婚約から始まる「恋」

観月 珠莉

文字の大きさ
上 下
70 / 75

*70* スウィートな時間 (☆)

しおりを挟む
あの日のように酩酊はしていないけれど、ほろ酔いで直嗣さんとお泊りの部屋に向かう。
振り返れば…直嗣さんは、あの日もお持ち帰りしようと思えば出来たのに、それをしなかったという事が判る。
そして、今、二人で、もっと幸せな未来へと歩もうとしている。

「直嗣さん、あの日の私はどんな感じだったの?」

私は、ホニャリと幸せ気分のまま、直嗣さんに尋ねる。
足取りはかなりご機嫌な感じだ。

「あの日のさくらは、本当にただの酔っ払いだったよ。」

そう言って、直嗣さんは思い出し笑いをしだした。

「それって…結構残念だったってコト?」
「う~ん、どうカナ?」

直嗣さんは、なおも笑い続ける。

「私、明日になった時に今日の事は覚えているかなぁ?」
「大丈夫だよ。絶対に忘れないようにしてあげるよ。」

そう言うと、直嗣さんは私にバード・キスをした。
!!
直嗣さん、ここ…まだ、廊下です!!

そうやって、二人でラブラブしながら部屋に向かい、到着した階は、前回お泊りした階よりもずっと高層階だった。

「さくら、どうぞ。」

直嗣さんは、扉を開けてエスコートしてくれる。

「お邪魔…します。」

中に入ると…スイート・ルームだった。

「直嗣さん…お泊りするには、豪華過ぎる気がするんだけれど?」
「いいの。今日は、俺とさくらの大切な記念日だから…ね。」

直嗣さんに甘く微笑まれた。
そして、左手を取り、薬指に輝く宝石と指にキスをする。
まるで、中世の騎士の誓いみたい…。
…そんな中、唐突に思い出してしまった!!

「あ、直嗣さん!!私、お母さんにお泊りするって言ってない!!」

そんなムードぶち壊しの私を見て、直嗣さんはいよいよゲラゲラとお腹を抱えて笑い出した。

「はぁ…何ともさくららしいっていうか…。母さんには、既に泊まる旨伝えてあるよ。安心して。」
「良かったぁ~…無断外泊しちゃうのかと思った…。」
「俺は無断外泊でも構わないんだけどね、まだ、さくらと結婚していないから、一応…ね。」

また、直嗣さんは私をキュッと抱きしめてキスをする。
今日の私たちは、溶けちゃいそうなくらいの甘さ。
私は、直嗣さんに手を引かれて、ソファへと導かれる。
ソファダイニングのところには、シャンパーニュとケーキとプチブーケ…そして、婚約祝いのメッセージが添えられていた。
それを目にした私は、今までの緊張が解けた安心感とようやく多くの人々に直嗣さんの婚約者として大手を振っても良いんだという喜びでまた、涙腺が崩壊した。
直嗣さんは、私の頭を撫でながら、その涙を舐め取ってくれる。

「さくら、もう一度、二人だけでお祝いしよう?」

スイート・ルームはスウィートな空間になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

俺様御曹司に飼われました

馬村 はくあ
恋愛
新入社員の心海が、与えられた社宅に行くと先住民が!? 「俺に飼われてみる?」 自分の家だと言い張る先住民に出された条件は、カノジョになること。 しぶしぶ受け入れてみるけど、俺様だけど優しいそんな彼にいつしか惹かれていって……

大富豪とシンデレラ ~おひとりさま生活を満喫していたら、大企業の御曹司に拾われました。でも、溺愛されすぎて、毎日ドキドキしています~

一ノ瀬 彩音
恋愛
ある日、残業続きで疲れ切っていた美羽は電車の中で倒れてしまう。 しかし、そこへ現れたイケメンが、なんと彼女が勤めている会社の親会社の御曹司だった! お金持ちで優しくて、仕事もできて、そのうえ、超美形! そんな彼にいきなりお持ち帰りされ、強引にキスされた美羽は そのまま彼のマンションへと連れていかれてしまい、 もう、彼なしでは生きていけない身体にされてしまい――!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

婚約者の浮気現場を目撃したら、魔力が暴走した結果……

四馬㋟
恋愛
保有する膨大な魔力を制御できず、他者を傷つけまいと孤立する公爵家令嬢のエメリン。ある時、婚約者が自分以外の女性と抱き合う光景を目撃してしまい、ショックのあまり魔力を暴走させてしまう。

引きこもり少女、御子になる~お世話係は過保護な王子様~

浅海 景
恋愛
オッドアイで生まれた透花は家族から厄介者扱いをされて引きこもりの生活を送っていた。ある日、双子の姉に突き飛ばされて頭を強打するが、目を覚ましたのは見覚えのない場所だった。ハウゼンヒルト神聖国の王子であるフィルから、世界を救う御子(みこ)だと告げられた透花は自分には無理だと否定するが、御子であるかどうかを判断するために教育を受けることに。 御子至上主義なフィルは透花を大切にしてくれるが、自分が御子だと信じていない透花はフィルの優しさは一時的なものだと自分に言い聞かせる。 「きっといつかはこの人もまた自分に嫌悪し離れていくのだから」 自己肯定感ゼロの少女が過保護な王子や人との関わりによって、徐々に自分を取り戻す物語。

完 1週間だけ、わたしの彼氏になっていただけませんか? (番外編更新済み!!)

水鳥楓椛
恋愛
 双葉結菜はある日、父に1週間後に顔も名前も知らぬ相手と結婚をするように命じられる。  周辺では有名な名家の生まれである結菜には、一切の選択の余地などない。  だからこそ、結菜は『恋がしたい』という願いを叶えるために、遊び男と名高い月城陽翔に『1週間だけ彼氏になってくれないか』と告白する。  恋人初日から初めてのことに溢れている世界に、結菜は凍え切っていた心を溶かし始める。  けれど、陽翔の行動に少しずつ違和感を感じ始めて………?  結菜の実家で明かされるは悲しき事実。  最後に決めた2人の選択とは………。

【R18】婚約破棄予定の御曹司に溺愛調教される無自覚ドSな同居生活でお試し中です

弓はあと
恋愛
【本編完結しました ※今後は不定期でその後のお話などを更新していく予定です】 亡き父が大切にしてきた病院を守るため、継母が決めた相手とのお見合いを強いられた私――宮ノ内花。 その相手はお金に物を言わせる中年男性……だったはずが、現れたのはイケメン御曹司!? 「いずれ婚約破棄予定だから、安心して僕についてきてください。」 爽やかに言うけれど、あなたの狙いは何ですか? 望まない結婚からの救済と交換に依頼されたのは、彼の会社で扱う新商品のモニター。 助けてくれた彼のために、新商品をお試しする同居生活が始まりました。 本当の婚約者でもないのに私を溺愛してくる彼との日々は、ドキドキの連続。 紳士な彼ですが、二人でいると……ん? この膨らみは男性の……?? 「ごめんなさい……」真っ赤な顔で恥ずかしがる残念イケメンさん。 そのギャップは可愛すぎて反則です。 ※シリアス展開ほぼなし、溺愛&甘々なハッピーエンドを目指しています。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

処理中です...