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第2章 それぞれの身体を満喫する
4.料理したい
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ハルさんの身体に入って、早3か月。女の子の身体にも慣れてきたような気がする。
学校から家までの道にも慣れて、放課後には兄ズの付き添いもやめてもらった。智樹さんがなぜか不満そうにしていたので朝は変わらず兄ズたちと登校している。
教室では鈴木さんやファンクラブの皆さんのサポートにより、快適に過ごせている。あまりの人に囲まれていてコミュ障的にはちょっと疲れることもあるが、皆俺を気遣ってくれているので何も言えないし、感謝するしかない。
昼休みの鈴木さんとの時間は俺の癒しとなっている。ハル様が部室を借りて、昼休みは籠っていたという気持ちもわかるよ……。
趣味もはかどっている。家に帰ってきたら、裁縫をしたり工作をしながら、部屋の掃除をしつつかわいい空間を作っている。マジ100均様様である。
メイクの研究も進み、ハルさんのお小遣いを使っていろいろ購入してしまった。あっちの方も俺のお小遣いを使ってプロテインやらヨガマットやら購入しているらしいのでお互い様だ。
互いの生活にも慣れ始め、友達と出かけたりしても不審には思われないんじゃないかと思う。そろそろ一度会わないかとチャットで話している。俺は自分の部屋のかわいいものBOXを回収したいし、ハルさんは自分の筋トレグッズを回収したいとのこと。部屋の片づけをした際に見つけた筋トレアイテムは箱にまとめてある。ごめん、ハルさん。貴女の筋肉はすっかり落ちてきていると思う……。
そんな順風満帆な生活の中、俺にはあるひとつの欲が湧いてきていた。
「料理したい……」
ハルさん母が完璧な主婦をしているので、放課後家に帰りつくときには大体下ごしらえが終わってしまっていて、手を出すところがあまりない。お弁当も早くから起きてつくってくれているし、唯一手伝えているのは朝食だが食パンを焼くかコーヒーを淹れるくらいしかしていない。
そんなわけで俺の料理したい欲がむくむくと湧き上がってきているのである。
料理は精神を統一してくれるし、おいしいご飯ができたときの達成感といったらない。最高の趣味なのだ。
そんなわけで俺は朝食の席で、パンをもぐもぐしながらハルさん母に話しかけた。
「お母さん、料理をしてみたいんだけど、明日の夜ご飯つくってみてもいい?」
明日は土曜日だ。久々の料理だし、知らないキッチンだから手間取ったりしてもゆったりと料理する時間がある。
「助かるし、いいけど、何を作る予定? 材料を買ってきとこうか?」
俺が夜ご飯の用意の手伝いをするたび驚いていたハルさん母もそろそろ慣れてきてくれたようす。特に驚くこともなく受け入れてくれた。
「何かつくる予定だった? 決まってなければ、中華でも作ろうかなと思ってた。青椒肉絲と小籠包。材料買ってなければ放課後にでもスーパーに寄ってくるよ」
「特につくるものはまだ決めてなかったよ。ちょうど今日買い出しに行く予定だったし、いいよ、お母さんが買ってくるよ」
「ありがとう! つくってみたい小籠包と青椒肉絲のレシピのURLを送るね。材料がなかったら買ってきてくれるとうれしいな」
この身体では初挑戦ということになるので、俺はお気に入りのサイトのレシピをその場でハルさん母にチャットで送った。
「ふーん、皮からつくれるのか」
「あ、蒸籠はあったよね?」
無論、キッチン偵察時に存在は確認済みだが。
「あるよ。シリコンスチーマー買ってからたまにしか使ってないけど」
「よかった」
現役じゃない可能性もあるからな。使おうってなっていざというときに壊れていたら困る。
「ではでは、お手数をおかけしますが、お買い物、よろしくお願いします」
「はい、まかされました」
頭をペコリと下げると、ハルさん母はいたずらに笑って胸をたたいた。フフと笑い合うと、俺は立ち上がった。そろそろ出発しないと遅刻してしまう。
「じゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃい」
この3か月でこの家にも結構慣れてきたなぁ。ハルさん母が話しやすい人ということもあるけど。俺はニコニコ顔のまま家を出た。
◆
そわそわしながら学校の時間を過ごし、そわそわしながらご飯を食べてお風呂に入って、ちょっと寝付けなかったりしながらもなんとか寝て、次の日がやってきた。
ずっとそわそわしながら朝ご飯と昼ご飯の手伝いをしたら、やってきたマイワンダフルタイム。
「ハルってばずっとそわそわしてるんだもん、そんなに楽しみだった?」
「うん、最近、Y〇UTUBEで料理動画みるのハマってて、楽しそうだったから。ずっとやってみたかったんだ」
そういうことにしておこう。本当はずっと前から料理は俺の心をうるわす趣味だけど。Y〇UTUBEの動画を見ていることは嘘じゃないし。AMSR料理動画とか大好き。二つの意味でよだれが出ちゃう。
興味津々のハルさん母に見守られながら、キッチンに立つ。エプロンを用意してくれていたので、遠慮なく身に着ける。白地に太めの青いストライプ模様の入った、麻っぽい素材の首掛けエプロンだ。かわいい。
「よいしょ」
まずは耐熱ガラスの小さいボウルを取り出して、小籠包の真骨頂、スープをつくるところからである。噛んだときにジュワーっと出てくるスープがなければ小籠包ではない。まあ、簡単なんだけどさ。
鶏ガラスープの素とゼラチンに、お湯をダバー。溶かして、放置しておく。粗熱が取れたら冷蔵庫でゼリー状に固めるのだ。
この間に別の耐熱ボウルに薄力粉と強力粉と砂糖と塩を入れてちょっとずつお湯を加え、混ぜていくのだ。まぜまぜしているとただぽろぽろになるだけなのである程度のところで、まとめるようにこねこねし始める。
硬さはよくある耳たぶよりちょっと硬めってやつである。ラップに包んで、寝かせておく。
「うん、粗熱は取れたね」
そんなこんなやっているうちに鶏ガラスープのゼリーの容器に手を当ててみれば温度が下がっていたので冷蔵庫に入れておく。
あとは中に入れる肉ダネ作りだね。――ダジャレではない。
豚引きとネギとショウガチューブ・にんにくチューブと、酒、しょうゆ、ごま油、塩コショウをボウルに投入してまぜまぜこねこね。
ラップをして、冷蔵庫に入れとこ。
次に、青椒肉絲。豚とピーマンとタケノコの水煮を細切りにしていく。酒としょうゆと鶏ガラスープの素とオイスターソースと塩と砂糖を全部小さいボウルで混ぜ合わせて、と。
細切りの子たちを炒めて、しんなりしてきたら調味料のボウルを突っ込む。片栗粉入れるレシピも多いけど、俺はない方が好きなのでなしで。
「ただいま、いい匂い……って、ハル!?」
「あ、智樹兄さん、おかえりなさい」
「智樹、おかえり」
友達と出かけていた智樹さんが帰ってきたようだ。うんうん、事前に聞いてたスケジュール通りだね。ちょうど青椒肉絲も出来上がった。
フライパンから大皿に載せかえた青椒肉絲をキッチンカウンターの上に置くと、見守ってくれていたハルさん母がテーブルに持って行ってくれる。その間に、鍋を取り出してお湯を沸かす。寝かしていた小籠包の皮のタイマーが鳴ったのでこれ幸いと、まな板に打ち粉をふって生地を切る。丸めた生地を伸ばして肉だねとスープゼリーを入れて、上をひねるようにして閉じる作業を開始。
すると智樹さんがキッチンに入ってきて、俺をまじまじと見る。そんなに見られるとやりづらい……。
「あの……?」
「ハル、どうしちゃったの!? お嫁さんじゃない! かわいい!!」
俺も、エプロン着てキッチンに立つハルさんはかわいいと思います! だよね! と叫びそうになったのをぐっとこらえて、智樹さんをにらみつける。
単純にそんな至近距離で見つめられると、恥ずかしいし、やりづらいので。
「もうすぐできるので、浩樹さんでも呼んできておいてください……」
「はーい」
ニコニコ顔の智樹さんは素直に離れてくれたので、一息つきながら蒸籠の中にキッチンペーパーを敷いて、小籠包を置いていく。湯も沸きあがったので、蒸籠を鍋に載せ10分弱。
「できた!」
「わー!」
ちらりとふたを開けると湯気とともにおいしそうに蒸しあがった小籠包が現れた。完璧な蒸され具合。ハルさん母も歓声を上げた。
美味しそう。
学校から家までの道にも慣れて、放課後には兄ズの付き添いもやめてもらった。智樹さんがなぜか不満そうにしていたので朝は変わらず兄ズたちと登校している。
教室では鈴木さんやファンクラブの皆さんのサポートにより、快適に過ごせている。あまりの人に囲まれていてコミュ障的にはちょっと疲れることもあるが、皆俺を気遣ってくれているので何も言えないし、感謝するしかない。
昼休みの鈴木さんとの時間は俺の癒しとなっている。ハル様が部室を借りて、昼休みは籠っていたという気持ちもわかるよ……。
趣味もはかどっている。家に帰ってきたら、裁縫をしたり工作をしながら、部屋の掃除をしつつかわいい空間を作っている。マジ100均様様である。
メイクの研究も進み、ハルさんのお小遣いを使っていろいろ購入してしまった。あっちの方も俺のお小遣いを使ってプロテインやらヨガマットやら購入しているらしいのでお互い様だ。
互いの生活にも慣れ始め、友達と出かけたりしても不審には思われないんじゃないかと思う。そろそろ一度会わないかとチャットで話している。俺は自分の部屋のかわいいものBOXを回収したいし、ハルさんは自分の筋トレグッズを回収したいとのこと。部屋の片づけをした際に見つけた筋トレアイテムは箱にまとめてある。ごめん、ハルさん。貴女の筋肉はすっかり落ちてきていると思う……。
そんな順風満帆な生活の中、俺にはあるひとつの欲が湧いてきていた。
「料理したい……」
ハルさん母が完璧な主婦をしているので、放課後家に帰りつくときには大体下ごしらえが終わってしまっていて、手を出すところがあまりない。お弁当も早くから起きてつくってくれているし、唯一手伝えているのは朝食だが食パンを焼くかコーヒーを淹れるくらいしかしていない。
そんなわけで俺の料理したい欲がむくむくと湧き上がってきているのである。
料理は精神を統一してくれるし、おいしいご飯ができたときの達成感といったらない。最高の趣味なのだ。
そんなわけで俺は朝食の席で、パンをもぐもぐしながらハルさん母に話しかけた。
「お母さん、料理をしてみたいんだけど、明日の夜ご飯つくってみてもいい?」
明日は土曜日だ。久々の料理だし、知らないキッチンだから手間取ったりしてもゆったりと料理する時間がある。
「助かるし、いいけど、何を作る予定? 材料を買ってきとこうか?」
俺が夜ご飯の用意の手伝いをするたび驚いていたハルさん母もそろそろ慣れてきてくれたようす。特に驚くこともなく受け入れてくれた。
「何かつくる予定だった? 決まってなければ、中華でも作ろうかなと思ってた。青椒肉絲と小籠包。材料買ってなければ放課後にでもスーパーに寄ってくるよ」
「特につくるものはまだ決めてなかったよ。ちょうど今日買い出しに行く予定だったし、いいよ、お母さんが買ってくるよ」
「ありがとう! つくってみたい小籠包と青椒肉絲のレシピのURLを送るね。材料がなかったら買ってきてくれるとうれしいな」
この身体では初挑戦ということになるので、俺はお気に入りのサイトのレシピをその場でハルさん母にチャットで送った。
「ふーん、皮からつくれるのか」
「あ、蒸籠はあったよね?」
無論、キッチン偵察時に存在は確認済みだが。
「あるよ。シリコンスチーマー買ってからたまにしか使ってないけど」
「よかった」
現役じゃない可能性もあるからな。使おうってなっていざというときに壊れていたら困る。
「ではでは、お手数をおかけしますが、お買い物、よろしくお願いします」
「はい、まかされました」
頭をペコリと下げると、ハルさん母はいたずらに笑って胸をたたいた。フフと笑い合うと、俺は立ち上がった。そろそろ出発しないと遅刻してしまう。
「じゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃい」
この3か月でこの家にも結構慣れてきたなぁ。ハルさん母が話しやすい人ということもあるけど。俺はニコニコ顔のまま家を出た。
◆
そわそわしながら学校の時間を過ごし、そわそわしながらご飯を食べてお風呂に入って、ちょっと寝付けなかったりしながらもなんとか寝て、次の日がやってきた。
ずっとそわそわしながら朝ご飯と昼ご飯の手伝いをしたら、やってきたマイワンダフルタイム。
「ハルってばずっとそわそわしてるんだもん、そんなに楽しみだった?」
「うん、最近、Y〇UTUBEで料理動画みるのハマってて、楽しそうだったから。ずっとやってみたかったんだ」
そういうことにしておこう。本当はずっと前から料理は俺の心をうるわす趣味だけど。Y〇UTUBEの動画を見ていることは嘘じゃないし。AMSR料理動画とか大好き。二つの意味でよだれが出ちゃう。
興味津々のハルさん母に見守られながら、キッチンに立つ。エプロンを用意してくれていたので、遠慮なく身に着ける。白地に太めの青いストライプ模様の入った、麻っぽい素材の首掛けエプロンだ。かわいい。
「よいしょ」
まずは耐熱ガラスの小さいボウルを取り出して、小籠包の真骨頂、スープをつくるところからである。噛んだときにジュワーっと出てくるスープがなければ小籠包ではない。まあ、簡単なんだけどさ。
鶏ガラスープの素とゼラチンに、お湯をダバー。溶かして、放置しておく。粗熱が取れたら冷蔵庫でゼリー状に固めるのだ。
この間に別の耐熱ボウルに薄力粉と強力粉と砂糖と塩を入れてちょっとずつお湯を加え、混ぜていくのだ。まぜまぜしているとただぽろぽろになるだけなのである程度のところで、まとめるようにこねこねし始める。
硬さはよくある耳たぶよりちょっと硬めってやつである。ラップに包んで、寝かせておく。
「うん、粗熱は取れたね」
そんなこんなやっているうちに鶏ガラスープのゼリーの容器に手を当ててみれば温度が下がっていたので冷蔵庫に入れておく。
あとは中に入れる肉ダネ作りだね。――ダジャレではない。
豚引きとネギとショウガチューブ・にんにくチューブと、酒、しょうゆ、ごま油、塩コショウをボウルに投入してまぜまぜこねこね。
ラップをして、冷蔵庫に入れとこ。
次に、青椒肉絲。豚とピーマンとタケノコの水煮を細切りにしていく。酒としょうゆと鶏ガラスープの素とオイスターソースと塩と砂糖を全部小さいボウルで混ぜ合わせて、と。
細切りの子たちを炒めて、しんなりしてきたら調味料のボウルを突っ込む。片栗粉入れるレシピも多いけど、俺はない方が好きなのでなしで。
「ただいま、いい匂い……って、ハル!?」
「あ、智樹兄さん、おかえりなさい」
「智樹、おかえり」
友達と出かけていた智樹さんが帰ってきたようだ。うんうん、事前に聞いてたスケジュール通りだね。ちょうど青椒肉絲も出来上がった。
フライパンから大皿に載せかえた青椒肉絲をキッチンカウンターの上に置くと、見守ってくれていたハルさん母がテーブルに持って行ってくれる。その間に、鍋を取り出してお湯を沸かす。寝かしていた小籠包の皮のタイマーが鳴ったのでこれ幸いと、まな板に打ち粉をふって生地を切る。丸めた生地を伸ばして肉だねとスープゼリーを入れて、上をひねるようにして閉じる作業を開始。
すると智樹さんがキッチンに入ってきて、俺をまじまじと見る。そんなに見られるとやりづらい……。
「あの……?」
「ハル、どうしちゃったの!? お嫁さんじゃない! かわいい!!」
俺も、エプロン着てキッチンに立つハルさんはかわいいと思います! だよね! と叫びそうになったのをぐっとこらえて、智樹さんをにらみつける。
単純にそんな至近距離で見つめられると、恥ずかしいし、やりづらいので。
「もうすぐできるので、浩樹さんでも呼んできておいてください……」
「はーい」
ニコニコ顔の智樹さんは素直に離れてくれたので、一息つきながら蒸籠の中にキッチンペーパーを敷いて、小籠包を置いていく。湯も沸きあがったので、蒸籠を鍋に載せ10分弱。
「できた!」
「わー!」
ちらりとふたを開けると湯気とともにおいしそうに蒸しあがった小籠包が現れた。完璧な蒸され具合。ハルさん母も歓声を上げた。
美味しそう。
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