俺の好きを信じてよ

あまき

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好きになるまで

体育祭(下)

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 体育祭は大いに盛り上がりを見せている。各色大きく点差が開くこともなくどの競技も接戦で、それがまた生徒たちの気持ちを沸かせていた。
 
 俺たち2年生男子の旗取りは結果、青組の隼人が身軽に登って旗を取って、総当たり戦のトップに立った。


「隼人かっこよかったねぇ~……って、春樹? どした?」
「うぇっ! あ、は、隼人ね、かっこよかったね!」
「……春樹、隼人見てなかったでしょ」


 同じチームの義人に話しかけられて肩がはねる。確かに隼人よりも見ていたのは対戦相手である倫也だったから、義人の指摘にうっかりドキッとしてしまう。


「そ、そんなこと! 倫也を見てたなんてことないから!」
「ふぅ~ん、王子を見てたんだ」
「え、あ、ち、ちがう! 見てない! 見てないからな!」
「ほんと? なんか顔赤いけど」
「あ、赤くないし、見てない! 赤くない!」
「ふぅ~ん、見てなかったんだ……だ、そうだよ? 春野くん」
「え」


 義人の言葉の意味が理解できず、けれど嫌な予感がして勢いよく顔を上げる。その先にはしょんぼり顔の倫也と何故か笑ってる義人がいて、俺の体は硬直してしまった。


「春樹、俺のこと見てなかったの?」
「み、見てた! 見てたよ! か、かっこよかった!」
「ほんと? 負けちゃったけど」
「ま、負けたとか関係ないよ! 隼人が身軽なのは知ってたけど、倫也も足早いんだなぁとか。そ、それに」
「それに?」
「っ、い、言わない!」
「え? なに、それどういう「春野ー!」……っあ、ごめん、呼ばれたみたい。行くね」
「え、あ……うん」


 俺の帽子をぽんっと叩いてから行ってしまった倫也を、目で追うこともできないたま俺はまた下を向いていた。


「春樹、言い淀んでどうしたの。王子行ったよ」
「し、仕方ないだろ? 呼ばれたんだから…」
「でも言いたいことあったんじゃ?」
「そ、それは」


 倫也がかっこよかったのは事実だ。でも……


「上登ってく時にちらっと見えた倫也の腹、割れてたなぁとか思ったら……なんかもう、だめだった」
「ふはっ!」
「わ、笑うなよ!」


 思いっきり吹き出して笑う義人に思わず怒鳴った。目尻に涙をためている義人は、腹を抑えながら話す。


「それさぁ、言ってあげたらいいのに。王子に」
「や、やだよ! だって」
「だって?」
「み、ミーハーなファンみたいじゃん」
「でも、喜ぶと思うよ?」
「じ、じゃあ後で言う」
「でも、女子たちが先に言っちゃうかもよ?」
「え」
「いいの? 先取りされちゃって。王子も先にそっちで喜んじゃうかもよ」
「え、あ、そ、それは……っお、俺! 言ってくる!」
「いってらっしゃ~い」


 それはなんだか悔しいかもと思った俺は、急いで少し距離のあいた倫也に向かって走り出した。









◇◇◇


「おーい義人ー春樹ー! 見てたか、俺の有志……って、あれ、義人だけ? 春樹は?」
「俺が楽しいから、ケツ叩いてやった」
「はぁケツ? 痛いじゃん! 義人ドSかよ!」
「隼人のオツムもそろそろなんとかしないとな」
「なんだよそれぇ! って、あれ? 春樹帰ってきたな……って、お前なんだよその腰に巻いてる長袖ジャージ! 春樹これから選抜リレーだろ…………は、なに? 巻いとけって言われた? 王子に? なんで…………え? 腹が見えるといけないから? って、お前何言ってんの。腹がなんだってんだよ。なぁ義人……って、義人お前はなんでそんなに笑ってるんだよ。そんでなんで春樹は顔赤くしてんだよ! なんだよお前ら! 俺を置いて! 俺にも教えろー!!」



 結局春樹は、その後すべての競技をシャツインして出ることになり、それを爆笑しながら見る義人と、「ダッセー!」と叫ぶ隼人と、にこやかに見つめる倫也がいましたとさ。めでたしめでたし。









体育祭編、完

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