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アトリエⅡ 発見

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さて、次いで行う作業は濾してビン詰めした液体に、塩や酸を添加し湯煎してみること。これには魔力で生み出した塩や酸を、化学反応によって定着させようという狙いがある。

そう、塩にしろ酸にしろ、所持したスキルと魔力を用いて生み出した物質はその魔力が消費し尽くされると共に、すべからく霧散してしまう。

まぁ魔力で生み出したモノが永久不滅で存在し続けるとなれば、レベルの差はあれどそれは世界を生み出した神の御業と同じことが出来てしまっているという話。なので注いだ魔力が尽きると同時に霧散してしまうのも、無理からぬことであろう。

だがここで、オレはそれに対するある抜け道を発見したのだ!

それは瀬来さんのお爺さんに納屋の雨漏りを直すよう頼まれた時の事。状況を確認する為に屋根へと登ると、古くなった雨どいが折れ曲がり納屋の壁に向かい垂れ下がっていたのを発見。そこでそれが、雨水を納屋へと導いていたのだと目星をつけた。

しかし直すにしても雨どいは割れているうえ酷く劣化し、ガムテープを巻いた程度ではすぐにまたダメになってしまうような状態。だがそこで『あ、でもコレって塩ビ樹脂なんだから、塩が含まれてるよな。なら塩と樹脂足してファイヤーワンドで炙ったら直るんじゃね?』と思いつき、試してみた。

どうせ雨どいは酷く傷んでいたし、ダメならダメでもう交換するより他はない。ならばワンチャン【塩】のスキルで直せるのなら、わざわざホームセンターまで足を運ばずに済むと考えたのだ。

しかしてその結果は、見事成功。

スキルの塩とその辺に落ちてた樹脂片を破損個所に盛り付けると、ファイヤーワンドでジックリ炙って融着。本来ならば難しいカタチを整えるのだって、オーラパワー念動でバッチリOK。

この成果に喜んだオレは、すぐ瀬来さんや仁菜さんに話したくなった。

でもそんな真似をして、後で魔力の尽きた塩が消えてまた壊れたりしたら非常にカッコ悪い。なのでここはグッと堪えて、誰にも言わずにおいたのだ。そうして時折、納屋の屋根に登っては経過を観察。しかし現在に至るまで、スキルの塩で補修をかけた箇所に異常はない。

と、いうことは…だ。

スキルと魔力を用いて生み出したモノであっても、なにがしかの化学反応をさせ別の物質としてしまえば、もう消えることはないという結論に達する。

この事実を知り、オレの身体は震えた。

(す、すごい発見だ…!)

うむ、これは本当にスゴイこと。

例えばスキル【金】なんてのがあって、使うと純金を生み出せるとする。ただこのままだと魔力が尽きた際には、消えてしまう。が、その前に純金を18禁。いや、R18じゃなくてK18の18金に加工してしまえば、そのまま残るということになるのだから。

まぁそんなスキルがあるかどうかも知らないし、比重の重い金属を生み出すのにどれほど魔力が必要になるかも解らないが、もしそんなのをみつけたら是非3人にゲットしてもらおうと思った。

で、3人に金を生み出してもらい、オレがファイヤーワンドで溶かして加工。うむ、これぞまさしく夢の錬金術。ま、それこそ獲らぬ狸な話で、現状では雨どいがスキルで生み出した塩で直ったというだけなのだけど。

…。

ともあれ万能回復ポーションの作成は続く。

「ぴぴぃ!」
「え、これじゃあ、しょっぱ過ぎるって?」

言わずもがな、塩と酸は保存食作りに欠かせぬ調味料。

そう、漬物といえば、塩漬けか酢漬けと相場が決まっている。そこで初めてという事もあり濃度を少しずつ変えながら何種類も作っていたのだが、ここでピクシー達から塩味がキツ過ぎると苦情が入ってしまった。

「ふぅむ、ではオレも味見してみるか。どれどれ…」

小指を調合した液体に浸すと、口に含んでみる。すると超巨大アブラムシの甘い体液と塩が混ざり合い、なんかダシの利いてないめんつゆみたいな味になっていた。

「う~む、めんつゆ味の万能回復ポーションか。まるでファンタジー感がないな…」

でもこれくらいなら焼いた餅に絡めたり、みたらし団子にはいいかも…なんて考えていると、どうもピクシーたちが作業に飽き始めているのに気が付いた。

「よし、そうだな。だいぶ時間も経ったし、ここらで休憩を入れるか」
「「「ぴぴぃ~!」」」

そこでお爺さんの育てた大ぶりで真っ赤なトマトを食べやすいように切って、たっぷりとハチミツをかけてやる。

「ほら。自由にしてていいけど、あんまり遠くまで行くなよ?」
「「「ぴぴぃ~!」」」

すると日本の自然が物珍しいのか、ハチミツトマトを手にしたピクシーたちは揃って畑の方に飛んでいく。

「ふふ、また愉しそうに飛んでったな。さて、ではこの出来上がっためんつゆ味の万能回復ポーションを、あいつらに飲ませてやるか」

ピクシーたちが飛んでいくのを見送ると、オレもまた人目に付かない場所を求め畑に向かう道を降っていくのだった。
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