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アトリエⅣ 試行錯誤

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クリーム色した漬物用バケツには、なみなみと超巨大アブラムシの濾過体液が入っている。

そこへ両手をかざすと、スーツを加工する時のように魔力を注いでいく。すると散歩から戻ってきたピクシーたちがそんなオレの動きをみて真似をしはじめ、いっしょに魔力を注いでくれる。

(お、おまえたち。よし、いい調子だぞ…)

ただ魔力を帯びた体液はわずかに発光をはじめ、その黄緑な色味も相まって蓄光材を含んだ光るスライムにも見えてくる。万能回復ポーション作りのはずなのに、なんか飲んだらとってもカラダに悪そうな見た目なのが、ちょっとアレに感じる。

ともあれ充分に魔力が行き渡り加工のしやすい状態までもっていくと、顔をあげ仁菜さん瀬来さんに合図のアイコンタクト。

「じゃ、いくよ!スキル【糖】!」
「【甘露】!上手くできてな!」

それを受けふたりがスキルを発動し、魔力を帯びた液体にさらなる糖分を与えていく。すると注いでいた魔力にも手応えが。

そんな手応えの変化と共に、心地良い充足感が胸に湧いてくる。

力を手にした時からはじまった狂想曲カプリッチオ。だがそれは独りよがりなまま、いつ葬送曲レクイエムとなってもおかしくはなかった死亡遊戯。しかしみよ、今はこんなにも華麗な協奏曲コンチェルトを奏でているではないか。

ひとつの目的に向かい、みんなで力を合わせているのだ。うむ。こうまでしたなら、素敵なサムシングが生まれない訳がない。

…。

「うん、出来た!コレはかなりの完成度だぞ」

みんなで魔力を注いだバケツに物品記憶読取を行ないその品質を調べた結果、非常に良いモノができたようだ。

「やった~!」
「やったやん!」

ハイタッチで完成を祝うふたりの周りで、ピクシーたちも喜びクルクルと舞い踊っている。

「ただ今の状態だと、やっぱり水分が多過ぎるようだ。長期間の保存が利くようにするには、もう少し水分を飛ばさないとだな」
「え、そうなんだ。どれくらい水分を飛ばせばいいの?」

「断言はできないけど、少なくともハチミツやメープルシロップくらいまで水分を飛ばすのが、いいんじゃないかな」

そう、食べ物を保存する方法は、何も塩漬けや酢漬けだけではない。

糖分たっぷりのジャムにしてしまうという手だってある。ただこれにはひとつ弱点があり、水分量が多過ぎると腐敗しやすくなってしまうのだ。

「う~ん…、でもそれだと飲みにくくない?」
「せやなぁ。戦闘しとる時にいざ飲もうとしたら固まっとって、ビンからよう出てこうへんなんてこともありそうやね…」

「そうか。すると水分を飛ばし過ぎるのも考えモノだな…」

う~む、これはどうしたものか。よし、ならばもう一度はっちゃけ!文殊のウィズダムよ!

「…あ、でもそれってコレに【酸】で酸味を加えれば、ソコまで水分を飛ばさなくてもいいんじゃない?」
「そやねぇ…。それと、いっそ水分飛ばしきって飴ちゃんにしてみるいうんは、どないやろ?」

「ソレもいいわね!飴ならすぐ口に含めるし、なんかこう持続的に回復しそう!」
「ほんなら名前は、持続回復飴リジェネキャンディがエエやろね」

「おお、それはナイスアイディアだふたりとも!」

すごいな。オレの願いが通じたのか、ふたりがとっても良いアイディアを思いついてくれたぞ。
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