323 / 613
草津へGO
しおりを挟む
こうして移動手段を手にしたオレ達3人は、準備を整え一路草津へと向かっていた。
そう、3人だ。草津へと向かうこの車内に、瑠羽の姿は無い。一本の電話からはじまった瀬来さんのお爺さん安否確認の旅。だが今回瑠羽は、参加できなかったのだ。
誓いをたてたオレ達4人は、お互いを助けるのは当然として家族や親しい友人を助けるのにも協力しあうことにしていた。なのでそれに則り瑠羽にも連絡を入れたのだが、瑠羽が草津に行くことを伝えたらお父さんから待ったがかかってしまったというではないか。
どうも一定の理解は示してくれるものの、また何が起こるか解らない現状で娘を遠出をさせるのは非常に心配。ということらしい。
だがそんなお父さんの心情も理解できる一方で、説得している時間的余裕もない。
瑠羽を勝手に連れて行ってしまうというのも出来なくはない。が、それでもし瑠羽が大怪我でもしてしまえば、関係悪化は免れない。
だからそういった事情で、瑠羽は今回おやすみなのだ。
でも瑠羽自身はそれをひどく気にしていて「万智ちゃん本当にごめんなさい!」と、出発の時間に合わせアップルパイを焼いて持って来てくれた。うん、ほんとに良い子だよ瑠羽って。
だって朝の6時だよ。どれだけ早起きして焼いてくれたんだって話よ。
そんな優しい瑠羽のくれたアップルパイを食べながら、高速道を草津に向けひた走る。うん、エンジンはすこぶる快調。昨日チェックしたらエンジンオイルがすこし汚れてたので、オイル交換もしたしね。
懸念があるとすれば、この車にはまだ自賠責しか保険がついていないこと。
いや、任意保険の手続きもちゃんとしたのよ。でもバイクと同じ保険屋に頼んだから、どうしてもすこし時間がかかってしまう。なので法定速度厳守のパーフェクト安全運転。絶対に事故は許されないのだ。
「それで…、またくどく訊いちゃうようで悪いけど、ホントに仁菜さんのほうの家族は問題ない?」
後部座席で一日からでも入れる保険を調べてくれている仁菜さんに声をかけた。瀬来さんの家族をフォローするなら、仁菜さんの家族もしっかりフォローしてあげないと。
「ん~…、だいじょうぶやでぇ。今回も商店街のみんなが、頑張ってくれたんやて」
「ほぉ、すごいな大阪商店街のチームワークは。またポコポコだかカンカンのおじさんたちが主力で?」
そんな風に地元の話題がふられると、嬉しかったのか仁菜さんは頬を綻ばせて話しはじめた。
「ふふ、今回は特にホルモン屋のオッチャンがすごかったんやて」
「へぇ~、ホルモン屋さんかぁ。で、どんなふうに凄かったんだい?」
「マサとユキが言うにはな。ホルモン屋のオッチャンが並み居るモンスターを、ギンギンに光った下駄でボコボコにしたんやて!」
「光る下駄とは、また凄いな…」
なんと、シャイニング下駄か。
エクスカリバールみたいに武器強化スクロールを使ったのかな。でもエクスカリバールはうっすら光るといった程度だから、ギンギンに光るとなると武器強化スクロールを下駄に重ね掛けしたのも??
う~む、それはまたなんという贅沢使い。
「ほんでもな。もっとすごかったんは、ホルモン屋のお姉さんやったみたい」
「え、ホルモン屋のお姉さんが?ふ~む…あ、解った!下駄ときたら、お姉さんはギンギンに光る傘で戦ったとか??」
「ブッブー!ざんね~ん、不正解やぁ~。正解は、なんと…そのホルモン屋のお姉さんは猫妖精言うん?そないな立って歩ける猫ちゃんをぎょうさん連れてな、でっかいモンスター追っかけまわしぃのギャンギャンにいてこましたんやて!ふふふ…。コォチみたいな人が、ほかにもおったんやなぁ~」
おおぅ、マジか。そげな人物が大阪に。ていうかなんか物凄い既視感あんだけど…。その猫妖精って、絶対下履いてないよね??
「うん…、うん、そっかありがとう。じゃあまた連絡するね」
一方助手席に座った瀬来さんは、現地入りする前に友人知人に連絡を入れ情報を集めていた。
「どう、なにか解った?」
「う~ん…、めぼしい情報はなにもぉ~」
疲れたのか腕をあげ伸びをする瀬来さん。おつかれさま。何件も電話かけ通しだったもんね。
「じゃあ次のサービスエリアで、すこし休憩とろうか」
「うん。でもね、わかったことも色々あるよ」
そういって瀬来さんが話し始めたのは、草津方面の現状。
草津にも自衛隊が来て、モンスターを駆除しダンジョンを破壊していってくれたそうな。ただワッと来てワッと帰っていったって感だったから、山の奥とかまでは念入りに調査されてないという。
なので現在もポロポロと、モンスターが山から出てくるのだとか。
「そういったニュースは、各地でよく起きとるみたいやね」
「だよね~。ま、だから離れたとこに住んでる人はまだ避難続けてたりしてて、おじいちゃんや近所の情報はまるでなかったよ」
焦っても慌てても仕方がないということを理解しており、瀬来さんはいたって冷静。二度のダンジョンスタンピードが、彼女を強く逞しく成長させていた。
そんな彼女の悲しむ顔はみたくない。
うむ、待っててね瀬来さんのお爺さん。かわいい孫が今、あなたのもとに向かってますからね。
そう、3人だ。草津へと向かうこの車内に、瑠羽の姿は無い。一本の電話からはじまった瀬来さんのお爺さん安否確認の旅。だが今回瑠羽は、参加できなかったのだ。
誓いをたてたオレ達4人は、お互いを助けるのは当然として家族や親しい友人を助けるのにも協力しあうことにしていた。なのでそれに則り瑠羽にも連絡を入れたのだが、瑠羽が草津に行くことを伝えたらお父さんから待ったがかかってしまったというではないか。
どうも一定の理解は示してくれるものの、また何が起こるか解らない現状で娘を遠出をさせるのは非常に心配。ということらしい。
だがそんなお父さんの心情も理解できる一方で、説得している時間的余裕もない。
瑠羽を勝手に連れて行ってしまうというのも出来なくはない。が、それでもし瑠羽が大怪我でもしてしまえば、関係悪化は免れない。
だからそういった事情で、瑠羽は今回おやすみなのだ。
でも瑠羽自身はそれをひどく気にしていて「万智ちゃん本当にごめんなさい!」と、出発の時間に合わせアップルパイを焼いて持って来てくれた。うん、ほんとに良い子だよ瑠羽って。
だって朝の6時だよ。どれだけ早起きして焼いてくれたんだって話よ。
そんな優しい瑠羽のくれたアップルパイを食べながら、高速道を草津に向けひた走る。うん、エンジンはすこぶる快調。昨日チェックしたらエンジンオイルがすこし汚れてたので、オイル交換もしたしね。
懸念があるとすれば、この車にはまだ自賠責しか保険がついていないこと。
いや、任意保険の手続きもちゃんとしたのよ。でもバイクと同じ保険屋に頼んだから、どうしてもすこし時間がかかってしまう。なので法定速度厳守のパーフェクト安全運転。絶対に事故は許されないのだ。
「それで…、またくどく訊いちゃうようで悪いけど、ホントに仁菜さんのほうの家族は問題ない?」
後部座席で一日からでも入れる保険を調べてくれている仁菜さんに声をかけた。瀬来さんの家族をフォローするなら、仁菜さんの家族もしっかりフォローしてあげないと。
「ん~…、だいじょうぶやでぇ。今回も商店街のみんなが、頑張ってくれたんやて」
「ほぉ、すごいな大阪商店街のチームワークは。またポコポコだかカンカンのおじさんたちが主力で?」
そんな風に地元の話題がふられると、嬉しかったのか仁菜さんは頬を綻ばせて話しはじめた。
「ふふ、今回は特にホルモン屋のオッチャンがすごかったんやて」
「へぇ~、ホルモン屋さんかぁ。で、どんなふうに凄かったんだい?」
「マサとユキが言うにはな。ホルモン屋のオッチャンが並み居るモンスターを、ギンギンに光った下駄でボコボコにしたんやて!」
「光る下駄とは、また凄いな…」
なんと、シャイニング下駄か。
エクスカリバールみたいに武器強化スクロールを使ったのかな。でもエクスカリバールはうっすら光るといった程度だから、ギンギンに光るとなると武器強化スクロールを下駄に重ね掛けしたのも??
う~む、それはまたなんという贅沢使い。
「ほんでもな。もっとすごかったんは、ホルモン屋のお姉さんやったみたい」
「え、ホルモン屋のお姉さんが?ふ~む…あ、解った!下駄ときたら、お姉さんはギンギンに光る傘で戦ったとか??」
「ブッブー!ざんね~ん、不正解やぁ~。正解は、なんと…そのホルモン屋のお姉さんは猫妖精言うん?そないな立って歩ける猫ちゃんをぎょうさん連れてな、でっかいモンスター追っかけまわしぃのギャンギャンにいてこましたんやて!ふふふ…。コォチみたいな人が、ほかにもおったんやなぁ~」
おおぅ、マジか。そげな人物が大阪に。ていうかなんか物凄い既視感あんだけど…。その猫妖精って、絶対下履いてないよね??
「うん…、うん、そっかありがとう。じゃあまた連絡するね」
一方助手席に座った瀬来さんは、現地入りする前に友人知人に連絡を入れ情報を集めていた。
「どう、なにか解った?」
「う~ん…、めぼしい情報はなにもぉ~」
疲れたのか腕をあげ伸びをする瀬来さん。おつかれさま。何件も電話かけ通しだったもんね。
「じゃあ次のサービスエリアで、すこし休憩とろうか」
「うん。でもね、わかったことも色々あるよ」
そういって瀬来さんが話し始めたのは、草津方面の現状。
草津にも自衛隊が来て、モンスターを駆除しダンジョンを破壊していってくれたそうな。ただワッと来てワッと帰っていったって感だったから、山の奥とかまでは念入りに調査されてないという。
なので現在もポロポロと、モンスターが山から出てくるのだとか。
「そういったニュースは、各地でよく起きとるみたいやね」
「だよね~。ま、だから離れたとこに住んでる人はまだ避難続けてたりしてて、おじいちゃんや近所の情報はまるでなかったよ」
焦っても慌てても仕方がないということを理解しており、瀬来さんはいたって冷静。二度のダンジョンスタンピードが、彼女を強く逞しく成長させていた。
そんな彼女の悲しむ顔はみたくない。
うむ、待っててね瀬来さんのお爺さん。かわいい孫が今、あなたのもとに向かってますからね。
11
お気に入りに追加
158
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
元Sランク冒険者のお爺さんの残した遺品は、物凄い宝の詰まった指輪でした。
チョコクッキー
ファンタジー
元Sランク冒険者で貴族の祖父を持つユウマ。彼が死に際の祖父から遺品として頂いた指輪には、実は宝物庫よりも物凄いお宝が隠されていた。ちょうど、10歳になり王国貴族学院に入学し卒業後には、冒険者を目指す予定のユウマ。祖父の遺産もあり、また様々な出会いや出来事から祖父の素晴らしさと偉大さを改めて実感して成長していくハイファンタジー物語。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる