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Dungeon instructor 4

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思ったよりも智の消耗は激しかった。なので午前中のダンジョン入りは中止し、その間にダンジョンで使う武器について説明することに。

そこで会社の武器庫から借りてきた武器を、よく見えるよう掲げてみせる。

「ほら、コレが指導用に使ってる武器だ」
「あ、それが塩撃スピア?…あれ、でもそれなんかバズーカみたいで、HPで見たのと違うね」

「お、智は会社のホームページで下調べ済みだったか。コレは指導用に開発されたモノで、塩撃スピア改になる」

見た目は智の言うように、太い筒にグリップのついたバズーカのよう。おかしな点は、その筒から先を斜めにカットされた鉄の筒が生えていること。

「それはアタシも初めて見るな」
「それって、前となにが違うのですか?」

お、女子高生ズも塩撃スピア改に興味をもったようだ。

「うむ、コレは力のない女性でもモンスターを倒せるようにと、塩撃スピアに杭打機構を持たせたモノだ」
「え、じゃあソレって、パイルバンカーってことなのジャン氏?」

「そういうことだ。ま、一度やってみせてみよう」

そこでまずは、塩撃スピア改の後部に取り付けてある鉄パイプを外し地面にセット。コレに槍先を押しこむことで、杭打機構と塩を撃ちだす為のバネを収縮させるのだ。

『ギッ…ガチコン、コクン…!』
「と、こうして二度、バネが収縮状態でロックされた音がすればOK。あとは槍先を塩バケツに突っ込んで塩をセットすれば、攻撃準備完了だ」

「なぁ、撃ってみせてくれよジャング」
「まぁ待てシャーク、まだ説明の途中だ。ゴホン、この状態では決して槍先をひとに向けたり衝撃を与えないこと。ストッパーには結構な力がかかっていて、威力もなかなかのモノだからな」

うん、コレの開発を行なった人物によると、試し撃ちでは車のドアを余裕で撃ち抜いたという話だし。

「へぇ~、そんなにスゴイものなんだね」
「ああ。だから攻撃状態で持つ時は、槍先は必ず上か下に向けておく必要がある。トリガーにも触れぬよう、こう、トリガーガードを覆うように持つんだ」

「ウン、気を付けるよ」
「よし、では撃ってみよう。攻撃姿勢は腰だめで構え、狙いが定まったら、こうしてトリガーをひく」

何も無い方向に向け塩撃スピア改のトリガーをひけば、バネが解放され鋭く槍先が伸びる。

『シャガンッッ!!』

「へぇ~、結構強力だな」
「でも…それだと一度きりですし、突く以外の攻撃もできないですよね?」

「ハハハ、雛形くんの指摘通り、コレは振り回したりすることは出来ない。軸を傷めてしまえば、杭打機構がダメになってしまうからね。だから塩撃スピア改は力のない初心者向け、複数人でモンスターと相対することが前提の武器だ」

うん、ぶっちゃけ乱戦にでもなってコレを振り回したら、それだけで壊れてしまう。

「わかりました。使う条件の、かなり限定された武器ということですね」
「そういうことだ。指導では暴れアロエを投網でがんじがらめにしてから使うので、こういった武器でも使い道があるんだよ」

「ふ~ん、でもそんなのより銃や弓が使えれば、もっと手っ取り早いんだけどなぁ~」
「え、でもモンスターを倒したとき近くにいないと、生命エナジーを得られないってジャン氏が…」

「わかってるよそんなの。ただ言ってみただけだろ」
「あ…ウン、なんかゴメン…」

あらら、シャークの取り留めもないボヤキに智が素で答えてしまった為、藪蛇になってしまっている。うん、まぁ会話が成立してるだけ確かな進歩だ。ガンバレ。

「「「わいわい、ガヤガヤ…」」」

と、そんなことを話してる間に、どうやら午前中からダンジョンに行っていたお客さん達が戻って来たようだ。


…。



時刻は昼をまわり、そこそこ広い東屋ではお客さん達のお食事タイム。

料理はオバチャンたちの用意してくれた豚汁とゴハンに、魚の干物やつくだ煮といったモノがカウンターに並んでいる。あとは自分らで勝手にやってくださいの、ワイルドバイキング方式だ。

そして干物を焼く用に、東屋には等間隔で炭を熾した七輪が置いてある。それをグループ分けされたお客さん達が囲み、キャッキャッと食事を楽しんでいる。

(うむ…、特に暗い顔はなさそうだし、指導は順調のようだな)

ダンジョンに潜ってモンスターを殺す。最初はその忌避感に苛まれるケースは少なくない。一番最初に瑠羽がゴブリンを殺した時も、そうだったし。

アレはオレの失敗だった。

つい自分を基準でモノを考えてしまい、また瀬来さんが大丈夫だったからと、瑠羽や仁菜さんのことも同じように思ってしまったのだ。

だが植物ダンジョンならば、モンスターを殺す生き物を殺すという忌避感や抵抗感は他よりも薄くて済む。

指導で倒す対象となる暴れアロエは、ビロビロワサワサと動めくややキモイ系の植物。なので初めてそういった経験をする人には、オススメのモンスターであるといえよう。

うむ、ダンジョンに潜ったあとでも、ああして食事が楽しめるのだから、ここの植物ダンジョンは初心者を指導するにはもってこいだな。
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