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ダンジョンスタンピード第二波 坊主
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前回までのあらすじ。坊さんがバッタと戦ってた。
で、そんな坊さんがオレ達の前までやってきた。
澄んだ瞳に凛々しい眉毛。頭は坊主だけど精悍な顔つきで、なかなかのイケメンだ。体つきも良く袈裟の下には薄手のプロテクターを着込んでいるようで、少し角ばって膨らんでいる。
でも外に視える手足は鎧武者のような具足姿。ふむ、そこはTPOって感じかな。
「あの、動画とか写真とか、撮られてないですよね??」
そんな戦う坊さんが、少し困った様子で訊いてくる。その額に巻かれた鉢金には、輝く金の飾りが。たぶんそれが『大日如来の輝き』なんだろう。
「ふふ、ですよねぇ~。お坊さんがノリノリで殺生してたら、不味いですもんねぇ~」
「ウッ…!」
うむ、早速瀬来さんがお坊さんをいじりだした。ニマニマと微笑みながらその目を覗きこまれ、お坊さんはたじろいでいる。
なのでここはひとつ、オレが助け船をだしてやろう。
「それで、ファッ休さんはどうして独りでこんな場所に?」
「え?ふぁっ…??」
「ええ、『地獄に落ちるのも上等だ!』なんて咆えちゃうロックなお坊さんのことを、『ファッ休さん』と呼ぶのですよ」
「あ…いや拙僧はファッ休ではなく、雲海と申しまして…」
「じゃあ今日からファッ休さんでいきましょう。で、さきほどの誓いを弘願するのです。うまくすれば10万菩薩パワーとか、100万如来パワーなんかを授かるかもしれませんよ?」
「え、ちょっ…!?」
といいつつも、瀬来さんといっしょになってお坊さんを追い詰めるオレ。
まぁホントは宗教ネタでイジる真似なんてしたら、絶対ダメなんだけど。下手したら相手にマジギレされるからね。でもなんだかこの坊さんには同じオタの匂いを感じ取ったので、オレとしてはかなり珍しい感じで馴れ馴れしく接している。
「江月さん、グガンて?」
「ああ、弘く願うと書いて弘願だよ瀬来さん。『地獄に堕ちた人間を全て救うまで地獄に留まり続けますから、どうか力を貸してください!』って誓ったのがお地蔵さまだし、『死んでも江戸護るもん!』って誓った徳川家康は東照大権現として祭られたんだ。ま、字が合ってるかは怪しいけど、そんな感じの意味」
「ふ~ん…」
「お、お詳しいですね。もしやどこかの宗派に?」
「ああいや特別何処にも…。ま、でも強いてあげるならアニミズムかな?」
うん、自身の胸に塩の精霊やら妖精女王が住んでるオレは、どっちかっていうと精霊信仰なんじゃないかな。
「…アニミズム??」
「ああ、コレはどんな自然にも霊が宿ってるっていう考え方だよ瀬来さん。カンタンに言えば『天気が良ければお日様に感謝』とか、『雨が降れば恵みの雨に感謝』みたいな感じだね」
「ふ~ん、なんかおじいちゃんみたいね」
ひどッ…。まぁそれはともかく。
「と、話が逸れたけど特別なにも撮ってないし、さっき見たことを誰かに話すつもりもないですよ。それとも、広めて欲しいですか?」
「ああいえ!そ、それでお願いします!どうぞ胸に収めて頂ければ…」
だよね。ノリノリで殺生する姿とか、檀家さんに見せられないもんね。ネットにあげられたら大炎上待ったなしですよ。
「ところでさっき使ってた金剛杵、よければ見せてもらっても良いですか?」
「ああはい、どうぞ。ちょっと重いですよ」
「ありがとうございます。では失礼して。む、これはすごく良く出来ている…」
「そうですか。と、そこにあるボタンを押してみてください」
「これですか…?」
『ジャカッ!!』
「おわ、杭が飛び出た!なにコレすごい!ちょ~欲しい!!」
「ははは。実は檀家さんが町工場をされてまして、その方に頼んで作って頂いたんですよ」
て、檀家さんに何作らせてんだよ。でもいいな~、オレも作ってもらえないだろうか。
「ねぇ、ところで雲海さん?ずっと武器で戦ってたけど、スキルは持ってないの?」
お、さすが瀬来さん。それはオレも訊こうと思ってた。
「ス、スキルですか?ん~…噂には聞いてますが、実際にあるものなんですか?」
スキルの事を問われ、雲海さんはすこし戸惑っている。しかしその瞬間、瀬来さんの瞳が鋭く光ったことをオレは見逃さなかった。
「ねぇ江月さん、コップちょうだい!」
「はいよ」
『(きょわわわ…)』
「なッ!?これは…」
手の平に生み出されてゆく塩のコップを視て、雲海さんが驚きに眼を丸くしている。うん、それだけでもう『スキル持ってない』ってことがよく解る反応をありがとう。
で、生み出された塩のコップに瀬来さんが『なんちゃってレモン水』を満たすと、それを一息に飲み干して見せた。
「ぷはぁ…。どう、コレがスキルよ?ね、ホントにあったでしょ!」
イキリムーブが綺麗に決まったことに会心の笑みを見せる瀬来さん。うんうん、そういうとこも可愛いよ。
…。
で、その後は三人土手に並んで座り『なんちゃってレモン水』を飲みながらお話してみる。
ま、情報交換だね。瀬来さんもこの人になら情報を渡してもいいと思ったから、あんな風にしてスキルを見せたんだろう。
『たとえ地獄に落ちようとも』なんて、恥ずかしい事を大声で言えちゃう人だもんな。この雲海さんも、相当にピュアなんだろう。
で、そんな坊さんがオレ達の前までやってきた。
澄んだ瞳に凛々しい眉毛。頭は坊主だけど精悍な顔つきで、なかなかのイケメンだ。体つきも良く袈裟の下には薄手のプロテクターを着込んでいるようで、少し角ばって膨らんでいる。
でも外に視える手足は鎧武者のような具足姿。ふむ、そこはTPOって感じかな。
「あの、動画とか写真とか、撮られてないですよね??」
そんな戦う坊さんが、少し困った様子で訊いてくる。その額に巻かれた鉢金には、輝く金の飾りが。たぶんそれが『大日如来の輝き』なんだろう。
「ふふ、ですよねぇ~。お坊さんがノリノリで殺生してたら、不味いですもんねぇ~」
「ウッ…!」
うむ、早速瀬来さんがお坊さんをいじりだした。ニマニマと微笑みながらその目を覗きこまれ、お坊さんはたじろいでいる。
なのでここはひとつ、オレが助け船をだしてやろう。
「それで、ファッ休さんはどうして独りでこんな場所に?」
「え?ふぁっ…??」
「ええ、『地獄に落ちるのも上等だ!』なんて咆えちゃうロックなお坊さんのことを、『ファッ休さん』と呼ぶのですよ」
「あ…いや拙僧はファッ休ではなく、雲海と申しまして…」
「じゃあ今日からファッ休さんでいきましょう。で、さきほどの誓いを弘願するのです。うまくすれば10万菩薩パワーとか、100万如来パワーなんかを授かるかもしれませんよ?」
「え、ちょっ…!?」
といいつつも、瀬来さんといっしょになってお坊さんを追い詰めるオレ。
まぁホントは宗教ネタでイジる真似なんてしたら、絶対ダメなんだけど。下手したら相手にマジギレされるからね。でもなんだかこの坊さんには同じオタの匂いを感じ取ったので、オレとしてはかなり珍しい感じで馴れ馴れしく接している。
「江月さん、グガンて?」
「ああ、弘く願うと書いて弘願だよ瀬来さん。『地獄に堕ちた人間を全て救うまで地獄に留まり続けますから、どうか力を貸してください!』って誓ったのがお地蔵さまだし、『死んでも江戸護るもん!』って誓った徳川家康は東照大権現として祭られたんだ。ま、字が合ってるかは怪しいけど、そんな感じの意味」
「ふ~ん…」
「お、お詳しいですね。もしやどこかの宗派に?」
「ああいや特別何処にも…。ま、でも強いてあげるならアニミズムかな?」
うん、自身の胸に塩の精霊やら妖精女王が住んでるオレは、どっちかっていうと精霊信仰なんじゃないかな。
「…アニミズム??」
「ああ、コレはどんな自然にも霊が宿ってるっていう考え方だよ瀬来さん。カンタンに言えば『天気が良ければお日様に感謝』とか、『雨が降れば恵みの雨に感謝』みたいな感じだね」
「ふ~ん、なんかおじいちゃんみたいね」
ひどッ…。まぁそれはともかく。
「と、話が逸れたけど特別なにも撮ってないし、さっき見たことを誰かに話すつもりもないですよ。それとも、広めて欲しいですか?」
「ああいえ!そ、それでお願いします!どうぞ胸に収めて頂ければ…」
だよね。ノリノリで殺生する姿とか、檀家さんに見せられないもんね。ネットにあげられたら大炎上待ったなしですよ。
「ところでさっき使ってた金剛杵、よければ見せてもらっても良いですか?」
「ああはい、どうぞ。ちょっと重いですよ」
「ありがとうございます。では失礼して。む、これはすごく良く出来ている…」
「そうですか。と、そこにあるボタンを押してみてください」
「これですか…?」
『ジャカッ!!』
「おわ、杭が飛び出た!なにコレすごい!ちょ~欲しい!!」
「ははは。実は檀家さんが町工場をされてまして、その方に頼んで作って頂いたんですよ」
て、檀家さんに何作らせてんだよ。でもいいな~、オレも作ってもらえないだろうか。
「ねぇ、ところで雲海さん?ずっと武器で戦ってたけど、スキルは持ってないの?」
お、さすが瀬来さん。それはオレも訊こうと思ってた。
「ス、スキルですか?ん~…噂には聞いてますが、実際にあるものなんですか?」
スキルの事を問われ、雲海さんはすこし戸惑っている。しかしその瞬間、瀬来さんの瞳が鋭く光ったことをオレは見逃さなかった。
「ねぇ江月さん、コップちょうだい!」
「はいよ」
『(きょわわわ…)』
「なッ!?これは…」
手の平に生み出されてゆく塩のコップを視て、雲海さんが驚きに眼を丸くしている。うん、それだけでもう『スキル持ってない』ってことがよく解る反応をありがとう。
で、生み出された塩のコップに瀬来さんが『なんちゃってレモン水』を満たすと、それを一息に飲み干して見せた。
「ぷはぁ…。どう、コレがスキルよ?ね、ホントにあったでしょ!」
イキリムーブが綺麗に決まったことに会心の笑みを見せる瀬来さん。うんうん、そういうとこも可愛いよ。
…。
で、その後は三人土手に並んで座り『なんちゃってレモン水』を飲みながらお話してみる。
ま、情報交換だね。瀬来さんもこの人になら情報を渡してもいいと思ったから、あんな風にしてスキルを見せたんだろう。
『たとえ地獄に落ちようとも』なんて、恥ずかしい事を大声で言えちゃう人だもんな。この雲海さんも、相当にピュアなんだろう。
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