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【07】 撃破
*067* 思い出
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ヨハンナは、悠李と兄の従姉妹にあたる王女だった。
まだ、今よりももっと不安定だった国の情勢の中で育った彼女は、常に危険と隣り合わせの日々を過ごしていた。
悠李よりも少しだけ年上の彼女は、何度かしか会っていない悠李にとても親切だった。
ヨハンナは、悠李を本当の妹のように可愛がってくれていたのだ。
だから、悠李も数回しか会った事が無くてもヨハンナの事が大好きだった。
王女の周りの人々は、ヨハンナと悠李の顔立ちが似ている事を微笑ましい様子で見ていた。
時々、メールでのやりとりをしていた二人は、再会の約束をしたが、それは、適わない約束となってしまった。
ヨハンナの命が奪われたのだ。
今の悠李よりもほんの少しだけ若い年齢で。
まるで、ヨハンナの人生を引き継いだように、ほぼ今の悠李の年齢で、その時は止められた。
そして、その時、悠李達家族の運命も変わってしまった。
この国の王には、娘が一人しか恵まれなかった為、跡継ぎが途絶えてしまったのだ。
国王から、悠李達家族に移住するように強く望まれたのだった。
父と母は、子供の立場から見てもとても仲が良い夫婦と言えた。
父は、自身の仕事があり、母の母国へと移住が出来ない状態にあった。
そして、母も父と離れるという選択をする事が出来ず、途方に暮れた。
その時の妥協案として、悠李と兄を引き渡すという話が出た。
子供二人を同時に失わせる事は出来ないと考えた兄は、単身で家族の下を離れる事を決断した。
悠李の日本での毎日も失わせない為にも…。
国王陛下の言葉から、長い時間、思いを馳せてしまったらしい。
悠李は、努めて明るい声で国王陛下に返事をした。
『そう言えば、お転婆だった私も、ようやくヨハンナの年齢に追い付きましたよ。エレガントさは相変わらず欠けていますけれど…。』
そう言って、悠李は茶目っ気たっぷりに笑った。
悠李のその言葉で、その場に居る人々の時間が再び動き出した。
『陛下、ユーリは相変わらず、じゃじゃ馬なようですよ。』
『そうか。トーマは、久々にユーリとゆっくり話せたのかな?』
『えぇ。お陰さまで。』
悠李が知っている兄とは違う、しっとりとした優美な笑顔で国王陛下の対応をしていた。
この兄の顔は、悠李の知らない兄の表情だった。
悠李は、少しだけ、兄と別々に歩み出した月日を感じでセンチメンタルな気持ちになった。
『トーマ、時間の許す限り、ゆっくりとユーリと語らうが良い。積もる話もあるだろうから。』
『ありがとうございます。』
この時も、兄はそつがなく対応した。
『大したものは用意出来ないが、家族だけで、ユーリの歓迎の晩餐を開こう。』
『ありがとうございます。』
悠李は、久しぶりのこの国の料理を思い出し、思わず期待に唾を呑み込んだ。
まだ、今よりももっと不安定だった国の情勢の中で育った彼女は、常に危険と隣り合わせの日々を過ごしていた。
悠李よりも少しだけ年上の彼女は、何度かしか会っていない悠李にとても親切だった。
ヨハンナは、悠李を本当の妹のように可愛がってくれていたのだ。
だから、悠李も数回しか会った事が無くてもヨハンナの事が大好きだった。
王女の周りの人々は、ヨハンナと悠李の顔立ちが似ている事を微笑ましい様子で見ていた。
時々、メールでのやりとりをしていた二人は、再会の約束をしたが、それは、適わない約束となってしまった。
ヨハンナの命が奪われたのだ。
今の悠李よりもほんの少しだけ若い年齢で。
まるで、ヨハンナの人生を引き継いだように、ほぼ今の悠李の年齢で、その時は止められた。
そして、その時、悠李達家族の運命も変わってしまった。
この国の王には、娘が一人しか恵まれなかった為、跡継ぎが途絶えてしまったのだ。
国王から、悠李達家族に移住するように強く望まれたのだった。
父と母は、子供の立場から見てもとても仲が良い夫婦と言えた。
父は、自身の仕事があり、母の母国へと移住が出来ない状態にあった。
そして、母も父と離れるという選択をする事が出来ず、途方に暮れた。
その時の妥協案として、悠李と兄を引き渡すという話が出た。
子供二人を同時に失わせる事は出来ないと考えた兄は、単身で家族の下を離れる事を決断した。
悠李の日本での毎日も失わせない為にも…。
国王陛下の言葉から、長い時間、思いを馳せてしまったらしい。
悠李は、努めて明るい声で国王陛下に返事をした。
『そう言えば、お転婆だった私も、ようやくヨハンナの年齢に追い付きましたよ。エレガントさは相変わらず欠けていますけれど…。』
そう言って、悠李は茶目っ気たっぷりに笑った。
悠李のその言葉で、その場に居る人々の時間が再び動き出した。
『陛下、ユーリは相変わらず、じゃじゃ馬なようですよ。』
『そうか。トーマは、久々にユーリとゆっくり話せたのかな?』
『えぇ。お陰さまで。』
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悠李は、少しだけ、兄と別々に歩み出した月日を感じでセンチメンタルな気持ちになった。
『トーマ、時間の許す限り、ゆっくりとユーリと語らうが良い。積もる話もあるだろうから。』
『ありがとうございます。』
この時も、兄はそつがなく対応した。
『大したものは用意出来ないが、家族だけで、ユーリの歓迎の晩餐を開こう。』
『ありがとうございます。』
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