77 / 77
その後
衝撃の事実
しおりを挟む
「……って、なにコレ!?」
読んでいた本を閉じて、親友の実弥が顔を真っ赤にしながらあたしに詰め寄る。
「まあまあ、落ち着いて」
「落ち着いてらんないわよっ!なんなの、コレは!?」
今読んでいた本を指差し、怒鳴った。
「何って……実弥と三ヶ谷さんが恋人になるまでを書いた小説?」
あたしは視線を逸らしながら実弥の質問に答えた。
「そーゆう事を聞いてるんじゃなくて!なんでそれを断りもなく小説になんかしてんのって聞いてんの!」
「うっ……それは……」
あたしは言葉に詰まった。
説明しよう!
あたし、佐山楓コト『佐藤 楓』は、恋愛小説家である。
この『猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~』は、幼馴染みである『藤森 実弥』が、喫茶店のマスター『三ヶ谷 伸一』さんと両想いになるまでを書いた、ノンフィクション小説である!
「だってぇ……話聞いてたら、小説にしたかったんだもん」
「だもん、じゃないわよ!怪しいと思ったのよね!逐一話を聞かせろってうるさかったし、私の話聞きながらやたらパソコンいじってたし!」
実弥が、まったくっ!と腕を組んで、プンスカ怒っている。
……こりゃあ許して貰えないかも。
「勝手に小説にした事は謝る。ごめん。でも、良いお話だな、皆に読んで貰いたいな、って思っちゃって……。ホントごめん……」
スン……と鼻をすすりなから謝った。
すると、はぁ……と溜め息を吐いた実弥が、
「……もう良いわよ。まあ、読んで面白かったし、嘘も書いてないし、良い話に纏まってるから、許す」
と言ってくれた。
「ありがとーっ!実弥大好きっ!」
あたしはしおらしい態度も忘れて、実弥に抱き付く。
「こらっ!……ったく」
スリスリと頬擦りするあたしに、ふふ、と笑った。
本人は気付いていないかもしれないけど、実弥はあたしに甘いんだ。
「……でも、実際の三ヶ谷さんはキス魔でもロールキャベツ男子でもないわよ」
「そこはホラ、読者の為に……ねぇ?」
だからあとがきに『少しばかり私の想像も混じってます』って書いたんじゃない。
「コレ、いつ発売されるの?」
本を手に取り、実弥が聞いた。
「えーっと、来週の水曜日?」
「ふーん……」
何かを考えているのか、本の表紙をじーっと見たまま固まった。
「ど…どうしたの?」
やっぱりまだ怒っているのかな?と恐る恐る尋ねると、そうじゃなかった。
「じゃあ、お祝いしますか」
「……え?」
意外な言葉に、あたしはキョトンとする。
「お・い・わ・い!一応ね!スランプ脱出した訳だし」
「実弥……」
勝手に三ヶ谷さんとの馴れ初めを小説なんかにして本当はもっと怒っても良いのに、あたしのスランプ脱出を喜んでくれるのか。
「ありがとう」
本当にいいヤツ。
「でも、水曜日はお店定休日でしょ?三ヶ谷さんとデートとかしなくて良いの?」
「うん。毎日お店で会ってるし、一日くらいヘーキ」
「そっか」
へへ。
なんかちょっと嬉しい。
「さーて、なに奢ってもらおっかな」
「え!?お祝いなのにあたしの奢りなの!?」
「あったり前でしょ?親友を売った罪は、重いわよ」
実弥が目を細め、口角を上げてニヤッと微笑む。
「……はい」
この時、多分あたしは一生実弥に頭が上がらないんだろうな、と悟った。
―おわり―
読んでいた本を閉じて、親友の実弥が顔を真っ赤にしながらあたしに詰め寄る。
「まあまあ、落ち着いて」
「落ち着いてらんないわよっ!なんなの、コレは!?」
今読んでいた本を指差し、怒鳴った。
「何って……実弥と三ヶ谷さんが恋人になるまでを書いた小説?」
あたしは視線を逸らしながら実弥の質問に答えた。
「そーゆう事を聞いてるんじゃなくて!なんでそれを断りもなく小説になんかしてんのって聞いてんの!」
「うっ……それは……」
あたしは言葉に詰まった。
説明しよう!
あたし、佐山楓コト『佐藤 楓』は、恋愛小説家である。
この『猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~』は、幼馴染みである『藤森 実弥』が、喫茶店のマスター『三ヶ谷 伸一』さんと両想いになるまでを書いた、ノンフィクション小説である!
「だってぇ……話聞いてたら、小説にしたかったんだもん」
「だもん、じゃないわよ!怪しいと思ったのよね!逐一話を聞かせろってうるさかったし、私の話聞きながらやたらパソコンいじってたし!」
実弥が、まったくっ!と腕を組んで、プンスカ怒っている。
……こりゃあ許して貰えないかも。
「勝手に小説にした事は謝る。ごめん。でも、良いお話だな、皆に読んで貰いたいな、って思っちゃって……。ホントごめん……」
スン……と鼻をすすりなから謝った。
すると、はぁ……と溜め息を吐いた実弥が、
「……もう良いわよ。まあ、読んで面白かったし、嘘も書いてないし、良い話に纏まってるから、許す」
と言ってくれた。
「ありがとーっ!実弥大好きっ!」
あたしはしおらしい態度も忘れて、実弥に抱き付く。
「こらっ!……ったく」
スリスリと頬擦りするあたしに、ふふ、と笑った。
本人は気付いていないかもしれないけど、実弥はあたしに甘いんだ。
「……でも、実際の三ヶ谷さんはキス魔でもロールキャベツ男子でもないわよ」
「そこはホラ、読者の為に……ねぇ?」
だからあとがきに『少しばかり私の想像も混じってます』って書いたんじゃない。
「コレ、いつ発売されるの?」
本を手に取り、実弥が聞いた。
「えーっと、来週の水曜日?」
「ふーん……」
何かを考えているのか、本の表紙をじーっと見たまま固まった。
「ど…どうしたの?」
やっぱりまだ怒っているのかな?と恐る恐る尋ねると、そうじゃなかった。
「じゃあ、お祝いしますか」
「……え?」
意外な言葉に、あたしはキョトンとする。
「お・い・わ・い!一応ね!スランプ脱出した訳だし」
「実弥……」
勝手に三ヶ谷さんとの馴れ初めを小説なんかにして本当はもっと怒っても良いのに、あたしのスランプ脱出を喜んでくれるのか。
「ありがとう」
本当にいいヤツ。
「でも、水曜日はお店定休日でしょ?三ヶ谷さんとデートとかしなくて良いの?」
「うん。毎日お店で会ってるし、一日くらいヘーキ」
「そっか」
へへ。
なんかちょっと嬉しい。
「さーて、なに奢ってもらおっかな」
「え!?お祝いなのにあたしの奢りなの!?」
「あったり前でしょ?親友を売った罪は、重いわよ」
実弥が目を細め、口角を上げてニヤッと微笑む。
「……はい」
この時、多分あたしは一生実弥に頭が上がらないんだろうな、と悟った。
―おわり―
0
お気に入りに追加
11
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
Perverse
伊吹美香
恋愛
『高嶺の花』なんて立派なものじゃない
ただ一人の女として愛してほしいだけなの…
あなたはゆっくりと私の心に浸食してくる
触れ合う身体は熱いのに
あなたの心がわからない…
あなたは私に何を求めてるの?
私の気持ちはあなたに届いているの?
周りからは高嶺の花と呼ばれ本当の自分を出し切れずに悩んでいる女
三崎結菜
×
口も態度も悪いが営業成績No.1で結菜を振り回す冷たい同期男
柴垣義人
大人オフィスラブ
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

婚約破棄なんてどうでもいい脇役だし。この肉うめぇ
ゼロ
恋愛
婚約破棄を傍観する主人公の話。傍観出来てないが。
42話の“私の婚約者”を“俺の婚約者”に変更いたしました。
43話のセオの発言に一部追加しました。
40話のメイド長の名前をメリアに直します。
ご迷惑おかけしてすみません。
牢屋と思い出、順番間違え間違えて公開にしていたので一旦さげます。代わりに明日公開する予定だった101話を公開させてもらいます。ご迷惑をおかけしてすいませんでした。
説明1と2を追加しました。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる