダーリン。
最後に笑えば、それでいいのだ。
カニダンジョン地下4層で道に迷ったオレ。そのため無駄に時間を浪費していた。
といっても、迷子になった訳ではない。強くなったことで知能的な能力も向上しているので、地形は覚え自分の現在位置もしっかりと把握できている。ただ先へと進むルートが発見できず、同じ場所を何度もグルグルと周る羽目になっていたのだ。
(他に道は無かった。なら怪しいとすれば、この水中通路しかないのだが…)
そうして再び目星をつけた怪しい水中通路へと身を沈め、その岩肌もしっかりと確かめながら慎重に進む。
『(ごぽん、ぐぼぼぼ…)』
水中では視界がよく効かず、化け物昆布が密生していると、それでも視界が塞がれる。さらに前は戦闘もあった為、どこかに見落としがあったのかもしれない。
そう考え、怪しいと踏んだ水中通路のT字路近辺を重点的に調べていく。
しかし前の周回でも調べたばかり。特に新しい発見もなく、次第に心には焦れた気持ちが湧いてくる。そこでそんな気持ちを落ち着かせる為、文字通り息抜きをしようとT字路のすこし先にあった釣鐘状の空気溜まりに頭を出した。
『(ぷしゅう…!すこぉ)』
(ふぅ…)
カニダンジョンの水は下水道のように濁っておらず、澄んでいてとても綺麗。
その点においては不快感を感じない。それでもずっと水中にいると揺らぎもあって眼に返ってくる光のチラつきが、結構ストレスだったりする。そこで軽く首や肩を回し、そんな目にきた疲労を紛らわす。
と、首を回した時に頭上のやや盛り上がった岩がライトの明かりに照らしだされ、それになんとはない違和感をおぼえた。
(ん…?)
そこで水を蹴って身を伸び上がらせるとその岩に手をかけ、身体を持ち上げる。すると盛り上がった岩で視えなかった部分には空間があり、狭まってはいるものの奥へと続いているではないか。
やっと先に続くルートを発見。水中T字路だと思ったのは間違いで、本当は変則十字路だったのか。
(って、普通に分かるかこんなモン!!)
酸素ボンベを使用しているので、心の中で悪態をつく。前に潜った草津の山ダンジョンも、蟻のいたエリアは結構変則的なマップだった。
通路のなにも無い場所が部屋のように広かったり、急こう配な細い通路でアチコチ繋がったりしていた。しかしそれにも増して、このカニダンジョン地下4層のマップは難解なようだ。アチコチ水没していてそれ用の装備がないと大変だし、こんなただの空気溜まりとしか思えない場所が先へと続くルートだとは、まず分からないだろう。
(あ~、もう。コレのせいでエライ無駄な時間食ったわ…)
そのまま岩肌を蹴って身を支えると、よじ登って狭まっていた場所を抜ける。と、その先にはまた洞窟然とした道が続いている。しかしその後は水も罠もモンスターもなく、道なりに進むだけで地下5層へと降りられるポイントを発見することができた。
「ハァ、ようやっとか…」
安堵の溜息と共に声を漏らすと、そのちいさな呟きすらやけに大きく洞窟内に響く。
「……」
そんな残響を耳に感じながら、この先の行動について考える。ココまで来るのに、消耗は7割といったところ。体力的にも精神的にも、まだ十分に戦える。
(でも『まだ』は『もう』で、『もう』は『まだ』だよな…)
今回の探索ではチョイチョイやらかしている。
鉛とスキル【強酸】による感電攻撃は明らかに失敗だったし、その後に発動したハイドロオキシジェンボムは自爆同然。背負っていた酸素ボンベがあれで破裂していたら、間違いなくダメージを負っていた事だろう。どうも強くなったという精神的余裕が、今日は悪い方向に働いてしまっているように感じる。
よし、ならばここは退くも進むもタヂバナサーン!
ではなく、退くも滝川、進むも滝川。そうだ。真の戰上手とは、引き際も弁えているもの。なのでココはのっぴきならなくなってウソダドンドコドーン!する前に、潔く仕切り直すのがいいだろう。
あ、ちなみに滝川とは、織田四天王と称されるほど戰上手な信長家臣。滝川一益さんのこと。柴田勝家、丹羽長秀、明智光秀、滝川一益で織田四天王というわけだ。
と、戦国武将にも詳しく引き際を弁えているオレに、隙は無かった。
地下5層へと降りるであろうポイントの前で鮮やかに踵を返すと、いま来た道を引き返す。そうだ、急いては事をミステイク。急がばローリン、抱いてダーリン。
最後に笑えば、それでいいのだ。
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