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首の皮
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(はぁ…、またメディナ先生を怒らせちゃったな…)
それでも魔力圧縮はやめられない。
魔物と人との境界線を守る騎士たちの戦場は、過酷だ。時々村にいたオレに会いに来てくれたランベルトの同僚も、来るたびにその顔が変わってた。それを不思議に思って訊くと「ああ、アイツはやられた」って、それだけだ。
だからそんな戦場に放り込まれる未来が確定しているオレは、ぜったいに強くならなきゃならない。そしてその為の、魔力凝結魔石化法だ。これが成ればオレも魔物のように、呪文の詠唱もなく魔法が使えるはず。そして伝説に謳われる偉大な魔法使いや賢者並みの力を、この手に出来るはずなんだ。
と、メディナ先生の姿がすっかり見えなくなった後で、物陰からタオルを持った女の子が小走りに走り寄ってくる。
「グ、グロウくん、あのコレ、使って…」
「うん、ありがとうペリーネ」
差し出してくれたタオルを、ペリーネからありがたく受け取る。
彼女の名はペリーネ、姓は無い。オレと同じ平民の子だ。入学当初、周りが貴族ばかりで萎縮していた彼女をなにかの時に庇ったら、今もこうして優しくしてくれる。
「洗って返すよ」
「ううん、いいの。グロウくん、いろいろと、あんまり気にしないでね…」
彼女は頑張り屋なのか、成績はクラスでも中の上を維持している。対してオレは、筆記はなんとかなるものの実技の方は圧縮のせいでサッパリだ。
「あの…、グロウくんはなんで魔法を使わないの?」
「…事情があるんだ。話せるようになったら話すよ」
うん、常時魔力圧縮中でクラスメイト全員を毎日危険に晒してますとか、そんなこと絶対に言えない。
…。
なんて思ってたら、その日のうちに学園長に呼び出された。
「さて、グロウくんだったね。キミ、入学当初の成績はよかったのに、どうしたんだい?」
立派な学園長室の立派な机の向こうで、エルフの学園長が苦笑を漏らしている。その脇には、遂に堪忍袋の緒が切れてしまったらしいメディナ先生がツンとした表情で立っている。到頭話を、学園長まで持って行ってしまったようだ。
「…たしかに入学以降一度も魔法を使っていないのでは、進級どころか学園にいてもらう意義も、これでは薄いかもしれないね」
メディナ先生から渡されたらしい書類に目を通し、学園長は溜息をもらす。
エルフは人の社会のあちこちに根を張っていて、だいたいどこの組織でも上位には必ずエルフの存在がある。彼らは高い魔力と高い魔法技術で、人間の社会をイイ感じに支配しているといっていい連中だ。
でも種の交配には慎重で、決して人とは交わろうとはしないという。
「コホン、ご覧のようにみて頂いた通りです学園長。このグロウという生徒を進級させるのは、この学園の品位を大きく貶めるものに他ならないと私は愚考いたします」
うぅむ…。この一年という時間が、メディナ先生をすっかりオレの敵に変えてしまったようだ。
「そうか、じゃあグロウくん。キミは退学だね」
「待ってください学園長。せめて最後に試験を」
うん、いきなり退学は待ってほしい。そんな半端な状態でランベルトのとこに戻ったら、半殺しにされてしまう。いや、それこそ逆鱗に触れ半殺しでは済まないかもしれない。
「試験…?魔法を使えないキミにかい?」
「7日…。いえ、あと3日いただければ、頑張っていたことの成果が生まれます。それを見たうえで、進退の決定をおねがいします」
そうだ、一年頑張った魔力圧縮の成果か、最近は今までにはなかった感覚をしばしばカラダに覚える。だから、だからあと少しの時間さえあれば…。
「ふぅむ、おもしろいね。片方は何も努力しなかったと主張し、片方は懸命に努力したと言うのだね?」
「学園長!そんなのはいつものこと!言い逃れの戯言ですわッ!」
う~ん、たしかにね…。
カラダにあるすべての魔力を圧縮してると、ずっとそれに集中しなきゃならない。だから傍からは魔力を感じられず、ただボ~ッとしてたようにしか見えなかったかもしれない。
なにせ気を抜けないから満足に熟睡もできず、ここ一年マルローから習った瞑想でずっと凌いでたし。
「いいんじゃない、それでこの生徒の進退を決めても?良ければ彼の言が本当だったという証明になるし、悪ければ…まぁ他の生徒たちへのいい釘さしにはなるだろうしさ」
「はぁ…学園長がそうおっしゃるのでしたら」
おお、ということは即日退学ではなく、3日の猶予を貰えたという事か。
それでも魔力圧縮はやめられない。
魔物と人との境界線を守る騎士たちの戦場は、過酷だ。時々村にいたオレに会いに来てくれたランベルトの同僚も、来るたびにその顔が変わってた。それを不思議に思って訊くと「ああ、アイツはやられた」って、それだけだ。
だからそんな戦場に放り込まれる未来が確定しているオレは、ぜったいに強くならなきゃならない。そしてその為の、魔力凝結魔石化法だ。これが成ればオレも魔物のように、呪文の詠唱もなく魔法が使えるはず。そして伝説に謳われる偉大な魔法使いや賢者並みの力を、この手に出来るはずなんだ。
と、メディナ先生の姿がすっかり見えなくなった後で、物陰からタオルを持った女の子が小走りに走り寄ってくる。
「グ、グロウくん、あのコレ、使って…」
「うん、ありがとうペリーネ」
差し出してくれたタオルを、ペリーネからありがたく受け取る。
彼女の名はペリーネ、姓は無い。オレと同じ平民の子だ。入学当初、周りが貴族ばかりで萎縮していた彼女をなにかの時に庇ったら、今もこうして優しくしてくれる。
「洗って返すよ」
「ううん、いいの。グロウくん、いろいろと、あんまり気にしないでね…」
彼女は頑張り屋なのか、成績はクラスでも中の上を維持している。対してオレは、筆記はなんとかなるものの実技の方は圧縮のせいでサッパリだ。
「あの…、グロウくんはなんで魔法を使わないの?」
「…事情があるんだ。話せるようになったら話すよ」
うん、常時魔力圧縮中でクラスメイト全員を毎日危険に晒してますとか、そんなこと絶対に言えない。
…。
なんて思ってたら、その日のうちに学園長に呼び出された。
「さて、グロウくんだったね。キミ、入学当初の成績はよかったのに、どうしたんだい?」
立派な学園長室の立派な机の向こうで、エルフの学園長が苦笑を漏らしている。その脇には、遂に堪忍袋の緒が切れてしまったらしいメディナ先生がツンとした表情で立っている。到頭話を、学園長まで持って行ってしまったようだ。
「…たしかに入学以降一度も魔法を使っていないのでは、進級どころか学園にいてもらう意義も、これでは薄いかもしれないね」
メディナ先生から渡されたらしい書類に目を通し、学園長は溜息をもらす。
エルフは人の社会のあちこちに根を張っていて、だいたいどこの組織でも上位には必ずエルフの存在がある。彼らは高い魔力と高い魔法技術で、人間の社会をイイ感じに支配しているといっていい連中だ。
でも種の交配には慎重で、決して人とは交わろうとはしないという。
「コホン、ご覧のようにみて頂いた通りです学園長。このグロウという生徒を進級させるのは、この学園の品位を大きく貶めるものに他ならないと私は愚考いたします」
うぅむ…。この一年という時間が、メディナ先生をすっかりオレの敵に変えてしまったようだ。
「そうか、じゃあグロウくん。キミは退学だね」
「待ってください学園長。せめて最後に試験を」
うん、いきなり退学は待ってほしい。そんな半端な状態でランベルトのとこに戻ったら、半殺しにされてしまう。いや、それこそ逆鱗に触れ半殺しでは済まないかもしれない。
「試験…?魔法を使えないキミにかい?」
「7日…。いえ、あと3日いただければ、頑張っていたことの成果が生まれます。それを見たうえで、進退の決定をおねがいします」
そうだ、一年頑張った魔力圧縮の成果か、最近は今までにはなかった感覚をしばしばカラダに覚える。だから、だからあと少しの時間さえあれば…。
「ふぅむ、おもしろいね。片方は何も努力しなかったと主張し、片方は懸命に努力したと言うのだね?」
「学園長!そんなのはいつものこと!言い逃れの戯言ですわッ!」
う~ん、たしかにね…。
カラダにあるすべての魔力を圧縮してると、ずっとそれに集中しなきゃならない。だから傍からは魔力を感じられず、ただボ~ッとしてたようにしか見えなかったかもしれない。
なにせ気を抜けないから満足に熟睡もできず、ここ一年マルローから習った瞑想でずっと凌いでたし。
「いいんじゃない、それでこの生徒の進退を決めても?良ければ彼の言が本当だったという証明になるし、悪ければ…まぁ他の生徒たちへのいい釘さしにはなるだろうしさ」
「はぁ…学園長がそうおっしゃるのでしたら」
おお、ということは即日退学ではなく、3日の猶予を貰えたという事か。
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