上 下
521 / 613

Dungeon instructor 8

しおりを挟む
「あれ、なにやってんだあいつら?」

オレと智が植物ダンジョンからアスレチック場に戻ると、そこではなぜかシャークと結月ちゃんがお客に対し戦闘教官をしていたのだ。

うん、オレ達よりも先にあがったお客さん達は、アスレチック場にて生命エナジー取得後の能力値チェックをしていたはず。そしてダンジョンでは危険のあるため過保護にしていたので、ここで戦闘指導を行うともスケジュールに組まれていたが…。

でもなんでシャークと結月ちゃんが、その教官をやってんだ?ヘルメットもつけないで。

「ホラ!相手の動きをよく視る!次ッ!」
「あ、ありがとうございました!」

「攻撃する時は恐れずに!しっかり踏み込んでください」
「はい!ありがとうございました!」

離れて立つふたりの前には防具姿のお客さんが列をなしており、チャンバラ剣での立会を繰り返している。

チャンバラ剣てのは軽い木の棒に発泡材を巻いたモノで、文字通りチャンバラして叩かれもたいして痛くない武器。これもまたインストラクター事業のため、会社で用意したモノだ。

そこでどうしてこうなったのか、その訓練風景を眺めていた銚子をつかまえ訊いてみることに。

「なぁ銚子、あれはいったいどういうことだ?」
「あ、ジャングさんお疲れさまっス。いや、シャークちゃんは前からスゴイって知ってましたけど、あの結月ちゃんて子もまたスゴイっすね!」

「いや、そうじゃなくて。なんであのふたりが、ああして指導をやってるんだ??」
「あ~、それは。なんかふたりが注目を集めちゃいまして…」

そうして銚子が説明してくれるには、午後も女子高生ズはサバゲフィールドを散歩したりアスレチックを楽しんだりして、ふたりで遊んでいたらしい。

が、社員が戻ってきたお客さんのためにチャンバラ剣を用意していると、それを見て今度はチャンバラ剣をオモチャに遊び始めたらしい。

するとそのチャンバラごっこは、興が乗ってきたのか次第にヒートアップ。そうしてお客さんがダンジョンから出てきた頃には、すっかりアスレチック場を舞台にしたド派手な忍者バトルの様相を呈していたそうな。

で、それを目の当たりにしたお客さん達がひどく感動してしまい、そのままあのふたりに指導をお願いしたのだという。

「なんと、そんなことになってたのか…」
「ええ、まぁ。でもあのふたりもそれでイイって言ってくれましたし、ああしてお客さんも喜んでくれてますから」

「うぅむ…」

まぁ、結月ちゃんに関しては道場で合気道の指導することもあるから分かるが…、あ、そういえばシャークも学校でほかの生徒に戦闘教官の真似事をやってたか。

なるほど、そういう意味ではふたりとも、人に教える経験があったのだな。

「おそい!次ッ!」
「ありがとうございました!」

まぁシャークの場合はパカリと一本とってるだけで、アドバイスは雑なことこのうえないが。

それでもいい大人が叩かれながらもニコニコと礼を述べてるのだから、あれもまた人望か??いや、アレは単に女子高生くらいの子に棒で叩かれるというレアな体験が、嬉しいだけかもしれんな。

…。

こうして特異産業のダンジョンインストラクター事業は、初日を大盛況で終えた。そして帰りの車中、シャークと結月ちゃんはとってもご機嫌だ。

「あ~!今日はスゲェおもしろかった!」
「楽しかったね、ルリちゃん!」

「ああ、提督にバイト代も貰えたしな!」
「うん。また頼みたいって、言ってたもんね!」

うむ、その若さを弾けさせ大暴れしていたら、それでお金まで貰えたのだからふたりにとっては御の字だろう。

「よかったな、ふたりとも」
「そうだね。お客さんも、とっても喜んでたもんね」

うん、特異産業のダンジョンインストラクターでは、回を重ねるごとに割引が適用させる仕組み。そもそも自分で戦えるようになれば必要なくなるモノなので、そのリピーターは限られている。

それでも倒すのに忌避感の少ない植物モンスターというのは利用者にとってありがたいだろうし、回を重ねるごとに割引があるのならまた参加しようと思ってもらえるかもしれない。

そう考えて採用した割引サービスだったが、今日が初日にも関わらず大半のお客さんがその場で次の予約を決めてくれていた。これは社員たちの頑張りもあったが、シャークと結月ちゃんのお手柄でもあったろう。

これには提督もホクホク顔で、ふたりにバイト代を渡すとまたよろしくと握手で頼んでいた。

そしてオレもまた今日の3人の頑張りを労う為に、帰りに温泉にも入らせ飯もたらふく食わせてやった。

この調子でダンジョンインストラクター事業の方も軌道に乗ってくれれば、会社の収益もより安定したものとなるだろう。いやいやしかし、自分でなにかやるつもりでいたがこんな形となるとはな。なんとも、面白いもんだ。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...