婚約から始まる「恋」

観月 珠莉

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*65* 報告

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「さくら、家元に連絡してくれ。」

直嗣さんは、唐突に言う。
私は首を傾げた。

「もし、お時間を頂けるようならば、これから今回の一連の件についての報告とお詫びに行く。」

私は、説明を受けて、ママに連絡する事にした。
電話をすると、直ぐにママが出る。

『さくらちゃん、久しぶりね。元気だった~?』
「うん、元気。ママは?」
『私は何時でも元気よぉ~う♪』

ママは、何時ものようにカラカラと笑っている。

「あのね、ママ。今日、これから直嗣さんと行っても良いかなぁ?」
『良いけどぉ~?』

ママから、言質は取った。
…けれど、何時もよりは機嫌は悪くなっちゃった感じ。

「それじゃあ、一時間後くらいに行くね。久しぶりにママの炊き込みご飯が食べたいなぁ。」
『う~ん、ちょっと時間が無い感じだけど…さくらちゃんのお願いだし、やってみるわ♪』

ママの声が少しだけ浮上したので、取り敢えず良しとする。
電話を切って、これから向かっても大丈夫な旨を直嗣さんに伝える。
心の中で、今日はフォローが必要だろうな…と思いながら。
そうこうしながら、車は本宅に着いた。
家政婦の藤川さんに迎えられ、客間へと通される。
程なくして、ママが入室した。

「直嗣君、お久しぶりね。お顔を見る事が出来たという事は、解決したと思って良いのかしら?」

ママは、直球で直嗣さんに質問をぶつける。

「はい。まだ…」

私は、直嗣さんが事の次第を全て説明しようとしていると察知し、すかさず割って入った。

「ママ、何だか本当に大きな財閥とのお見合い話だったみたいで、六代目当主のお顔も潰さない為に色々と宝生院家の七代目当主もお母さんも骨を折ってくれたみたい。」
「そうなの?」

ママは、私に向かって質問する。

「うん。大きなところ同士のお話だったものだから、無碍にも出来ないでしょ?」

直嗣さんが口を挿もうとしたけれど、私は、直嗣さんの手を机の下でギュッと握り、余計な事は言わないように意思表示した。

「直嗣さんも、六代目当主の下へお話に行ってくれたみたいで、ようやく落ち着いたのよ。」

私は、直嗣さんを見ながら頷いた。
直嗣さんにも何とか、意思が伝わったらしく、黙っている。

「そう。それでは、直嗣君、ようやく婚約披露パーティーのお話、進められるのね?」
「ご迷惑をお掛け致しましたが、婚約披露パーティーの準備を始めたいと思っています。」

直嗣さんは、ママに頭を下げながらそう言った。
まだ、佐山のご令嬢との話も解決していないのに、そんな事言って、大丈夫なのかしら?
…これ以上ママの機嫌を損ねない為に、今は、要らない事を言うのは控えてみた。
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