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それいけ学園編
◆9.フェルセス学園に入学したのだが 前編(ミィ視点)
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ここから二巻です。
********************************************
私は、ソシルノフ家の嫡流の長男にして時期伯爵家当主のミィ=ソシルノフである。
ソシルノフ家はこのエイズーム王国の建国の折から王家に忠誠を誓い、『東の魔の森』という辺境の防備を代々担う、誇り高くも由緒ある高貴な家系なのである。
その素晴らしい家の次期当主であるこの私、ミィ=ソシルノフがこのたび何と栄えあるエイズーム王立フェルセス学園に入学することとなった。まあ寮が平民と同じになってしまったのはちょっと偉い私からするとそれは区別がつかない事態だと少しばかり憤慨したが、高貴な身分の者は声を荒げてはならないのである。相手に気を使わせてこそ貴族なのだ!
だから我慢してやったぞ。
どうだ! はーはっは! すごいだろう!
……上に立つ偉い貴族というのはこんな感じであろうか、父上。私はちょっと不安になりながら領地を発つ際の父上からの御言葉を思い出した。
『私達は、平民ではない。彼らを支配する領主なのだ――――それを忘れるな』
うむ、確かにそう言われたはずである。何か他におっしゃっていたような気もするが、大丈夫であろう。私のお父上はすごい。祖父はとんだクソジジィなのだが、 父上は領地にゼンセイ?とやらをしいて民を素晴らしく当地しているのだ。それゆえに祖父の代で徹底的に落ちた王家からの信用も回復し、今では国王陛下に重きを置かれる存在にまでなっているらしい。
ああ、父上って素晴らしい。
私は尊敬する父上から学園入学に当たってわざわざかけられた言葉をきちんと受け止め、実行しようと意気込んでいた。
入学式なる式典が終わり、上級生の導きにより教室についた私は、教室に入るなり少々あせる事態となってしまった。何やら銀髪の天使のような少年がてきとうな席に座ったのを見てか皆がどんどん席についていくのだ。やたら可愛らしい容姿だからと私は容赦しないぞ! 父上の御言葉に従わなくてはならないからな! なぜ平民の後に続いてマネをするなんてことができようか。
しかし、黒板の方をみやると『自由席』と書かれていた。なんだ、別に奴が勝手に座りだしたわけではないのだな。学園の規則ならば従おう。貴族は規則というのに厳しくなくてはならないからな。
私は隅の席に足を組んで座った。隣近所に座るようなおろかな平民がいなくて安心したぞ。……さ、淋しいと思ってなどいない。私はふんと鼻を鳴らして、黒板の方をじっと見つめることとした。そういえば家に来ていた老年の家庭教師も黒板を使っていたな。これも初代国王陛下の開発された品である。やはりエイズーム初代国王陛下は偉大だな。
そんなことをかんがえているうちに、勢いよく教室前方の扉が開き、大柄な男が入ってきた。私の領地は辺境で魔の森に近い、騎士家系なのであのくらいの筋肉男など溢れかえっているが、教師という職業にあの筋肉は必要なのだろうか。家に仕えていた学者や文官は大体ひょろりとしていたものだがな。
「おーう! みんな、揃ったか! 皆、しっかり席についているようで何よりだ」
筋肉男が楽しそうに教室を見回した。しかしやたら声が大きい。そのように大きな声を出さずとも、この教室に騒いでいる者はいないし、そう広い教室ではない。じゅうぶんに聞こえると思うのだがな。
「よーし、じゃあ今日は、自己紹介すんぞ!」
筋肉男はそう叫ぶとまたニヤリと笑った。何やらニヤニヤしながら力んでいる。
「まずはじめに……オレの名は、サルーダ!」
そして男がムン、と筋肉を強張らせた瞬間であった。私は驚いて目を見開いてしまった。男の言った『サルーダ』という文字の形をした炎が空中に現れたのだ!
「見ての通り、属性は火。炎の低学園教師、お前らの担任だ!」
男の言葉からするとあの炎の文字は男の魔法によるものだったらしい。父上には魔力をあそこまで細かく動かすのは大変だと聞き及んだが、やはり王都の王立学園。その名は伊達じゃないらしいな。
「じゃ、今日はこれにて終了。明日は身体計測がある、寮生の奴らも慣れないだろうが寝不足で寝坊だけはすんなよ」
男が何やら叫んでいるが、私ははじめて見る繊細な魔力操作の技術に感動してそれどころではなかった。
私もあのような魔法が使えるようになるだろうか。父上のあとを継ぎ、ますます領を発展に導き、魔獣をもおそれぬすばらしい領主になり陛下からの覚えもめでたいような騎士になれるだろうか。そして平民どもを飢えさせずやつらの笑顔をつくることができるようになるのだろうか。
そんなことを考えて固まっていたのが悪かった。
気が付くと教室にはひとっこひとりいなくなっていた。た、たいへんだ!
私は大役を任されていたというのに、これでは遅れてしまう!
……いや、大丈夫だ。英雄は遅れて登場する、という初代国王エイズーム=テラ=オーィオ陛下の格言があるからな。
私はやはり寮でも平民どもをまとめる支配者として期待をされているようで、なんと寮の扉を新入生としてははじめて開ける、『開扉係』という役目に選ばれたのである! 扉には魔法で鍵がかけられている為、あける合言葉を知らなくては開けられないのだ。当然、新入生が知っているはずもないので、このような係がある。合言葉は『きおろ』とかいう金髪の男に教えてもらった。何でも寮長をやっているらしい。
栄誉なことだ。これは是非父上に報告せねばなるまい。
慌てて配られた地図を広げて寮に向かうことにした。……しかし学園内は複雑な構造をしているな。まるで迷路だ。
迷ってはならないので、私は地図に寮までの道筋をはじめに線をひいた。この線とおりに歩いていけば大丈夫という寸法だ。これで迷わないはず。
◆
迷った。地図は嘘をついたのだ。なぜ地図上ではすぐとなりにある廊下に階段を二回も三回も昇ったり下ったりして向かわねばならないのだ! きちんとつながっておれ!
私はやっとの思いで寮に辿り着き、そして焦った。
なんということだ! すでにほかの寮生が到着しているではないか!
これでは私の役目が果たせない!
「貴様ら、何をやってる!」
慌てて走っていくと、教室についた際に真っ先に座りだした銀髪の少年と天パの少年がそこに立っているのが見えた。
しかも走っているうちに気が付く。なんということだ。
すでに扉が開いているではないか!
「今年の開扉係りは俺ではなかったのか!」
呆然と開いている扉を見る、そして気が付いた。この扉の前に立っていたのは平民のふたり。
立っている順番からして扉に近い方に立っている銀髪が扉を開けたのだろう。
おかしい! 私は寮長に貴族だからと優遇されたのではなかったのか!?
確かクラスの自己紹介で銀髪は苗字を名乗っていなかったな。平民ということだろう。その平民がこの私を差し置いて開扉係に選ばれたというのか!?
どういうことなのだ!
「しかも、貴様ら平民ではなかったか?」
こ、これではさっそく平民に遅れをとる事態となってしまう! 父上のご忠告を早速うらぎることになってしまうではないか。
常日ごろから父上は私は『貴族である自覚を持ち振舞いを考えろ』という。
つまり舐められてはいけないということだ。
「だいたい、私が平民と住むなどとそれだけで譲歩してやっているのに、何という奴らだ」
しかたがないので私は扉を開けられなかった代わりに、どれだけ私が素晴らしい貴族なのかということを教えることにした。
さすがに私の言葉で銀髪と天パは私が偉い貴族だということに気が付いたのか、恐れるように二人して縮こまっている。
しかし、何を思ったのか、銀髪が父上がなさるような深い溜息をはいた。
「はぁ……で、あなたは誰なんです。私たちが何か悪いことをしてしまいましたか?」
な、なんだと!? クラスの自己紹介できちんと口上を述べた上で家名もアピールしつつ最高にカッコイイ名乗りをしたはずであるのに、それを覚えていないだと!? クラスも私の名にざわめいていたぞ。
……わかった。この銀髪は三歩歩くと忘れるようは『鳥頭』というやつなのだな。あわれな奴だ。
貴族はあわれなやつには寛大に接してやる余裕が必要なのである。
「貴様随分と偉そうだな。私を知らないというのか。全くやれやれ。一度聞いたのに覚えられないとは何とも哀れだ。仕方ない、教えてやろう。私は、伯爵家次期当主のミィ=ソシルノフである」
寛大にもう一度自己紹介をしてやると、目の前の銀髪は一瞬驚いたような顔を見せたかと思うと、すぐに俯いた。みれば肩が震えている。ようやく自分のしでかしたことに気が付いたのだろう。
「おお、恐れをなしたか。知らなかったのだ、仕方ない、許してやろ……」
しかし、私のその心の広い言葉は再び顔を上げた銀髪によりさえぎられる。
「いや、すみませんね。……少し面白かったもので」
な、なんだと?
何がおもしろいというのだ。こいつ、頭がおかしいのか?
顔を上げた銀髪はこの私が一瞬目をみはるほど美しい笑顔を浮かべていた。
「確か、学園では生徒の身分は生徒、ということだったと思いますが」
そして余裕の表情でにこりと笑みを深めて、優雅にお辞儀をする。
その所作は洗練されており、とてもその場のおもいつきでされたものでないとわかる。
身にまとう自然な育ちのよさというか……そこまで考えて私ははじめて気が付いた。本当にこの目の前の少年は平民なのだろうか?
「わざわざ名乗ってくださいましたか。そういうことでしたら、私もきちんと名乗りましょう。私は公爵家次期当主ウィリアムス=ベリルです」
コウシャクケ……ジキトウシュ……!
私の意識はそこで止まった。
************************************************
ミィ=ソシルノフ。
ミソシルノフ。
味噌汁の麩。
名前で爆笑しそうになったウィル君でした。
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私は、ソシルノフ家の嫡流の長男にして時期伯爵家当主のミィ=ソシルノフである。
ソシルノフ家はこのエイズーム王国の建国の折から王家に忠誠を誓い、『東の魔の森』という辺境の防備を代々担う、誇り高くも由緒ある高貴な家系なのである。
その素晴らしい家の次期当主であるこの私、ミィ=ソシルノフがこのたび何と栄えあるエイズーム王立フェルセス学園に入学することとなった。まあ寮が平民と同じになってしまったのはちょっと偉い私からするとそれは区別がつかない事態だと少しばかり憤慨したが、高貴な身分の者は声を荒げてはならないのである。相手に気を使わせてこそ貴族なのだ!
だから我慢してやったぞ。
どうだ! はーはっは! すごいだろう!
……上に立つ偉い貴族というのはこんな感じであろうか、父上。私はちょっと不安になりながら領地を発つ際の父上からの御言葉を思い出した。
『私達は、平民ではない。彼らを支配する領主なのだ――――それを忘れるな』
うむ、確かにそう言われたはずである。何か他におっしゃっていたような気もするが、大丈夫であろう。私のお父上はすごい。祖父はとんだクソジジィなのだが、 父上は領地にゼンセイ?とやらをしいて民を素晴らしく当地しているのだ。それゆえに祖父の代で徹底的に落ちた王家からの信用も回復し、今では国王陛下に重きを置かれる存在にまでなっているらしい。
ああ、父上って素晴らしい。
私は尊敬する父上から学園入学に当たってわざわざかけられた言葉をきちんと受け止め、実行しようと意気込んでいた。
入学式なる式典が終わり、上級生の導きにより教室についた私は、教室に入るなり少々あせる事態となってしまった。何やら銀髪の天使のような少年がてきとうな席に座ったのを見てか皆がどんどん席についていくのだ。やたら可愛らしい容姿だからと私は容赦しないぞ! 父上の御言葉に従わなくてはならないからな! なぜ平民の後に続いてマネをするなんてことができようか。
しかし、黒板の方をみやると『自由席』と書かれていた。なんだ、別に奴が勝手に座りだしたわけではないのだな。学園の規則ならば従おう。貴族は規則というのに厳しくなくてはならないからな。
私は隅の席に足を組んで座った。隣近所に座るようなおろかな平民がいなくて安心したぞ。……さ、淋しいと思ってなどいない。私はふんと鼻を鳴らして、黒板の方をじっと見つめることとした。そういえば家に来ていた老年の家庭教師も黒板を使っていたな。これも初代国王陛下の開発された品である。やはりエイズーム初代国王陛下は偉大だな。
そんなことをかんがえているうちに、勢いよく教室前方の扉が開き、大柄な男が入ってきた。私の領地は辺境で魔の森に近い、騎士家系なのであのくらいの筋肉男など溢れかえっているが、教師という職業にあの筋肉は必要なのだろうか。家に仕えていた学者や文官は大体ひょろりとしていたものだがな。
「おーう! みんな、揃ったか! 皆、しっかり席についているようで何よりだ」
筋肉男が楽しそうに教室を見回した。しかしやたら声が大きい。そのように大きな声を出さずとも、この教室に騒いでいる者はいないし、そう広い教室ではない。じゅうぶんに聞こえると思うのだがな。
「よーし、じゃあ今日は、自己紹介すんぞ!」
筋肉男はそう叫ぶとまたニヤリと笑った。何やらニヤニヤしながら力んでいる。
「まずはじめに……オレの名は、サルーダ!」
そして男がムン、と筋肉を強張らせた瞬間であった。私は驚いて目を見開いてしまった。男の言った『サルーダ』という文字の形をした炎が空中に現れたのだ!
「見ての通り、属性は火。炎の低学園教師、お前らの担任だ!」
男の言葉からするとあの炎の文字は男の魔法によるものだったらしい。父上には魔力をあそこまで細かく動かすのは大変だと聞き及んだが、やはり王都の王立学園。その名は伊達じゃないらしいな。
「じゃ、今日はこれにて終了。明日は身体計測がある、寮生の奴らも慣れないだろうが寝不足で寝坊だけはすんなよ」
男が何やら叫んでいるが、私ははじめて見る繊細な魔力操作の技術に感動してそれどころではなかった。
私もあのような魔法が使えるようになるだろうか。父上のあとを継ぎ、ますます領を発展に導き、魔獣をもおそれぬすばらしい領主になり陛下からの覚えもめでたいような騎士になれるだろうか。そして平民どもを飢えさせずやつらの笑顔をつくることができるようになるのだろうか。
そんなことを考えて固まっていたのが悪かった。
気が付くと教室にはひとっこひとりいなくなっていた。た、たいへんだ!
私は大役を任されていたというのに、これでは遅れてしまう!
……いや、大丈夫だ。英雄は遅れて登場する、という初代国王エイズーム=テラ=オーィオ陛下の格言があるからな。
私はやはり寮でも平民どもをまとめる支配者として期待をされているようで、なんと寮の扉を新入生としてははじめて開ける、『開扉係』という役目に選ばれたのである! 扉には魔法で鍵がかけられている為、あける合言葉を知らなくては開けられないのだ。当然、新入生が知っているはずもないので、このような係がある。合言葉は『きおろ』とかいう金髪の男に教えてもらった。何でも寮長をやっているらしい。
栄誉なことだ。これは是非父上に報告せねばなるまい。
慌てて配られた地図を広げて寮に向かうことにした。……しかし学園内は複雑な構造をしているな。まるで迷路だ。
迷ってはならないので、私は地図に寮までの道筋をはじめに線をひいた。この線とおりに歩いていけば大丈夫という寸法だ。これで迷わないはず。
◆
迷った。地図は嘘をついたのだ。なぜ地図上ではすぐとなりにある廊下に階段を二回も三回も昇ったり下ったりして向かわねばならないのだ! きちんとつながっておれ!
私はやっとの思いで寮に辿り着き、そして焦った。
なんということだ! すでにほかの寮生が到着しているではないか!
これでは私の役目が果たせない!
「貴様ら、何をやってる!」
慌てて走っていくと、教室についた際に真っ先に座りだした銀髪の少年と天パの少年がそこに立っているのが見えた。
しかも走っているうちに気が付く。なんということだ。
すでに扉が開いているではないか!
「今年の開扉係りは俺ではなかったのか!」
呆然と開いている扉を見る、そして気が付いた。この扉の前に立っていたのは平民のふたり。
立っている順番からして扉に近い方に立っている銀髪が扉を開けたのだろう。
おかしい! 私は寮長に貴族だからと優遇されたのではなかったのか!?
確かクラスの自己紹介で銀髪は苗字を名乗っていなかったな。平民ということだろう。その平民がこの私を差し置いて開扉係に選ばれたというのか!?
どういうことなのだ!
「しかも、貴様ら平民ではなかったか?」
こ、これではさっそく平民に遅れをとる事態となってしまう! 父上のご忠告を早速うらぎることになってしまうではないか。
常日ごろから父上は私は『貴族である自覚を持ち振舞いを考えろ』という。
つまり舐められてはいけないということだ。
「だいたい、私が平民と住むなどとそれだけで譲歩してやっているのに、何という奴らだ」
しかたがないので私は扉を開けられなかった代わりに、どれだけ私が素晴らしい貴族なのかということを教えることにした。
さすがに私の言葉で銀髪と天パは私が偉い貴族だということに気が付いたのか、恐れるように二人して縮こまっている。
しかし、何を思ったのか、銀髪が父上がなさるような深い溜息をはいた。
「はぁ……で、あなたは誰なんです。私たちが何か悪いことをしてしまいましたか?」
な、なんだと!? クラスの自己紹介できちんと口上を述べた上で家名もアピールしつつ最高にカッコイイ名乗りをしたはずであるのに、それを覚えていないだと!? クラスも私の名にざわめいていたぞ。
……わかった。この銀髪は三歩歩くと忘れるようは『鳥頭』というやつなのだな。あわれな奴だ。
貴族はあわれなやつには寛大に接してやる余裕が必要なのである。
「貴様随分と偉そうだな。私を知らないというのか。全くやれやれ。一度聞いたのに覚えられないとは何とも哀れだ。仕方ない、教えてやろう。私は、伯爵家次期当主のミィ=ソシルノフである」
寛大にもう一度自己紹介をしてやると、目の前の銀髪は一瞬驚いたような顔を見せたかと思うと、すぐに俯いた。みれば肩が震えている。ようやく自分のしでかしたことに気が付いたのだろう。
「おお、恐れをなしたか。知らなかったのだ、仕方ない、許してやろ……」
しかし、私のその心の広い言葉は再び顔を上げた銀髪によりさえぎられる。
「いや、すみませんね。……少し面白かったもので」
な、なんだと?
何がおもしろいというのだ。こいつ、頭がおかしいのか?
顔を上げた銀髪はこの私が一瞬目をみはるほど美しい笑顔を浮かべていた。
「確か、学園では生徒の身分は生徒、ということだったと思いますが」
そして余裕の表情でにこりと笑みを深めて、優雅にお辞儀をする。
その所作は洗練されており、とてもその場のおもいつきでされたものでないとわかる。
身にまとう自然な育ちのよさというか……そこまで考えて私ははじめて気が付いた。本当にこの目の前の少年は平民なのだろうか?
「わざわざ名乗ってくださいましたか。そういうことでしたら、私もきちんと名乗りましょう。私は公爵家次期当主ウィリアムス=ベリルです」
コウシャクケ……ジキトウシュ……!
私の意識はそこで止まった。
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ミィ=ソシルノフ。
ミソシルノフ。
味噌汁の麩。
名前で爆笑しそうになったウィル君でした。
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