上 下
476 / 613

research facility3

しおりを挟む
「ところで、どうしてこんな倉庫街に研究施設が?」

休憩時間に入ったのか働いていた研究員たちが散っていき、そのうちのひとりが俺にも珈琲を持って来てくれた。それを礼を言いつつ受け取ると、ふと疑問に思った事を口にしてみた。

「そりゃドリームアイランド構想の為だよ江月君」
「ドリームアイランド??」

オレの問いに豊波チーフが答えてくれるが、ちょっと意味がわからない。ゴミ埋め立て地の夢の島なら、確かにこの近くだが…。

「ああ、それはですね江月さん。D.I.PROJECTといった方が聞いた事があるかもしれませんね」
「あ、いえ、すみません。しばらく山のなかにいたものでドリームアイランドもD.I.PROJECTも、まるで聞いたことがなくて」

「なんだ、キミくらいの能力者なら当然知ってると思ったが」
「はは、まぁそういった事情なら知らなくても当然かと。まぁどちらも同じ計画の事を指すのですが、夢の島に空間接続型特異迷宮を集めて、封印するんですよ」

「封印…ですか」
「はい、コンクリートや鉄板で何重にも囲って。でも間引かない事には外に特異生物が溢れ出てきますから、そこは江月さんのような方たちに頑張った頂くカタチになりますが…」

ふぅむ、たしかに空間接続型ダンジョンなら、移動は可能。

オレも草津に行くのに試しでカニダンジョンを持って行ってみたが、まったく問題がなかった。とするとそこで国が確保した空間接続型ダンジョンを、ひとまとめに管理しようという計画なのか。

「火山の火口に空間接続型特異迷宮を投棄し処分している国もあるにはあるが、日本ではまだ行われておらん。結果がどうなるのか、未知数なんでなぁ」
「ふむむ…」

うん、うまくすればそれで地球がレベルアップしてくれそうではある。ただダンジョンの入り口はまったく破壊不可な謎原理で守られているので、火山の熱でも果たして溶けるのかどうか。ある日突然、全身に火を纏った炎の軍勢が火口から溢れ出ないことを祈るばかりだ。

「ま、そんなわけで今建設中のハコが完成するまでは、こうして近くで待っているという訳ですよ。ここなら夢の島に駐屯している自衛隊も、何かあればすぐ駆けつけてくれますから」
「なるほど、そういうことでしたか」

「このドリームアイランド構想が実現すると、スゴイことだぞ江月君。なにせ東京のド真ん中に、巨大なエネルギー鉱山が生まれるようなモノだからね」
「おお…、そう言われると、確かにスゴイ計画ですね」

「ただ大阪…淡路島と福島の方は、住民の反対もあって色々と難航してるんですよねぇ」
「……」

う~む、淡路島…は、まぁ大阪に近いからか。人を呼んで利益を生んでくれるかもしれないが、まったく逆の不幸と悲劇を招く呪いの塔かもしれないし。そして福島の方は、「なんでも危ねぇモン福島持ってくんじゃねェ!」って感じだろうな。

「…でも、よくそれで東京は通りましたね?」
「ははは…。まぁそこは夢の島だし、自衛隊も駐屯させるし、いざとなればその区画だけ分離させ東京湾の外に捨てられる設計になってるからね」

「へぇ~、じゃあ船ってことなんですか?」
「う~ん…、そこは泥船ってところかな。東京湾を出たら、爆破自沈する仕掛けになってるから」

わお、そんな時にそのダンジョンのひとつにでも潜ってたら、堪ったもんじゃないな。知らずにダンジョン出たら、一瞬で水圧にキュッ!てやられてまうやん。

「それもまた、スゴイ安全対策ですね」
「八丈島って案もあったんですけど、さすがにそこまで遠いと人の移動が大変ですしね。ちょっと工事の方が遅れてはいますけど、年内にはオープンできるでしょう。なので江月さん、その間は排除の難しい地形影響型の間引きをお願いします」

「え、あ、はい。それも、もう解放してるんでしたっけ?」
「はい、そちらの方はスキルトーナメントの開催に合わせてですから、既に。それと一応些少ながら、討伐依頼なんかも案件として出される予定ですから」

「おお!それは楽しみですね!」

と、そんな風に話しているところへ、ファイルを持った研究員が枝葉志主任に近づいていく。

「…主任、そろそろ移動のお時間ですので」
「あ…と、もう次に移動しないといけないようだ。申し訳ない」

「ああいえ、こちらこそ長居してしまいすみません」
「いえいえ、研究材料を持って来てくれと頼んだのはこちらですから。ああキミ、お土産って、もう江月さんの車に?」

「はい、すでに積み込みは終わっています」
「ありがとう。よかった、ではこれで約束は守れたようだね」

「ええ、鰐代の入金も確認できてます」
「ははは、鰐代って言い方もスゴイね。では江月さん、また」

「はい、ありがとうございました」

そうして枝葉志主任が席を立つと、豊波チーフもそれに続く。

「では私もこれで。江月君、今日は面白いモノがみれて楽しかったよ」
「はい、豊波さんもありがとうございました」

「ああ、では失礼するよ」

で、こうしてオレも職員の方に案内され車に戻ると、荷台にはビニールにくるまれた紫色の肉塊と、工事現場に敷くゴムシートかな?って感じの鰐皮がデデンと積まれていた。

「では、こちらにサインをお願いします」
「はい。わかりました」

そうして渡されたボードの紙には、素材の売買完了がうんぬんと、肉に関しては食肉可能だけど市場には流通させないようにとの念押しが。

「…はい、どうぞ」
「…たしかに。ではお気をつけて」

「ありがとうございました。失礼します」

こうして研究施設をあとにしたオレ。

いや~、素敵な出会いに新発見と、驚きの連続だったな。それに色々と面白い話も聞けたし、来てよかった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

処理中です...