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research facility3
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「ところで、どうしてこんな倉庫街に研究施設が?」
休憩時間に入ったのか働いていた研究員たちが散っていき、そのうちのひとりが俺にも珈琲を持って来てくれた。それを礼を言いつつ受け取ると、ふと疑問に思った事を口にしてみた。
「そりゃドリームアイランド構想の為だよ江月君」
「ドリームアイランド??」
オレの問いに豊波チーフが答えてくれるが、ちょっと意味がわからない。ゴミ埋め立て地の夢の島なら、確かにこの近くだが…。
「ああ、それはですね江月さん。D.I.PROJECTといった方が聞いた事があるかもしれませんね」
「あ、いえ、すみません。しばらく山のなかにいたものでドリームアイランドもD.I.PROJECTも、まるで聞いたことがなくて」
「なんだ、キミくらいの能力者なら当然知ってると思ったが」
「はは、まぁそういった事情なら知らなくても当然かと。まぁどちらも同じ計画の事を指すのですが、夢の島に空間接続型特異迷宮を集めて、封印するんですよ」
「封印…ですか」
「はい、コンクリートや鉄板で何重にも囲って。でも間引かない事には外に特異生物が溢れ出てきますから、そこは江月さんのような方たちに頑張った頂くカタチになりますが…」
ふぅむ、たしかに空間接続型ダンジョンなら、移動は可能。
オレも草津に行くのに試しでカニダンジョンを持って行ってみたが、まったく問題がなかった。とするとそこで国が確保した空間接続型ダンジョンを、ひとまとめに管理しようという計画なのか。
「火山の火口に空間接続型特異迷宮を投棄し処分している国もあるにはあるが、日本ではまだ行われておらん。結果がどうなるのか、未知数なんでなぁ」
「ふむむ…」
うん、うまくすればそれで地球がレベルアップしてくれそうではある。ただダンジョンの入り口はまったく破壊不可な謎原理で守られているので、火山の熱でも果たして溶けるのかどうか。ある日突然、全身に火を纏った炎の軍勢が火口から溢れ出ないことを祈るばかりだ。
「ま、そんなわけで今建設中のハコが完成するまでは、こうして近くで待っているという訳ですよ。ここなら夢の島に駐屯している自衛隊も、何かあればすぐ駆けつけてくれますから」
「なるほど、そういうことでしたか」
「このドリームアイランド構想が実現すると、スゴイことだぞ江月君。なにせ東京のド真ん中に、巨大なエネルギー鉱山が生まれるようなモノだからね」
「おお…、そう言われると、確かにスゴイ計画ですね」
「ただ大阪…淡路島と福島の方は、住民の反対もあって色々と難航してるんですよねぇ」
「……」
う~む、淡路島…は、まぁ大阪に近いからか。人を呼んで利益を生んでくれるかもしれないが、まったく逆の不幸と悲劇を招く呪いの塔かもしれないし。そして福島の方は、「なんでも危ねぇモン福島持ってくんじゃねェ!」って感じだろうな。
「…でも、よくそれで東京は通りましたね?」
「ははは…。まぁそこは夢の島だし、自衛隊も駐屯させるし、いざとなればその区画だけ分離させ東京湾の外に捨てられる設計になってるからね」
「へぇ~、じゃあ船ってことなんですか?」
「う~ん…、そこは泥船ってところかな。東京湾を出たら、爆破自沈する仕掛けになってるから」
わお、そんな時にそのダンジョンのひとつにでも潜ってたら、堪ったもんじゃないな。知らずにダンジョン出たら、一瞬で水圧にキュッ!てやられてまうやん。
「それもまた、スゴイ安全対策ですね」
「八丈島って案もあったんですけど、さすがにそこまで遠いと人の移動が大変ですしね。ちょっと工事の方が遅れてはいますけど、年内にはオープンできるでしょう。なので江月さん、その間は排除の難しい地形影響型の間引きをお願いします」
「え、あ、はい。それも、もう解放してるんでしたっけ?」
「はい、そちらの方はスキルトーナメントの開催に合わせてですから、既に。それと一応些少ながら、討伐依頼なんかも案件として出される予定ですから」
「おお!それは楽しみですね!」
と、そんな風に話しているところへ、ファイルを持った研究員が枝葉志主任に近づいていく。
「…主任、そろそろ移動のお時間ですので」
「あ…と、もう次に移動しないといけないようだ。申し訳ない」
「ああいえ、こちらこそ長居してしまいすみません」
「いえいえ、研究材料を持って来てくれと頼んだのはこちらですから。ああキミ、お土産って、もう江月さんの車に?」
「はい、すでに積み込みは終わっています」
「ありがとう。よかった、ではこれで約束は守れたようだね」
「ええ、鰐代の入金も確認できてます」
「ははは、鰐代って言い方もスゴイね。では江月さん、また」
「はい、ありがとうございました」
そうして枝葉志主任が席を立つと、豊波チーフもそれに続く。
「では私もこれで。江月君、今日は面白いモノがみれて楽しかったよ」
「はい、豊波さんもありがとうございました」
「ああ、では失礼するよ」
で、こうしてオレも職員の方に案内され車に戻ると、荷台にはビニールにくるまれた紫色の肉塊と、工事現場に敷くゴムシートかな?って感じの鰐皮がデデンと積まれていた。
「では、こちらにサインをお願いします」
「はい。わかりました」
そうして渡されたボードの紙には、素材の売買完了がうんぬんと、肉に関しては食肉可能だけど市場には流通させないようにとの念押しが。
「…はい、どうぞ」
「…たしかに。ではお気をつけて」
「ありがとうございました。失礼します」
こうして研究施設をあとにしたオレ。
いや~、素敵な出会いに新発見と、驚きの連続だったな。それに色々と面白い話も聞けたし、来てよかった。
休憩時間に入ったのか働いていた研究員たちが散っていき、そのうちのひとりが俺にも珈琲を持って来てくれた。それを礼を言いつつ受け取ると、ふと疑問に思った事を口にしてみた。
「そりゃドリームアイランド構想の為だよ江月君」
「ドリームアイランド??」
オレの問いに豊波チーフが答えてくれるが、ちょっと意味がわからない。ゴミ埋め立て地の夢の島なら、確かにこの近くだが…。
「ああ、それはですね江月さん。D.I.PROJECTといった方が聞いた事があるかもしれませんね」
「あ、いえ、すみません。しばらく山のなかにいたものでドリームアイランドもD.I.PROJECTも、まるで聞いたことがなくて」
「なんだ、キミくらいの能力者なら当然知ってると思ったが」
「はは、まぁそういった事情なら知らなくても当然かと。まぁどちらも同じ計画の事を指すのですが、夢の島に空間接続型特異迷宮を集めて、封印するんですよ」
「封印…ですか」
「はい、コンクリートや鉄板で何重にも囲って。でも間引かない事には外に特異生物が溢れ出てきますから、そこは江月さんのような方たちに頑張った頂くカタチになりますが…」
ふぅむ、たしかに空間接続型ダンジョンなら、移動は可能。
オレも草津に行くのに試しでカニダンジョンを持って行ってみたが、まったく問題がなかった。とするとそこで国が確保した空間接続型ダンジョンを、ひとまとめに管理しようという計画なのか。
「火山の火口に空間接続型特異迷宮を投棄し処分している国もあるにはあるが、日本ではまだ行われておらん。結果がどうなるのか、未知数なんでなぁ」
「ふむむ…」
うん、うまくすればそれで地球がレベルアップしてくれそうではある。ただダンジョンの入り口はまったく破壊不可な謎原理で守られているので、火山の熱でも果たして溶けるのかどうか。ある日突然、全身に火を纏った炎の軍勢が火口から溢れ出ないことを祈るばかりだ。
「ま、そんなわけで今建設中のハコが完成するまでは、こうして近くで待っているという訳ですよ。ここなら夢の島に駐屯している自衛隊も、何かあればすぐ駆けつけてくれますから」
「なるほど、そういうことでしたか」
「このドリームアイランド構想が実現すると、スゴイことだぞ江月君。なにせ東京のド真ん中に、巨大なエネルギー鉱山が生まれるようなモノだからね」
「おお…、そう言われると、確かにスゴイ計画ですね」
「ただ大阪…淡路島と福島の方は、住民の反対もあって色々と難航してるんですよねぇ」
「……」
う~む、淡路島…は、まぁ大阪に近いからか。人を呼んで利益を生んでくれるかもしれないが、まったく逆の不幸と悲劇を招く呪いの塔かもしれないし。そして福島の方は、「なんでも危ねぇモン福島持ってくんじゃねェ!」って感じだろうな。
「…でも、よくそれで東京は通りましたね?」
「ははは…。まぁそこは夢の島だし、自衛隊も駐屯させるし、いざとなればその区画だけ分離させ東京湾の外に捨てられる設計になってるからね」
「へぇ~、じゃあ船ってことなんですか?」
「う~ん…、そこは泥船ってところかな。東京湾を出たら、爆破自沈する仕掛けになってるから」
わお、そんな時にそのダンジョンのひとつにでも潜ってたら、堪ったもんじゃないな。知らずにダンジョン出たら、一瞬で水圧にキュッ!てやられてまうやん。
「それもまた、スゴイ安全対策ですね」
「八丈島って案もあったんですけど、さすがにそこまで遠いと人の移動が大変ですしね。ちょっと工事の方が遅れてはいますけど、年内にはオープンできるでしょう。なので江月さん、その間は排除の難しい地形影響型の間引きをお願いします」
「え、あ、はい。それも、もう解放してるんでしたっけ?」
「はい、そちらの方はスキルトーナメントの開催に合わせてですから、既に。それと一応些少ながら、討伐依頼なんかも案件として出される予定ですから」
「おお!それは楽しみですね!」
と、そんな風に話しているところへ、ファイルを持った研究員が枝葉志主任に近づいていく。
「…主任、そろそろ移動のお時間ですので」
「あ…と、もう次に移動しないといけないようだ。申し訳ない」
「ああいえ、こちらこそ長居してしまいすみません」
「いえいえ、研究材料を持って来てくれと頼んだのはこちらですから。ああキミ、お土産って、もう江月さんの車に?」
「はい、すでに積み込みは終わっています」
「ありがとう。よかった、ではこれで約束は守れたようだね」
「ええ、鰐代の入金も確認できてます」
「ははは、鰐代って言い方もスゴイね。では江月さん、また」
「はい、ありがとうございました」
そうして枝葉志主任が席を立つと、豊波チーフもそれに続く。
「では私もこれで。江月君、今日は面白いモノがみれて楽しかったよ」
「はい、豊波さんもありがとうございました」
「ああ、では失礼するよ」
で、こうしてオレも職員の方に案内され車に戻ると、荷台にはビニールにくるまれた紫色の肉塊と、工事現場に敷くゴムシートかな?って感じの鰐皮がデデンと積まれていた。
「では、こちらにサインをお願いします」
「はい。わかりました」
そうして渡されたボードの紙には、素材の売買完了がうんぬんと、肉に関しては食肉可能だけど市場には流通させないようにとの念押しが。
「…はい、どうぞ」
「…たしかに。ではお気をつけて」
「ありがとうございました。失礼します」
こうして研究施設をあとにしたオレ。
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