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スキルトレーニングとマッスル分岐点
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「それじゃあいくよ…用意、スタート!」
「ンっ…」
「ふっ…!」
「……」
むふっ♡オレは三人のおっぱい…、じゃなかった。三人の美人女子大生が集中して魔力を操る様子に目を光らせる。
今日は週末の金曜日。大学を終えてウチにやってきた瑠羽たちはダンジョンでひと汗かき、スライムのドロップを集めたりした後で魔力操作のお勉強に勤しんでいるのだ。
「なな、ろ~く、ごぉ、よ~ん、さん―」
「(ふよよよ…)ハイッ!…これで出来たと思います」
それぞれカメムシテーブルを囲んで輪になり、テーブルの上に置いてある小鉢に入った酸に向け魔力を注いでいた瑠羽が一番に手を上げる。
「お、どれどれでうまく出来てるかな…(ぺろっ)。うん、よしこれは合格だ!では一等賞の瑠羽には、【酸】のスキルオーブを進呈しまぁす♪」
「わぁい、ありがとうございますぅ♪」
「ちぇ~、ルウ早い!」
「悔しいけど、ウチも一歩及ばんかったなぁ」
これはトレーニングでもあり、ちょっとしたゲームでもある。
オレは教員免許など持ってはいない。なので人を教えるのはズブの素人であり、彼女たちは現役の女子大生。そんなオレが偉ぶって教師の真似などをしても、大学の講師なんかと比べられ微妙~とか思われてしまうだろう。
そんな訳で、ゲーム仕立てでスキルトレーニングを行っているのだ。
「コォチ。ウチのコレ、どないやろ…?」
「どれどれ…(ぺろっ)。うん、ほぼほぼ無効化出来てるけど、あともう少しかな。でもだいぶ良くなってるよ。仁菜さんもこの調子でいこう」
「ふぅ、難しいもんやねぇ」
「ねぇねぇ江月さん、私のは?」
「どれどれ…(ぺろっ)。ウッ、まだだいぶ酸っぱいな。舐められなくはないけど、これだとちょっと厳しい。瀬来さんはあまり力まず集中するように心がけよう」
「えぇ~、これくらい出来れば十分じゃない??…ンぅっ、やだ酸っぱい!」
瀬来さんがボヤキつつも自分の魔力を注いだ小鉢を舐めるが、やっぱり酸っぱかったようで顔を顰めている。
「だめだめ。いざという時に十分に力が発揮できるとは限らないんだから。7割8割の力でも、即座に無効化できるようにしておかないと」
「チェ~ッ、は~い」
そう、いま彼女たちにさせているのは、オレの生み出した酸を自身のスキルで無効化すること。スキル【酸】は、酸を生み出せるのと同様に、魔力を注げば生み出した酸を無効化することも出来るのだ。
そしてコレは、スキルを使う上で非常に大切な事。
オレも独学でスキルの使い方を習得していったが、慣れないうちはよく自分の生み出した酸で目や喉を痛めた。蟲王スーツや女王スーツ、それに防毒マスクがあればそこまで気にする必要はないだろうが、ダンジョンでは何が起きるか解らない。
それ故、自身の生み出した酸でやられない為にも、この無効化トレーニングは必須だと思う。
「じゃあ、もう一回見せるからよく視てて…(ふよよよ…)はい」
「えぇ~、なんで江月さんはそんなにサラッと出来るのぉ~!?」
え~?そりゃ~まぁ、ずっとボッチでダンジョン探索していればねぇ。誰にも助けを求められない状態では、自分の能力を高める以外に生存確率を上げることはできないのだから。
「そうだなぁ…、粘液はそのままだと、後始末が大変だろ?だから粘液を出した後は、大概魔力を注いで分解するからかな。そういった魔力の使い方に、知らぬ間に慣れていったんだろう」
「そやねぇ、あのベタベタな粘液がいつまでもカラダについとったら、始末悪いもんなぁ」
うんうん、そういうことなんですよ仁菜さん。
にしても『やってみせ・言って聞かせて・させてみせ・褒めてやらねば・人は動かじ』か。
この言葉を残したのは日本帝国海軍の長、山本五十六さん。でもそんなスゴイ山本五十六ですら、『人を育てるってのは、いやはや大変だよな』という気持ちを滲ませるような言葉を残すくらい、教育とは難しいのだ。
「ほんならもう一回挑戦するから、もっぺん新しい酸出してくれるコォチ?」
「あ、シズがやるなら私もぉ~」
ふふふ、よしよし。褒賞としてスキルオーブをあげることにしたら、みんな一層やる気になってくれたな。オレは結構拾えるのだけど、瀬来さん達のドロップ率はかなり低くて、現在でも瑠羽で2個、仁菜さんと瀬来さんは1個。今この場にはいないシャークに到っては0個だった。
今後も彼女らの成長具合に合わせて、スキルオーブを褒賞とする勉強方法は使えそうだ。
…。
「ん、とそろそろええ時間やない?」
「おっと、そうか。ならそろそろ出かけようか」
え、これまた何処へお出かけですかって?
そりゃダンジョンで彼女らが頑張って集めてくれたスライムのドロップがうまいこと高値で売れる訳ですから、スーパー銭湯にでも連れて行って息抜きをさせてあげないと、それこそ罰があたるってモンでがしょ。
……。
で、スーパー銭湯に到着すると、なぜか待ち合わせしていたシャークが玄関先で身を震わせながらオレ達の到着を待っていた。
「おい、おっせぇよ万智ぃ!こっちは寒空の下、ずっとここで待ってたんだからなぁ!」
「えぇ~、なによシャーク。そんなことしてないで、先に着いたならなか入ってれば良かったのにぃ?」
「それじゃダメだ、それだと一括で受け付けしてもらえなくなるだろ。今日はジャングの奢りで、目一杯愉しんでやるって、決めてるんだからなッ!」
「ああ、そうかよ。なら茹でダコになるまで温泉に浸かって、好きなだけ飲み食いすればいいだろ?」
「おうッ、そうさせて貰うぜ!」
まったく、ほんとに遠慮のないミリオタ女子高生だ。コイツの兄貴たちもトライデントのおっさん連中も、シャークのことをちょいと甘やかし過ぎじゃないのか。
ま、とはいえお金も入ったし、今日は豪遊だ。
ほんとなら瑠羽たちと風情ある冬場の温泉宿なんかにも、出かけたいところではある。でも現在は社会情勢的にも何が起こるか解らないご時世。そんな時にあまり遠出というのも、いただけない。な訳で通い慣れたスーパー銭湯での豪遊が、一番妥当な線と出向いた次第。
こうしてそれぞれに分かれたっぷりと入浴を愉しんだ後は、またまたお愉しみの夕食タイム。オレも無事男の姿に戻ったからな。今回は無用なトラブルは避けられたぞ。
「よし、アタシはカルビ!この特上ってのにしてくれ!」
「瑠羽ちゃん、ならウチらもそうしよっか?」
「うん、静ちゃん」
「ほな特上三人前で」
「う~ん、シャークに特上取られたか…。なら私は…う~ん…」
「瀬来さんは、タン塩好きじゃなかったっけ?」
「ハッ、そうね。まずはタン塩からいくのがセオリーよね!」
テーブルにつくと、思い思いの料理を注文していく。今日は普段控えているアルコールも解禁だ。
「「「かんぱーい♪」」」
『じゅぅぅうぅぅう…♪』
「(がぶっ…)おっ、この豚足っての、案外イケルな♪」
おいシャーク、まだ肉が焼けないからってオレの豚足を先に食うなよ。
頼んだオレだってまだ手ぇつけてないのに。まぁいい、オレにはまだこのカクテキキムチがあるからして…。
「(ぱくっ、ボリ…コリッ…シャク…)うん、デリシャス♪キムチの美味い店は、肉もまた美味いからなぁ♪」
「あのコーチ、わたしもすこし貰っていいですか?」
「ああ、もちろんだ瑠羽。いっしょに食べよう♪」
「ふふ、仲ええねェ~♪万智ぃ、これはウチらも負けてられへんよ?」
「え、何?ちょっと待って、ねぇシャーク!そんないっぺんに肉載せないのッ!」
「うるせぇ、早いもん勝ちぃ~♪」
「はぁ…しゃあないなぁ。あ、生おかわりおねがいしまぁす♪」
で、そんな愉しい食事風景だったのだが、肉が焼けそれぞれに食べ始めると、ちょっと雰囲気が変わった。
「「「………(もぐもぐもぐ…)」」」
「ん、どうしたみんな。そんな黙りこくったりして?」
「え~と…、コレ、言って良いのかなぁ…」
「ふふ、あんまり美味しく感じなかったか」
「「「えッ!」」」
「ふふふ、そう。キミらがいま感じたのは、『あれ…、なんか思ってたより美味しくないかも…?』という感覚だろう?」
「え?そうだけど…。(ハッ!)もしかして師匠には最初から解ってたのッ!?」
「まぁ、たぶんだけどね。もうそろそろで、瀬来さん達もそうなるんじゃないかと思ってたよ」
ここはオレにしては珍しく、したり顔でみんなにドヤってみせた。
「あの、コーチ。お店のお肉が美味しく感じないのって、どういう事なんですか?」
「うむ。それはだね瑠羽、みんなのカラダの求める栄養が、よりアスリート指向になってきたからだよ」
「アスリート指向…ですか?」
「そう、みんなはダンジョンで鍛え、強くなった。それによりカラダも強くなった状態を維持する為に、より高たんぱくで低脂肪という機能的な栄養素を求めるよう変化してきたのだろう」
「え?でも師匠のうちでゴハン食べる時はぜんぜんこんな風には…アッ!」
「そやったね。コォチの作る料理、コーチの使うお肉は、いつも高たんぱくで低脂肪のマッスルミートやもんね」
「なんだよ、それで思ったよりも美味く感じなかったのか。でも…、コレってなんかすごく損してねェか?」
「フッ…、シャークの言う事も尤も。『美食を愉しむ』という点で言えば、アスリート指向になった体質は損とも言えるだろう。だが、たとえそうだとしても、それを遥かに凌駕する健康と肉体的ポテンシャルが手に出来るのだぞ?(ギラリッ)」
「に、肉体的ポテンシャル…(ごくり…)、そ、それってあのサンドラさんみたいに…ってことか??」
「ふふふ、そういう事だシャーク。今キミたちは、幸運にもその分岐点に立つことが出来ている。それは『険しくも健康でマッスル』になる道か。それとも『不健康でも美食を愉しめる』道か…だ。そして、選択は自由…」
「(コトリ…)ウチはもう強うなるって決めた。せやから、もういらんわ…」
「ア、アタシだって!サンドラさんみたいになるって決めたんだッ!(コトリ…)」
「そういうことだったんだ…。強さの分岐点、そんなモノがこの食事の中にも紛れていたなんて(コトリ…)」
「(コトリ…)わたしも、コーチとみんなといっしょに、強くなります!」
意味を理解したその場の全員が、手にしていた箸を置きオレを見つめてくる。
『じゅぅううううゥゥゥ…!パチパチパチ…ボッ!!』
そして金網に載せられたままだった特上カルビが、炎をあげて真っ赤に燃えあがる。
うん…、これはちょっと薬が効きすぎたかな?
ま、それはそれとして、いま注文した料理はみんな残さずに頂こうね。
「ンっ…」
「ふっ…!」
「……」
むふっ♡オレは三人のおっぱい…、じゃなかった。三人の美人女子大生が集中して魔力を操る様子に目を光らせる。
今日は週末の金曜日。大学を終えてウチにやってきた瑠羽たちはダンジョンでひと汗かき、スライムのドロップを集めたりした後で魔力操作のお勉強に勤しんでいるのだ。
「なな、ろ~く、ごぉ、よ~ん、さん―」
「(ふよよよ…)ハイッ!…これで出来たと思います」
それぞれカメムシテーブルを囲んで輪になり、テーブルの上に置いてある小鉢に入った酸に向け魔力を注いでいた瑠羽が一番に手を上げる。
「お、どれどれでうまく出来てるかな…(ぺろっ)。うん、よしこれは合格だ!では一等賞の瑠羽には、【酸】のスキルオーブを進呈しまぁす♪」
「わぁい、ありがとうございますぅ♪」
「ちぇ~、ルウ早い!」
「悔しいけど、ウチも一歩及ばんかったなぁ」
これはトレーニングでもあり、ちょっとしたゲームでもある。
オレは教員免許など持ってはいない。なので人を教えるのはズブの素人であり、彼女たちは現役の女子大生。そんなオレが偉ぶって教師の真似などをしても、大学の講師なんかと比べられ微妙~とか思われてしまうだろう。
そんな訳で、ゲーム仕立てでスキルトレーニングを行っているのだ。
「コォチ。ウチのコレ、どないやろ…?」
「どれどれ…(ぺろっ)。うん、ほぼほぼ無効化出来てるけど、あともう少しかな。でもだいぶ良くなってるよ。仁菜さんもこの調子でいこう」
「ふぅ、難しいもんやねぇ」
「ねぇねぇ江月さん、私のは?」
「どれどれ…(ぺろっ)。ウッ、まだだいぶ酸っぱいな。舐められなくはないけど、これだとちょっと厳しい。瀬来さんはあまり力まず集中するように心がけよう」
「えぇ~、これくらい出来れば十分じゃない??…ンぅっ、やだ酸っぱい!」
瀬来さんがボヤキつつも自分の魔力を注いだ小鉢を舐めるが、やっぱり酸っぱかったようで顔を顰めている。
「だめだめ。いざという時に十分に力が発揮できるとは限らないんだから。7割8割の力でも、即座に無効化できるようにしておかないと」
「チェ~ッ、は~い」
そう、いま彼女たちにさせているのは、オレの生み出した酸を自身のスキルで無効化すること。スキル【酸】は、酸を生み出せるのと同様に、魔力を注げば生み出した酸を無効化することも出来るのだ。
そしてコレは、スキルを使う上で非常に大切な事。
オレも独学でスキルの使い方を習得していったが、慣れないうちはよく自分の生み出した酸で目や喉を痛めた。蟲王スーツや女王スーツ、それに防毒マスクがあればそこまで気にする必要はないだろうが、ダンジョンでは何が起きるか解らない。
それ故、自身の生み出した酸でやられない為にも、この無効化トレーニングは必須だと思う。
「じゃあ、もう一回見せるからよく視てて…(ふよよよ…)はい」
「えぇ~、なんで江月さんはそんなにサラッと出来るのぉ~!?」
え~?そりゃ~まぁ、ずっとボッチでダンジョン探索していればねぇ。誰にも助けを求められない状態では、自分の能力を高める以外に生存確率を上げることはできないのだから。
「そうだなぁ…、粘液はそのままだと、後始末が大変だろ?だから粘液を出した後は、大概魔力を注いで分解するからかな。そういった魔力の使い方に、知らぬ間に慣れていったんだろう」
「そやねぇ、あのベタベタな粘液がいつまでもカラダについとったら、始末悪いもんなぁ」
うんうん、そういうことなんですよ仁菜さん。
にしても『やってみせ・言って聞かせて・させてみせ・褒めてやらねば・人は動かじ』か。
この言葉を残したのは日本帝国海軍の長、山本五十六さん。でもそんなスゴイ山本五十六ですら、『人を育てるってのは、いやはや大変だよな』という気持ちを滲ませるような言葉を残すくらい、教育とは難しいのだ。
「ほんならもう一回挑戦するから、もっぺん新しい酸出してくれるコォチ?」
「あ、シズがやるなら私もぉ~」
ふふふ、よしよし。褒賞としてスキルオーブをあげることにしたら、みんな一層やる気になってくれたな。オレは結構拾えるのだけど、瀬来さん達のドロップ率はかなり低くて、現在でも瑠羽で2個、仁菜さんと瀬来さんは1個。今この場にはいないシャークに到っては0個だった。
今後も彼女らの成長具合に合わせて、スキルオーブを褒賞とする勉強方法は使えそうだ。
…。
「ん、とそろそろええ時間やない?」
「おっと、そうか。ならそろそろ出かけようか」
え、これまた何処へお出かけですかって?
そりゃダンジョンで彼女らが頑張って集めてくれたスライムのドロップがうまいこと高値で売れる訳ですから、スーパー銭湯にでも連れて行って息抜きをさせてあげないと、それこそ罰があたるってモンでがしょ。
……。
で、スーパー銭湯に到着すると、なぜか待ち合わせしていたシャークが玄関先で身を震わせながらオレ達の到着を待っていた。
「おい、おっせぇよ万智ぃ!こっちは寒空の下、ずっとここで待ってたんだからなぁ!」
「えぇ~、なによシャーク。そんなことしてないで、先に着いたならなか入ってれば良かったのにぃ?」
「それじゃダメだ、それだと一括で受け付けしてもらえなくなるだろ。今日はジャングの奢りで、目一杯愉しんでやるって、決めてるんだからなッ!」
「ああ、そうかよ。なら茹でダコになるまで温泉に浸かって、好きなだけ飲み食いすればいいだろ?」
「おうッ、そうさせて貰うぜ!」
まったく、ほんとに遠慮のないミリオタ女子高生だ。コイツの兄貴たちもトライデントのおっさん連中も、シャークのことをちょいと甘やかし過ぎじゃないのか。
ま、とはいえお金も入ったし、今日は豪遊だ。
ほんとなら瑠羽たちと風情ある冬場の温泉宿なんかにも、出かけたいところではある。でも現在は社会情勢的にも何が起こるか解らないご時世。そんな時にあまり遠出というのも、いただけない。な訳で通い慣れたスーパー銭湯での豪遊が、一番妥当な線と出向いた次第。
こうしてそれぞれに分かれたっぷりと入浴を愉しんだ後は、またまたお愉しみの夕食タイム。オレも無事男の姿に戻ったからな。今回は無用なトラブルは避けられたぞ。
「よし、アタシはカルビ!この特上ってのにしてくれ!」
「瑠羽ちゃん、ならウチらもそうしよっか?」
「うん、静ちゃん」
「ほな特上三人前で」
「う~ん、シャークに特上取られたか…。なら私は…う~ん…」
「瀬来さんは、タン塩好きじゃなかったっけ?」
「ハッ、そうね。まずはタン塩からいくのがセオリーよね!」
テーブルにつくと、思い思いの料理を注文していく。今日は普段控えているアルコールも解禁だ。
「「「かんぱーい♪」」」
『じゅぅぅうぅぅう…♪』
「(がぶっ…)おっ、この豚足っての、案外イケルな♪」
おいシャーク、まだ肉が焼けないからってオレの豚足を先に食うなよ。
頼んだオレだってまだ手ぇつけてないのに。まぁいい、オレにはまだこのカクテキキムチがあるからして…。
「(ぱくっ、ボリ…コリッ…シャク…)うん、デリシャス♪キムチの美味い店は、肉もまた美味いからなぁ♪」
「あのコーチ、わたしもすこし貰っていいですか?」
「ああ、もちろんだ瑠羽。いっしょに食べよう♪」
「ふふ、仲ええねェ~♪万智ぃ、これはウチらも負けてられへんよ?」
「え、何?ちょっと待って、ねぇシャーク!そんないっぺんに肉載せないのッ!」
「うるせぇ、早いもん勝ちぃ~♪」
「はぁ…しゃあないなぁ。あ、生おかわりおねがいしまぁす♪」
で、そんな愉しい食事風景だったのだが、肉が焼けそれぞれに食べ始めると、ちょっと雰囲気が変わった。
「「「………(もぐもぐもぐ…)」」」
「ん、どうしたみんな。そんな黙りこくったりして?」
「え~と…、コレ、言って良いのかなぁ…」
「ふふ、あんまり美味しく感じなかったか」
「「「えッ!」」」
「ふふふ、そう。キミらがいま感じたのは、『あれ…、なんか思ってたより美味しくないかも…?』という感覚だろう?」
「え?そうだけど…。(ハッ!)もしかして師匠には最初から解ってたのッ!?」
「まぁ、たぶんだけどね。もうそろそろで、瀬来さん達もそうなるんじゃないかと思ってたよ」
ここはオレにしては珍しく、したり顔でみんなにドヤってみせた。
「あの、コーチ。お店のお肉が美味しく感じないのって、どういう事なんですか?」
「うむ。それはだね瑠羽、みんなのカラダの求める栄養が、よりアスリート指向になってきたからだよ」
「アスリート指向…ですか?」
「そう、みんなはダンジョンで鍛え、強くなった。それによりカラダも強くなった状態を維持する為に、より高たんぱくで低脂肪という機能的な栄養素を求めるよう変化してきたのだろう」
「え?でも師匠のうちでゴハン食べる時はぜんぜんこんな風には…アッ!」
「そやったね。コォチの作る料理、コーチの使うお肉は、いつも高たんぱくで低脂肪のマッスルミートやもんね」
「なんだよ、それで思ったよりも美味く感じなかったのか。でも…、コレってなんかすごく損してねェか?」
「フッ…、シャークの言う事も尤も。『美食を愉しむ』という点で言えば、アスリート指向になった体質は損とも言えるだろう。だが、たとえそうだとしても、それを遥かに凌駕する健康と肉体的ポテンシャルが手に出来るのだぞ?(ギラリッ)」
「に、肉体的ポテンシャル…(ごくり…)、そ、それってあのサンドラさんみたいに…ってことか??」
「ふふふ、そういう事だシャーク。今キミたちは、幸運にもその分岐点に立つことが出来ている。それは『険しくも健康でマッスル』になる道か。それとも『不健康でも美食を愉しめる』道か…だ。そして、選択は自由…」
「(コトリ…)ウチはもう強うなるって決めた。せやから、もういらんわ…」
「ア、アタシだって!サンドラさんみたいになるって決めたんだッ!(コトリ…)」
「そういうことだったんだ…。強さの分岐点、そんなモノがこの食事の中にも紛れていたなんて(コトリ…)」
「(コトリ…)わたしも、コーチとみんなといっしょに、強くなります!」
意味を理解したその場の全員が、手にしていた箸を置きオレを見つめてくる。
『じゅぅううううゥゥゥ…!パチパチパチ…ボッ!!』
そして金網に載せられたままだった特上カルビが、炎をあげて真っ赤に燃えあがる。
うん…、これはちょっと薬が効きすぎたかな?
ま、それはそれとして、いま注文した料理はみんな残さずに頂こうね。
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