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焼肉三昧と乱闘未遂
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どんどんと肉が運ばれてきて宴が始まった。今日は焼肉パーティーだぜ、ひゃほう!
と内心ではひどく浮かれているが、オレは気持ち一歩引いた感じで届いた野菜スープや生ビールを飲みながら、愉しげに肉を網に載せ焼き始める美しき湯上り仲良し女子大生三人の図を愉しんでいる。
うむ、実に絵になる光景だ。もしこれをポスターにしたなら、きっとすごい経済効果を生むに違いない。それくらいに素晴しい。
なにせオレがダンジョンで成長した際にメガネが不要になったのと同じように、彼女達もまたダンジョンで得た生命エナジーによって、その美貌がさらに増しているのだから。
それに彼女たちは、もうすでにレベル1だった時の2倍は強くなれているようだ。詳しい数値は訊いていないが、それでも今の彼女たちなら悪の秘密結社〇ョッカーの戦闘員ともいい勝負が出来そうだ。新戦闘員の強さは常人の3倍程度だが、初期の戦闘員の強さは常人の1.5倍程度だったそうだからな。
「さぁ焼けたでェ♪コォチ、うちの焼いたホルモンたべてぇ♪」
そんな戦闘員が、いや向かいに座った色っぽい仁菜さんがオレの為に取り皿に焼きたてアツアツのホルモンを取ってくれた。
「ありがとう。では頂こうかな。(もぐもぐ)…おほっ!これは脂がすごいな!でも噛むと滲み出てくる脂の甘みというか旨みというかがこってりして…すごく美味い!」
「せやろぉ♪うちコレ食べるとすごく元気でるんよぉ♪」
そうか、仁菜さんにとってホルモンはソウルフードなんだな。オレのTKGと同じだ。仁菜さんがカルビとかでなくいきなりホルモンにいったのは意外だったけど、それなら納得だ。
「師匠ぉ~!私の焼いたカルビも食べてぇ…あぁ届かない、ルウおねがい!」
「もう、万智ちゃんたら。はい」
隣の席に座った瑠羽経由で、オレのもとに可愛くてお胸の大きな瀬来さんが焼いた焼きたてのカルビ肉が回ってきた。
「(もぐもぐ…)うん!これもまた美味い!焼き加減が絶妙だ!瀬来さんは肉を焼くのも上手だなぁ♪」
「えへへ、そうでしょ♪次焼いたのも師匠にあげるね♪」
女の子に対して気の利いた事も言えなければ、軽妙なトークを披露する話術も無いオレ。だからこんな時は、ひたすら褒め役に徹する。大人の処世術だ。だがそれが功を奏したのか、オレのもとには一度も網に肉を置いていないのにひっきりなしに焼かれた美味しいお肉が届くという流れが生まれた。
『危ないから』と焼いた網に肉を置かせてもらえなかった幼い頃を思い出してしまって、なんだか少し照れ臭い。
「はいコーチ、タン塩が焼けました♡」
瑠羽は瑠羽で、大皿で二人前として届いた黒毛和牛セットから2枚ずつ肉を取っては焼き、いつもオレと同じタイミングで食べようと苦心している。
「瑠羽ちゃんお熱いねェ♪なんでもコォチと一緒がええんかぁ♪」
「そ、そんなぁ、静ちゃ~ん(ぷぅ)」
そしてそれを仁菜さんにからかわれて頬を膨らませている。ははは、可愛いなぁ。こんな子がオレの彼女だなんて、未だに信じられん。
だが。
「おう、兄ちゃん。随分と景気がよさそうじゃのぉ~、おぉ??」
遂に来てしまったか。
いや、さっきからうちのテーブル周囲の注目集めてるなぁとは思ってたのよ。まぁこれだけの若く美しい女性が三人も揃っていれば嫌でも目立ってしまう。しかしそのなかでもこちらと結構近い位置にあるテーブルに座った年配男性三人組のうちのふたりが、こちら、というかオレに向け剣呑な目を向けていたのは数分前から知覚していた。
「だけどまぁ、すこし騒がし過ぎるのと違うカァ??」
初めに話しかけてきたのは太った年配男性。館内着を着ていることから恐らくは湯上りなのだろうが、すでにまた脂ぎった感じの赤い顔をしている。そんな年配男性の脇からまた別の年配男性が明らかに酒に呑まれてますといった赤ら顔で苦情を申し立てる。
しかしこちらもそう大声を上げて騒いでいたわけでなし、みんなで愉しくお肉を焼いて食べていただけ。まぁどうみても、単に気に入らないからという理由で声をかけてきた嫌がらせだ。
視線を向けると、彼らの席に残っている気弱そうな年配男性が、どうしたものかとひとりアワアワしている。
(ただなぁ、困るのよねぇ~こういうの…)
オレは精神力も上がりもう慣れたけど、ダンジョンでの精神的負荷というのは相当なモノだ。自分の生命の危機と同時に、モンスターとはいえ生き物を殺すという忌避感。それがゴブリンのような人間に近い姿形をしているとなれば、なおさらだ。
だからダンジョンに潜ってまだ2度目の仁菜さんや瑠羽には、その精神的負荷を少しでも解消してもらおうとお風呂で身体と心の疲れを癒してもらい、美味しい料理を食べて飲んでリフレッシュしてもらおうとしているのだ。だというのにこんな風にして余計な精神的負荷を持ちこまないで欲しい。
「瑠羽、ちょっと席を立つから一度どいてもらえるかい」
「コーチッ!?」
オレが席を立つというと、慌てて制止しようとする瑠羽。その目には恐怖の色が浮かんでいる。見ればオレに視線を向ける瀬来さんも仁菜さんも『やめてッ!』と懇願するような眼でオレを見つめている。
きっと彼女たちの脳裏には、ダンジョンでオレによって無力化された哀れなゴブリンの姿が甦っているのだろう。
「ああ、いやいや。あんな風にはしないから安心して」
「せやかてコォチ…乱暴したらあかんよ…」
「もちろん、ちょっと寝てもらうだけだよ」
オレは隣に座っていた瑠羽を持ち上げるようにしてどかし、立ち上がった。
「お客様、店内で揉め事はご遠慮いただけますか…」
「うっさいわ、おまえわぁ!」
しかしオレがそんな風にして立ち上がっている間に、お店のチーフっぽい人が現れ脂ギッシュ泥酔おじさんに注意を呼びかけている。が、泥酔おじさんは自分の前に立ちはだかったお店のチーフを強引に押し退けてしまった。
そしてもう一方の意地の悪そうな顔つきをした肌の色の悪い泥酔おじさんも前に出てきて、立ち上がったオレの前を塞いだ。
「トイレ行くんで、ソコどいてもらえますか?」
「はぁ?なんでおまえの為にどいてやらなきゃならんのッ!ん~??」
「ちっとばかし身体がデカいからって調子に乗るなよ兄ちゃん…ふへへ」
うん、解ってはいたけど、どっちも話にならないな。『トイレに行く』というのは勿論方便。『場所変えませんか』という含みを持たせて言ったのだが、泥酔おじさんらには一切それが通じず、この場での騒乱をお望みのご様子。
(ハァ…やだなぁ。こんな湯上りでもバッチそうなおっさんに触れねばならないとは…)
「お―(ぽくぅ)…(がくっ)」
「てめ―(ぽくぅ)…(がくっ)」
一瞬で泥酔おじさんの意識を刈り取る。そして質の悪い泥酔おじさんらの襟首を掴んで運ぶと、彼らの元いた席へと座らせる。
『ドサッ…ドサッ…』
「随分と酔いが回ってしまったようだ。起きたら水でも飲ませてやるといい」
席に一人残っていた気弱そうな年配男性にそう声を掛けると、今度は本当にトイレに向かう。なんかお手てを洗わないと不衛生そうで気になったから。
…。
だがそうして手を洗い席に戻ると、まぁやっぱりというか三人ともさきほどの揉め事を気にしてか意気消沈していた。
「なんか、場が白けてしもうたなぁ…」
「でも、あのおじさんたちコーチの話に聞く耳持たなかったし…」
そう言いながらふたりが視線を向ける先には、白目剥いて口から涎を垂らしている泥酔おじさんの姿。もう見た目がアレで、食欲が非常に削られる。
「ねぇ師匠…、あれってどうやったの??」
そんななかでも好奇心の強い瀬来さんが、オレが泥酔おじさん達を昏倒させた方法について訊いてきた。
「ん…なんでもないよ。ただ顎の骨持って左右に揺らしただけ」
「それだけ!?っていうか何したのか視えなかったよ!?」
「ああ、まぁそれくらいには早くやったからね」
「「「………」」」
それを聞き沈黙する三人。
いや、でもこの場合は仕方ないんじゃないかな。相手は泥酔してお店の人の言う事もきかないし、あれ以上騒がれるともっと面倒なことになっていたかもしれない。さっさと意識を刈り取るのが、この場合最善だと判断したんだよ。
「それって…、そない簡単にできるもんなん??」
「まぁ理屈は顎にパンチ貰って脳が揺さぶられて、脳震盪起こすのと一緒だよ。ただ殴った訳じゃないし素早くやったから、傍目には泥酔おじさんが酔っ払いすぎて目を回したみたいに見えなかった?」
「はい!コーチは何も悪くありません!」
復活した瑠羽が全肯定ボットになってくれた。うん、ええ子やなぁ。
「すごい…そんなことってできるんだ…」
瀬来さんはさっき見た光景を思い出しながら、なにやら感動している。
「うん、まぁ頑張れば瀬来さんにも、そのうち出来るようになると思うけど」
「うちはコォチがあの『スパァン!』、使うんやないかと思ってヒヤヒヤしたわぁ」
「いやいや、アレやったらホントに死んじゃうでしょ」
とはいえ、また仕切り直して焼肉パーティーだ。という雰囲気もすっかり散ってしまった。なので注文してすでにテーブルに並んでいる肉なんかをパッパと焼いて食べると、そそくさと焼肉店をあとにした。後味が悪いとはこのことだな。
会計をしてくれたのはあの泥酔おじさんを止めようしていたお店のチーフさんで、帰り際に『申し訳ありませんでした』と、深々と頭を下げられてしまった。焼肉屋のチーフさんはぜんぜん悪くないのに、可哀そうな事だ。『ごちそうさま、また来ます』と声を掛ける、一層お辞儀が深くなったので、良い人なんだなぁと思った。
やれやれだ。じゃあ気分を治すのに、もうひとっ風呂浴びようか。
と内心ではひどく浮かれているが、オレは気持ち一歩引いた感じで届いた野菜スープや生ビールを飲みながら、愉しげに肉を網に載せ焼き始める美しき湯上り仲良し女子大生三人の図を愉しんでいる。
うむ、実に絵になる光景だ。もしこれをポスターにしたなら、きっとすごい経済効果を生むに違いない。それくらいに素晴しい。
なにせオレがダンジョンで成長した際にメガネが不要になったのと同じように、彼女達もまたダンジョンで得た生命エナジーによって、その美貌がさらに増しているのだから。
それに彼女たちは、もうすでにレベル1だった時の2倍は強くなれているようだ。詳しい数値は訊いていないが、それでも今の彼女たちなら悪の秘密結社〇ョッカーの戦闘員ともいい勝負が出来そうだ。新戦闘員の強さは常人の3倍程度だが、初期の戦闘員の強さは常人の1.5倍程度だったそうだからな。
「さぁ焼けたでェ♪コォチ、うちの焼いたホルモンたべてぇ♪」
そんな戦闘員が、いや向かいに座った色っぽい仁菜さんがオレの為に取り皿に焼きたてアツアツのホルモンを取ってくれた。
「ありがとう。では頂こうかな。(もぐもぐ)…おほっ!これは脂がすごいな!でも噛むと滲み出てくる脂の甘みというか旨みというかがこってりして…すごく美味い!」
「せやろぉ♪うちコレ食べるとすごく元気でるんよぉ♪」
そうか、仁菜さんにとってホルモンはソウルフードなんだな。オレのTKGと同じだ。仁菜さんがカルビとかでなくいきなりホルモンにいったのは意外だったけど、それなら納得だ。
「師匠ぉ~!私の焼いたカルビも食べてぇ…あぁ届かない、ルウおねがい!」
「もう、万智ちゃんたら。はい」
隣の席に座った瑠羽経由で、オレのもとに可愛くてお胸の大きな瀬来さんが焼いた焼きたてのカルビ肉が回ってきた。
「(もぐもぐ…)うん!これもまた美味い!焼き加減が絶妙だ!瀬来さんは肉を焼くのも上手だなぁ♪」
「えへへ、そうでしょ♪次焼いたのも師匠にあげるね♪」
女の子に対して気の利いた事も言えなければ、軽妙なトークを披露する話術も無いオレ。だからこんな時は、ひたすら褒め役に徹する。大人の処世術だ。だがそれが功を奏したのか、オレのもとには一度も網に肉を置いていないのにひっきりなしに焼かれた美味しいお肉が届くという流れが生まれた。
『危ないから』と焼いた網に肉を置かせてもらえなかった幼い頃を思い出してしまって、なんだか少し照れ臭い。
「はいコーチ、タン塩が焼けました♡」
瑠羽は瑠羽で、大皿で二人前として届いた黒毛和牛セットから2枚ずつ肉を取っては焼き、いつもオレと同じタイミングで食べようと苦心している。
「瑠羽ちゃんお熱いねェ♪なんでもコォチと一緒がええんかぁ♪」
「そ、そんなぁ、静ちゃ~ん(ぷぅ)」
そしてそれを仁菜さんにからかわれて頬を膨らませている。ははは、可愛いなぁ。こんな子がオレの彼女だなんて、未だに信じられん。
だが。
「おう、兄ちゃん。随分と景気がよさそうじゃのぉ~、おぉ??」
遂に来てしまったか。
いや、さっきからうちのテーブル周囲の注目集めてるなぁとは思ってたのよ。まぁこれだけの若く美しい女性が三人も揃っていれば嫌でも目立ってしまう。しかしそのなかでもこちらと結構近い位置にあるテーブルに座った年配男性三人組のうちのふたりが、こちら、というかオレに向け剣呑な目を向けていたのは数分前から知覚していた。
「だけどまぁ、すこし騒がし過ぎるのと違うカァ??」
初めに話しかけてきたのは太った年配男性。館内着を着ていることから恐らくは湯上りなのだろうが、すでにまた脂ぎった感じの赤い顔をしている。そんな年配男性の脇からまた別の年配男性が明らかに酒に呑まれてますといった赤ら顔で苦情を申し立てる。
しかしこちらもそう大声を上げて騒いでいたわけでなし、みんなで愉しくお肉を焼いて食べていただけ。まぁどうみても、単に気に入らないからという理由で声をかけてきた嫌がらせだ。
視線を向けると、彼らの席に残っている気弱そうな年配男性が、どうしたものかとひとりアワアワしている。
(ただなぁ、困るのよねぇ~こういうの…)
オレは精神力も上がりもう慣れたけど、ダンジョンでの精神的負荷というのは相当なモノだ。自分の生命の危機と同時に、モンスターとはいえ生き物を殺すという忌避感。それがゴブリンのような人間に近い姿形をしているとなれば、なおさらだ。
だからダンジョンに潜ってまだ2度目の仁菜さんや瑠羽には、その精神的負荷を少しでも解消してもらおうとお風呂で身体と心の疲れを癒してもらい、美味しい料理を食べて飲んでリフレッシュしてもらおうとしているのだ。だというのにこんな風にして余計な精神的負荷を持ちこまないで欲しい。
「瑠羽、ちょっと席を立つから一度どいてもらえるかい」
「コーチッ!?」
オレが席を立つというと、慌てて制止しようとする瑠羽。その目には恐怖の色が浮かんでいる。見ればオレに視線を向ける瀬来さんも仁菜さんも『やめてッ!』と懇願するような眼でオレを見つめている。
きっと彼女たちの脳裏には、ダンジョンでオレによって無力化された哀れなゴブリンの姿が甦っているのだろう。
「ああ、いやいや。あんな風にはしないから安心して」
「せやかてコォチ…乱暴したらあかんよ…」
「もちろん、ちょっと寝てもらうだけだよ」
オレは隣に座っていた瑠羽を持ち上げるようにしてどかし、立ち上がった。
「お客様、店内で揉め事はご遠慮いただけますか…」
「うっさいわ、おまえわぁ!」
しかしオレがそんな風にして立ち上がっている間に、お店のチーフっぽい人が現れ脂ギッシュ泥酔おじさんに注意を呼びかけている。が、泥酔おじさんは自分の前に立ちはだかったお店のチーフを強引に押し退けてしまった。
そしてもう一方の意地の悪そうな顔つきをした肌の色の悪い泥酔おじさんも前に出てきて、立ち上がったオレの前を塞いだ。
「トイレ行くんで、ソコどいてもらえますか?」
「はぁ?なんでおまえの為にどいてやらなきゃならんのッ!ん~??」
「ちっとばかし身体がデカいからって調子に乗るなよ兄ちゃん…ふへへ」
うん、解ってはいたけど、どっちも話にならないな。『トイレに行く』というのは勿論方便。『場所変えませんか』という含みを持たせて言ったのだが、泥酔おじさんらには一切それが通じず、この場での騒乱をお望みのご様子。
(ハァ…やだなぁ。こんな湯上りでもバッチそうなおっさんに触れねばならないとは…)
「お―(ぽくぅ)…(がくっ)」
「てめ―(ぽくぅ)…(がくっ)」
一瞬で泥酔おじさんの意識を刈り取る。そして質の悪い泥酔おじさんらの襟首を掴んで運ぶと、彼らの元いた席へと座らせる。
『ドサッ…ドサッ…』
「随分と酔いが回ってしまったようだ。起きたら水でも飲ませてやるといい」
席に一人残っていた気弱そうな年配男性にそう声を掛けると、今度は本当にトイレに向かう。なんかお手てを洗わないと不衛生そうで気になったから。
…。
だがそうして手を洗い席に戻ると、まぁやっぱりというか三人ともさきほどの揉め事を気にしてか意気消沈していた。
「なんか、場が白けてしもうたなぁ…」
「でも、あのおじさんたちコーチの話に聞く耳持たなかったし…」
そう言いながらふたりが視線を向ける先には、白目剥いて口から涎を垂らしている泥酔おじさんの姿。もう見た目がアレで、食欲が非常に削られる。
「ねぇ師匠…、あれってどうやったの??」
そんななかでも好奇心の強い瀬来さんが、オレが泥酔おじさん達を昏倒させた方法について訊いてきた。
「ん…なんでもないよ。ただ顎の骨持って左右に揺らしただけ」
「それだけ!?っていうか何したのか視えなかったよ!?」
「ああ、まぁそれくらいには早くやったからね」
「「「………」」」
それを聞き沈黙する三人。
いや、でもこの場合は仕方ないんじゃないかな。相手は泥酔してお店の人の言う事もきかないし、あれ以上騒がれるともっと面倒なことになっていたかもしれない。さっさと意識を刈り取るのが、この場合最善だと判断したんだよ。
「それって…、そない簡単にできるもんなん??」
「まぁ理屈は顎にパンチ貰って脳が揺さぶられて、脳震盪起こすのと一緒だよ。ただ殴った訳じゃないし素早くやったから、傍目には泥酔おじさんが酔っ払いすぎて目を回したみたいに見えなかった?」
「はい!コーチは何も悪くありません!」
復活した瑠羽が全肯定ボットになってくれた。うん、ええ子やなぁ。
「すごい…そんなことってできるんだ…」
瀬来さんはさっき見た光景を思い出しながら、なにやら感動している。
「うん、まぁ頑張れば瀬来さんにも、そのうち出来るようになると思うけど」
「うちはコォチがあの『スパァン!』、使うんやないかと思ってヒヤヒヤしたわぁ」
「いやいや、アレやったらホントに死んじゃうでしょ」
とはいえ、また仕切り直して焼肉パーティーだ。という雰囲気もすっかり散ってしまった。なので注文してすでにテーブルに並んでいる肉なんかをパッパと焼いて食べると、そそくさと焼肉店をあとにした。後味が悪いとはこのことだな。
会計をしてくれたのはあの泥酔おじさんを止めようしていたお店のチーフさんで、帰り際に『申し訳ありませんでした』と、深々と頭を下げられてしまった。焼肉屋のチーフさんはぜんぜん悪くないのに、可哀そうな事だ。『ごちそうさま、また来ます』と声を掛ける、一層お辞儀が深くなったので、良い人なんだなぁと思った。
やれやれだ。じゃあ気分を治すのに、もうひとっ風呂浴びようか。
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