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第2章 宝玉を追いかけていたら世界を救っていた

50.SFチックな機械の使い方

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 コンクリート製の床と壁に囲まれた、大量のよくわからない機械的なものが配置された部屋を見つけた俺たち。
 おそらく稼働していた時には、ランプや線状のライトが光っていたのだろう。そうなると、余計SFみを感じるな。

 俺もまさかこの世界でこんなにSFな建造物に出会うとは思わなくて驚いたわけだが、それ以上に呆然とするクレト様に驚く。いつも微笑を携えているようなお方なので、こんなに表情をあらわにしている姿を見るのははじめてだ。
 同じく、この部屋に驚いていたファナさんとアイレさんもクレト様のようすに気が付いたようで不思議そうにしている。

「クレト様……?」

 びっくりした表情のまま固まっているクレト様に思わず声をかけると、クレト様はびくりと肩をはねさせた。

「す、すみません、驚きまして……。ここは教会に伝わる神話に登場する『古代の国家』の文明を描写する章の部屋にそっくりでしたので」

 そんな細かな描写のある神話の類だったんだな。
 この世界の神話を読んだことがなかったが、そんな超古代文明的な内容が登場する内容なら読んでみたくなる。この世界の人的にそんなオタク的な興味の持ち方は不謹慎なのだろうか。

「言われてみれば確かに……」

 ファナさんと、アイレさんはあたりを見回して頷いている。
 そ、そうなんだ……。そんな一般的な感じなんだ……。
 さすがにこの年齢で神話を読んだことありませんと言うのは不審に思われるだろうと思って、俺はあいまいに相槌を打っておくことにした。

 しかし、宝玉の指し示す光に従ってたどり着いた空間に神話に登場する『古代の国家』の部屋があるなんて、ロマンに溢れすぎてはないだろうか。
 いかにも、冒険者が冒険しそうな文字が羅列していすぎではないだろうか。

 そう思い当たったのは俺だけではなかったらしく、志を同じくして旅を決心したファナさんも目を輝かせてフンスと鼻を鳴らしている。

「あの、たぶん、教会の方たちが後から調査に入ることになるとは思われるのですが、冒険者としてこんな機会を逃す手はないわけでして……」
「そうだな。そうだよな。ものを壊したりなどしないから、この部屋を探索していいだろう? な、クレト」

 俺たちは、クレト様に詰め寄って、この部屋の探索をゆすった。

「え、ええ、発見物は基本的に冒険者のものになるわけですしね。ただ、古代文明絡みとなると先に教会が調査に入るのは、はるか昔に封印されたという、『悪魔』の封印を誤って解除されては叶わないからというだけですし、ものに触れぬというのなら構わないでしょう」

 苦笑するクレト様のその言葉によって、俺たちは意気揚々と部屋の探索を始めるのであった。

 壁際にはデスクが配置されており、その上には顕微鏡のように見える魔道具らしきものや、パソコンのように見える箱状のものが置かれていた。
 天井には配線らしきものが巡らされている。
 ガラスの筒状のものが真ん中に配置された2mは超す機械類や何に使うかわからない四角い機械が部屋中に配置されており、それにより通路のようになっている。
 部屋に入って、左回りでそれらの物品を見ていく最中、興味本位で俺は『無限収納』にしまっていた宝玉を再び取り出した。
 するとどうだろう、宝玉の光はこの部屋の中心を指していることがわかった。
 機械でできた通路を通って、部屋の真ん中にたどり着くと、そこには4mはあるだろう巨大な扉があった。
 金属でできた扉の周りには、頑丈そうな金属の機械らしきものが取り付けられており、扉表面にはいくつもの文様が走っていた。

「いかにも、な感じですね」

 思わずそうつぶやくと、クレト様が若干顔を青ざめて頷いた。

「神話に出てくる『悪魔』を封じる亜空間につながる扉のようです」

 まさにそんな感じだよ。
 某青狸に登場するどこにでも行ける扉のように扉だけが部屋の中央に配置されているのだから。

 扉に近づいていくと、手の中に持っていた宝玉がプルプルと震えだした――と思ったら、強力な磁石に引き寄せられるように一瞬で手の中から抜けていき、扉に宝玉が向かっていって――ハマった。

「あ〝」

 やばい。
 扉の周りの機械のようなところにちょうど宝玉が入りそうな穴があり、そこにハマったのだ。
 完全にやらかした気がする。

 おそるおそるクレト様を見ると、びっくりするくらい顔を真っ白にしていた。扉の方から「ゴゥン!」を大きな音がしたので振り返ると扉の文様が宝玉に近い方から発光しだした。

「明らかにやばい感じがしますし、宝玉をとって逃げ……!」

 俺はそこまでしか言えなかった。なぜなら扉がひとりでに開き、俺たちは掃除機で吸われるホコリのように抵抗する間もなく、扉に吸い込まれてしまったのだから。
 やらかした。
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