3 / 11
【01】 薔薇の誘い
*003* 視線の根源
しおりを挟む
透けるように白い肌に何処か異国情緒を漂わせるような麗しい容姿。
六堂 絢斗。
年齢は、三十代半ば…というところだろう。
彼は、海外事業部の部長としてその手腕を発揮していたが、特にヨーロッパのインテリアについては、相当な目利きぶりで、彼の右に出る者は居ないだろうと言われている。
余りの美しさに彼に憧れている社員は多いが、クールさ故か自ら近付く猛者は居なかった。
ただ、崇拝の象徴として見つめているだけだった。
それだけの美しさを持ちながら、絢斗の周りには浮ついた噂話は無かった。
社外にはステディな相手が居るのかと思いきや、そんなそぶりも全く無いと言って良いだろう。
そんな、夜遊びとは無縁な絢斗がこんな時間にバラの庭園を歩いているなんてミスマッチな感じがする。
周りに人が居ない事を良い事に、ここ最近、特に気になっている彼の視線の意味について確認してみる事にした。
「こんな遅い時間に、こんな処でお会いするなんて…何、なさっているんですか?」
「……。」
絢斗は、突然現れたセレナに驚く事も無く、ただ、黙ってそこに立っていた。
そして、暫く沈黙のまま佇んでいたが、絢斗は何も言わずにクルリと振り返り、また歩き出した。
セレナが折角話し掛けたというのに、何とも失礼な話である。
何時ものスーツ姿とは違い、ラフなシャツの上にボタンを留めずに羽織ったカーディガンが、風に靡いている様子を見つめていたが、ハッと自分が質問をしたまま置いてけぼりになっている事に気付き、慌てて後を追った。
奥まったところに、ベンチがあり、ゆったりとそのベンチに腰掛けている絢斗が居た。
リラックスしている様子は、まるでリビングで寛いでいるようにさえ見えた。
「ちょっ…質問したのに、ムシは無いでしょ!!」
相手は部長、セレナは社長令嬢とは言え平社員…話し掛けるには、随分と礼儀知らずな口調だった。
そんな事を気にする様子も無く、絢斗は、傍にあるバラを自分の傍へと引き寄せ、そっと口付けている。
「何か言う事は無い訳?」
セレナが訪ねているのに、視線さえも向けてはくれない。
「何か…とは?」
何かあるから、何時も自分の方を見ているのでは無いのか?
セレナの方が、質問したかったのに、質問で返されて、どのように対処するべきなのか考えあぐねてしまった。
普段はクールに見えるその形の良い瞳と、ふとしたタイミングで見る度に目が合う。
最初は気のせいだと思っていたその視線も、段々と目が合う回数が増え、日増しにその視線は強くなっているように思う。
六堂 絢斗。
年齢は、三十代半ば…というところだろう。
彼は、海外事業部の部長としてその手腕を発揮していたが、特にヨーロッパのインテリアについては、相当な目利きぶりで、彼の右に出る者は居ないだろうと言われている。
余りの美しさに彼に憧れている社員は多いが、クールさ故か自ら近付く猛者は居なかった。
ただ、崇拝の象徴として見つめているだけだった。
それだけの美しさを持ちながら、絢斗の周りには浮ついた噂話は無かった。
社外にはステディな相手が居るのかと思いきや、そんなそぶりも全く無いと言って良いだろう。
そんな、夜遊びとは無縁な絢斗がこんな時間にバラの庭園を歩いているなんてミスマッチな感じがする。
周りに人が居ない事を良い事に、ここ最近、特に気になっている彼の視線の意味について確認してみる事にした。
「こんな遅い時間に、こんな処でお会いするなんて…何、なさっているんですか?」
「……。」
絢斗は、突然現れたセレナに驚く事も無く、ただ、黙ってそこに立っていた。
そして、暫く沈黙のまま佇んでいたが、絢斗は何も言わずにクルリと振り返り、また歩き出した。
セレナが折角話し掛けたというのに、何とも失礼な話である。
何時ものスーツ姿とは違い、ラフなシャツの上にボタンを留めずに羽織ったカーディガンが、風に靡いている様子を見つめていたが、ハッと自分が質問をしたまま置いてけぼりになっている事に気付き、慌てて後を追った。
奥まったところに、ベンチがあり、ゆったりとそのベンチに腰掛けている絢斗が居た。
リラックスしている様子は、まるでリビングで寛いでいるようにさえ見えた。
「ちょっ…質問したのに、ムシは無いでしょ!!」
相手は部長、セレナは社長令嬢とは言え平社員…話し掛けるには、随分と礼儀知らずな口調だった。
そんな事を気にする様子も無く、絢斗は、傍にあるバラを自分の傍へと引き寄せ、そっと口付けている。
「何か言う事は無い訳?」
セレナが訪ねているのに、視線さえも向けてはくれない。
「何か…とは?」
何かあるから、何時も自分の方を見ているのでは無いのか?
セレナの方が、質問したかったのに、質問で返されて、どのように対処するべきなのか考えあぐねてしまった。
普段はクールに見えるその形の良い瞳と、ふとしたタイミングで見る度に目が合う。
最初は気のせいだと思っていたその視線も、段々と目が合う回数が増え、日増しにその視線は強くなっているように思う。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる