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第2章 それぞれの身体を満喫する

14.男子、三日会わざれば

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14.男子、三日会わざれば

ユウから不良に絡まれたと苦情の電話があった。失敗をしたなぁと反省する。
確かにこれまで喧嘩とかとは無縁そうなユウには、あらかじめこんな可能性があるかもしれないとそれぐらいは伝えておくべきだったかもしれない。

幸い、ユウは無事だったみたいだけど、何かあったらユウに申し訳ない。さらには肉体的に被害に遭うのは自分の身体だし。
よくやったファンクラブのみんな。そして鈴木。
……なんか、ユウの話を聞いている限り鈴木がユウに惚れているような気がしないでもないで、ちょっと戻った時のことが怖いのだが……。鈴木、強く生きろよ……!

そんなことを考えながら私を不良扱いして疑うユウに身の潔白を証明したところ。

「あの、ハルさん。そろそろお互い記憶喪失の状態に慣れてきたし、新しい友人とかができても不自然じゃないと思うんだ。だから……」

ユウから言われて「確かに」と内心頷きながら、うんうんと首を振る。
なんたって、つい先日はじめて委員長以外の友人キリユキ君ができたからね。

「実際に会ってみませんか?」

ユウからのその提案に私は迷わず飛びついた。



いやぁ、ホントは入れ替わってすぐ会ってみたかったんだよなぁ。
だって、自分の身体を側(はた)から見る経験とかなかなかなくない?
私が作り上げた筋肉を万全のうちに見たかった。鑑賞したかった。
私はそうユウに訴えたかった。

でも、ユウから「お互い会っているときは誰かに見られた時に、記憶喪失って言う設定的に違和感が生まれるからまだやめておきましょう」と言われて、その理屈はわかるので感情には泣く泣く蓋をしてしぶしぶ納得していたのだ。
それが、彼からお許しが出たのだ。
飛びつくに決まっている。そんなわけで私たちは最寄りの駅の改札の前に集合することになった。

ユウの真面目な性格から、おそらくは10分前には絶対到着しているだろうなと思って私的にはすごく早めに家を出る。
また不良に絡まれたら大変だからね。

駅に到着してあたりを見渡す。時刻は9:50。
予想に反してユウーーもとい、3ヶ月前までは慣れ親しんでいた自分の身体を探すが見当たらなかった。
ユウなら早めにきていると思ったんだけどなぁ。駅に到着するまでの道で絡まれてるとかないよね……?
少し不安になって、周りをキョロキョロしているとバイブレーション。チャットアプリの通知がきていた。すぐさま開くとユウから

《もう到着してます》

とメッセージが入っている。……え? まったく姿が見えないけど?
改札口周りには、私の姿は見えない。じいさんとか、男子小学生ズとか、あとは隣に清楚系のめっちゃ麗しい感じの美少女なら立っているけど。私ではないし。
もしかして、私集合場所間違えた?
慌ててチャット履歴をたどるも、そこには最寄駅改札口集合と書いてある。この駅には、別の改札はないし……。
遮蔽物もないしなぁ……。

《私ももう着いてるよ》

そう送ってから首を傾げる。

《ほんとにユウきてる?》

だってホントに見当たらないし。そのチャットを追加で送った瞬間、隣の美少女がスマホ画面から顔を上げて首を傾げた。

「え、来てるけど……」

思わずと言った感じで呟かれた言葉に、バッと目を見開いて顔を見つめてしまう。
いまこのチャット送ったこのタイミングでこの言葉。

もしかしてだけど……。

まじまじと美少女の顔を観察する。
うん、全然雰囲気違うしもはや面影すらないレベルだけど、鼻の形とか唇の形とかは私の顔っぽい。

あまりジッと見つめてしまったせいか、美少女は照れ臭そうに顔を逸らしてしまったが。
なにその仕草。めっちゃかわええんすけど。
いや、眉がハの字になってるし、もしかしてこれは困ってる?
そうだよね。ユウさん的にも私による肉体改造計画によって自分の身体を認識できていないのかもしれない。
私はゴクリと息を呑み込んで美少女に話しかけた。

「あの、もしかして、ユウさん……?」
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