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Dungeon instructor 6

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洞窟チックな植物ダンジョン地下1層へと足を踏み入れると、グループごとに分かれたお客さんに指導員がつき暴れアロエを倒させている。

その様子は左右からの投網でもって身動きを封じられた暴れアロエに対し、塩撃スピアを構えたお客さんにトドメを刺させるといったモノ。

「ハイどうぞ、いいですよ!」
「い、いきます!…えい!」

これは初戦闘のお客さんはダンジョンの空気にも飲まれアガってしまっているので、これくらい過保護な状態でないと危険だろうという判断のためだ。

「お~、やってるなぁ」
「へぇ~、こんな風になってるんだぁ」

そんなお客さん達の恰好は、全員風防付ヘルメットに完全防備の防具姿。いずれもバイク用の、防具はモトクロスで使われるモノを使用。色は白で統一し、肩と頭に赤でナンバーがいれてある。

これは会社で用意したモノで、自前で防具を持ってきたお客さんにもコレを着用してもらっている。

色が白なのは、ダンジョンでの迷子防止と警護対象だとわかりやすくする為だ。ヘタに自前の防具などをつけられると、パッと見で解らなくなってしまうから。

指導員たちも同様の装備に身を包んでいるが、こちらの色は黄色。

ダンジョンでも目立つ色ということで、黄色になった。そしてグリーンメタリックやブラウンメタリックな巨大カメムシの外殻を、防具の一部として使用している。

これは日々のダンジョン戦闘業務で傷んでしまった装備を、補強するため。

お客さん相手なのでなるべく綺麗な装備で前に立たせてやりたいが、とはいっても戦闘をしていればすぐに装備は傷んでしまうもの。樹脂製の丈夫な防具であっても、モンスターの攻撃を受けたりすると簡単に削れてしまうのだ。

そこでうちに大量に余っていた巨大カメムシの外殻を提供した次第。ま、多少装備が傷んでてもそれに継でもあてて補強してる方が、歴戦の強者っぽさが出て案外とお客ウケはいいようだ。

で、オレと智も、今はそんな黄色と白の防具に身を包んでいる。

「…よし、だいぶ離れたし、この辺でいいだろう。お、あそこに丁度いいのがいたな」

植物ダンジョン地下1層を奥へと進むと、1体の暴れアロヘがこちらへ向かってきた。それに対しオレは古くなった漁網を裁断して作られた投網を構え、智は塩撃スピア改を構える。

「あせるな智、まだ槍先は上に向けてろ。オレが合図してからでも十分間に合うから」
「で、でも!おもったより動きが早いよ!?」

と、初めて動いている暴れアロエを目にし、智は若干テンパってしまったようだ。

まぁ植物とはいえ、モンスターだからな。犬猫のダッシュよりかは遅いが、獲物を見つければそこそこのスピードでは近づいてくる。ん~、それでもゆっくり漕いでるチャリくらいの速度だと思うが。

「まぁだいじょうぶだ。それッ!」
『ビュッ!ビシャンッ!!』

幅が約1メートルで長さが約3メートルほどの帯状投網を鞭のように叩きつけると、それだけでもう暴れアロエは半壊状態に。先端には鉛の重りがついてるから、勢いよく叩きつければこうして武器にも使えるのだ。

「えっ!その使い方であってるのジャン氏!?」
「動けなくすれば同じことだ。ほら、おまえの番だぞ」

「ウ、ウン!」

そうして半壊になった暴れアロエにバズンと塩撃スピアを見舞い、トドメを刺す智。しかしドロップの魔石とアロエの葉を拾いつつも、どこか釈然としない表情をうかべている。

「ウ~ン、ホントにこれでいいのかなぁ~?」
「ああ、綺麗に捕獲するには、左右から投網をかけてやらないと巧くいかない。でもアレはお客さん向けに見た目を気にしてるだけだから、コッチはこれでいいんだよ」

うん、やってることはゲームでいうところの、低レベルのキャラに経験値を吸わせる養殖。

そして向こうはお金を払ってそれを頼んでるお客さんなのだから、それにも丁寧に対応せねばならない。しかし智についてはお客さんではないので、扱いが違うのは当然なのだ。

「ここに連れてきたのはおまえに戦闘を経験させるのが目的なんだから、レベルが上がったらすぐに言うんだぞ?それによって持たせる武器を変えるから」
「ウ、ウン、わかったよ」

そう、智を植物ダンジョンに連れてきた理由は、戦闘経験を積ませる為。

冷蔵庫ダンジョンではスライムしか相手をさせられないし、ソフトタッチアタックでは戦闘とも呼べない。カニダンジョンも1層から攻撃の鋭い巨大ムール貝なので、危なくて相手はさせられない。そこで今の智にガチンコで戦闘をさせてもそこそこのダメージしか受けず倒せるようなモンスターとなると、ここにいる暴れアロエが最適なのだ。

そうして自分ひとりの力でモンスターを倒せたとき、それは確かな自信となる。

なのでヤル気になってくれてる智にそういった経験を積ませれてやれば、それはより成長へのヤル気と次のステップへ繋がってくれるというもの。

うむ、これはそういう、布石なのだ。
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