326 / 617
瀬来家間近
しおりを挟む
前回までのあらすじ。仁菜さんの轢いたのは山ゴブリンだった。
うん、まぁこれが例え海ゴブリンだろうが川ゴブリンだろうが関係ない。特異迷宮ことダンジョンから発生した特異生物と呼ばれるモンスターは、特定害獣として須らく駆除対象。なのでいくら殺してしまおうが、ここ日本では罪に問われないのだ。ゆえに問題なし。
ま、それはともかくとして、山ゴブリンの確認を終えた後はダメージを受けた車の点検を行う。
「ホンマ…、ホンマごめんしてなぁコォチ」
「大丈夫だよ仁菜さん。ぜんぜん怒ってないからそう心配しないで」
車を傷つけてしまった仁菜さんは、それを酷く気にしている様子。
でも車の傷くらいでオレは怒らない。そういう意味でも、お求めやすい中古車を買ったのだし。まぁ愛着を抱いているバイクを心無い理由で傷つけられたのならそれはもう烈火の如く怒りもするだろうけど、これは不慮の事故。なので怒りはしない。
「あ~、これまたベッコリ凹んでるねぇ」
「……」
車のフロント部を確認すると、山ゴブリンに衝突した際の凹みがしっかりと確認できる。
顔拓とまではいかないが、フロント部に頭部と肩部のぶつかった跡の隠しようもない凹みがコレありけり。
だが、しかし。
「ふ~む。ま、でもこの程度ならなんでもないさ。そう、スキル【粘液】ならばね。では、そして粘液はねばりだす、ザ・ミューカス!」
オレはフロント部に生じた凹みに対して、非常に粘着性の高い粘液を生み出し付着させる。
「さ、瀬来さん。この粘液を掴んでゆっくりと引っ張ってみて」
「え、私?別にいいけど、これでどうなるの…??」
瀬来さんが車に付着させた粘液をゆっくりと引っ張ってゆくと、ボコッとかべコン!なんて音を響かせながら、次第に凹みが元の状態へと戻っていく。
「わ、すご~い!あっという間に元に戻った!!」
ふふふ、どうだすごかろう。これぞ粘液のパワーよ。
普通、車の凹みを直そうとした場合、塗装を剥がしたうえで金属の棒などを溶接し、ソレを引っ張ることで凹みを引っ張り出して補修を行う。それはそれは面倒で手間のかかる作業だ。しかしスキル【粘液】程の吸着力があれば、わざわざ塗装を剥がしたりすることもなく凹みを引っ張り出すことが可能。
故にこうして、簡単に車の凹みが直せてしまうのだ。
「ほら、見てごらん。カンタンに直せただろ?だから仁菜さんもそんなに気に病む必要はないんだよ」
「コォチ…、ホンマに、おおきにな…」
そう言うと仁菜さんは、目元に涙を浮かべるほどに感謝している。
はて?以前に車の修理云々で酷いトラブルでも遭ったのだろうか…??まぁともかくもオレとしては仁菜さんの好感度が爆上がりしたようなので万々歳だ。
「さ、いいんだよ静。うんうん、よしよしいい子だね」
「うぅん、コォチ…。おおきに、おおきになぁ…」
真昼間の、しかも瀬来さんの見ている前でもしなだれて抱きついてくる仁菜さん。
こんな姿は、普段の彼女ならまずみせない筈。うむむ、これはなんともレアケース。だが役得なので、ここは甘んじてハグしとこう…。
……。
その後は運転を代わり、瀬来さんのナビで草津温泉街を抜ける。
草津はソロツーリングで何度か訪れた地だが、やはり硫黄臭い温泉の匂いを嗅ぐとなんとも旅情をくすぐられる。
「ふふ、江月さん温泉入りたいの?さっきからずっと鼻ひくひくさせてるよ?」
「お、そうか?う~む、温泉が好きだからかなぁ」
ぶっちゃけ、贅沢をたいして知らないオレは精神的快楽において、温泉以上のモノを知らない。無論いまでは彼女達との愛おしい時間を除けばという話であるが。
かつてボッチだった頃、終えた後でむなしさの残るギャルゲやエロゲに比べれば、温泉というのは心身ともに癒しを齎してくれる健全かつ最高の贅沢だった。
「落ち着いたら好きなだけ浸かりにくればいいよ。あ、そこ左ね」
「はいよ。ん~、でもだいぶ普段は使われてないような道路になってきたぞ…」
しばらく走るとアスファルトこそ敷かれているものの、路面には倒木に近いような枝や枯葉がかなり堆積している。バイクであれば堆積した落ち葉でスリップし、転倒してしまいそうだ。
「避難してる人が多いみたいだし、この道路もしばらく使われてないみたいね。でももうすぐだから…あ、ホラ見えてきた。ってエッ、なにアレ!?」
林道を抜け、ひらけた盆地に差し掛かる。
と、ぬかるんだ畑で逃げ惑うゴブリンを、後ろから追い轢き殺しているトラクターの姿が視えたのだった。
うん、まぁこれが例え海ゴブリンだろうが川ゴブリンだろうが関係ない。特異迷宮ことダンジョンから発生した特異生物と呼ばれるモンスターは、特定害獣として須らく駆除対象。なのでいくら殺してしまおうが、ここ日本では罪に問われないのだ。ゆえに問題なし。
ま、それはともかくとして、山ゴブリンの確認を終えた後はダメージを受けた車の点検を行う。
「ホンマ…、ホンマごめんしてなぁコォチ」
「大丈夫だよ仁菜さん。ぜんぜん怒ってないからそう心配しないで」
車を傷つけてしまった仁菜さんは、それを酷く気にしている様子。
でも車の傷くらいでオレは怒らない。そういう意味でも、お求めやすい中古車を買ったのだし。まぁ愛着を抱いているバイクを心無い理由で傷つけられたのならそれはもう烈火の如く怒りもするだろうけど、これは不慮の事故。なので怒りはしない。
「あ~、これまたベッコリ凹んでるねぇ」
「……」
車のフロント部を確認すると、山ゴブリンに衝突した際の凹みがしっかりと確認できる。
顔拓とまではいかないが、フロント部に頭部と肩部のぶつかった跡の隠しようもない凹みがコレありけり。
だが、しかし。
「ふ~む。ま、でもこの程度ならなんでもないさ。そう、スキル【粘液】ならばね。では、そして粘液はねばりだす、ザ・ミューカス!」
オレはフロント部に生じた凹みに対して、非常に粘着性の高い粘液を生み出し付着させる。
「さ、瀬来さん。この粘液を掴んでゆっくりと引っ張ってみて」
「え、私?別にいいけど、これでどうなるの…??」
瀬来さんが車に付着させた粘液をゆっくりと引っ張ってゆくと、ボコッとかべコン!なんて音を響かせながら、次第に凹みが元の状態へと戻っていく。
「わ、すご~い!あっという間に元に戻った!!」
ふふふ、どうだすごかろう。これぞ粘液のパワーよ。
普通、車の凹みを直そうとした場合、塗装を剥がしたうえで金属の棒などを溶接し、ソレを引っ張ることで凹みを引っ張り出して補修を行う。それはそれは面倒で手間のかかる作業だ。しかしスキル【粘液】程の吸着力があれば、わざわざ塗装を剥がしたりすることもなく凹みを引っ張り出すことが可能。
故にこうして、簡単に車の凹みが直せてしまうのだ。
「ほら、見てごらん。カンタンに直せただろ?だから仁菜さんもそんなに気に病む必要はないんだよ」
「コォチ…、ホンマに、おおきにな…」
そう言うと仁菜さんは、目元に涙を浮かべるほどに感謝している。
はて?以前に車の修理云々で酷いトラブルでも遭ったのだろうか…??まぁともかくもオレとしては仁菜さんの好感度が爆上がりしたようなので万々歳だ。
「さ、いいんだよ静。うんうん、よしよしいい子だね」
「うぅん、コォチ…。おおきに、おおきになぁ…」
真昼間の、しかも瀬来さんの見ている前でもしなだれて抱きついてくる仁菜さん。
こんな姿は、普段の彼女ならまずみせない筈。うむむ、これはなんともレアケース。だが役得なので、ここは甘んじてハグしとこう…。
……。
その後は運転を代わり、瀬来さんのナビで草津温泉街を抜ける。
草津はソロツーリングで何度か訪れた地だが、やはり硫黄臭い温泉の匂いを嗅ぐとなんとも旅情をくすぐられる。
「ふふ、江月さん温泉入りたいの?さっきからずっと鼻ひくひくさせてるよ?」
「お、そうか?う~む、温泉が好きだからかなぁ」
ぶっちゃけ、贅沢をたいして知らないオレは精神的快楽において、温泉以上のモノを知らない。無論いまでは彼女達との愛おしい時間を除けばという話であるが。
かつてボッチだった頃、終えた後でむなしさの残るギャルゲやエロゲに比べれば、温泉というのは心身ともに癒しを齎してくれる健全かつ最高の贅沢だった。
「落ち着いたら好きなだけ浸かりにくればいいよ。あ、そこ左ね」
「はいよ。ん~、でもだいぶ普段は使われてないような道路になってきたぞ…」
しばらく走るとアスファルトこそ敷かれているものの、路面には倒木に近いような枝や枯葉がかなり堆積している。バイクであれば堆積した落ち葉でスリップし、転倒してしまいそうだ。
「避難してる人が多いみたいだし、この道路もしばらく使われてないみたいね。でももうすぐだから…あ、ホラ見えてきた。ってエッ、なにアレ!?」
林道を抜け、ひらけた盆地に差し掛かる。
と、ぬかるんだ畑で逃げ惑うゴブリンを、後ろから追い轢き殺しているトラクターの姿が視えたのだった。
11
お気に入りに追加
168
あなたにおすすめの小説
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
異世界無宿
ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。
アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。
映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。
訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。
一目惚れで購入した車の納車日。
エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた…
神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。
アクション有り!
ロマンス控えめ!
ご都合主義展開あり!
ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。
不定期投稿になります。
投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
チートな嫁たちに囲まれて異世界で暮らしています
もぶぞう
ファンタジー
森でナギサを拾ってくれたのはダークエルフの女性だった。
使命が有る訳でも無い男が強い嫁を増やしながら異世界で暮らす話です(予定)。
ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~
楠富 つかさ
ファンタジー
地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。
そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。
できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!!
第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる