神の居ぬ間に…。

観月 珠莉

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*18* 魔法の世界

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六日目の朝を迎えた。
今日の朝もリュクレールの方が食堂に早く着く。
ここ数日間、ブランと話せるように食堂の隅に席を取り、その時間を待つ。
彼女が早い時もあれば、彼が早く着いている場合もある。
今日は、リュクレールがブランを待つ日だった。
朝食のパンは、パサパサしていて租借するのがなかなか困難だが、神のご加護がある大切な恵みの一つだ。
食事をしながら待つひとときは、とてもドキドキして聖女には不似合いな『初恋』の感覚に似ていた。

「おはようございます、聖女さま。」
「おはようございます、神官さま。」

今日も、毎朝のように挨拶を交わす。
ブランの顔を見ただけで、真っ赤に顔を染め、彼女の花園はジュン…と濡れそぼつ。

「あの…昨夜の事について、お話させて頂きたいのです。」

リュクレールは、ブランを引き留めたくて必死に話し掛ける。

「どうぞ。」
「あ…もしよろしければ、こちらの席にお掛けになりませんか?」

ブランが立ったままの様子を見て、横の席を勧めた。

「では、お言葉に甘えて失礼しますね。」

彼は、優雅に椅子を引き腰掛けた。
リュクレールは、その仕草の美しさに見惚れ、更に花園から蜜を零れさせる。
その湧き水は、椅子に水溜りを作りそうな程に溢れさせていた。

「私は…『闇』に取り入られてしまったのかもしれません…こんなに神官さまに『浄化』して頂いているのに、夜になると『闇』のエネルギーに包み込まれてしまうのです。」
「『闇』のエネルギーに?」
「はい。そして、それが…とても心地良く感じてしまうのです。『光』の神殿に仕えているいる身でありながら…。」

リュクレールは、自嘲の笑みを浮かべる。

「『闇』は、そんなに悪い物ではありませんよ。」
「えっ?」
「聖女さまが、『闇』を知らないだけかもしれません。神官の私がこんな事を言うのは矛盾しているでしょうか?」
「いいえ…私では解らないような深い学びをしていらっしゃる神官さまの言葉ですから。」
「聖女さまは、この世界にどのような魔法が存在するかはご存じですか?」
「はい。『火』・『水』・『風』・『土』の魔法があり、その中心に『光』の魔法があると認識しています。」

リュクレールは、自分の知っている魔法の世界について答える。
そう…それは、一般的に知れ渡っている魔法の知識だ。
彼女が言っている事は、間違えている訳では無い。

「では、昨夜感じたという『闇』のエネルギーは何だと思いますか?」
「……わかりません。…悪魔…等のエネルギーでしょうか?」
「悪魔…ね。」

ブランは、リュクレールに見えないように意味深に笑った。

「聖女さま、私達に残された夜は二夜です。今夜はその『闇』のエネルギーについて一緒に確認してみましょう。」

リュクレールは、彼と過ごす『浄化』の時間が限りある事を、その時初めて認識したのだった。
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