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甘えと贖罪
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さて、いい湯でサッパリした訳だが、帰る足がない。ふぅむ、ここにバイクでもあれば、心地いいツーリングが楽しめたのに。
「気持ち良かったねェ。でも、帰りどうしよっか、走る?」
お、瀬来さんもいい湯で機嫌直ったかな。気まぐれだけど、基本ポジティブマインドなのが瀬来さんのいいところ。
「走って帰ってもいいけど、湯あがりにまた汗をかくのもね。ちょっと考えがあるから、まずは道路まで出ようか」
「そう?べつに走って帰るのでもいいよ?」
うん、超人と化したオレ達ならば、車とそう変わらない速度で走る事も可能。
ぶっちゃけ、時速100キロだって自分の足で出せてしまう。ただせっかく温泉に入ったあとで、また汗をかくのもなんだ。なのでここは、知恵と工夫でなんとかしよう。
そうして公園を抜け通りに出ると、そこでスキル【塩】と【図工】を発動。
「それっ、いま新たなるステージへ!単一素材から複合ギミックへの挑戦だ!」
そうしてスキル【塩】により生み出されしは、いくつものパーツ。
岩塩で出来たタイヤに、板に持ち手といったモノが、次々に生成されていく。ま、自力で出来なくもないが、それらをいい感じに整えてくれるのがスキル【図工】の補正というわけ。パーツ同士をしっかりと組み合わせたいしね。
「えッ、なにコレ。あ…!もしかしてキックボード!? 」
「そう、そのパーツだね。さ、2台分あるから、いっしょに組み立てよう」
「そっか!これなら降るの楽だもんね!」
「うむ、そういうことだ」
というわけで、岩塩キックボードを組み立てる。
強度を持たせる為に、タイヤは幅広で車軸もだいぶ太いモノ。だがそれ以外は普通のキックボードとほぼ変わらない。でも性能にこだわるなら、車軸にもボールベアリングを入れたいところ。
だが小一時間も持てばいいだけなので、軸受には【粘液】で滑性粘液を注入してやればOKだ。自転車まで構造が複雑になると流石に難しいが、キックボードくらいなら訳もない。
「よし、まずは一台完成。…具合はどう?」
「うん、いいよ。…でも、相変わらず江月さんて、ズルイ!」
「いやいや。オレも最初は、【塩】のスキルがこんなにも使えるだなんて思ってもみなかったよ」
「いいな~。私の夢にも塩のおじいちゃんきてくれればいいのに」
ああいや、たしかに老人風味だったけどもさ。神さまだからね?ただまぁ瀬来さんがこんな風にいうのも、オレが寝物語にどうやって【塩】のスキルを取得したのかを話したからだ。
「ん~、瞑想によってチャネリング能力を高めていけば、もしかしたらワンチャンあるかもしれないけど?」
「そっか、なら瞑想もがんばらないとね。それじゃ早くいこ!」
「ちょっ、オレのがまだ出来てないって!」
「ふふ、先いくねェ~~!」
そう言ってイタズラに笑うと、瀬来さんは岩塩キックボードを操り軽やかに斜面を下っていってしまう。もう、ワガママなんだからぁ~。
……。
「コーイチ、次は鶏小屋直すの手伝ってくれ」
「はい、お爺さん。今行きます」
翌日、オレは瀬来さんのお爺さんにこき使われていた。
人をいいように使おうとするあたり、なんとなく瀬来家の血筋を感じてしまう。ただまぁ、これはこれで良い傾向だ。
なにせ昨日までのオレとお爺さんでは、心にだいぶ距離があったから。
昨晩、岩塩キックボードに乗り帰った後も、瀬来さんと仲良くじゃれたりして楽しく過ごしていた。
だがそれがお爺さん的には面白くなかったようで、ご機嫌ナナメになってしまったらしい。まぁお爺さんからすれば自分のよく知らぬ男と可愛い孫娘が仲良くしていれば、面白くはなかったろう。
しかしそんなお爺さんの感情の動きを、超空気読める我らの仁菜さんがいち早く察知。
夕飯時にさり気なくオレと付き合っているのは自分で、親友の恋人だから瀬来さんも安心してじゃれてるのだとお爺さんに説明してくれた。
それに若干疑られる場面もあったが「あんな、おじいちゃん。万智は江月さんて、苗字で呼んどるやろ?でもウチはコーイチて、下の名前で呼んどるやん。同じにみえても、ソコんとこがめっちゃ大きな違いや」と、頓智を利かせてくれた。
するとそれを聞いて、お爺さんもニッコリ納得。
そしてその瞬間、オレには仁菜さんの恋人コーイチという、新たなペルソナが誕生してしまったというわけだ。
「コーイチ、納屋で雨漏りしとるトコがあってな、登ってみてくれんか?」
「はい、では直せるようなら直しておきましょう」
で、オレともすっかり打ち解けたお爺さんは、ひさびさの男手のある環境にここぞとばかりにアレコレ頼んでくる。
だが、それもまたヨシ。
悪感情でソレを受け取れば、「この、いいようにこき使いやがって!」となるところ。だが良い風に受け取るならば、「実に頼りにされてる」となる。
で、オレは人の幸福度を推し量る時に、どれだけ甘えさせてくれる人がいるか?その人数の差でその人の幸福度が大きく左右されると考えている。
つまり瀬来さんのお爺さんは、今、オレにベッタリと甘えているのだ。
でも、たった独りで家に残り、畑や田んぼ、それに家畜などの生き物を守ってきたのもお爺さん。
ならばオレのいる間くらいは、目一杯に甘えさせてやればいい。個人的にもお爺さんはそれをして惜しくない人物。ならすこしでもオレのすることが、瀬来さんの孝行の足しになれば幸いというモノ。
それをとてもじゃないがお爺さんには話せない恋愛関係を孫娘さんとしちゃってるオレの、せめてもの償いとしたい。
「気持ち良かったねェ。でも、帰りどうしよっか、走る?」
お、瀬来さんもいい湯で機嫌直ったかな。気まぐれだけど、基本ポジティブマインドなのが瀬来さんのいいところ。
「走って帰ってもいいけど、湯あがりにまた汗をかくのもね。ちょっと考えがあるから、まずは道路まで出ようか」
「そう?べつに走って帰るのでもいいよ?」
うん、超人と化したオレ達ならば、車とそう変わらない速度で走る事も可能。
ぶっちゃけ、時速100キロだって自分の足で出せてしまう。ただせっかく温泉に入ったあとで、また汗をかくのもなんだ。なのでここは、知恵と工夫でなんとかしよう。
そうして公園を抜け通りに出ると、そこでスキル【塩】と【図工】を発動。
「それっ、いま新たなるステージへ!単一素材から複合ギミックへの挑戦だ!」
そうしてスキル【塩】により生み出されしは、いくつものパーツ。
岩塩で出来たタイヤに、板に持ち手といったモノが、次々に生成されていく。ま、自力で出来なくもないが、それらをいい感じに整えてくれるのがスキル【図工】の補正というわけ。パーツ同士をしっかりと組み合わせたいしね。
「えッ、なにコレ。あ…!もしかしてキックボード!? 」
「そう、そのパーツだね。さ、2台分あるから、いっしょに組み立てよう」
「そっか!これなら降るの楽だもんね!」
「うむ、そういうことだ」
というわけで、岩塩キックボードを組み立てる。
強度を持たせる為に、タイヤは幅広で車軸もだいぶ太いモノ。だがそれ以外は普通のキックボードとほぼ変わらない。でも性能にこだわるなら、車軸にもボールベアリングを入れたいところ。
だが小一時間も持てばいいだけなので、軸受には【粘液】で滑性粘液を注入してやればOKだ。自転車まで構造が複雑になると流石に難しいが、キックボードくらいなら訳もない。
「よし、まずは一台完成。…具合はどう?」
「うん、いいよ。…でも、相変わらず江月さんて、ズルイ!」
「いやいや。オレも最初は、【塩】のスキルがこんなにも使えるだなんて思ってもみなかったよ」
「いいな~。私の夢にも塩のおじいちゃんきてくれればいいのに」
ああいや、たしかに老人風味だったけどもさ。神さまだからね?ただまぁ瀬来さんがこんな風にいうのも、オレが寝物語にどうやって【塩】のスキルを取得したのかを話したからだ。
「ん~、瞑想によってチャネリング能力を高めていけば、もしかしたらワンチャンあるかもしれないけど?」
「そっか、なら瞑想もがんばらないとね。それじゃ早くいこ!」
「ちょっ、オレのがまだ出来てないって!」
「ふふ、先いくねェ~~!」
そう言ってイタズラに笑うと、瀬来さんは岩塩キックボードを操り軽やかに斜面を下っていってしまう。もう、ワガママなんだからぁ~。
……。
「コーイチ、次は鶏小屋直すの手伝ってくれ」
「はい、お爺さん。今行きます」
翌日、オレは瀬来さんのお爺さんにこき使われていた。
人をいいように使おうとするあたり、なんとなく瀬来家の血筋を感じてしまう。ただまぁ、これはこれで良い傾向だ。
なにせ昨日までのオレとお爺さんでは、心にだいぶ距離があったから。
昨晩、岩塩キックボードに乗り帰った後も、瀬来さんと仲良くじゃれたりして楽しく過ごしていた。
だがそれがお爺さん的には面白くなかったようで、ご機嫌ナナメになってしまったらしい。まぁお爺さんからすれば自分のよく知らぬ男と可愛い孫娘が仲良くしていれば、面白くはなかったろう。
しかしそんなお爺さんの感情の動きを、超空気読める我らの仁菜さんがいち早く察知。
夕飯時にさり気なくオレと付き合っているのは自分で、親友の恋人だから瀬来さんも安心してじゃれてるのだとお爺さんに説明してくれた。
それに若干疑られる場面もあったが「あんな、おじいちゃん。万智は江月さんて、苗字で呼んどるやろ?でもウチはコーイチて、下の名前で呼んどるやん。同じにみえても、ソコんとこがめっちゃ大きな違いや」と、頓智を利かせてくれた。
するとそれを聞いて、お爺さんもニッコリ納得。
そしてその瞬間、オレには仁菜さんの恋人コーイチという、新たなペルソナが誕生してしまったというわけだ。
「コーイチ、納屋で雨漏りしとるトコがあってな、登ってみてくれんか?」
「はい、では直せるようなら直しておきましょう」
で、オレともすっかり打ち解けたお爺さんは、ひさびさの男手のある環境にここぞとばかりにアレコレ頼んでくる。
だが、それもまたヨシ。
悪感情でソレを受け取れば、「この、いいようにこき使いやがって!」となるところ。だが良い風に受け取るならば、「実に頼りにされてる」となる。
で、オレは人の幸福度を推し量る時に、どれだけ甘えさせてくれる人がいるか?その人数の差でその人の幸福度が大きく左右されると考えている。
つまり瀬来さんのお爺さんは、今、オレにベッタリと甘えているのだ。
でも、たった独りで家に残り、畑や田んぼ、それに家畜などの生き物を守ってきたのもお爺さん。
ならばオレのいる間くらいは、目一杯に甘えさせてやればいい。個人的にもお爺さんはそれをして惜しくない人物。ならすこしでもオレのすることが、瀬来さんの孝行の足しになれば幸いというモノ。
それをとてもじゃないがお爺さんには話せない恋愛関係を孫娘さんとしちゃってるオレの、せめてもの償いとしたい。
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