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「う~む、智のヤツ。今日こそ捕まえてやるぞ」
草津から戻ってきて何日か過ぎたが、連絡を入れる度に都合が悪いとはぐらかされ、オレは未だ杉田智道と会えずにいた。
そこで今日は、整体学校の帰りにそのまま智の住むアパートへ突撃したのだった。
『ぴんぽ~ん』
「(こんこんこん)どうもぉ、マッスル便で~す!」
「は~い。(がちゃ)ジャ、ジャン氏!?どうしてッ!?」
「フハハ!かかったなバカめ!」
扉のあいた瞬間、空かさず扉をガッシとおさえその手を掴んでやる。
なお、この手は配達員やガス電気の職員を装った不逞の輩が使う手なので、ちゃんと確認がとれるまで決して不用意に扉を開けてはならない。
「は、謀ったなぁ!ジャン氏め~ッ!」
「うるさい、おまえが会おうとしないからだ。くっ、そして思った通りか!」
そうしてひさびさに再会した智は、すっかりぽっちゃりとリバウンドしていたのだった。
…。
こうして無理やり部屋に上がり込んだオレは、智にお説教タイム。
「友よ、オレとの約束はどうした?ちゃんとトレーニングメニューをこなすって、約束しただろう」
「…そんなこと言ったってェ~」
智にもオレと同じようになってほしいからと、親身になってトレーニングメニューも考えたし、ダンジョンにも入れ指導したんだ。
「しっかりしてくれ。おまえにつまらないことで死んでほしくはないから、オレの秘密も打ち明けたというのに…」
「……」
しかしそう口にする一方で、荒事や肉体的苦痛への耐性が低いオタでは、こんなものかもと納得する部分も。
(だからまぁ、オレもダンジョンへ挑むのにもソロでと決めたんだしな…)
「もぉ、そんなに怒らないでよジャン氏。…ほら、コレ夏の新刊。ジャン氏の分も買っておいたからさ」
「むっ?そ、それはスマンな。…おお、これはイイモノでおじゃる」
そうだ。智は根性はないが、こうして友達思いのいいやつなのだ。
「デュフフ…、そうでゴザろ?ジャン氏ならきっとそう言うと思ったでゴザルよ」
「う…、うむ。その点についてはおぬしの眼に狂いはないでおじゃる。そうか、重かったろうにオレの分まですまなかった。そうだ、いま金ぅおっ!?」
一冊の薄い本とはいえ、暑いなか大量にそれらを抱え長い行列に並ぶのだ。その苦労を思うとしのびない。そこで財布を取り出し金を払おうとしたら、背後にあった荷物に肘があたり崩してしまった。
「あぁ、すまない。ん…ムッチャ痩せるドリンク?なんだコレは?」
「あッ!いいんだよジャン氏それはぁ~!!」
なにやら荷物の山から崩れ落ちてきたモノのなかに、見慣れぬ健康食品が。
「「……」」
ふぅむ、さらに太ってしまった智。だが一応ながら、痩せようと手は講じていたらしい。
「コレ、効果あったか?」
「……」
そう問うと、視線を泳がせ横を向く。うむ、効果があったなら、リバウンドでこんなに太ってないもんな。
「ふぅむ、株式会社ムッチャ健康サポートか。まるで聞かない名だな」
「で、でも!ネットアイドルの仲ちゃんがCMやってて、すごい効果あったって!!」
「そうか。でもそれはお金貰ったからそんな風に言ってるだけだぞ?うむむ…友よ、おまえはオレより頭がいいのに、どうしてそう騙されやすいんだ」
「えぇ、だってぇ~…」
電子系に強くて、大手IT企業にも勤めている秀才なのに。
「そもそもだ。そんなに効果のある成分が入ってるなら、世の大企業が放っておくはずがないだろう?世の中には商品開発に何億とかけてる製薬会社や食品メーカーがごまんとあるんだ。それなのにソコが見向きもしないってことは、そういうことだぞ??」
「…でもさぁ」
それに人体にそれほど大きな変化を齎すのであれば、それはもう薬と同じ。だったら薬事法とかで取り締まられない訳が、ないだろうに。
「でももカカシもあるか。そんなに腹減ってるのが辛いなら、コンニャク腹いっぱい食えよ。コンニャクなんて食えない芋をどうにか食おうとアレコレした結果、栄養ほとんど無くなっちゃったミラクル食材だぞ」
「え~、でもコンニャクなんて、別に美味しくもないし…」
「だからそれ単体で食わずに、カサ増しに使えばいいんだよ。たとえばすき焼き風コンニャクたっぷり牛丼とか、まぁ試してみろって。…て、待て。アレもなんだ…?」
そうコンニャクについて話していると、智の部屋に以前にはなかった変わった鉢が置いてあるのに気が付いた。
「アクリルの鉢…?智。おまえ、植物を育てる趣味なんてなかったよな?」
「あ!そ、それはダメだよぉ~!!」
すると思いのほか素早い動きで立ち上がり、智は棚のうえに置かれていたアクリル製の鉢を確保。しかしその下に敷かれていた紙が、ハラリとオレの手元へと落ちてきたのだった。
「なになに…、これで貴方の夢も実現?人工妖精栽培キット??」
「あ~!ソ、ソレは読んじゃダメだったらぁ~ッ!!」
(う~む…)
悲報。どうやらしばらく会わぬ間に、友が怪しい通販グッズに嵌ってしまったらしい。
草津から戻ってきて何日か過ぎたが、連絡を入れる度に都合が悪いとはぐらかされ、オレは未だ杉田智道と会えずにいた。
そこで今日は、整体学校の帰りにそのまま智の住むアパートへ突撃したのだった。
『ぴんぽ~ん』
「(こんこんこん)どうもぉ、マッスル便で~す!」
「は~い。(がちゃ)ジャ、ジャン氏!?どうしてッ!?」
「フハハ!かかったなバカめ!」
扉のあいた瞬間、空かさず扉をガッシとおさえその手を掴んでやる。
なお、この手は配達員やガス電気の職員を装った不逞の輩が使う手なので、ちゃんと確認がとれるまで決して不用意に扉を開けてはならない。
「は、謀ったなぁ!ジャン氏め~ッ!」
「うるさい、おまえが会おうとしないからだ。くっ、そして思った通りか!」
そうしてひさびさに再会した智は、すっかりぽっちゃりとリバウンドしていたのだった。
…。
こうして無理やり部屋に上がり込んだオレは、智にお説教タイム。
「友よ、オレとの約束はどうした?ちゃんとトレーニングメニューをこなすって、約束しただろう」
「…そんなこと言ったってェ~」
智にもオレと同じようになってほしいからと、親身になってトレーニングメニューも考えたし、ダンジョンにも入れ指導したんだ。
「しっかりしてくれ。おまえにつまらないことで死んでほしくはないから、オレの秘密も打ち明けたというのに…」
「……」
しかしそう口にする一方で、荒事や肉体的苦痛への耐性が低いオタでは、こんなものかもと納得する部分も。
(だからまぁ、オレもダンジョンへ挑むのにもソロでと決めたんだしな…)
「もぉ、そんなに怒らないでよジャン氏。…ほら、コレ夏の新刊。ジャン氏の分も買っておいたからさ」
「むっ?そ、それはスマンな。…おお、これはイイモノでおじゃる」
そうだ。智は根性はないが、こうして友達思いのいいやつなのだ。
「デュフフ…、そうでゴザろ?ジャン氏ならきっとそう言うと思ったでゴザルよ」
「う…、うむ。その点についてはおぬしの眼に狂いはないでおじゃる。そうか、重かったろうにオレの分まですまなかった。そうだ、いま金ぅおっ!?」
一冊の薄い本とはいえ、暑いなか大量にそれらを抱え長い行列に並ぶのだ。その苦労を思うとしのびない。そこで財布を取り出し金を払おうとしたら、背後にあった荷物に肘があたり崩してしまった。
「あぁ、すまない。ん…ムッチャ痩せるドリンク?なんだコレは?」
「あッ!いいんだよジャン氏それはぁ~!!」
なにやら荷物の山から崩れ落ちてきたモノのなかに、見慣れぬ健康食品が。
「「……」」
ふぅむ、さらに太ってしまった智。だが一応ながら、痩せようと手は講じていたらしい。
「コレ、効果あったか?」
「……」
そう問うと、視線を泳がせ横を向く。うむ、効果があったなら、リバウンドでこんなに太ってないもんな。
「ふぅむ、株式会社ムッチャ健康サポートか。まるで聞かない名だな」
「で、でも!ネットアイドルの仲ちゃんがCMやってて、すごい効果あったって!!」
「そうか。でもそれはお金貰ったからそんな風に言ってるだけだぞ?うむむ…友よ、おまえはオレより頭がいいのに、どうしてそう騙されやすいんだ」
「えぇ、だってぇ~…」
電子系に強くて、大手IT企業にも勤めている秀才なのに。
「そもそもだ。そんなに効果のある成分が入ってるなら、世の大企業が放っておくはずがないだろう?世の中には商品開発に何億とかけてる製薬会社や食品メーカーがごまんとあるんだ。それなのにソコが見向きもしないってことは、そういうことだぞ??」
「…でもさぁ」
それに人体にそれほど大きな変化を齎すのであれば、それはもう薬と同じ。だったら薬事法とかで取り締まられない訳が、ないだろうに。
「でももカカシもあるか。そんなに腹減ってるのが辛いなら、コンニャク腹いっぱい食えよ。コンニャクなんて食えない芋をどうにか食おうとアレコレした結果、栄養ほとんど無くなっちゃったミラクル食材だぞ」
「え~、でもコンニャクなんて、別に美味しくもないし…」
「だからそれ単体で食わずに、カサ増しに使えばいいんだよ。たとえばすき焼き風コンニャクたっぷり牛丼とか、まぁ試してみろって。…て、待て。アレもなんだ…?」
そうコンニャクについて話していると、智の部屋に以前にはなかった変わった鉢が置いてあるのに気が付いた。
「アクリルの鉢…?智。おまえ、植物を育てる趣味なんてなかったよな?」
「あ!そ、それはダメだよぉ~!!」
すると思いのほか素早い動きで立ち上がり、智は棚のうえに置かれていたアクリル製の鉢を確保。しかしその下に敷かれていた紙が、ハラリとオレの手元へと落ちてきたのだった。
「なになに…、これで貴方の夢も実現?人工妖精栽培キット??」
「あ~!ソ、ソレは読んじゃダメだったらぁ~ッ!!」
(う~む…)
悲報。どうやらしばらく会わぬ間に、友が怪しい通販グッズに嵌ってしまったらしい。
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