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質疑応答

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学園長を先頭に、先生方がそれに続き会議室へと入っていく。

「さ、入りたまえ」

そうして先生方が席に着くと、一番扉寄りの先生がオレに声をかけた。ここへは生徒の入室が禁じられていたので、扉の前で待ってたんだ。

「失礼します」

ズラリと椅子に並んだ先生方から一斉に眼を向けられると、かなりの圧を感じる。でも魔力凝結魔石化法の行が成った今、それをやり遂げたという自信からそんな先生方とも胸を張って対峙することが出来た。

「では、グロウ。どういうことなのか説明したまえ」
「わかりました」

そうゲルーダ先生から促されると、ひとつ息をついてから一歩前に出る。

たしかに危険な行だったけど、無事に成功できた。そしてこの行を成功させれば、みんなも強くなれる。そうすれば魔物との戦いも、もっと楽になるはずだ。そんな思いから、声を張って説明をはじめた。

「はい。オレがこの一年続けていた行は、魔力凝結魔石化法というものです」

「な、待ちたまえッ!!」
「「「…ッ!?」」」

だがオレが説明を始めると、急に学園長がそれを止めた。

しかも驚いた拍子に、椅子から腰を浮かしてまでいる。そんな学園長の様子に、先生方もざわりとして眼を見合わせている。

「…ゴホン。ああ、悪いが先生方。この生徒とは私が直接話をしよう。あとでその結果は伝えるので、この件は私に任せてもらえないかね?」
「はぁ、学園長がそうおっしゃるのであれば…」

学園長の言に、先生方は従うよりほかはない。

なにせ学園長はエルフ。高い魔力と長い寿命を持ち、ひとりが蓄積できる知識の量だって人間では遠く及ばない。そんな存在だからこそ人間のための学園で、かつ貴族の子弟が多く通うにも関わらずエルフという存在が学園長をしているんだ。

「ではグロウくん、学園長室に」
「…わかりました」

オレは先生方に、ひどい誤解を受けてしまったメディナ先生には特にくわしく魔力凝結魔石化法のことを説明して、その誤解を解きたかった。でもその機会は学園長に奪われ、先生方の視線を背に受けながら会議室をあとにしたのだった。

…。

学園長室へ移動し執務机の椅子に身を落ち着けると、学園長は深く息を吐いた。こんな姿をみせる学園長は珍しい。いったいどうしたんだろう。

「ふぅ~~…。さて、グロウくん、キミは先ほど、魔力凝結魔石化法と口にしたね?」
「はい、その通りです学園長」

「まったく、その先は聞かなくても分かるよ…。キミは自分で魔物が持つような魔石を生み出そうと考えたんだろう?」
「え、では学園長は魔力凝結魔石化法をご存知なんですか!?」

学園長の口から魔力凝結魔石化法の根幹を明かされ、オレはひどく驚いた。でも驚いてから、ああやっぱりエルフくらいになるとそれくらいのことは普通に考え付くのか、と納得できた。

「なにをひとりで納得したような顔をしているんだい。これはたいへんな事なんだよ」
「それは…、いったいどういうことでしょう??」

「ふぅ…。キミが魔力凝結魔石化法と呼んでいるモノ。だがそれは、我々エルフがハイエルフへと進化する為の修行そのものだからだ…」
「え!そうだったんですか!?」

再び驚くオレに学園長は執務机に両肘をつくと、口元を手で覆うようにして続ける。

「そうだよ…。だからその修行を人の身でありながら為し遂げてしまったキミは、エルフの秘術中の秘術を知ってしまったことになる…」

そしてスゥっと細められオレに向けられたその眼差しは、もはや涼しげを通り越して寒気すら感じさせる。

「じゃあ、オレ…消されるんですか??」
「かもしれないね…」

悲報、エルフの秘術を知ったオレは、消されてしまうかもしれない。
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